49 探偵の真似事
「眠い……。張り込みってこんなにきついのか?」
夜、ファーレンの街の一角を歩きながら殺人鬼を待つ。
そう、捜しているではなく、待っている。
要は自分を囮にしているのだ。
探偵の真似事をすると――半ばどころか完全に強制されて――決意すると、ファレリルは相手がこの近辺に現れるはずだと教えてくれた。
彼女は彼女で独自に調べてはいたそう。
それなら自分で捕まえに行けよと言ったものの、「忙しいから」とあっさり返された。
ったく、俺だって忙しいんだけどな……あいつやニーナに押し付けられる雑用で。
俺とは別に用務員さんがちゃんといるのに、何で俺に植物園の水やりとか武器の整備とか頼むかね?
まぁ、おかげでいろんな植物の判別や武器の整備の方法を一通り用務員さんに教えてもらえたし、用務員さんとも仲良くなれたけれども。
……教えてもらう度に可哀想な人を見る目を向けられるからかなり辛かった。
いやいや、きっと俺が冒険者に戻ったときのことを考えてそうしてくれているのかもしれない。
うん、そう思おう。
さて、内心でグチグチで考えながらも俺は気配察知を発動させている一方で隠密は完全に無効にしてある。
おかげでこちらをチラチラと見る人の多いこと多いこと。特に獣人が多い。眩しそうな顔を向けてくる奴等はルナと同じか、似たような魔眼を持っているのだろう。
割と恥ずかしい。
しかし捜査のノウハウなんざ知らない俺には他に取れる手段がないので我慢。
にしても小腹が空いてきた。
「あんぱん、どっかに売ってないかな。」
蕎麦がきにあんこが乗っけてあったし、パンだって存在している。きっとどこかにあるだろう。
だがしかし、俺の今いるところはファーレン島民の居住区。そしておばちゃんが駄菓子を売っている様子もない。
……そういえば駄菓子ってこの世界にあるのだろうか?
最近アリシアが高いクッキーばっかり食べてるってネルも漏らしていたし、今後のためにもできれば駄菓子を紹介したい。
……そろそろ通りを歩く通行人の数も少なくなってきた。
もしかして俺が隠密無しで歩いて回っているから逆に逃げたとかじゃないよな?
太陽は完全に沈んだものの、俺の視界に支障はあまりない。
というのも、家々から魔術による光の明かりが漏れ、通りがその白い光にかなりの割合で照らされているのだ。
おかげでかなり歩きやすい。
『真後ろ、六時の方向!』
やっと来たか!
後ろを確認などはせず、振り向きざまに黒龍を薙ぐ。
キンッと金属音が響く。
すぐに飛びずさった相手見れば、そいつは予想通り、真っ黒なロングコートを羽織っていた。
爺さんには前もって俺のいるこの区画にいる、俺と似たような格好をした奴をマークしておくように頼んでおいたのだ。
上からの視点って大切なんだなと心から思える。
「チッ、やはり気付いていましたか。」
聞こえてきたのは、覚えのあるくぐもった声。
「お前、まさかこの前の!?確か死んだはずじゃ……。」
薬を飲んで自殺した暗殺者の物だ。
「仮死状態という言葉を知っていますか?見た目に騙されて止めを刺さなかったのが運の尽きですよ。」
そんな薬があったのかよ!?
