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ルービック・バトル  作者: レイ
第2章 北海道決戦編
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第33話 再会

「裏切り者……!?」


 俺は驚く。

 葵さんは顔面が蒼白になりながらもこう聞いた。


「裏切り者なんて、そんなそうそうあるはずがない。何かの間違いなんじゃないですか?」


 するとそれを聞いた、確か大出とか言ったやつは首を振る。


「いや。これは間違いなく事実だ。むしろ、このことが嘘か本当かを議論しているのが損なくらいにはな。」


 大出はヨシノさんと彫岸と言っていたはずの女にも同意を取る。

 そうすると、2人はこくこくと頷いた。


「ほらよ。こいつらもこう言っているんだ。何より、染。お前も現地にいたからもう薄々勘付いていたんだろう?残念なことに、ここにいる俺たちの誰かが裏切り者なんだよ。」


 大出に振られた染は、渋い顔をしたのち、頷いた。


「あぁ。俺も誰かが裏切り者だと思ってる。誰も疑いたくはないんだけどな。」


「そんな……」


 葵さんの表情が固くなった。

 そして大出は続けていう。


「そこでだ。天蓋とそこの横にいる……確か佐座見とか言ったか?お前らで裏切り者を探して欲しい。」


「……なんで俺たちなんだよ?」


 俺は疑問に思って質問する。


「そんなもの、お前らがここにやってきたばかりで、裏切り者の可能性がゼロだからに決まっているだろう。可能性がゼロの者に捜査を任せることほど、得なことはない。」


「ごめんね、こいつさっきも言ったかもだけど極度の損得主義でね。ウチらはもう慣れたけど、あなた達が慣れていないのなら、きつく言っておくから。」


 冷静に評価をつける大出と、それを悪く思ったのかフォローを入れる彫岸。


「いや、大丈夫っす。俺もそういう視点は助かるので。」


 俺にそう言われたからか、大出は多少張り切って続きを話した。


 「そうか。それはありがたい。それで対象は、ここにいる俺、柚木、小桜兄妹と、ラボの奥で治療を受けている我らがリーダー、そしてお前らを呼んだ恋歌、その2人を直しているDr.YBだ。では、よろしく頼ん……」


「ちょっと待て。」


 待ったを入れたのは染だった。


「この島にはもう1人、外れものがいるんだ。もしかしたらそいつかもしれない。」


「……それは本当か?なぜ今の今まで黙っていた?」


「いや……、そいつはラボの外にいて、しかも引っ込み事案だからどうせ裏切り者にはなれないだろうと踏んでたんだ。だけれども、全員捜査するんだったら、そいつも入れた方がいいんじゃないかな、と思ってな。」


「そうか。そういうことならば仕方ない。……ではまずその外れもののところに行ったのち、俺たちを1人ずつ調べようじゃないか。」


「あぁ。そうだな。」


「お前達2人もそれでいいか?」


 大出は、俺と葵さんに聞いてくる。


「俺は全然大丈夫っす。」


「私もそれでいいですよ。」


「そうか。では今日はもう暗い時間だから、明日から調査を始めてくれ。」


 こうして俺と葵さんは、裏切り者の特定、というえげつない任務を授かったのだった。


 ――――――――――ラボの奥―――――――――


 俺はその会話の後、恋歌がいると染から教えてもらったラの奥の扉———いわゆる入院室的なところだ———にきていた。


「この奥に恋歌がいるのか……」


 実に1ヶ月半振りの再会だ。

 やばい、すっごい緊張する!

 俺は少し身を震わせながら、扉を開けた。

 するとそこに見えたのは、ベッドで寝たきり……というよりはゴロゴロしているような感じの恋歌だった。


「恋歌!!」


 俺は恋歌に向かっていく。

 そんな俺に恋歌は、


「え〜っと?あなた、誰ですか〜?私、あなたのこと知りませんね……。どうしましょうか……変態の先輩が襲ってきたとでも言いふらしましょうか……?」


 とひどいことを言ってきた。


「おいおい待て待て恋歌。折角の感動の再会だってのに、なんで記憶喪失のふりしてるんだよ!というか先輩って言った時点でお前は確実に俺のこと知ってるよな!?」


 すると恋歌は、苦虫を噛み潰したようで舌打ちを鳴らした。


「ちぇっ……。せっかく先輩にドッキリ仕掛けようと思ったんですけどね……。」


「今のは恋歌が記憶失ってないって確証取れたからこんなツッコミできたけど、確証取れてなかったら俺、かなり絶望してたからね!?」


 すると恋歌は俺のセリフに対してにやけながらこう返してくる。


「いやいや、だって私はそんな先輩の絶望顔が見たくてこんなドッキリを仕掛けたんですよ?」


 そうだった!!

