表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

星見台団地501号室は 地球観光局

作者: 合沢 時

 始めに言っておきますが、星見台団地501号室に住んでいる星見さん家族は宇宙人です。

 

 6年前から地球観光局のお仕事で、地球から遠く離れたM16星から家族で来られています。

 

 地球観光局でのお仕事は、様々な星から訪れられる観光客のお世話です。

 

 僕も星見さん家族にお世話になっている宇宙人です。

 

 宇宙船(地球人は空飛ぶ円盤と呼んでますが)でやって来られた観光客のみなさんは、空から地球の風景を楽しまれることが多いのですが、ときどき地上に降り立って観光をしたいという人たちがいます。

 そんな人たちのために、地球各国に地球観光局があるわけです。

 

 地球観光局には空間移動装置があって、観光客の人たちを宇宙船から一瞬で、地球観光局がある部屋に移動させることができます。

 

 地球観光局では、観光に来られた宇宙の人が地球の人から宇宙人だと気付かれないようにするために、変装をほどこしてくれます。

 大抵の宇宙の人は地球の人の体型に近いですから、背が高い大人の地球の人や小さい子どもの地球の人に変装できます。そして変装した姿で、地球の観光を楽しまれるのです。

 でも僕みたいに背が小さい場合は、地球の動物の姿に変装し、星見さんに外に連れて行ってもらうことになります。

 

 僕が変装したのはハムスターという動物でした。1ヶ月前に初めて観光した時は、星見さんのジャケットの胸ポケットに入って、そこから顔を出して、奈良のお寺などを見て回りました。

 

 そんな時、胸ポケットから顔を出している僕に気付いて、「きゃあ、かわいい」と声をあげる地球の子どものグループに何回もあいました。

 でも僕は「きゃあ、かわいい」と言われるたびに、なぜかさみしい気持ちになりました。

 

 地球の子どもたちが「かわいい」と思っているのは、ハムスターという動物に変装した僕だからです。僕の本当の姿を見ても、地球の子どもたちは「かわいい」と思ってくれるのでしょうか。僕が「かわいい」と言われている時、ふと星見さんを見上げると、星見さんも何だか悲しそうな顔をしていたのを思い出します。

 

 僕たち観光客は、色々な星を訪れる時、必ずその星の歴史を学びます。それは観光する場所を選ぶためでもありますが、もう一つの理由は、その星に対する礼儀です。よく知りもしないでその星のことを見下したり、非難することは、その星で生きてきた人たちや生物に対して失礼だからです。

 

 僕たち宇宙連邦に入っている星に住む宇宙人は、そんな地球の人のことを三千年以上も前から知っています。

 しかし、地球の歴史を学ぶと悲しくなります。肌の色や信じるものが違うことで、地球の人どうしが対立したりしてきたからです。そして、それが今も続いているからです。

 

 いつになったら、地球の人は自分たちの心のまちがいに気が付いてくれるのでしょうか?

 

 でも、今、僕のメッセージを受け取っているあなたたち地球の人は、そのまちがいに気が付いている人たちですよね? でなければ、僕の心の声が聞こえるはずがありませんからね。

 

 

 ちょっと暗い話になってしまいましたね。最後に、僕が昨日見たことを話します。

 

 昨日も僕は、星見さんの胸ポケットに入って京都のお寺を観光していました。

 

 僕たちが電車という地球の乗り物に乗っていた時です。

 

 ある場所から一人の女の人が乗ってきました。僕と星見さんは、すぐにその女の人のお腹の中に赤ちゃんがいることに気が付きました。


 その女の人のお腹は少しだけ膨らんでいるだけなので、他の地球の人は誰もその女の人のお腹に赤ちゃんがいるとは気が付かなかったようでした。


 一人だけ、その女の人の近くに座っていた黒い肌の小さい女の子が気付きました。


 その女の子は、外国から家族で観光に来ていたようでした。お父さん、お母さんの横にちょこんと座っていました。

 

 その子が、顔を赤くしながら立ち上がり、「プリーズ」と、その女の人に言いました。

 

 女の人は席をゆずってもらったことに、一瞬おどろいたようでしたが、すぐにニコッと微笑んで「ありがとう」と言って座りました。

 

 お母さんから席をゆずった理由を尋ねられた女の子は、お母さんの耳元で、自分が席をゆずった理由をささやいたようでした。

 

 お母さんが、ニコッと笑って、女の子の頭をなでました。

 

 それを見て、僕も星見さんも顔を見合わせてニコッと微笑みました。

                    

               おしまい


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