第19話 VS傭兵隊
俺と恋歌はグラウンド前にバリケードを置き、奴らを待ち伏せしていた。
これは校長からの提案で、バリケードを破壊したところを恋歌の能力で敵を檻に入れるという作戦だ。
「恋歌。準備はいいか?」
「はい。全然大丈夫です。」
「私も大丈夫だ。」
「ランは大丈夫?」
「ワン‼︎」
今現在、グラウンドには俺と恋歌の他に、生徒会長とランがいる。
校長、絵口先生、教頭は校舎内に入ってきた敵を一掃するのと、サポート要員らしい。
サポートはおそらく絵口先生で、一掃するのは校長だから、教頭の存在価値が気になるが、本人に言ったら絶対凹むから言わないようにした。
まぁ実際ハズレの能力なんだけど……
それにしても、恋歌はこの前、厄芽山に行く時に、ランは能力を2個持っているとか言ってたな……
この戦闘でわかるといいんだけど。
俺がそう考えていると、外から声が聞こえてきた。
「切断‼︎」
すると、バリケードは一瞬で真っ二つにされたのだ。
「な……!」
生徒会長は一瞬固まる。
そりゃそうだ。
なんせかなり積んでいたバリケードが一太刀で破壊されたのだから。
だが俺は、どうにか声を出した。
「恋歌‼︎」
すると恋歌はすぐに反応し、
「わかってます。【強制認識】!そして、【この3人は鉄の檻に閉じ込められる】‼︎」
と中に入ってきた3人を全員閉じ込めた。
ちなみにこの檻はそこらの宝石より硬いらしい。
「な⁉︎どうなったんでありますか⁉︎」
「閉じ込められたんだよ。みてわかんねぇのか脳筋。」
「さて、どうする?このまま建前上の降参でもしておくか?相当この檻は硬いぞ。」
「リーダーがそれいうのか⁉︎」
3人は閉じ込められて、少なくとも1人は混乱していた。
すると恋歌が俺に聞いてくる。
「先輩。どうですか私の能力は。」
「いつみてもチートだと思う。」
「普通に褒めて下さいよ……。私だって自己肯定感上げたい時だってあるんですし……」
「え?結構普通じゃなかった?」
「先輩は厨二病くさいんです。」
知るかよそんなん‼︎
試しに生徒会長に聞いてみる。
「なぁなぁ、俺って厨二病だと思います?」
すると、生徒会長は少し考えたのち、こう言った。
「まぁ、厨二病も悪いことではないぞ……?」
「それ俺が厨二病だって言ってるようなもんですよね⁉︎」
俺たちは、もう勝ったと思って談笑していた。
だって相手にはもうどうする手段もないのだから。
だが、それは突如流れてきた校長からのアナウンスによって打ち消される。
「おい君たち‼︎奴らは危険だ‼︎油断するんじゃない‼︎なぜここにいるかはわからないが、奴らは【傭兵隊】だ‼︎」
なんだ?傭兵隊?
確か聞いたことがあるような……?