「逃げておけば良いものを。」
「くく、そうでもありません。出てきなさい!」
相手が片手を上げると、どこからともなく黒いローブに身を包んだ三人が夜道に現れた。
「やれ。」
そして短い命令に従うように、彼らは無言でこちらへ駆け出す。
「お前は戦わないのか?」
しかし命令を下した本人はその場に留まったまま。
「死を恐れない兵とはどうあがいても連携なんて取れません。」
「お前は違うってのか?」
「ヒャッハー!」
聞き返したところで、相手の手下の一人が奇声を上げて片手剣を振るってきた。
しかし、遅い。
一歩踏み込み、剣の持ち手を握ってひねり、握力を緩ませたところでその武器を奪い取る。
「へ?」
そしてアホ面をさらした彼をすかさず突き飛ばし、後続二人の障害物とした。
そいつを飛び越えながら、二人目の黒ずくめは懐から取り出した鎖を振り回し、その先端の錘を飛ばしてきた。
それを奪った片手剣で弾いてやるも、鎖は剣に幾重にも巻き付き、その動きを封じてしまう。
鎖を引っ張り、俺の動きを止めながら、二人目はもう片方の手に持った鎌で斬りかかってきた。
鎖鎌って奴か?また珍しい武器を。
片手剣から手を放し、身をそらす。
チリッと頬に熱が走る。
しかし皮を薄く切られただけ。問題はない。
さらに大きく仰け反りながら鳩尾を蹴り上げることで相手を怯ませ、肩からナイフを取り出しざまに投擲。
刃は眉間に突き立った。
「オラァ!」
そうしてできた死体を、邪魔だとばかりに払いのけた三人目は、既に斧を振り上げていた。
対する俺は足を振り上げたまま。
咄嗟に背後へ跳んで振り下ろされた斧を避けるも、バランスが崩れ、なすすべもなく地面に倒れる。
「カハッ!?」
背中を強打。肺から空気が押し出された。
「死ねぇっ!」
再び、大上段から迫る斧。
素早くワイヤーで鎖鎌を手に入れ、鎖を両手で引っ張り、斧と体の間にピンと張る。
そこへ黒色魔素を通すことも忘れない。
直後、斧特有の重撃が細い鎖で受け止められた。
目の前でギチギチと鎖が鳴る。
心もとないことこの上ないなチクショウ。
「ヒャッハー!隙ありぃ!」
と、三人目の顔から剣が生え、俺へと迫ってきた。
「くぉっ!?」
顔にかかる生暖かい液体は無視。
覆い被さる死体を横へ蹴飛ばしながら鎖を握る両手を上に振り上げれば、剣はそれに引っ掛かって俺の右肩を掠めるに終わった。
すぐに左へ転がる。
……なるほど、確かにこんな奴らと連携は取りたくないな。にしても、まさか顔から剣が生えて来るのを人生で二回も見ることになるとは。
人生、何が起こるか分からんな。
起き上がりざまに鎖を片手に振り回し、鎌ごと投げつける。
剣を持った黒ずくめは横に跳んでそれをかわし、その隙に俺は距離を詰め終えた。
「ハァッ!」
焦りと共に繰り出される突き。
それを紙一重で避けながら相手の顔に肘を食らわせ、晒された喉笛にナイフを突きたてる。
するとそこから勢いよく血が吹き出、右手の手袋が二の腕の半ばまで真っ赤に染まった。
と、目の端が鋼色のナイフを捉えた。
刃を突き立てたまま黒ずくめの体を動かし、即席の盾とする。
「疾駆!」
と、ナイフの飛んできた方向から声が上がった。
あの暗殺者だ。
スキルにより高速で接近したそいつが放ったのは、右の短剣による刺突。
対して左に跳んで回避すると、相手の顔がこちらに向けられた。
口をすぼめている。
吹き矢!
