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アンガーマネジメント

作者: 抹茶珈琲

「それでは、これからアンガーマネジメントについてお話させていただきたいと思います」

わたしはノートを開き、講師であるスーツを着た女性の話に耳を傾ける。

わざわざ日曜日に来たのだから、本気で取り組まないともったいない。席は最前席を確保する気合の入れようだ。

わたしは怒りをコントロールしなければならない。

今、社会人として五年目を迎えているが、一向に会社での評価が上がっていっていない。

わたしは同僚に相談するなどした結果、自身の怒りをコントロールできていないことが原因ではないかと思うに至った。

怒りをコントロールすることができれば、同僚からも、上司からも、会社からも評価が変わるような気がしている。

でも、コントロールの仕方がわからず、こうやってお金と時間を使ってアンガーマネジメント講座に訪れた。

講師がホワイトボードに怒りのコントロールの仕方について、講義をしながら要点を書き連ねている。

わたしは配られたプリントに蛍光ペンを入れながら、ノートにプリントに書かれていない大切と思う言葉を入れていく。

ふむふむ。怒りはこうやってコントロールするといいのか。

ああ、このやり方は良くなかったんだ。だから上司に目を付けられたのか。

たしかに、これじゃあ、会社からは評価されないな。

一時間の講義を終える頃には、わたしは生まれ変わった心地だった。

よし、明日から実践してみよう!


「ちょっと君」

「はい、なんでしょうか?」

翌日、会社でパソコンを使って作業をしていたところ、上司から声をかけられた。この声のかけ方は、お小言がある時だということを、わたしは知っている。

「僕が頼んだ仕事、まだ終わってないよね?」

小太りで上から目線がすごい上司は、頼んだ仕事が終わっていないことに立腹しているようだった。

わたしはパソコンを操作し、進捗を確認する。たしかに終わってない。

「終わってません」

「昨日までにやっておけっていっただろう! 先方にどう説明するんだ!」

オフィスに上司の怒号が響き渡った。

めちゃくちゃだ。土曜日に休日出勤をしていたわたしに、ふらっと現れたこの上司が自分の終わらない仕事を押し付けてきたのだ。それも、夜の九時に。

わたしは上司の方に振り返り、立ち上がった。

アンガーマネジメント。

昨日学んだことを発揮する時がきた!


「……おい、くそじじい! 人に仕事を押し付けてんじゃねえぞ! てめえがセクハラに明け暮れてっからそんなことになんだろうが! ざけんじゃねえ! 先方にどう説明するんだ、だって? そんなもん、てめえが考えやがれ!」 


上司の顔面から血の気が引いていくのがわかった。腰を抜かしている。

アンガーマネジメントが役に立った。

今まで、わたしは怒りを我慢することしかできなかったが、怒りをコントロールし、相手にぶつけることができた。

オフィス内から、わたしに向かって拍手が送られた。

社会人五年目で初めての経験だった。

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