14話 真相整理
だが、棚造生徒会長を呼ぶまえに、一つリュウビ先輩に確認すべきことがある。
「あの、リュウビ先輩。」
「ん?どうした?」
「あの……さっきロウラ先輩は無事だって言ってたの、自分を安心させるための虚言ですよね?」
「は?いやいや……そんなわけなくて……」
いや。そんなはずはない。だってリュウビ先輩の発言は嘘だったから。
と言うか本人の言動にも結構焦りがみえる。
……まぁ、一周回って、敵という可能性もあるけど、ここでは敵ではないと仮定しましょう。
ルービックの種類で瞬間移動系だったらそりゃあできなくもないですが、それならガヤが来る前に私の目を盗んで調理室の鍵をかけることも可能なはずです。そんなことはもちろんしてないし、なんなら私を助けようとしてくれたから。
「だって先輩も聞いたんでしょう?ロウラ先輩が理科準備室へ行くってのを。」
「まぁ、そうなんだけどな……」
すると、リュウビ先輩は少しの間黙って、話し始めた。
「まぁ、本心を話すと、めっちゃ心配だな。だってさっきの火の玉が落ちてきた時、嬢ちゃん……いや恋歌ちゃんが」
「恋歌ちゃんは気持ち悪いので嬢ちゃんいいですよ……」
「あ、そう?せっかくちゃんと言ったのに……まぁいいか。話戻すぞ。あの時嬢ちゃんがいなかったら俺は間違いなく死、もしくはそれを免れたとしても大火傷を負っていただろう。けどロウラは火の玉があったら絶対に近づく。だから相当危険なはずだ。生徒会長は誰もいないと言ってたが、あの準備室、まぁまぁ広いんだよ。見つけることができなかった可能性は大いにある。だから……助けなきゃいけねぇんだけど、もう手遅れだ…………。」
リュウビ先輩は地面にうずくまった。
私からは何もいえない。
もちろん、ルービッカーのことも、生徒会長が怪しいということも。
残念ながら先輩は、まだ風の能力を使えるようになってない。……もしも使えていたなら……
まぁ、ifの話はどうでもいいです。
今は、私にできることを本気でやりましょう。
その後、理科準備室の火は消されたという報告があり、遺体などは見つからなかったらしい。
とりあえず最悪の結末は回避した……と思う。
だがリュウビ先輩によると、教室に先輩は帰ってきていないとの情報だ。
それに先輩の携帯に電話をかけたが一向に出ない。
だったら私にできる行動はただ一つ。
事件になんらかの関わり―おそらく元凶―の生徒会長、棚造 見晴の元へ向かわなくては。
――――――生徒会室――――――
「え?見晴さん?そういえば全然見ていませんね……お昼休みからかしら?」
「え?そうなんですか?……わかりました……」
「そうですね……せっかくここにきたんですし、お茶でもいかがでしょうか?」
一般生徒にお茶を出す生徒会がどこにいるのだろう……
私はそんなことを思いながら生徒会室から出ようとした。
すると、
「あ、ちょっと待って!」
と、彼女が質問をしてきた。
「そういえば、あなたあの時火事の被害に遭いましたよね?」
「あ、はい。」
「実はもう一つの理科準備室の方は窓ガラスが割れてて……今火事の修理費用の計算してるんですが、調理室の方は窓ガラス割れてませんでしたか?」
「あ、はい。割れたりとかはしてませんでしたね……。」
「わかりました〜。あ、あなたたちに弁償、なんてことはないと思うので、そこは安心してください。」
「……わかりました。ありがとうございます。」
こうして私は生徒会室から出て行ったのだが……。
棚造生徒会長が消えた?それも消火を行った昼休みに?
絶対何かある。と私の勘が告げている。
恐らく先輩が理科準備室にいなかったのと関係があるのだろう。
一体全体何があったのかはわからないが、さっき生徒会の人が話していた窓ガラスの件は気になる。
とにかく理科準備室に向かわなければ……
――――――理科準備室――――――
「確かに……窓ガラスが割れてますね……」
先輩が逃げた痕跡なのだろうか?だけどそれにしては扉が開いている。
先輩はそこまで持久力あるわけじゃないので、体力温存のためにも、窓ガラスを壊すのなら、扉を開けて脱出するだろう。
というか普通扉が開いているのならそこから誰でも出るはずだ。
とりあえず推論は後で考えよう。
私は中に入ってみた。
まぁ物が散乱している。
物証をしてみると、色々おかしなことに気づいた。
アルコールランプは何故かほぼ全部落下し割れていたり、一方で顕微鏡は一箇所に固まっていたりしていたのだ。
………………だが結局その後も色々探してみたものの、先輩の行方を決定づけるものはどこにもなかった。
窓ガラスが割れている、結局それだけの情報以上のことは手に入れられずに私はいつものオカルト部へと向かう。
一体先輩はどこに行ってしまったのか……
というか先輩は本当に生きているんだろうか?
窓ガラスは確かに怪しいが、それは矛盾が生まれてしまうし……
そんなことを考えながら私は鍵を取り、オカルト部のドアを開けた。その瞬間、私は、
涙が止まらなかった。
そう、そこには、
「…………恋歌。悪いな。ちょっと巻き込まれちまった。」
先輩がいたのだから。




