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ルービック・バトル  作者: レイ
第2章 北海道決戦編
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第36話 小桜兄妹

今日もまた俺は無治島のベッドで目を覚ました。


「今日はあの兄妹か〜。何かと世話になってるし、なるべく早く終わらせたいんだけどな〜。」


 と、その時俺の部屋のベルがなり、葵さんが入ってきた。


「じゃあ、今日も行きましょうか。」


「そうっすね。」


 しかしその葵さんの表情は少し焦っている。


「あの……、どうかしたんですか?」


「いや、少し考え事をしていてな。…………、楼羅くん。恋歌ちゃんの最終摘出の詳細については聞いたか?」


「まだ聞いてないですけど……。それがどうかしたんですか?」


 というかまだDr.YBと彫岸たちのリーダーの巫?ってやつには一度も会ってないんだよなぁ...。


「まだ聞いていないんですか...。私は詳細をDr.YBに聞いたんですけど、ちょっとまずいことが起きてな...。」


 それを言った葵さんは、点数の低いテストの答案が親に見つかったかのような苦い表情を見せる。


「一体何があったんですか?」


「聞いてみた話によると、恋歌ちゃんの最終摘出は全身麻酔は使わずに、部分麻酔ということらしい。それに、無事に手術が済めば明日の朝には恋歌ちゃんは完全復帰できるんですよ。」


「え?めっちゃいいじゃないですかそれ?何か問題点でも……、あ。」


 ここで俺もようやくことの重大度を認知する。

 それに察知した葵さんは、俺の会話に続けて、葵さん自身の予測を言い放った。


「気づいたか。そう、恋歌ちゃんが明日から復帰できるということは、裏切り者としては今日中、最悪のケースを鑑みても明日の午前中までには他の仲間を島内に入れる必要性があるんです。何せ恋歌ちゃんには…………」


「嘘を見抜く力があるから、ですよね。」


「正解だ。同時に、恋歌ちゃんと今最も多く関わっているDr.YBは犯人候補から完全に外れていると言っても過言ではないでしょうね。裏切り者の話は彼女にも伝わっているはずだろうし、恋歌ちゃんが一言『貴方は裏切り者ですか?』と質問すればいいんだからな。」


 確かにその予想は的を得ている。

 それにこの島は確かDr.YBがリーダーのはずだ。リーダー自らが裏切るなんて考えづらい。

 俺はそう考えをまとめて、葵さんの意見に首肯した。

 

「そうですね。となると残りの探索すべき人物は……。」


「小桜兄妹、彫岸柚木、大出瞬、そして巫創...……と言ったところですね。まぁ巫君は除外してもいい気がするんですが……。」


 突然思わぬことを言い出す葵さんに俺は少ない疑念を覚える。


「え?なぜですか?」


「彼は私からみてもよくわからない人なんだ。言動も少し奇人じみてるし、時々に起こす行動も無所属にいる理由なんかも、よくわからない人なんです。いい人ではあるんだけどな。」


