僕と始めての感情
僕の始めての小説となります。
文章的に拙いところたくさんあると思いますがよろしくお願い致します!
僕が初めて生き物を自らの手で殺めたのは、小学4年生の頃だった。その頃の父は会社をクビになり、母と僕は毎日怒鳴り付けられ、殴られることが日常となっていた。
そのため、僕は家に帰るのが嫌で嫌で仕方なく、帰宅を遅くするための言い訳として、皆がやりたがらない飼育係に立候補し、飼育係となった。
飼育する生き物はどれも平凡な生き物だった、亀、金魚、ウサギ、どれもこれも小学校低学年の頃から見慣れ、飼育係になったものの、何の新鮮味もなく、つまらないものであった。
しかし、亀の亀吉はとても好きであった、僕は給食を食べるのが遅く、体も同級生に比べると小さかったのもあり、苛めっ子グループに目をつけられてしまい、
「ノロマ!」
「ちび!」
と苛められていた。その為、ノロマで生徒の誰からも好かれていない亀吉に親近感を湧き、放課後はいつも亀吉の所に行き、学校で唯一の話し相手になってもらっていた。
しかしある日、いつものように亀吉に喋りかけていると、苛めっ子グループが僕のところに来た、急いで喋ることをやめ、その場をやり過ごそうとしたが手遅れだった。
「うわー!コイツ亀と喋ってやがる!」
「きもちわるぅー!」
「ノロマ同士で楽しくお喋りでちゅかぁー?」
と亀吉を乱暴につかんだ。
「なんだこいつ?足が一本ないぞ?、、きもちわる!」
僕は、唯一の友達をバカにされカッとして
「亀吉は病気で生まれつき足が無いだけだよ!僕の友達の悪口を言うな!」
と、叫んだと同時に、亀吉は自分に向けられる悪意と僕の叫び声に反応したのか、苛められっ子の親指を噛んだ。
「いてぇーーーっ!」
苛めっ子は絶叫し、そのまま亀吉を教室の床に思いきり叩き付けた。
「バシン!」
その瞬間、
「グシャッッ。。」
と、まるで卵を落としたような音がし、床にジワリと、赤い血がにじんだ。
「こ、これって、ヤバイんじゃねぇか?、、」
「お、おぃっ、逃げるぞ!」
そう言い、苛めっ子たちは蜘蛛の子を散らすように去っていった。
目の前でピクピクと動き、苦しそうに口をパクパクさせ、涙のようなものが滲んだ目で僕を見つめる亀吉と僕。
僕はなぜか悲しみよりも、生き物の死を目の当たりにし、激しく興奮した。息は上がり、心臓は胸を突き破り飛び出してきそうなほど鼓動し、身体中が熱くなった。
そして、僕は中を見てたい、と言う衝動を押さえきれず、亀吉のひび割れた甲羅を無理矢理にこじ開けた。
「ビリビリビリ…」
皮と肉が裂ける音と共に、真っ赤な血の中に、艶やかに光る内臓が見えた。その中でも特に、トクトクと脈を打ち、艶やかに、まるで図鑑で見たルビーのように赤く光りかがやく、それが、目に留まった。。
「きれいだ。。。」
僕にとっては初めての感情だった、花を見ても、宝石を見ても何も感じなかった僕が、初めて抱いた感情であった。ずっと見続けていたい。そう強く思い見ていたが、何時しか血は赤黒く変色し、乾いて輝きを失い、それは動かなくなりただのゴミと化した。
「つまらない。。」
そう呟き、僕はそれを、乱雑にゴミ箱に投げ捨て、床の血を拭き取ることもせず、興奮収まりきらぬままに帰宅した。
次の日、学校では、教室に散乱した血、ゴミ箱に捨てられたバラバラになった亀が、思っていたよりも大事になり、誰もが犯人探しに躍起になっていた、
「あいつが犯人だ!いっつも放課後残って亀のところでごそごそしていたもん!」
そう叫んだのは、亀吉を床に叩き付けた苛めっ子だった。
「違う!僕じゃない!あいつがやったんだ!」