だが俺は、それ以上どうリアクションしていいかわからなかった。
だが、奴らの強さは一目瞭然だった。
校長がまず焦っていた口調だったし、それを聞いた恋歌と生徒会長も目を見開いたからだ。
「な……」
「嘘でしょ……!傭兵隊……⁉︎」
その視線は檻の三人に向けられる。
すると、そのリーダーらしき人物が、話し始めた。
「ちっ。バレちまったか。せっかく依頼主の芽晴学校軍定義で果たし状を送ったってのによ。」
「リーダー。ここで準備運動は済ませたぜ。戦を始めるぞ‼︎」
「あぁ。もちろんだ。【切断】‼︎」
すると、その檻は一瞬で切られた。
「……な⁉︎」
俺たちはただ呆然とみることしかできなかった。
「では私は、校舎に行き、校長軍長を倒しに行くであります‼︎」
「了解した。では俺は、お前らと戦うことにするか。おい千。ちょっと手を貸してくれ。」
「わかってらぁ。」
おい待てよ‼︎
なんで勝手に敵同士で話進めてんの⁉︎
そして俺の考えている間に、脳筋と言われていたやつが校舎に入ろうとする。
しかし、
「【着火】‼︎からの【停留】‼︎」
「な、なんでありますか⁉︎」
生徒会長がそいつの目の前に着火をし、阻止した。
「佐座見‼︎こいつは私に任せてくれ‼︎」
「わかった‼︎こっちは俺達に任せろ‼︎行くぞ。恋歌。ラン‼︎」
「はい‼︎」
「ワン‼︎」
俺たちは生徒会長に迷惑をかけないよう、檻や残りの2人がいる方に駆け寄った。
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「おいリーダー?俺、例のあれ、使っていいか?」
「もちろんだ。だが、俺たちは巻き込むなよ?」
「わかってるよ。」
「何を使うのかはわかりませんが、先手必勝です‼︎強制認識からの、私には凄く筋肉がある‼︎」
すると、恋歌は体育教師と戦った時に見せた、筋肉マッチョの形態へとなった。
ちなみに俺はさっき恋歌に言ったように上着を脱いでいる。
「な、なんだ?あいつの能力は【檻生成】とかじゃねぇのか?」
「んなわけないだろ?まぁいい。やれ。」
「あ、あぁ。」
敵はもちろん、動揺自体はしていた。だが、それ以上に余裕があるっぽかった。
なんだ?何をしてくるんだ?
すると、リーダーじゃない方が突然、何か叫び出した。
「じゃあ行くぞ……!【ドラゴン召喚】‼︎」
俺が動揺していると、続いてそいつは、ドラゴンを召喚した。
マジかよ……
というか、このドラゴン、どこかで……
「ギャルルルルルゥ‼︎」
俺の思考を遮って、ドラゴンが咆哮する。
「こいつだけで壊滅させてやるよ‼︎いけ、【ドラゴンブレス】‼︎」
「ギャルルゥ‼︎」
「先輩、危ない‼︎」
咄嗟に恋歌が上着ごと俺を守ってくれた。
と、恋歌が突然思いもよらぬことを言ってきた。
「先輩。あのドラゴン、見覚え無いですか?」
「あぁ。確かにどっかで見た記憶が…………えーっと……、あ!!あのドラゴン、厄芽山の時の!!」
「はい、そうです。これはかなり厄介ですよ……!」
そうなって来ると、あのドラゴンはほぼ無尽蔵のエネルギーを持っている。
……ていうかなんであいつはあの時のドラゴンを召喚できるんだ⁉︎
あの森で出会ったヤクザと関係でもあるのか?
……というかもしかしてこのドラゴン、俺が西高校の制服を着てたから襲って……⁉︎
そんな俺の思考は一瞬でドラゴンブレスによって阻まれる。
さらに傭兵隊の2人も攻撃を仕掛けてくるお得なセット付きだ。
やばい。勝ち目がない。
どうする、どうする、どうする⁉︎
俺は考え込む。
だがしかし、この状況を覆すことを恋歌が言ってきた。
「先輩。何考えこんでるんですか?」
「は?だってお前もさっき厄介なことになったって……」
「まぁ、私だけなら、そうですね……あ、そうでした。先輩にはまだ言ってませんでしたか……。先輩は脳ある犬は爪隠す、ってことわざ、知ってますか?」
「いやそこは犬じゃなくて鷹だろ?俺でもそんくらいのことは……」
「いや?この場合は犬になりますよ?ラン。行くよ?」
「ワン‼︎」
「ラン、あのドラゴンに、【変化】‼︎」
「ワン‼︎」
「な、なんだ⁉︎」
すると、すごいことが起こり始めた。
ランの体が人間から変化していくのだ。
「何が起こってるんだよ?リーダー⁉︎︎」
「わからないが……ここは様子を見るしかないようだな。」
そしてランの変化が終わった。
そこには。
「グルルルル……ワン。」
傭兵隊の男が出したドラゴンと瓜二つのドラゴンがいた。
「これがランのもう一つの能力、みた生物になら何にでも変身できる、【変化】という能力です‼︎」