「へ、へぇ……。」


「ま、私からみたら楼羅くんも変人ではあると思ってるんですけどね。」


「ちょっと今聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするんですけど!?」


「さ、行きますよ。調査。今日中にはカタをつけましょう。」


 そう言いつつ、葵さんがベッドに座っている俺に右手を伸ばす。

 先ほどの葵さんからの急な告白に驚嘆と質問の念をあげたい俺だったが、時間がないことは確かだ。


「そうですね。」


 俺はその右手を掴むと、まずは小桜兄妹がいるエントランスへと向かったのであった。



  —————————エントランス—————————


 俺と葵さんはエントランスに着くと、やはりそこのカウンターの椅子に座っていたヨシノさんとその横で立って立ち話をしている染、そしてその輪に混じる彫岸に出会った。


「お?来たわね。じゃあ私たちの取り調べ、してちょうだい。」


 3人は話を止めると、こちらに顔を向ける。

 どうやら俺たちが来るのを待っていたようだ。


「彫岸ちゃんもいたんですね。これは驚いた。...……ところで大出君もいそうなものですが、どこに行ったんでしょうか?」


 葵さんからの疑問が入る。

 すると彫岸は目を逸らしながらこう述べた。


「あ〜、ごめんごめん。あいつ、ここで待つのが面倒くさいとかいって、部屋に篭っちゃってて。今連れてくるから、先にその2人のこと終わらせてて!」


「あ、そうですか。それでは....」


 葵さんの発言にも気を止めず、彫岸は全速力で大出の部屋に向かったのだった。

 全員で彼女を見送ったあと、染が本題へと切り替える。


「ん〜と?それじゃあ、俺たちへの調査、ってことでいいよな?」


「あぁ。そうだ。」


「そんな気構えることじゃないだろ?俺もヨシノも、特に諜報だとかに使えるようなスキルは持っていないんだから。」


「えぇ。そうね。お兄ちゃんのいう通り。昨日も2人には話したけど、私の能力は【桜】で、お兄ちゃんの能力も同じなんだから。」


「え!?2人って、同じ能力なのか!?」


 突然出てきた新情報に俺は目を丸くする。

 兄妹という血の繋がりはあれど、それで能力が同じなんて、いくらなんでも偶然が過ぎるんじゃ……

 もしかして、これはブラフ!?

 そんなことを思っていた俺だが、それが顔に出ていたのか、染が頬をかきながら返答する。


「あ〜、実は俺とヨシノはな、同じルービックから能力を得たんだ。だから能力が同じなんだよ。」


「え!?ルービックって、そんなことできるんですか!?」


 と、ここで驚いた俺に対して返答したのは葵さんだった。


「えーっとですね。私にもそこのところは詳しくわからないのだが、この2人の言っていることは完璧な真実です。私も、2人が能力を使っていることを見たことがありますが、2人とも桜の能力だったぞ。」


「そうなんですか……。」


 ん?そういえば俺、見たことがあるっていえば、葵さんの能力、まだ一回も見てないような……。

 いや、今はそんなこと考えてる時間じゃないか。

 そう思い俺は対話に思考を戻すと、染は2人の能力の違いを葵さんから聞かれていた。


「それで?何か2人の能力で違う点、とかはありますか?もしかしたら、その能力次第では裏切りも可能かもしれないので。」


 その葵さんからの問いに、染とヨシノさんは、正々堂々とした目つきで答える。


「相違点ならあるぞ。天蓋さんは知ってると思うが、俺は桜の花びら一枚一枚を正確に操ることに特化した能力、そしてヨシノの方は、」


「大量の花びらを一度に操ることに特化した能力だよ。」


「そうだったな。じゃあ次は……」


 こうして葵さんは、少しの時間2人と質疑応答をしたのち、一呼吸おいた後で、俺の方に向き直った。


「どうですか?楼羅君から見て、怪しい点はありませんでしたか?……ちなみに私は、一応ではあるが、一点あるぞ。」


「え……いや……、急に言われても……。」


 俺は戸惑う。

 現に小桜兄妹が怪訝な表情を浮かべてこちらを見てきているからだ。

 流石に声までは聞こえていないっぽいけども。

 けど見たところそんなに怪しいところなんてなかったけどな……。

 だが、俺は少し考えたのち、この2人の桜の能力でスパイ活動として扱えそうな点を述べた。


「うーん、そうですね……。本当に強いていうとするならば、染の能力で敵と内通自体はできるんじゃないかな……って思いました。」


「いい的を得ていますね。私もそこが気になりました。あの2人は春に桜の花びらを回収しておいて、後の夏、秋、冬はそのストックを用いて戦っているらしいので、今の季節でも内通はできますしね。」


「けどあくまで強いて挙げるなら、っていう感じで、あの2人はこの島に住んでいるから裏切る動機は少ないってことですよね。」


 俺の推測に、葵さんは微笑む。


「えぇ。そうです。今日の楼羅君は冴え渡っているな。ま、これに関しては、断定できたことではないですけど……。案外人って、ちょっとしたことで運命の歯車が傾いたり傷ついたりするので。」


「そうですよね。」


 俺との一連の会話を終えて、葵さんはもう一度小桜兄妹に振り向いた。


「では、ありがとうございました。」


「あぁ、こちらこそ。」


「ありがとね。」


 染は地味な笑顔、ヨシノさんは逆の誇張でもしているかのような笑顔でお礼を言ったのだった。

 ……というか彫岸と大出、遅すぎない?

 もう数分は経ってるよ?

 と、俺が2人のことを考えたからか。


「「「「!?」」」」

 

 俺たち4人の目の前に、()()()大出と彫岸が現れたのだった。


「ちょっと!!何あんた能力使ってんの!?」


「うるさいぞ彫岸。俺は移動の時間を省いた。これは得だ。…………さぁ、天蓋、そして佐座見。尋問を始めてくれ。」


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