そう僕も叫びたかった。しかし口が上手く開かない、口の中が乾き舌が上手く動かない。腹の底と手足の先が冷たくなり吐き気がした。頑張って喋ろうとするものの、
「あ、ぅ、、」
ただ僕は口をパクパクさせる事しかできなかった。
「ほら!あいつがやったんだよ!否定しないじゃん!亀殺し!」
また、アイツが僕を指差してそう叫んだ、すると、初めは1人が叫んでいたものが、まるで波紋を呼ぶように、
「亀殺し!」
「ひどい!なんでそんなことしたの!」
「アクマー!」
などと口々に叫び、皆が僕を責め立てた。
僕は青ざめた顔で吐き気を押さえながらトイレに走り、胃の中のものをすべて吐き出した。しかし吐き気は止まるどころか増し、いつのまにか手足は震え、冷たい汗が肌を滲ませ、頬を伝った。
「・く、・・わ・・くなぃ。。僕は、わるくないっ。。僕は、悪くない。僕は悪くないんだ。。全部全部アイツがやったんだ。。」
便器を抱え込むような体勢で、僕はブツブツと自分に言い聞かせる、しかし心の奥で何かがそれを、否定する。
僕は頭のなかで何かが抜け落ちるような感覚を抱き、目の前が真っ暗になった。
母の泣き声に目が覚めると、
「お前の育て方が悪いからこうなったんだろうがぁー!」
と怒鳴り散らしながら、父が母を殴打していた。まるでボロ雑巾のようになってしまった母は、グッタリと蹲っている。気がつくと口の中が血の味がする。体には所々ズクズクと針でゆっくりと刺されているような鈍痛が響く、どうやら僕も殴られているようだ、しかし、何故か頭は冴えていた。
「オ母サンガ、コノママダト、死ンジャウ、助ケナキャ。。。」
いつのまにか僕は、台所にある果物ナイフを持ち、勢いよく、父の横腹を突き刺した。
「ズブブブ、、、」
ゆっくりと、父の横腹にナイフが、柔らかい肉を、腱を、内臓を切り裂きながら刺さっていった、そして少し、ほんの少しの間を置いて、
「ブシュッ、ブシュシュシュッ、、」
と、ミカンを潰したような音と共に、燃えるように赤い液体が父の横腹から吹き出した、
「ぁあ、きれいだなぁ。。」
そう思った刹那、父は僕を思いきり殴り、僕は机の角に頭を打ち付けた。
父は、驚いた顔で自分から流れ出る血をまじまじと、見開いた目で見て、驚きと、苦しみ、痛み、死への恐怖、そのすべてが織り混ざったような、とても滑稽な生き物になっていた。僕は耐えきれずクスリと笑った、そしてその滑稽で愉快な生き物を眺めつつ、僕は意識がなくなった。。
目を覚ますと、僕は病院にいた、近くを見回すと母が泣き崩れるような格好で、僕のベッドに寄りかかって寝ていた。
「お母さん?どうしたの?なんでここに?」
と母を揺すりながら起こすと、
「おきたの!?よかったわ。。本当に。。よかったぁ。。。」
母はボロボロと大粒の涙をとめどなく流し、状況を掴めず混乱している僕を強く強く、抱き締めた。
母が落ち着き話を聞いてみると、僕は打ち所が悪かったらしく、あの後、1年間気を失っていたそうだ。父は死んだものの、警察には正当防衛として受理されたそうだ。しかし学校での事、家庭での事が折り重なり、噂になることを避け、引っ越したのだと聞かされた。
何が何やら分からないままに僕は、その日の内に退院した。
しかし、1年たった今でも、父を刺した瞬間と感触、吹き出した美しい血の色、思わず笑ってしまうような表情は、脳裏に焼き付いたまま離れなかった。
「また、あの美しいものを、あの表情を見たい。。。」
僕はふと、息を吐くようにそう思ってしまった。。
〔僕の始めての感情〕完
読んでくれてありがとうございます!
よろしければ。次に繋げるためアドバイス、感想等ガンガンよろしくお願いします!