第2話 ルービッカー
次の日。
「らんららーん」
俺はいつもより早めに家を出た。なぜなら昨日起こったことを同じオカルト部の藍 恋歌に伝えるためだ。
まぁ実際のところ、昨日あんなことがあったせいでオカルト部にいけなかったことを謝りに行くついでなのだけど...
恋歌は、いつも変なものをペットとして飼っている。
まぁ端的にいうと人だ。
まぁ言うなれば奴隷だ。
だがその奴隷、ワンって言葉以外言ってた記憶がないんだよな...
もしかしてそんなふうに調教されてんのか?
だとしたらあいつがすんごい怖く感じちゃうんですが...
そんなことをしているうちに、恋歌がいつも通る道に着いた。
いつもならこのコースで奴隷に餌をやってるはずなんだが....
「なんか変なこと考えてましたね?先輩。うちのペットのことなら何も考えなくていいって言ったじゃないですか。」
いたわ。
それも急に現れてすっごい図星のこと言ってくるんだけど。
ちなみに恋歌は薄灰色の髪に桃色の双眸を持っている。
「え?なんのことかな?」
俺は図星なことを隠すためにしらを切った。
「はぁ.....もっと嘘は隠す努力しましょうよ...」
うん。バレた!
「あははは.....すんません」
「まぁいいです。それより、なんで昨日連絡も入れずにオカルト部に来なかったんですか?」
「えーとですね......体育教師に言われて山ランニングしてました...」
「あー、平先生ですか...だったら仕方ないですね...」
あ、そうだった。あいつの名前平だったわ。
まぁいい。あいつのことはこれからも体育教師と呼んでやろう。
そして、俺は宝玉の話に移る。
「いや〜それで、ここだけの話なんだけど、そん時のランニングの途中、宝玉みたいなのを見つけてな」
「!は、はい...」
「それすぐに光って消えちゃって。だからそのことについてオカルト部で調べよーぜ!」
「............」
「どしたんだ?恋歌?」
「ラン。先輩を【能力探査】して。」
「ワン!」
……え?
すんません。何言ってるのかわからないんで、恋歌さん。俺にわかるように言ってもらっていいですか?
あと、この奴隷?みたいなの掃除機みたいに俺に引っ付いてそんでもって吠えてるんですが?
そんな俺の葛藤はさておき、恋歌は少し焦ったような表情でこう言った。
「今日の放課後は絶対にオカルト部にきてください。話さなければならないことがあります。」
え?なんかしたの俺?あと、まだこの奴隷ひっついてるんだけど⁉︎
そのあと、奴隷が離れるのに2分ほどかかった。
――――――――――放課後――――――――
オカルト部室内。
「んで?話ってなんだよ?」
「いや、それがですね...」
「ワン!ワン!」
なんか重要な話っぽいな。ってかそんなことより....
「恋歌さん⁉︎なんであんたペット連れてきてんの⁉︎」
「え?えーと、その〜......」
「学校内にペット持ってくるの禁止だからね⁉︎」
「いやそれが....今回のことを説明するにはこの子が必要なので....」
「キャンキャン」
「あ.....そうなの...。」
まぁいいか。今回は部長の権限で多めに見てやろう。
そんなこんなでペットの持ち込みを勝手に許可した俺は、恋歌の話に耳を傾ける。
「それじゃあ説明しますね....まず初めに、先輩が見た宝玉っていうのは、ここら辺にはないようなものでしたか?」
「あぁ。本当にあれはこの辺りじゃ見たことない....というかテレビとかでも見たことはなかったと思う。」
「わかりました。じゃあそれは、【ルービック】というものでしょう。」
「え?ルービック?あの立方体のやつ?」
「違います。まぁあくまで私たちがそう呼んでいるだけなんですけどね.....」
本物は立方体なのにこれは球体とか、おかしな話だ。
そんな苦笑する俺には構わず、恋歌は話を進める。
「そして、そのルービックの光を浴び、何らかの能力を手にしたもののことを【ルービッカー】とよんでいます。」
「へぇ〜。そうなのか。」
何だこの厨二感溢れる展開は!
もしかして俺、今まで夢見ていた転生系主人公みたいに無双するパターンか⁉︎
「てことはつまり、るーびっかー?ってのになれば、能力バンバン使い放題ってことか?」
「いやそうじゃないです」
俺の夢は一瞬にてへし折れた。
だが、無双展開を諦めた影響で、目が虚になった俺を慰めるためか、恋歌は続いて補足する。
「まぁ、能力になれると応用とかできて技も多種多様になりますよ?だから...」
「まじかよ!よっしゃぁ‼︎‼︎」
「は、はい.....。立ち直り、早いですね....」
「まぁ、いっぱい技があるんだったらおもろいじゃん。」
「まぁまだ先輩の能力は解析中ですけどね......」
「解析中?どこで解析してんの?」
「ほら、朝私のペットのランがあなたに擦りついてきてましたよね?」
「ん?あぁ。確かに....」
「あれ、ランの能力の【能力探知】を使ってたんです。まぁそれで先輩もルービッカーになったんだなって分かったんですけど......」
「ふーん。」
だったらあの時の行動にも納得いくな....
ていうかこの奴隷もルービッカーってのだったのか。
ん?待てよ?ということは.....
「そしてその能力を利用してわかったことを知り合いのルービッカーに頼んで....」
「ちょっと待て。つまり、お前のペットも能力持ってんだよな?」
「はい。」
「だったらお前も能力、持ってたりするのか?恋歌。」
根拠なんてないが、一応恋歌に聞いてみる。すると、案の定な答えが返ってきた。
「はい。私もルービッカーですよ。」
「まじかよ!じゃあ能力は何なんだ?」
「ふふふ。私の能力はですね....」
その時。異様に空気が変わった。その空気の変化は、恋歌からでも、ランからでも、もちろん俺からでもないし、その変化の具体的内容は俺にはわからない。
だが恋歌は違った。
「伏せて!」
俺は恋歌に言われ、何もわからないままその場に伏せる。
だが次の瞬間、感覚的に俺たちの数ミリ上を斬撃が通った。
何だ?敵襲なのか?漫画でよくある。
けど俺はまだ能力が何なのかすらわかってないし――
「また来ましたか.....【西高校学校軍】‼︎」
ちょっと待て。西高校ってここだよな?
つまり恋歌のさっきの発言からしてこの学校の誰かが俺たちを――――――
その時、オカルト部のドアが勢いよく斬られた。
そこにいたのは――――
「あーめんどくさい。生け取りなんか。こんなクソ幽霊部活の生徒なんかどうだっていいでしょうに。あの人も几帳面だな〜。」
昨日俺にパワハラした、体育教師、平だった。




