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聞こえる音 感じるもの  作者: 近江 仙
6/6

彼女

 

 あれから特に変わったことも無かった。

 数日だが、すごく長く感じた。


「いよいよ退院ですね。」

 主任看護師が荷物をまとめる私に笑いかけた。


「はい。本当なら姉がもうすぐ来るはずなんですけど…」

 私は迎えに来るはずの姉を待っていた。


 もう、この病院に来ることも無いだろうな…

 古いし、町の中の病院の方が便利だ。


 そう考えると、私は好奇心が湧いた。


「あの…あの木の話…って」

 私は、好奇心を抑えきれずに若い看護師から聞いた話を聞いた。


 主任看護師の顔は歪んだ。

 やはり、あまりいい結末の話じゃないようだ。


「ロミオとジュリエットみたいと…聞いたんですけど?」


「…そんな話じゃないです…その話は…」


「やっぱり、隔離病棟に行った男の子は…亡くなったんですか?」

 私は隔離病棟から聞こえた足音を聞きながら全力の想像力で描いてしまった恐怖を思い出しながら、聞いた。


「え?」


「え…?違うんですか?」

 私の質問に主任看護師は目を丸くした。私も彼女の反応に目を丸くした。


「…違いますよ。だって、その話の男の子は、前の院長ですよ。」

 彼女は不思議そうな顔をした。


「え?てっきり、隔離病棟で死んだと…だって、木の話をしたときに…」


「亡くなったのは女の子ですよ。」


「え?」


「そもそも、女の子っていう年齢じゃないですよ。最初は女の子だったけど、亡くなった時は20代後半で…」

 私の聞いた話と違うことを主任看護師は話し始めた。


「だって、私は退院して引き裂かれたって…」


「ええ。でも、彼女は戻ってきたんですよ。」

 主任看護師は窓の外を眺めて言った。


「戻ってきた?」


「ええ。でも、その時に前院長は病も治って、医者となって…一つの病院の時期院長と一看護師…うまくいくはずないです。」


「再会したときに、彼には婚約者もいて…それで終わりです。」

 主任看護師は笑顔で言った。


「じゃあ、私が聞いた話は?」


「そもそも、誰から聞いたんですか?」

 主任看護師は不思議そうな顔をした。


「え?…よく部屋に来る若い看護師さんが…」


「え?」

 主任看護師の顔がどんどん青くなって…


「…この病院に、若い看護師はいませんよ。」

 静かな声で、言われた。


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