「鉄塊!」
「フッ!」
技の発動はギリギリ間に合い、吹き矢は俺の鼻っ柱で弾かれた。
「チッ!」
相手の舌打ち。
直後、伸びきったその右腕によってできた死角から投げナイフが襲ってきた。
「くっ!?」
身を捻ってそれを躱し、相手の脇腹を左足で蹴って後ろに後退。短剣の間合いから抜け出る。
「今のを避けますか。」
蹴り押され、数歩後退りした相手は再び一直線に飛び込んできた。
黒龍を握って立て、その腹を突き出される短剣の先に合わせ、相手の勢いに逆らわず後退。
そして短剣の勢いが失われるやいなや相手の手首を左手で掴んで斜め上へ強く振り上げ、ついでに捻る事でそこに握られた短剣を落とさせた。
カラン、と乾いた音が響く。
「観念しろ!」
「くっ、分かりました……。」
そしてそう勧告すると、相手は観念したように俯いた。
しかしその左手がいつの間にやら別の短剣を取り出したのを俺の目は見逃さない。
俺の脇の下へ素早く振り上げられるそれを黒龍の柄で叩き落とし、握った手を強く引いて頭突きを食らわせる。
「ぐぁっ!?」
「嘘はいかんな。」
『どの口が言っておる。』
……。
後ろによろめく暗殺者。
その手をもう一度引き、俺は相手の腹にさらに右膝を叩き込んだ。
「カハッ!」
そして、俺の手の中でそいつはぐったりとして動かなくなった。
「ふぅ、終わったか。……いつっ!」
油断するのはまだ早かった模様。
気を抜いた瞬間、気絶したフリをやめた暗殺者が動き出し、咄嗟に離れたものの、右足を浅く切られてしまった。
このやろ、まだまだ元気だったか!
「ふふ、私の勝ちですね。」
「不意打ち一発で調子に、乗るな!」
言うと同時にナイフを投じる。しかしそれは明後日の方向へ飛んでいった。
何だ?
「くく、残念でしたね。」
相手が動いた様子はない。何が起きてる?
「私の方からあなたへの飛び道具は効くでしょうか?試してみましょう。」
暗殺者はクロスボウを懐から取り出しながら言った。
「ふん、叩き落としてやる。」
鼻で笑い、駆け出すも、すぐに違和感を覚えた。
おかしい、やけに体が重い。動きも鈍い。俺の意識と体で違う時間が流れているみたいだ。
決して俺の意識の方が速くなっている訳ではないことは、相手が通常通り動いていることから分かる。
「何が起こったのか戸惑っていますね。そうですね、ヒントをあげましょう。貴方のその右足を刺したのは、『暗殺者』の短剣ですよ。」
暗殺者、の?……………………!
「毒、か。」
「お、頭の回転はまだ早いですね?その通り、強力な麻痺毒です。まぁ、分かったところで何も変わりませんけど。……死ね。」
ヒュッと矢が放たれる。
「くっ、鉄塊。」
鉄塊を発動、全力で回避に専念。
多少は皮膚の硬度が上がっても完全に防げるのは吹き矢程度以上の威力まで。
それでも、無いよりはましだ。
チリッと痛みが走り、俺の頬は薄く切られただけですんだ。魔力には体と違って支障があまり無いらしい。
良かった。
「ふぅ……。」
「はは、言っておきますけど、それも『暗殺者の武器』ですよ。」
気づけば俺の動きがさらに遅くなっている。不味い!
「では私は油断無くいくとしましょう。」
皮肉に言って低く構え、相手は猫のようにしなやかな動きで襲ってきた。さっきまでとは一線を画したその動きに、今までがただの前座だったと分かる。
「ここまで、全部、予定、通り、か?」
いかん、声までとぎれとぎれになりだしてる。
「そんなことはありません、あの頭突きとそらに続いた蹴りは、かなり効きました、よ!」
それ以外はおおよそ予想通りってことかよ!
首へ迫る短剣を弾く。
舌打ちしようにも口が痺れて上手くできない。
そして、宣言通り油断なく、高速の連撃を繰り出される。
その狙いは首や手足の腱と効率的なところばかり。
したがって致命的な一撃のみに対処して後は無視して攻撃しようと思っていた俺は、結局全てを捌かなければいけなくなった。
幸い、狙いは分かっているから今のところ何とか防げてはいる。
「あの麻痺毒でまだここまで動けますか。称賛に値しますよ。まぁ、このまま行けば毒が回って確実に死にますけどね。」
激しく切り結びながらも相手は余裕の笑みを浮かべている。
くそっ、時間が欲しい。
「らぁっ!」
両手の中華刀を水平に大振りするも、暗殺者は即座にしゃがみ、危なげなく回避した。
「これで終わりです。」
しゃがんだ体勢から飛び上がり、真下から真上、垂直方向に短剣が振り上げられる。
ワイヤーを後ろに飛ばし、重い腕で無理矢理引き、後ろに少しだけ後退した俺の体は、薄皮一枚切り裂かれた。
何とか致命傷は……しまっ……!
