改心の一撃
朝、駅で待ち合わせの為しばらく駅前で待つ。
しばらくするとポニーテールを揺らしながら麗華が俺に声をかけてきた。
「おはよー、昨日のこと聞いたよ」
「うるさい。その話はするな」
駅でみんなと待ち合わせ。そろそろ圭介も来るはず。
「おっはー。今日も一番遅いのか。後三分早く出ないとダメかな?」
「大丈夫だろ? 電車の時間までまだあるし」
「唯人、初日から面白いことしてるね。くふっ」
「圭介もその話か。やめてくれ、それに俺は悪くない!」
「大体悪いやつに限って『俺は悪くない!』っていうのは鉄則よね」
「いや、ほんとに悪くないんだって!」
ホームにつき、昨日の話題はまだ続く。結局学校に着くまで根掘り葉掘り聞かれた。
「塾の友達がさ、唯人のクラスにいるんだよね」
「へー、そうなんだ」
「唯人さ『麗華はバカじゃない!』って騒いだんだっけ?」
「ソノキオクハゴザイマセン」
言ったような、言ってないような。でも言ったかもしれない。
「確かに私はバカじゃない。でもね唯人、あんたもバカじゃないよ。私がよく知ってるから」
「そうだね、唯人はバカじゃないよ。ちょっと抜けてるけど」
「抜けてーよ。ほら、そろそろ昇降口に着くぞ」
「それに、そんなこと言ってくれた唯人の事、結構好きだよ」
「へいへい、ありがとなー」
相変わらず麗華は上から目線。ま、初日から騒いだ分いろいろと言われるのはしょうがない。あきらめよう。
昇降口で靴を履き替え、それぞれのクラスに分かれる。
同じ階だけど、三人ともバラバラ。入学二日目、これから先やっていけえるだろうか。
午前の授業が終わり、昼休み。槇原は同じ学校だった奴らと何か話している。
俺はなぜか二日目にしてボッチだ。くっそ、あの野郎……。
さっきからこっちを見ては何かひそひそ話して、にやにやしている。
無視だ、無視が一番。俺は手帳に入れた写真を眺め、心を落ち着かせる。
ソフィーのお父さんからもらった、一枚の写真。
夏休みの花火大会、その時に撮ってもらった写真。
甚平の俺と浴衣のソフィーが二人で並んでる写真を眺めながら、ソフィーの事を思い出す。ソフィーは今頃何をしているのか、元気でやっているのかな……。
「おーい! ボッチが何か見てるぜ!」
「おいっ! こら、何してんだ! 返せよ!」
「どうせアイドルかアニメのキャラでも見てたんだろ!」
「違う! いいから返せ!」
俺の手帳が宙を舞う。そして、手帳から一枚の写真が机の上にはらりと落ちた。
俺は急いで写真を回収しに、写真が落ちた机に向かって走り出す。
「うわっ! こいつこんな写真入れてるぜ!」
「お前には関係がないだろ! いいから返せよ!」
「誰だー、これ? 変な髪の色してんなー」
落ち着け……。流石に二日連続ではまずい。でも、あの野郎……。
──ガラララララ
一人の女子が写真を持った槇原に近づいていく。
「な、なんだよお前」
その女子は大きく右手を振りかぶり──
──パシーーーーン
教室に響き渡る平手打ちの音。いい音です。
さっき案でざわついていた教室が一気に静かになった。
「あら、ごめんなさい。間違えました」
「は、ほぇ……」
あっけにとられた槇原は麗華に写真を奪われ、麗華は床に落ちた俺の手帳も拾ってくれた。
「ふーん、こんな写真持っていたんだ」
「悪いかよ」
「何か私に言うことは?」
「取り返してくれて、どうもありがとうございますっ!」
「よろしい。全く、昨日の事が気になってちょっと様子を見に来たらこれなんだから」
時間にして数分なのか、教室は誰も言葉を発しない。
静寂の夜、そんな言葉が似合いそうな今の状況。もしかして、俺は目立っているのだろうか?
──キーンコーンカーンコーン
「あ、もう予冷が鳴っちゃった。じゃ、また放課後ね」
俺の言葉も聞かず、麗華は自分のクラスに戻っていく。
突然嵐が着たと思ったら、その嵐は早々に過ぎ去っていった。
槇原は一言も言葉を発せず、その場から一歩も動かなかった。
ぷーくすくす。女にビンタもらってやんの。ウケる、内心すっきりした。
そして放課後。麗華に一発もらったら槇原はあれ以降俺に声をかけてくることはなかった。
だけど、槇原はチラチラ俺の方を見てくる。なんだ、仕返しでも考えているのか?
ふふっ、女にビンタされて矛先を俺に向けるとか、最低ですね!
そんなことを考えながら、午後の授業も終え、帰る時間になった。
なんか嫌な予感がする、男の直感だ。
俺は帰りのホームルームが終わるのと同時に、バッグを肩にかけ教室を出ていった。




