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一人隠れんぼ


「いただきます」


 今日の夕飯はハンバーグ! 俺の大好物!


「唯人、今日テスト返ってこなかった?」


 ギクリ。なぜ知っている?


「カエッテキテナイヨ」

「麗華ちゃんから聞いているんだけど?」


 っち、あいつチクりやがって!


「えっと、学校の引き出しに……」

「ハンバーグ、食べたい?」


 残酷な選択だ。テストはランドセルに入っている。が、見せたらハンバーグは消えるだろう。

 しかし、見せなくても消えてしまう。


 ……五十点だったらハンバーグは半分残る? ないよりはましか。


「持ってくる」

「はいはい」


 しぶしぶテスト用紙を父さんと母さんに見せる。ま、俺の実力はこんなもんだ。


「いただきまーす」


 何か言われる前にさっさと食べてしまおう。


「唯人、何とかする気はないの?」

「それなりに、がんばってるよ」

「だんだん成績悪くなってないか?」

「気のせいじゃない?」


 というのは嘘だ。確かに最近勉強がわからなくなってきている気がする。何でだ?


「ふぅ……。塾も考えないといけないかしらね? お父さん、どうする?」

「唯人、このままでいいか? 塾に通うか?」


 塾だけは絶対に嫌です!


「勉強、がんばります」


 テストを見せてもハンバーグは減らなかった。よかった!


「そうそう、今日隣に外国の方が引っ越してきたのよ」

「外国? こんなところにか?」

「アメリカかイギリスか、カナダかロシアか」

「どこの国なのかわからないのか?」

「そこまで聞いていなかったのよね。あ、でも娘さんがいて。えっと、ソフィアちゃんって言ってったわね」


 ビールを飲んでいた父さんが、コップをテーブルに置く。


「大丈夫なのか?」

「何が?」

「ごみの分別とか、出す日とか」


 父さんも母さんと同じことを言っている。似た者同士なんだな。


「しばらく、声をかけてみようかしら……。あと、さっきこれをもらったの」


 母さんがもらった箱を取り出し、中身を父さんに見せる。


「タオルか」

「そ、タオル。あっちにもこんな習慣あるのね」

「うーん、こっちに合わせてきたんじゃないか?」

「そうなのかしら?」

「どちらにせよ、しばらく様子を見てみようか」

「そうね……」


 そんな会話をしながら、今日も一日が終わる。

 ソフィア、あの子は何で日本に来たんだ? それに学校とかないのか?

 少しは気になる。が、俺には関係のない話だ。宿題も終わってるし、今日は早く寝よう……。


 ※ ※ ※


「いったぞ!」

「おっけー!」


 今日も公園でおなじみメンバーとサッカー。

 ゲームばかりだと、少し飽きてしまう。


「唯人!」

「おらぁぁぁぁ!」


 ダッシュでボールをゴール前に運ぶ。勉強はともかく、俺の足についてこれる奴はいない!


「シュゥゥゥゥゥゥ」


 俺のスーパーシュートが炸裂する。決まった!


「どこ蹴ってんだよ!」


 必殺シュートはゴールから大きく外れ、明後日の方向に飛んでいった。

 おかしい、なぜあんな方に……。


「唯人、足は速いのにサッカーのセンスないな。早く取って来いよ」

「わかってるよ」


 しぶしぶ遥か彼方に飛んでいったボールを探しに行く。

 おかしいな、確かこっちに……。

 公園の少し奥の方、茂みに覆われた場所がある。ここに入ったのか?

 ボールを探しに入ると、白い布が目に入ってきた。


「おぉぉ!」


 声が出た。つばの広い麦わら帽子をかぶった誰かが茂みにいた。そして、その帽子からは銀色の長い髪が見え隠れしている。

 この髪の色、ソフィアか?

 俺は声をかけることもなく、ボールを探す。あ、あった。ソフィアの足元に。

 ソフィアはボールを手に持ち、こっちに体を向け俺に差し出す。


「あ、ありがと。じゃーな」


 ボールを受け取り、その場を後にする。

 あんなところに一人で隠れて何してるんだ?


「あったぞー!」

「蹴れ蹴れ! 早く!」

「おらぁぁ!」


 再び始まるサッカー。蹴ったボールは再び明後日の方向へ。なんでこうなる?

 みんなボールに集まり始め、試合が再開した。俺も急いで戻ろうとする。ふと、後ろを振り返る。

 ソフィアが茂みの陰から、こっちを覗いている。何してるんだ?


「唯人! 早く来い!」

「今行く!」


 気にはなったが、しょうがない。俺も今試合中だ。

 ブランコには珍しく麗華とその友達が数人いて、こっちの方を見ている。

 あのがり勉麗華が珍しい。それに、その周りの女子もこっちを見ている気がする。

 あいつら何してるんだ?


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