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聞こえる音 感じるもの  作者: 近江 仙
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廊下の向こう

 

 看護師の話を聞いたあと、窓から木を眺めると、不思議に思った。


 枝が多くて、葉が茂っているのを見て大きな木だと思っていたが、今はそれ以上に不気味だと思っている。


「もうすぐ退院ですね。」

 看護師がにこやかに話しかけてきた。

 彼女は、私に木の話をしてくれた看護師とは別人物だ。

 話をしてくれた看護師はかなり若かったが、今私に話しかけている看護師はかなりの年配だ。

 おそらく主任と呼ばれる立場の者だろう。


「はい。」


「この病院、夜暗いし怖いですよね。」

 主任看護師は、優しく微笑みながら言った。


 彼女はいつも丁寧で、どの看護師にも優しく接しているように見える。

 患者の前でだけかもしれないが、私にとって彼女は優しいおばちゃん看護師という印象が強い。


「はい。あの大きな木が不気味で…」

 私は部屋の外の木を指した。


 その木を見て、主任看護師は一瞬顔を歪めた。

 本当に一瞬だったと思うが、何か良くないことを思い出したようだった。


 そういえば、この看護師はあの話をしてくれた看護師よりも年上だ。

 もしかしたら、隔離病棟のことを知っているのではないのかと思った。


「あ…あの、ナースステーションのところに変な跡が…ありますよね。」

 私はなるべく自然を装って話しかけた。


 もし、あの木のことで顔を歪めたのなら、隔離病棟のことは聞かれたくないのではないかと思ったからだ。


「ええ。…ずいぶん昔の話ですけど…あのナースステーションのところに別の病棟に通じる渡り廊下があったので…よく気付きましたね。」

 私の心配とは別に、彼女はあっさりと嫌な顔をせずに教えてくれた。


「はい。…ちょっと気になったので、暇ですし…」

 私はそれっぽいことを言った。


「あの病棟の方は、昔不治の病と言われていた病気にかかった人を隔離するものだったのよ。もしかして、何か歩いてきたとか?」

 彼女は嫌な顔というよりも、悪戯っぽく私に笑いかけた。


 どうやら怪談話の類があるようだ。


「え…そうなんですか?」

 私は、若い看護師の話で多少の恐怖を感じているため、話題に過剰に反応した。


「だって、いわくつきの病棟ですからね。…何も無ければいいのですけど。」

 主任看護師は笑顔で言うと、私の病室から出て行った。


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