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7『メルの片付け』(第3話前)


 休日の昼間。

 メルルーサが自室のベッドでゴロゴロしていると、突然ドアが開けられた。


「こらメル、こんなに散らかして。少しは片付けしなさい」


 それはメルルーサの母親だった。


 大陸に関係のあるもの――ガラクタが散らかる部屋の惨状を目に、彼女は困り顔を娘に向けた。


 しかしメルルーサは、寝返りを打つだけで起き上がろうともしない。


「えー、別にいいじゃん。わたし以外は入らないんだし」


「だらしがないでしょうが、だらしが」


「えー、だらしなくてもいいじゃん~」


「ダメに決まってるでしょう。将来、結婚して嫁いだ時にそんなんでどうするの」


「わたしの恋人は大陸だしっ。遠距離恋愛だしっ!」


「あんた一度も会ったことない大陸をよく恋人呼ばわりできるわね……そもそも、こんなぐうたらな娘、大陸もお断りに決まってるでしょう。とにかく、今日は部屋の片付けをすること。いいわね?」


「えー……」


「嫌なら母さんが片付けてあげようか?」


 含みのある笑みでそう言われ、メルルーサは慌てて飛び起きる。


「い、いやっ、いいよ! 自分でできるから!」


 メルルーサには自分の母親が何かを企んでいると分かった。


 それは恐らく、片付けるという名目で大陸コレクションをすべて捨てようとしているということである。そんなことをされては、たまったものではない。


 メルルーサは母親を部屋から追い出し、自分で片付けをすることにした。


「……でも、片付けるとは言ったものの、どこから手を付ければいいか分からないなぁ」


 棚から溢れかえり、床に散乱する大陸コレクションを前にメルルーサは呆然とした。


 全くどこから手を付けていいのやら。困り果てた挙句、一番目立つところからやっていくことにする。


「ひとまず床のものをどうにかするかな」


 さっそく彼女は、床に転がるコレクションを端から拾い上げていく。


「わぁ、これ懐かしい!」


 けれども、手帳のようなものを拾い上げた時、メルルーサの手が止まった。


 学校を卒業する時に、同級生たちからメッセージを綴ってもらってものだ。


 その中身をパラパラとめくったかと思えば、今度は他のものを拾う。


「あ、これ、こんなところにあったんだ!」


 メルルーサの手には、瓶に似たものが握られていた。


 ガラスのように透明だが、それよりももっと軽い。落としてもぶつけても割れなくて、握るとベコベコとへこむ。ナルタ諸島のどこでも作られていない魔法のような道具だ。


「確かこれで魚獲りの罠を作ったんだっけ。結局失敗しちゃったけど」


 メルルーサは舌を出して笑い、別の物を拾った。


 それは破れにくい不思議な袋。外側には薄茶色のイモやバナナチップスのようなお菓子が描かれ、内側は銀色にキラキラと輝いている。


「たぶん、食べ物が入ってた袋だと思うけど、バナナの代わりにイモを揚げてるのかな」


 メルルーサの興味は次の物へと移る。


「ああ! これ懐かし~!」


 それは、たくさんの黄ばんだ紙が綴じられたファイル。


 幼い頃から、浜に流れ着いた瓶の中に入っていた手紙をまとめたものだ。


「何て書いてあるかは分からないけど、いつか読めるようになる日が来るかな」


 彼女はしばらくそれを見つめ、その後も次から次へと大陸コレクションを手に取っては思い出に浸った。


 そうして時間は過ぎ、もうじきランプに火を灯さなくてはならない頃。


「メル、片付けは終わった?」


「あ、お母さん」


 部屋に入ってきた母親に振り向くメルルーサ。


 彼女は散らかった床の真ん中にぺたんと座り込み、大陸コレクションを手に固まっていた。


 誰がどう見ても片付けをしているように見えない。そもそも、最初より散らかり具合がひどくなっている。


 メルルーサの母親は眉を吊り上げて、怒気を含んだ声を上げる。


「あ、お母さん、じゃないわよ! 片付け全く進んでないじゃないっ!」


「わ、もう夜になってる!?」


 そこでようやくメルルーサは辺りが暗くなっていることに気付き、時間がかなり経過してしまったことを知った。


「今日は片付けが終わるまで、夕飯はお預けだから」


 それだけ言い残して部屋を去って行く母親。


 メルルーサは再度部屋を見回し、絶望に浸るのだった。


「えーそんなぁ! 今日中には無理だよー!」


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