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聞こえる音 感じるもの  作者: 近江 仙
3/6

この病室と木

 


「あの木ね…確かにそんなロマンチックな話があったねー」

 私の病室から見える木の話で、ロミオとジュリエットのようなことをできないかという話をしたと看護師に話すと、彼女はそう言った。


「ロマンチック?」


「そう。かなり昔のことだから…」

 看護師は聞いた時のことを思い出しているのか、懐かしそうに目を細めながら、窓の外に見える木を眺めた。



「ちょうど、この部屋にね、あなたと同い年くらいの女の子がいたのよ。」


 今は山の中にある寂しいこの病院も、地域が過疎化する前、または過疎の初期段階までは辺りに民家も多く賑やかだったらしいの。


 その子は盲腸で入院していたらしいんだけど、ほら、盲腸ってそこまで長い間入院しないでしょ?


 だからその子は直ぐに退院したんだけど、その時にこの下の階の男のこと仲良くなったのよ。


 短い間だけど、そりゃあとても仲良くて、若いせいかあっという間にね。

 おそらくだけど、恋仲に近かったんじゃないかな?


 あの木に登って男の子が窓の前まで顔を出して、二人で話すっていう、よく舞台で見ているまさにロミオとジュリエットのような感じだったらしいの。


 でも、言った通りに女の子はすぐに退院しちゃったんだって。


 時代も時代だからね、連絡手段もないし…気軽に再会することもできなかったのよ。


 女の子は退院と同時に遠くに行ってしまったのよ。

 本当は連絡を取りたかったらしいんだけど、親が許さなかったって。


 厳しい親なのかと思ったら、実は相手の男の子ね、女の子が退院してからしばらくすると、隔離病棟に連れて行かれたの。


 あ、今は無いわね。昔はあったの。

 この階から連絡路があったけど…

 丁度ナースステーションのところに通じる渡り廊下があったのよ。

 今はないけど、その名残があるわよ。


 えっとね、その男の子ね、女の子が退院してから体が弱ってしまったのよ。


 その、血を吐いてしまったの。だから感染する病気を疑われてね…昔だから


 だから女の子の親も、昔の価値観で考えて娘とその男のことの交際を勧めるようなことはしたくなかったのよ。

 いい機会だからこれを機に引き裂けたらいいと思っていたんだと思うわ。


 まあ、結局それで引き裂かれたから、まさにロミオとジュリエットというかんじよね。




 看護師は語り終えると、悲恋を思っているのか、うっとりとしてそとの木を見ている。


 彼女には悪いが、私はどうしてもロマンチックに思えなかった。


 後味の悪い話だと思った。


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