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風の便り  作者: 音澤 煙管
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約束の場所への一歩



1話 『旅は道連れ』





早朝の未だ暗い中、時計をチラ見しながら出かける準備をする。

周りは未だ夜中の時間なのだろう、

シン‥と静まり返っているからいそいそと頭もしっかり覚めない中で最小限の生活音で支度をする。


腕時計にタバコと、缶コーヒーは家の在庫で間に合わせ玄関のドアを開ける、電気は点けずに手探りで鍵をかけ家を後にする。

やっと外に出て、深呼吸くらいの普通の呼吸に戻る自分を無意識にも忘れているほど息を殺して支度をしていた。


少し歩くと駐車場へ、周りはポツリ、ポツリと部屋の灯りが点いている家がある、今日は土曜日。これから仕事か、帰宅後なのか‥それとも夜通しで勉強か?

色々と他人の事を想像しながら、車のドアを閉めエンジンをかける。


舗装もされていない駐車場だからハンドルをきる度の音が毎回気になるけど、家の近くはここしかないからストレスを感じるも諦めて居る。


ここへは数十年、住み慣れてはいるが好まない道ばかりだ。


それにも増してこの夜明け前の時間帯には、パトカーがウロウロして軽快に跳ばせない。

一時不停止キップを切りたいらしく、何時もの決まったところでネズミを待っている、そんな事より昨晩は随分と遅くまで呑んでいたから、そっちの方が心配だ。


今朝は少し道を変えて広めな通りを目指すが、途中にコンビニが無い。

買い物はその先までお預けにして、眠気覚ましの音楽を用意する。


車の量は流石に少ないが、相変わらずタクシーの独壇場の時間なのだろう、跳ばすタクシーもあれば慎重に運転する個人タクシーのドライバーもいる。

結構な、年配層なタクシードライバーが詰所でタバコを吸いながら同僚ドライバーと会話しているのを横目に、一応法定内速度で先へ進む。


音楽の選曲が面倒だから、MP3プレーヤーはいつもランダムに。

時として気に入らなければ先へ頭出しすれば良い、数日前は頭出しし続けて結局勤務地へ到着したのを頭が過ぎるがこれもまた自身の運試しと、くだらない事で喜びを得ようとする貧乏な性格が出てしまう。とりあえず手持ちの缶コーヒーを飲みながら落ち着いて運転する事に専念する、道中は未だこの先長いのだから。長い時間を車中で過ごしているといろんな事を思う。


音楽を聴きながら、これくらいなら自分で作曲できるじゃん!とか、いい気になっていると猫が傍から飛び出してきて急ブレーキ、其処で一気に目を覚ますとそろそろコンビニが見えてくる、今朝のはじめての休憩と買い物に寄る。


途中でガソリンスタンドも寄らなければならないからATMで先にお金を下ろす。この時間、土曜日ぐらいだとお客が全く居ない。レジには店員の姿は見えない、息抜きの時間でもあるのかな?お金を下ろし終えると通勤の時の様に、エッグサンドと予備に缶コーヒー、頭痛薬用のミネラルウォーターを買い揃える。何時間勤務なんだろう?と店員の色白い顔を気にしながら店を出る、捨ててない車中にある空き缶やら弁当のゴミとかもついでに捨てさせてもらった。


買い物も終え進むべき道へ軌道を戻すと、ふと頭の中に光景が浮かんだ。


聖書を左手に持ち、右手は肘を曲げ人差し指を天に向け‥

「汝よ、迷える汝は光の基へと還るのだのだ!自ら光と成り得るために‥その道を進むがいいー‥」と。


天の声にしては大雑把でまるで唄の歌詞の様なセリフだな?と思うと、流れてきた曲が聖書を基に作られた激しめのロックだった。朝から思想や宗教や哲学なんて、どこぞのラジオやテレビの説法みたいな時間を作るのも、自分が好んで聴いてる音楽なんだなと、変わり映えしない自身に首を横に小刻みに振りながら選曲を頭出しする。


これからの道中は、朝日に似合うのにしようかな?とカントリーミュージックを選ぶ、ウェスタンだのブルーグラスだの、日本人はやたらとカテゴライズするから独学で音楽を聴き学びしているこちらの身にもなってみろよー評論人たち!とブツブツ言いながらカテゴリー探しに落ち着いた。


「さぁ、この道の信号あと二つで海岸通りへ出るぞ!空気も潮っ気が出てきたなー‥」

少し空気も変わって、ウィンドウを開け潮風を感じながらハンドルを握る手にも力が入ってきた、左手の真っ暗で見えない海岸の波打ちの白い部分だけ確認して気を紛らわす、殆ど直線の高低差の上下が続く道をひたすら走ってみる事にした。海沿いは信号も少ないからトラックの姿が目立つ。


他力本願だけど、トラックの後に走ると楽チンだなーと気を抜いてアクセルを踏む、やがて市町村境のトンネルに差し掛かろうとしていた‥。



( つづく )





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