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第2話 足りてないんじゃない? 面倒なんて見ませんよ。

「い、いったい何が気に入らないんだ!」


「何もかもですわ。何の瑕疵もない私が第二夫人? フェルミト家を侮辱しているのですか?」


「給金も相場以上に出すと言っているだろ!」


「そういう問題ではありません。私に夢とまともな結婚を同時に諦めろとあなたはおっしゃいました。」


「そうは言ってない!」


「いいえ。言いましたとも。私が訳ありな女であるならともかく、そうでないのに第二夫人になれとおっしゃる。」


「順番なんてそれ程気にしなくても良いだろ?」


「貴族である以上それでは通りません。最初の提案に関してもそうです。あなたが幾らわめこうと、他の貴族は元婚約者の侍女となった私をお手付きと判断します。」


「それは俺がしっかり言っておくさ!」


(本当にどうしようもない…)


「では、私が庭を破壊するつもりは無かった。加減を間違えただけ…と言えば貴方は信じてくれますか?」


「信じる訳ないだろ!」


「何故ですか? 信じて下さいませ。私はおっちょこちょいなので加減を失敗してしまったのです。」


「君は何をやらせても完璧だろう!? そんなもの誰が信じるんだ!」


「では、貴方は何をやらせても上手く出来ないでしょう? 周りにお手付きではないと貴方が言って回って貴族達を信用させる…そんなの誰が信じるんです?」


「う……。確かに…俺はそういった能力は乏しいが、それでも頑張って説得すれば皆分かってくれるはずだ!」


 私は溜め息をついた。


「信用できません。というか、それはたとえ誰であっても不可能です。」


「……」


「それで? ここまでフェルミト家を侮辱なさって……この国で唯一人だけ特級魔法が使える私と…いえ、優秀な魔法士達を抱えるフェルミト家と…侯爵家は戦争しますの?」


「いや…それは…」


「私はお断りしますと先程から申し上げております。貴族としての格は低いので、ある程度までは我慢もしてきました。」


「……」


「ですが、これ程までお断りしても要求を通すとおっしゃるのであれば、後は力づくしかありませんわ。」


「婚約者だろ? そんなに断らなくても…。」


「元、ですわ。そもそも政治的な派閥も違うのですし、本来ならそちらの家に従う理由も御座いません。あくまで波風立てないよう父が計らっただけです。」


 彼にはそろそろ理解出来なくなっているのだろう…目が泳いでいる。


「あまり…その…分からないんだが、何がダメだったんだ? どうすれば俺の結婚相手の教育をしてもらえるんだ?」


(そこからか…)


「どうやってもその方の教育は請け負いません。」


「何故だ!?」


「では、貴方の新しい結婚相手が……名前は何とおっしゃるんですか?」


「…マリアンヌだ。」


「そのマリアンヌ様が真実の相手だという男を連れてきて、貴方に面倒を見てくれと言ったら快く引き受けるのですか?」


「マリアンヌはそんな事はしない!」


「も・し・も・したらどうするのか? と聞いています。この際するかしないかはどちらでも構いません。貴方は引き受けるのか引き受けないのか…どちらですか?」


「…引き受けない。」


「何故ですか?」


「そんな男の面倒等見れるものか!」


「面倒見てあげたら良いではないですか。新しい結婚相手の頼みなんですから。」


「出来ない!」


「私も出来ません! 貴方が先程から言っているのはそう言う事です! いい加減にして下さい。何で私が貴方の浮気相手の…しかも婚約破棄までされて面倒を見なければいけないのですか?」


 彼は一瞬言葉に詰まるがそれでも反論してくる。


「君を第二夫人にするのだから良いじゃないか。」


(もうダメね…。)


「…戦争しましょう。」


「待ってくれ!」


「待ちません。侯爵家にも準備が必要でしょうから。1か月後で良いでしょう。」


「婚約者の家と戦争するなんて聞いた事ないぞ!」


「私も貴方の今日の発言全て聞いた事等ありません。轟雷!」


 強烈な破壊音とともに、既に無惨な姿を晒している庭を更に破壊する。


「宣戦布告代わりですわ。開始早々の降伏は認めません。ですからそちらも私の降伏など認めなくて結構ですわ。」


 そう言って、何事かを喚きたてる足りない男の前から私は立ち去った。




 私はフェルミト家邸宅に着くなり事の顛末を父に報告した。


「元々あの足りない男に嫁に出すのは気が進まなかったのだ。それでもあの男は足りないとは言え、ルディアの言う事はそこそこ聞くし、それなりに温厚ではあったから目をつぶっていたが……」


 父の目は怒りに燃えている。


「戦争大いに結構じゃないか。爵位は低いが戦力的にはフェルミト家が圧倒しているのだ。勝って領土と賠償金を取るぞ!」


「お父様…迷惑をお掛けしてごめんなさい。」


 私は深々と頭を下げた。


「気にするな。ルディアが言わなくても家の誰かが必ず言い出しただろう。となれば根回しもしておかんとな。」



 私達が所属するこのクリミア王国では、正当性があれば貴族同士の戦争が認められている。戦争理由は様々であるが、大体は領土問題や利権絡み。とは言っても普通は交渉で互いの妥協点を探り合い、戦争まで発展する事は稀だ。


 今回は王国史上初の事例となるだろうが、十分な正当性が認められる一件だ。


 貴族界隈ではキルトが足りないのもそれなりに知られており、ある程度の根回しだけで正当性を担保出来るだろう。

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キルトはASDの類いかな
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