両足で着地するも体を支えきれず、ガクッと地に膝を付いてしまい、武器は手から転がり落ちた。
「ふふ、流石にもう動けませんね。」
地面の方向に固定された視界の端で暗殺者が歩いてくるのが視界の端に見えた。
「うる、さい。」
そのまま地面に向かって言う。
「まだ声を出せるますか。はぁ……、いい加減死んでください。」
相手が目の前に来るなり、魔力でコートを強く引っ張り、横へ飛び込ませる。
俺の体はそのまま地面を転がり、仰向けになって止まった。
目の端で、俺のさっきまでいた場所に逆手に持たれた短剣が刺さっているのが見える。
「あそこから逃げた?チッ、まぁ、最後の悪あがきというところですか?」
コツコツと再び足音が聞こえる。
体は動かない。それでも魔力はまだ使える。
なら!
「そうでも、ない、ぞ。マジック、マリオ、ネット。」
黒色魔素を集めながら、魔法を発動。魔装2と俺の体の間の少しの余裕が無くなり、体にピタリと貼り付いた。
「っ!?させない!」
異変を感じた暗殺者が駆け出す。しかしもう遅い。
仰向けのまま、近くの壁にワイヤーを伸ばし、右手で引っ張って暗殺者からさらに距離を取る。
そして俺の下半身全体が完全に黒い魔素に覆われた。
「まだ動け……!?」
「言った、ろ?手札、の数が、重要だって。これも、その、内の、一つ、だ。」
言いながら、両の足で立つ。
「ありえない。」
「さて、次、は、俺から、の質問、だ。」
「何を!?」
「油断は、しないん、じゃあ、なあったの、か?」
思いっきり力を入れて俺はなんとか微笑を浮かべる。
魔力により、体を無理矢理動かしてはいるものの、麻痺毒は決して抜けてはいない。
戦えはするものの、劣勢は変わらないのだ。
「疾駆。」
相手が駆け出し、距離が消える。
黒龍と陰龍を作り出し、両手の手袋でそれぞれの柄を握りしめた。
スキル特有の蒼白い光芒は発されない。魔力による身体行使ではスキルは扱えないらしい。
それでもマジックマリオネットは防御力では負ける分、魔装1よりも指などの細かな動きがしやすい。
思い出すのは弟子時代。師匠達がスキルのまだ使えない俺に大人気なく全力をぶつけてきていた頃。
「倍速。」
「ぐっ!」
と、俺の間合いに入る直前、相手のスピードが跳ね上がり、俺は防御に徹する他なくなる。
ガン、と武器どうしがぶつかったかと思うとそいつは即座に距離を取り、改めて突撃を開始。
それを弾けばまた逃げて、相手は別方向から再度迫る。
……ヒットアンドアウェイか、厄介な。
しかも要所々々で速さを変化させていて動きも不規則だから捉えにくいったらありゃしない。
このままでは今現在も毒の影響が強くなっている俺が負ける。
麻痺毒は最終的に対象を気絶させるものらしく、さっきから少し目眩がし始めた。
しばらくの間、不規則な剣戟の音が辺りに響き、俺は賭けに出た。
暗殺者がもう何度目か分からない突撃をしかけて来る。
「うああえぇ!」
もうまともに喋ることはできない。
しかし魔法は基本的にイメージだ。
魔法名なんて集中しやすくするための補助でしかない。
「三倍速。」
ぐんっと相手は一気に距離を縮めてくる。
いつもなら避けるやり防ぐなりするところ、俺は突き出された短剣の進行方向に右手をだしてその一撃を遮った。
ギャリィッと鈍い音が鳴る。
通常の何倍もの速さで突き出された短剣は、俺の手袋の装甲を容易く破り、しかし黒く染まった手の平にその切っ先を数ミリ刺し込んで止まった。
そのまま短剣を掴む。
そして短剣が急に止まれば、当然その使用者の動きも止まる。
「しまっ……ガッ!」
捕獲なんてことは考えない。俺はすかさず踏み込み、陰龍で敵の腹を真横に薙いだ。
くそっ、浅い!
