第21話 生徒会長の意地
「とんだ能力ですね...!私の幻影の腕を切るなんて....」
「だろう?お前には一本食わせてやりたかったんだけどなぁ。当たらなかったもんは仕方がない。さて、戦いの続きと行こうか?」
このままじゃ、まずいですね.....何か対抗策を探さなければ……!
――――――生徒会長サイド――――――――
「あなたが私を止めるというのは、かなり無謀だったようであります、ね‼︎」
「ぐはっ...!」
私――棚造 見晴は、あの男に対してかなり劣勢だった。
どうやらあの男の能力は緑ランクの【体術】。
あの手の能力の輩は校長先生達から幾度となく見せられてきた。
校長先生曰く、『ああいう緑ランクの能力は、◯術と言うのが多く、一般人でも努力すればその域に行けるものが多い』、らしい。
「ほらほらどうしたのでありますか⁉︎【錬拳】‼︎」
「ぐはぁっ...!!」
だが校長先生はこうも言っていた。
『ですがね。平先生のように、ごく稀に緑ランクでも超人レベルの力を発揮することができるのですよ。相性、というものでしょうね。』
おそらくこの男は後者の立ち位置だろう。
それに比べて私の能力は、一応ランクは黄色のクセに、できることといったら人間がライターを使うのとほぼ同じ原理だ。
なんで私はこんなにも使えない能力でここにいるんだろうか?
遠くを見ると藍 恋歌と佐座見は傭兵隊とジリ貧ではあるものの互角で戦っている。
藍 恋歌はそもそもの性能がおかしい上、彼女自身の戦闘方法を見つけているし、佐座見に至ってはほとんど練習期間はなかったくせに風の能力を持ち前の身体能力と運で補っているように見えた。
それなのに私は殴られているだけ。
あまりにも不憫じゃあないのか?
「さぁ、もうくたばったでありますか⁉︎いや、まだ意識はあるでありますね‼︎【錬打・壱陣】っっ‼︎」
「うがっ……あがぁっ‼︎」
私の腹部を男の拳が直撃する。
何か……何かこの状況から抜け出せるものはないのか……!
私は必死に考えた。だが、
一切出てこなかった。
今はかろうじてルービッカー特有の回復力と耐久力で生き残っているだけだ。
だがそれももう虫の息。
いつ事切れるかなんてわからない。
「どうしたでありますかぁ‼︎それっ‼︎それっ‼︎」
この男……なんの考えもなしに殴ってきやがって……
……ん?
なんの考えもなしに殴る?
それはただの工夫もクソもないバカの一つ覚えだ。
対して私は、ただ攻撃を受けているだけ。
ただ殴るという基本的なことさえ考えていなかった。
……そうだ。私だって火傷を負わせることくらいしかできないが、攻撃くらいはできる。
だったら一つの賭けだ。
やつとは違い、それを応用してみよう。
「【着火】‼︎」
「んなっ⁉︎」
私はあの男の右足の内部に炎を着火した。
正直これがうまくいくかはわかっていなかったし、元々酸素がない密閉空間に炎を着火させることはもちろん応用行為だ。
当然体力も持っていかれる。
だが効果はかなりあったようだ。
「く……私の右足に……よくもやってくれたでありますね‼︎」
やつの右足の筋肉は少しだけだが焼かれたのだ。
ただ筋肉となるとその少しが命取りとなる。
そう、やつは今右足の激痛に耐えている状況なのだ。
「どうだ?やられるだけじゃ、お前だって……つまらなだろ……?」
「よくもやったでありますね……!仮にも西高校学校軍のルービッカーなだけはあるであります....‼︎」
「“仮にも”は余計だ。というか……」
私は今まで思っていたことの全てを吐き出した。
「だいたいお前らは何故このタイミングで来る⁉︎まぁそりゃあ絶好のチャンスだと言えるが‼︎それより私が聞きたいのは何故お前ら傭兵隊がこのタイミングで芽晴学校軍に依頼を受けたのか、だ‼︎何故こんな偶然が起こる⁉︎何故私はこんなにも痛い思いをしなくちゃならない⁉︎何故、何故、何故、何故――――――――っ‼︎………………はぁ……はぁ……」
「なんだったんでありますか……その絶叫は……」
「うるさい……私の苦労も知らないで……!私は危うく、人を殺しかけたんだぞ‼︎」
「へぇ....そうなんでありますか。まぁ私とは一切関係のない話でありますがね。」
わかっている……わかっている、そんなものは。
だが、それがあっても、この戦場に残ろうとした意地だけは、誰にも負けない自信がある。
学校のグラウンドを整えていた時に偶然見つけてしまったルービック。
そのせいで私は校長先生の率いる西高校学校軍に入れられて、こんな風に戦っている。
だけれど、そんな生活が嫌だとしても、こんなところでなんの成果も残さずに散るのは嫌だ。
私は生徒会長。この学校の生徒の手本になるべき、存在なのだから‼︎
「だから……私の全力を喰らえ‼︎」
そう私が言い、人差し指を男に構えると、その男も再び体勢を構え直した。
「いいでしょう。そっちがその気なら、お互い全力で行くでありますよ‼︎【散拳・微塵】‼︎」
「いいだろう‼︎だがな、私に勝ったとしても、この攻撃は後々致命傷になりうるぞ‼︎【炎の刺青】‼︎」
地面を蹴り、高速でこちらに向かってくる泥谷に対して、私はありったけの力を込めて、泥谷の右足に向かって着火をした。
その結果、私は能力の使いすぎにより、膝をついてしまった。
「はぁ……はぁ……」
前を見ると、右足はもう動かないはずなのに、泥谷はこっちに向かってきている。
「食らうであります‼︎」
「…………もう、避けることも、できないか……」
私は泥谷の攻撃を受け、地面に沈んだ。
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「にしてもあの女、やるでありますね……私の右足にこんなダメージを負わせるなんて……。……ですが、私は進むでありますよ……!」
そう言い残し、泥谷は校舎内へと入っていった。
校長室。
「まずいですよ校長先生‼︎棚造さんが‼︎」
家革 絵口はかなり焦っていた。
なんせ回復役は自分しかいないし、それでいて早くも1人の犠牲者を出してしまったからだ。
だがそんな絵口先生を校長先生は嗜める。
「ちょっと落ち着いて下さい家革先生。まだ彼女は致命傷というほどの致命傷は負ってません。また、今あなたがこの校長室から出ると校舎内に入った傭兵隊との接触の危険性があります。だから少し待って下さい。」
「少し待て、……とは?」
「ええ。私が今から、この校舎内に入ったひよっ子をボコボコにしますので。」
残り
西高校学校軍陣営(協力者含む)
沙座三 楼羅
藍 恋歌
ラン
家革 絵口
教頭先生
軍長 西堀 智砥(校長先生)
計
五人➕1匹
芽晴学校軍
傭兵隊メンバー 三人
ヤクザ(千って苗字)によって出されたドラゴン
計
三人➕1匹