 こいつドSサイコパスだった!!

 俺は長らく忘れていた恋歌の特徴を再認識する。


「お前にとっての俺は結局なんなんだよ!!」


「大事な大事な先輩ですけど?」


「大事なんだったらこういう時くらい真面目に接してくれ!!」


 と、俺は恋歌の右腕に目がいく。


「あ、お前それ……」


 恋歌の右腕は、ほとんどが元通りになっていた。

 が、なぜかところどころに金属が埋まってある。


「あー、これですか?なんでもDr.YBが最終手術で摘出するってことらしいです。言うなれば固定材って感じでしょうかね。もう右手も動かせますよ?ほらこのように。」


 そう言うと、恋歌は右手をグーパーグーパーとして見せた。


「最終手術って……いつなんだよ。」


「明日から明後日にかけてですね。」


「……そうか。」


 となると恋歌の能力に頼ることは不可能ってことか。

 こりゃあますます難易度が高くなったぜ……。

 そんな俺の心境を察知したのか、恋歌はこう言った。


「なんですか?私が手術受けてる間に、なにかあったんですか?」


「……あぁ。そうなんだよな……。実は……」


 俺はさっき大出や彫岸に聞いたことを恋歌に説明する。

 驚く恋歌の表情を見るに、どうやら恋歌はそのことを一切知らないようだった。


「って感じだな。どうだ?なんか心当たりとかあるか?」


「うーん、私の方では自分はやってない、としか言えませんね……。後、私と同様に今手術を受けている、【巫 創(かんなぎ はじめ)】って人も知らないでしょうね。」


「えーっと、確か彫岸と大出のリーダー的存在の人……だったっけ?」


「はい、そうですね。そして彼は、無所属の中では最強、ルービッカー全体の中でもトップ3には入るほどの実力者なんですよ。」


「はぁ!?」


 おいおいおいおい!

 さらっととんでもない情報出てきやがったぞ!?

 なんで無所属最強がこの島にいるんだ!?

 ……いや、この島がそれくらい優秀なのか!?

 俺は錯乱する。


「というか、そいつが裏切ってたら、無論終わりじゃね?」


 俺は恋歌に意見を出すが、それはあっさりと否定された。


「いや、それはないでしょうね。さっきも言ったように、巫さんは無所属最強……つまり、軍の勧誘を全て蹴散らしている実力者なんです。そんな人が軍と協力して、この島を落とす?私には彼の力だけで壊滅させた方が手っ取り早いと思いますし、ここは無所属にとっては最高の病院なんですよ?わざわざ彼が潰す理由がありません。」


「へぇ……。」


 恋歌に軽い見解を述べられて、俺は感嘆する。

 さすがは恋歌。

 ……と言うか恋歌、お前もう探偵になったらどうだ?

 だが恋歌の推理はまだ続く。


「まぁ巫さんには結局のところ、直接聞きに行った方がいいでしょうね。……あ、その線でいくと、柚木さんと大出さんも限りなく白ですよ。彼らは3人で行動してますからね。」


「となると、恋歌はもちろん除くとして、残っているのは……」

 

「小桜兄妹、Dr.YB、外れもの、の4人ですね。まぁそれだとしても、巫さん達3人にも聞いておいておいた方がいいと思います。状況証拠が得られるかもなので。」


 恋歌は冷静な判断でそう言った。


「そうか。わかった。ありがとう。じゃあ、またよるから。」


「はい。わかりました。健闘を祈っています。」


 俺は恋歌にそう言うと、恋歌の部屋から出て行った。

 明日から本格的な捜査が始まる。

 まずはさっき話していた外れものからだな。

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