土壇場で相手が後ろへ飛んで後退したため、行動不能には至らない。
「うぐっ、ゴホッゴホッ、ゴボッ!」
しかしそれでもかなりの痛手にはなったか、暗殺者は着地した瞬間苦しそうに咳き込んだ。
その切り裂かれた腹部からはおびただしい量の血が流れ、俺と揃いのコートはぐっしょりと濡れている。
よく見ると口元の布も赤黒い。
出血多量のせいか、立っているのでさえおぼつかないよう。しかし、だとしても、回復魔法のあるこの世界ではたとえ致命傷でも致命傷になり得ない。
確実に、殺さないと。
黒龍を逆手に持ち、暗殺者の方へ踏み出したとき、横から強い光に照らされた。
「誰だ!」
見れば、甲冑を着た兵士達がいた。光はそれぞれが持っている懐中電灯のような魔道具から発されている。
彼らの腕には白色の腕章。
警備騎士団だ。
「怪しい奴め。巷を騒がせてる龍人とやらか?総員、突撃!」
即決かい!
「「「「おう!」」」」
隊長らしき人が周りの騎士達を俺に向かってきた。
待て待て待て待て待て!
「あえあえあえあえぇ」
うまく動かない口を、涎を垂らしながらも必死で喋ろうと動かす。
確かに俺は片手に血の滴る剣を持っているし、体も血だらけだが少なくとも体の血は返り血じゃない!
決して怪しくなんか……無理か。
「くっ、錯乱しているのか?総員気を付けろ!敵は正気を失っている!」
「「「「了解!」」」」
違わい!
チクショウめ、こうなったら逃げるしかない。
せめて暗殺者だけにでも止めを刺そうと思ってそちらを見るも、暗殺者は忽然と姿を消していた。
くそったれ!
「ハァッ!」
騎士の一人が剣を片手に突っ込んできた。
ま、暗殺者がいなくなったのなら仕方がない。
その騎士の一撃を後ろに飛んでかわし、魔法を使う。
「うあぁういぅおぉ!」
「総員、警戒!」
叫ぶと同時に隊長が全員を下がらせた。
好都合。
俺の両手から視界を塞ぐ真っ黒な霧が噴出され、夜闇を照らしていた家々の明かりや騎士達の明かりの光をも遮る。
「くしまった!」
「どこだ!どこにいる!」
「逃すなよ、敵はまだそこにいるはずだ!」
よし、ちゃんと視界は奪えたようだ。
胸元からメダルを取り出し、俺はコロシアムへ転移した。
コロシアムに着くと、目の前で不機嫌顔のユイが待っていた。
「まったく、やっと来たわね。……え?」
ああ、忘れてた。ユイと魂片の分離する魔法陣も作らなきゃないけない。
この体でなんとかできるか?
爺さん、どうだ?
『流石に無理じゃろう。普段の集中力でやっと作っておるものを。』
ここで何もしなかったら今までの努力が水の泡になってしまう。やるしかないだろ?
『はぁ、仕方がないのう。現状維持用の簡易魔法陣で何とか凌ぐとするかの。魂片を取り出せるまでの時間が少し延びることになってしまうがそれで良いか?』
ああ、頼む。
もう夜になってしばらく経っている。時間が惜しい。
俺はその場に座り、魔法陣の作成を始めた。