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ルービック・バトル  作者: レイ
第2章 北海道決戦編
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第35話 疑い

「「「な!?」」」


 俺たち3人は同時に振り返ったのち、声の主をまじまじと見つめる。


「いや....そんな風に見られると恥ずかしいんだけども.....」


 その当の本人の男(?)は先ほどとは違って動揺している様子だ。


「えーっと、僕の名前は【橘 爽也(たちばな そうや)】。ここら一帯で狩りをして生計を立てているしがない人物だよ。……と言ってもヨシノちゃんがいるんだったらそこらへん聞かされているか。」


「え?いや、詳しいことまでは話してないんだけど……。」


 俺と葵さんからの鋭い視線を受けてヨシノさんは黙り込んだ。


「とにかく、なんの用ですか?僕はここらじゃ逸れもの扱いされているんだから、ここにくることなんか滅多にないだろうけど……。」


「ん?あぁ。それはですね、この島の中に裏切り者がいるかもしれないんだ。」


 葵さんの発言に、爽也さんは頭が真っ白になっているようだった。


――――――――――――――――――――――――


 「それで?詳しい話を聞かせてくださいよ。」


 俺たち3人は爽也さんの自宅へとお邪魔していて、俺たちの自己紹介をした後、椅子に座っていた。

 それにしてもまぁいかにもなログハウスって感じだな……。

 一つの部屋に大きなベッド、テーブル、椅子、それからタンスが置かれている。

 床の木の材質(というか木の色)が場所ごとに若干違うところを見るに、そこまで統一感を重視しないタイプなのかな?

 というかこの家作るとかこの人、思ったより強いんじゃ……。

 そんないろいろな考えを俺がしている中で、2人は爽也さんに対して淡々と説明を続けていた。


「えーと、つまり情報を抜き取って極雪喜夏に売ってる裏切り者がどこかにいるって解釈で合ってるかな?」


「はい。そういうことだ。それで私たちはあなたにまず真っ先に疑いをかけた。」


「まぁそりゃ1番に疑われるのは当然ですね。僕が好んでラボじゃなくてこんなへんぴな場所で暮らしているんだし。」


 一旦は疑問の矛先に肯定する爽也さん。

 しかし、ただではすませてくれなかった。


「けど、僕はそれと同様に逸れものであるわけで、情報収集手段なんてあるわけがないでしょう?実際ラボは厳重な警備だし、ここ最近は僕の方からラボに赴くことだってない。だから僕には不可能です。」


「いぃや、あんたにならできるはずだよ。橘。あんたの能力はスパイ活動にはこれ以上ないほどの優れものだ。」


 見えない火花をバチバチと交差させるヨシノさんと爽也さんの2人がそこにはいた。


「残念なことにあなたはずっとこの家の中にいるわけじゃないでしょう?それにその能力よ。」


「けど僕は……」


 爽也さんの反論を振り切って、ヨシノさんの口火はさらに燃え上がる。


「あなたの能力の【罠】は、指定した場所に罠を設置するっていうシンプルなもの。だけれど、これは応用で盗聴機の設置や逆探知なんかもできるってこの前言ってたわよね?」


「あ、あぁ。そうだよ。そうだけども……。」


「だったらあなたで決まりでしょ。それ以外考えられないわ。」


 相手の意見を一切聞かない、というより聞いていないであろうヨシノさんに俺と葵さんは若干引き、ヨシノさんを嗜める。


「な、なぁ……。いくらなんでもそんなこじつけはないんじゃないのか?いやまぁこじつけってほどではなかったけども……。」


「そうだぞ。相手の言い分も聞いてあげないと。」


「う……了解。」


 どうにか静まってくれたヨシノさん。

 というかこの人ってかなり押し付けがましいタイプなのか……

 人は見かけによらないっていうけど、見かけによらなすぎだろ……。


「それで……話を聞こうか。何故違うって言い切れるんですか?」


 葵さんが我先にと笑顔を作りながら質問をする。

 本当のことを吐かせるためにちょっと圧がかかっているようだけど。

 

「えーっと、ですね、あ、その、僕の能力ってもちろん一定範囲内じゃないと作れないし、作れる上限の数も決まってるんですよ。……一気には3つしか作れません。しかも罠を張っている間はまぁまぁな体力を使ってしまうので、一晩中罠を設置しておくこと、……なんかもできないんですよ。だからその応用である盗聴器を永遠に設置する、なんてものはできないんです。」


 爽也さんは、紫の前髪をいじり、怯えながらも答えてくれた。


「……だそうだ。」


「そうなんだ……。ごめんね?勝手に決めつけちゃって。」


「いや、いいんだよ。」


 どうにか爽也さんに一通りの話を聞けて俺は緊張の糸が切れたような体制になってしまった。


「フゥゥ……。」


「確か楼羅くん、だったっけ?疲れただろう?お茶でも飲んでいく?」


「あぁ、はい。お願いします。」


「あ、それじゃあ私もお願いするとしよう。」


「ヨシノちゃんはどうする?」


「いや、私はいいわ……。ちょっと外の風浴びておきたいし。」


 そんなことを言いながら、ヨシノさんは苦そうな顔をしてログハウスから出て行った。

 爽也さんが準備をしてくれている中、俺と葵さんはこれからのことについてひそひそ声で検討し合う。


「どうしますか?葵さん。1番の線消えましたけど。」


「うーん、どうしましょうかね……。ここからは完全な味方を疑う必要がありますし……。」


「そこで怪しいのは小桜兄妹なんですけど……。」


「そこなんだよ……。恋歌とDr.YBを除けば1番接点が深い2人だ。疑うことはあまりしたくない。」


「そうですよね……。じゃあどうすれば……。」


「どうしたんですか?秘密の会談ですか?」


 と、ここでお茶を入れ終えたらしい爽也さんがやってくる。


「う……あと……」


 狼狽える俺。しかし爽也さんは達観だった。


「僕の憶測ですが、裏切り者についてですよね。僕はほとんど戦うことができないので、サポートに徹するだけになるかもですけど、戦闘時は手伝いますよ。……けど逆境には弱いのであしからず……。」


「戦闘なんて逆境に逆境を重ねてるようなものなのに、どうやって戦うんですか……。」


 葵さんのダメ出しに、しかし爽也さんは俺たちにお茶の入ったティーカップを配りながら発言する。


「僕も合わせてですが、人ってのはですね、マイナス×マイナスは+になるように、二重のピンチが訪れた時には必ず火事場の馬鹿力が出て、なんとかなるものなんですよ。だから僕は戦えると、そう言い切れます。」


「へぇ……。」


「まぁ、あながち間違ってはいないな。」


「まぁ僕なりの解釈ですけどね。……それよりどうぞ。僕特製のお茶になります!」


 俺と葵さんは、爽也さんの言葉に頷きながらその勢いでティーカップのお茶を口に含んだ。

 しかし、そのお茶は、見た目はお茶であれどお茶と言えるものではなかった。


「なにこれしょっぱい!?」


「塩なんて入れてるんですか!?それもかなり大量に!!」


 そう、そのお茶は、飲むとすぐに病院行きになりそうなくらい、塩が入っていたのだ。


「いやぁ……、これいいんですよ?運動時には塩分も必要ですし。」


「「こんだけ取ったら高血圧でぶっ倒れるわ(れますよ)!!」」


 というかヨシノさん、あの人これ知ってて逃げたな絶対!!

 と、そんなことがありつつも、俺たちは爽也さんに一通りの話を聞くことができ、そのあとは夕方あたりになりつつも、ラボへ帰ることができたのだった。

 さぁ、明日は小桜兄妹だ。

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