16話 対峙
「けど先輩。」
「なんだ?」
「棚造生徒会長も昼休みからいないようなんですが……」
「ん?あぁ。それなら問題ない。」
「?」
「それと恋歌。ちょっと能力使う準備しといてくれ。」
「?……はい……わかりました……っていうか先輩⁉︎どんなとこに行こうとしてるんですか⁉︎」
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「ちっ...なんで私がこんなところにいる必要が...」
私――――棚造 見晴は今、体育館裏にいた。
なぜここにいるか?そんなものはなんとなくわかる。
今日の放火の事件についてだろう。
そしてこの件を聞いてくる人物。それもわかる。
だって私が理科準備室に行った時にはもう、彼は死んでいると思っていた。
だが違った。
彼――――佐座見 楼羅はそこにはいなかったのだ。
窓が割れていたため、どうにかしてそこから逃げたのだろう。
だったら彼が次に起こす行動は一つ。
私を呼び出すか奇襲するかをし、西高校学校軍の情報を聞き出すこと。
実際に、昼休みから彼の行方を探していると、私の下駄箱に『放課後、体育館裏にこい。絶対に逃げんなよ』という文字の書かれた紙が置かれてあった。
だが、彼は間違っている。
ここ、体育館裏は確かに密会の場所には丁度いい。
だがしかし、それ故に手入れなどもなにもされていなく、草がジャングルのように生えているのだ。
つまり、戦うことにおいてここは私が有利だ。
だからあとは彼を待つだけなのだが……
と、そう考えていたのがいけなかった。
どうして私は、彼が単独でくると思ったのだろうか?
勝負は、一瞬のうちに、鶴の一声によってついてしまった。
「【強制認識】‼︎からの、【ここら一体の草は消える‼︎】」
「な……?」
そう、その瞬間、草木が一瞬でなくなったからだ。
そして声のした方から現れたのは、
さっき声を発したのであろう恋歌、そして作戦が成功して少し口角が上がっている楼羅だった。
「じゃあ、生徒会長さん?事情聴取と行きましょうか?」
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俺は決して今回の放火の件、油断なんかはしていなかった。
…………と言ったら嘘になる。
正直敵襲ってこないからゲームでよくある『味方だと思ってたやつが敵になる……』っていうものを無視して生徒会長達と会話してたからね‼︎
けど、2度目の油断はしない。
それがこの、普段は脳筋だけどいざという時は冷静な男、楼羅君だ‼︎
……え?今でもボケに回ってる?
なんの話かな?
という脳内会議は一旦置いておき、俺は生徒会長へと向き直る。
「じゃあ、いくつか聞かせてもらおうか。」
「…………」
「おい、流石の俺でも今回は黙秘権を禁止させてもらいますよ?生徒会長?」
「では、二つほど言わせてもらう。」
「……なんでしょうか。」
「なぜ、私を半殺しにしようともせず、さらには敬語を使う?」
「それはっすね……簡単な話です。生徒会長は、俺を本心のまま殺そうとしたわけじゃないからです。まぁそれでもかなり切れましたが。何か裏があると思って、今は下手に出てます。」
「そうか。例え私が嘘をついても横の恋歌が嘘を見破る。つまりそういったことだな?」
「はい。察しがいいですね。棚造生徒会長。私は嘘の能力。今回はこのためだけに私もついてきたんですから……。人間版嘘発見器は辛いですよほんと……」
「恋歌さん⁉︎それはなんか俺が無理やり連れてきたみたいになるからやめてもらっていい?」
あと一応恋歌には戦闘になったとにの為にもついてきてもらったのだが、一旦それは伏せておこう。
「知りませんよ?そんなこと?」
あと恋歌さん、絶対それ狙ってしゃべってるよね?
や・め・て?
と、そんな会話をしていると生徒会長は俺にとってとんでもないことを言ってきた。
「では二つ目。沙座三。お前のさっきの挨拶、『じゃあ、生徒会長さん?事情聴取と行きましょうか?』はみていて痛い。やめておいた方がいいぞ。」
いやいやいやいや。そんなわけないだろ。
一応恋歌に確認をとってみる。
「え?恋歌?流石にそんなことないよな?」
すると恋歌は横に首を振る。
……………………
…………………
…………
……
「また黒歴史一つ増やしたぁぁぁ‼︎‼︎」
「せ、先輩。今はそんなこと言ってる場合じゃあ……」
「あ、あぁ……そうだな……」
俺は生徒会長に向き直る。
「じゃあ、あなたに聞きたいことがいくつかあるんすけど、いいっすか?」
「あぁ、この状況になっては仕方がない。私が情報を持ってる全ての情報を嘘偽りなく話そう。とゆうかよく平然とペース立て直せたな……」
痛いとこついてこないでください……
俺は生徒会長の発言の後半部分を無視して話を続ける。
「了解っす。ではまず、あなたの能力から教えてください。」
「あぁ。いいだろう。私の能力は【着火】。炎を灯す、またはその炎をそこに滞留させておく能力だ。」
「ふーん、じゃあつまり、私とリュウビさんがいた調理室にあった火の玉はその滞留で浮かせていたと?」
「まぁ、そういうことだ。この滞留だけでも結構体力を使うのだぞ?」
「へぇ……そうなんすか。じゃあ次。軍って一体どんなことをしてるんですか?」
「えーと……それはだな……この西高校学校軍においては、外部からの刺客でもこない限り基本的には自由だ。しかし、今回の場合は藍という強大な戦力を確保するために命令され、行動するハメになった。正直、私の能力は戦闘には向いていないから、あんな形を取ってしまったのだが……流石に良心と精神が抉られたよ。出てきてくれて本当に助かった。佐座見。藍。」
「だったらそんなことしないでくださいよ……」
「本当にそうです。他にも生け取りにする方法はたくさんあったでしょう?」
「そ、それは……私はそこまで臨機応変に対応できる人間ではないんだ。だから、ボスからこの命令を受けた時も咄嗟に思いついたのがこの方法だったんだ。」
………………いやめっちゃ殺人鬼の発想‼︎
怖い、怖い怖い‼︎
そういやよく考えたら、ここにいるのって、ドSの恋歌さんと殺人未遂起こした生徒会長だよね⁉︎
やばい、いつ俺死んでもおかしくない……
「なぁ恋歌。」
「なんですか?」
「なんかちょっと怖くなってきたから俺逃げてもいい?」
「どんなこと考えたんですか....?いやもちろんダメですけど。」
「ですよね〜...」
「…………おい。もう質問はいいのか?」
少し怪訝そうな表情をした生徒会長が聞いてきた。
「まぁいいでしょう。けど、次からは俺らを殺そうとしないでくださいよ?」
「ふん。まぁ……」
とその時。
ぷるるる、プルルル、プルルル………………
と生徒会長の携帯が鳴り出した。
「ん?なんだ?」
と生徒会長は電話に応じる。
「はい……はい……え⁉︎けどそれは………………わかりました。」
プッ。
通話を切る音が鮮明に伝わった。
「…………どうしたんすか?」
俺は念の為生徒会長に聞いてみた。
すると、生徒会長から出てきた言葉は意外なものだった。
「すまない。藍。佐座見。至急、ボス、いや、【校長先生】のいる校長室まで来てくれ。話があるそうだ。」
「え?嘘だろ?」
ボスって教頭じゃなかったの?
ていうかなんの話だよ⁉︎