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圭介の夢


「じゃ、行ってきます!」

「イッテキマス」

「鐘が鳴ったら帰ってくるのよ!」

「はーい!」


 公園はそんなに遠くない。だいぶ慣れてきた公園までの道のり。

 ソフィーを連れてみんなが待っている公園へやってくる。


「おーい!」

「唯人、今日は遅かったな!」

「オヤツ食ってた! 今日は何して遊ぶんだ?」


 俺が圭介に話しかけ、遊びに加わろうとする。が、ソフィーは一人でブランコに行ってしまった。


「なぁ、ソフィーも入れていいか?」


 圭介はともかく、みんなの反応が悪い。


「あー、ちょっとそれは……」

「なんでだよ?」

「いや、別にいいんだけどあの子話せないだろ?」

「それに、日本の遊びってわかるのか?」

「あの髪、絶対に変だぜ? おかしいよ」


 ひどいい言い方だ。なんだそれ?  確かに言葉はうまく伝わらない。

 それに、こっちの遊びを知っているのかもわからない。


「別にいいだろ? 鬼ごっことかかくれんぼくらいなら、多分わかるんじゃないか?」

「なぁ、みんなどうする?」


 言葉の壁は厚い。俺の伝えたいことが伝わらず、ソフィーの言葉も俺にはわからない。


「大丈夫だって。同じ子供なんだし、一緒に遊ぼうぜ」


 心なしかいつものメンバーが遠ざかっていく。

 え? なんでだよ? 一緒に遊ぶだけだろ?


「唯人が遊んでやればいいだろ?」

「は?」

「メンバーは足りているし、唯人抜きであっちでサッカーしようぜ!」


 昨日まで遊んでいたやつらは向こうに行ってしまった。隣にいるのは圭介だけ。


「……お前は行かなくていいのか?」

「僕? 別に僕がいかなくてもメンバー足りるし、それにあの子と友達になりたい!」


 チクり。なんだこれ、少しだけ心臓がチクっとした気がする。


「友達?」


 ま、まさかソフィーの事を好きに──

 圭介は俺に澄んだ目を向け、誇らしげに話始める。


「僕さ夢があるんだ……」

「夢?」


 圭介の夢? なんだそれ?


「友達百人できるかなって……」

「……」


 できるかぁ! 百人って結構な人数だぞ?


「そ、そうなんだ。で、ソフィーとも友達になりたいのか?」

「あぁ、百人にはまだまだ遠いからね! ということで、何して遊ぶ?」


 圭介はなんだかんだ言って、結構いいやつだ。付き合いは長いけど、圭介の夢なんて今日初めて聞いたぞ?


「とりあえず、ブランコでもするか」


 ソフィーのもとに歩み寄り、三人でブランコをこぐ。


「おらぁぁ! 俺が一番高い!」

「負けるかぁ!」

『楽しいー!』


 と、そこに見慣れた顔が視界に入ってきた。


「あんたたち、そんなにこいだら危ないわよ?」


 麗華だ。がり勉麗華は今日も俺を敵視している。あの目がいつでも俺を睨んでいる。

 なんでそんな俺の事睨むんだよ。今日はまだ何もしてないだろ?


「──と言うことがあってさ、三人で遊んでたんだ」

「バカなの? これだからいつまでたっても子供なのよ。えっとソフィーちゃんだっけ?」

『なに?』

「気にすることないわよ! もし、暇だったらいつでも遊んであげるから!」


 麗華はソフィーの手を握り、振り回している。つい先日は怖い目で見ていたのに。

 いったい何を考えているんだか……。


「あんまり唯人と遊んでいると頭悪くなるから、私が遊んであげるわ」

「おい、なんだよそれ。俺の頭がいつ悪くなったって?」

「あら? 聞こえた?」

「ふん、勝手に言ってろ」


 今まで一緒にいた奴らとは違ったメンバー。

 この四人で遊ぶのは初めてだ。


 ※ ※ ※


 終業式、今日から夏休みだ! 帰りに大荷物を抱え、汗をかきながら家に向かう。

 隣を歩いている麗華はほぼ手ぶらだ。


「何見てるのよ?」

「お前、なんで荷物ないんだ?」


 どや顔で俺を見下してくるその目つき。俺はその眼が嫌なんだよ!


「っふ。計画的に持って帰ればそうはならないわよ?」

「なに鼻で笑ってんだよ。少し持ってくれよ」

「嫌よ、なんで持たないといけないの?」

「だったら早く帰ればいいだろ?」


 俺に合わせて歩く速度を遅くしなくていいのに。


「……ゆっくり帰ってもいいの。帰ったら忙しいし」

「今日から夏休みだぜ? 何で忙しいんだよ」

「夏期講習……」

「夏期講習? 勉強するのか?」

「うん。親がこの夏休みびっちり入れた。今年と来年は田舎にも帰らないって」

「随分勉強好きなんだな」


 確かに麗華は勉強ができる。でも、好きでしているとは思えない。


「好き、じゃないと思う。でも、お母さんが……。ま、唯人には関係ない話ね。でもね、英語も勉強するし、もっとソフィーちゃんと話せるようになるかも!」

「英語か……」


 確かに俺もソフィーともっと話がしたいと思っている。でも、でもさ……。


「ねぇ、ソフィーちゃん、いつまで日本にいるの?」


 そう、何度も頭をよぎった。ソフィーは学校に行ってない、でも日本に引っ越してきている。

 ソフィーは帰るのか? それともずっと日本にいるのか?


「さぁ? 知らない。別に気にならないし」


 本当は知りたい。ずっと日本にいるのか? それとも──。


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