天使というよりエンジェル
第2話
部屋で待っていると電話が掛かってきた。
「時間です。2棟の202号室へ向かってください。」
と西村さん。西村さんというのは、現在42歳で裏方で働いている。そしていつも電話を掛けてくれる。
「分かりました。」
いつもの様にそれだけを言い電話をきる。現在の私の部屋は1棟の一番端、310号室だ。2棟に行く時間も含めて、西村さんは電話を掛けてくれる。さすがだ。
廊下を歩いていると早苗ちゃんに会った。早苗ちゃんは現在12歳。11歳で「ここ」に入った。前回、総理の息子の相手をしたのは早苗ちゃん。初めての仕事でこんな大役をもらったのは、やはり可愛いからなのだろうか。
「これから息子さんのお仕事に行くんですか?」
「うん、そうだよ。」
みんな初めての仕事は泣いて始まる。なのに早苗ちゃんはそんなことは無かった。きっと「慣れている」のだろう。同情というわけにはいかないが、早苗ちゃんの事はなにかと気をかけている。
「それなら安心してください!きっとあの方は何もしませんよ。」と微笑んだ後、「それでは。」と会釈をして帰ってしまった。
それからしばらく歩いて部屋に着いた。いつもの様に深呼吸をしてからノックする。
「入ってもよろしいですか?」
「はい。入ってください。」と柔らかく優しい声が返ってきた。
ドアを開くとベッドにすわっている人が居た。
「よろしくお願いします。」
その男性はとても優しい雰囲気で微笑んでいる。
今まで見た人の中できっと1番美しい。