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 転職勇者   作者: まずは深呼吸
第三章:不穏な職場
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44 合宿三日目

 早くも合宿最終日。

 昨日、カイトの班が班員だけでは食べきれない量の食糧を取ったため、それを利用した料理を学生主動で作ることとなった。

 勿論その食糧というのはあの熊のこと。ちなみにホーンベアという魔物らしい。

 にしても昨日のあの戦闘は見ていて面白かったな。あれが召喚魔術かぁ。

 『うむ。神の力を思いしったかの?そろそろわしに敬意を払っても良いのじゃぞ?ん?どうじゃ?ん?』

 あれが召喚魔術かぁ。

 『サラッと流すでないわ!』

 あれが召喚魔術かぁ。

 『……ああ、そうじゃ。』

 あれには何かリスクとかはあるのか?寿命が縮むとか腹が減るとか。

 『後者は……まぁ良い、リスクならないの。何故じゃ?』

 いや、勇者の切り札っていう聖剣が結構な負担を勇者に強いるだろ?もし召喚魔術を使うことに大きな負担がかかるんなら俺のあの静観という判断は間違いになるからな。今後のために聞いておきたかったんだよ。ないと聞いて安心した。

 ……考えてみたら恐ろしい事実でもあるけどな。気軽に神様を呼べるなんて。

 それで、カリプソは腕の神様なのか?

 『アホかお主は』

 まぁ、だよな。

 『カリプソは海の女神じゃ。言ったじゃろう?上位の神も暇潰し程度の意識で協力しているのかもしれんと。あれは友人に頼まれたからうるさいハエを叩いたような感じじゃの。』

 でかい蝿だ。

 それでも過剰な攻撃だったよな?

 『うむ。あれはカイトが焦りすぎたんじゃな。』

 御愁傷様です、熊さん。

 名も知らぬ哺乳類の冥福を祈っていると、アリシアとクラレスが添うように歩いてきた。その後ろを、苦笑いをしながらネルが付いてきている。

 「クラレスさん、大丈夫ですよ。こ、恐い化け物なんて、ただの、お伽噺ですから。」

 「アハハ、アリシアも怖かったんだね。」

 「怖がっていません!」

 震えるアリシアが震えるクラレスの背中を擦っていた。

 「……いた。見た。ひっ!」

 案の定、あまり効果は出ていないよう。

 どうも昨日の俺の鎧姿、というかその足元はクラレスにトラウマに似た影響を与えたらしい。

 申し訳ないったらない。ただ、種明かしは流石にしてやれない。

 「クラレスって案外怖がりだね。」

 と、俺の隣に座ったネルがクックッと笑うけれども、

 「くはは、お前も結構怖がってただろうが。」

 こいつは人の事を言える立場にはいない。

 一部始終見てたんだぞ?

 「ボ、ボクは何も怖がってなかったよ?」

 白々しい。

 「『み、み、みんにゃ、ひゃ、ひゃやく!』」

 「へあ!?わ、わぁー!わぁーっ!」」

 高い声で昨日のネルの怖がり様を再現してやると、ネルは俺の口を塞きで大声を上げた。

 「み、見てたの?」

 目の前の整った顔がみるみるうちに羞恥で赤くなっていく。

 そんな彼女に頷いて、俺の口を塞ぐ手を下にずらす。

 「フッ、何を隠そう、私が仕掛人だ。」

 そして、ちょっと格好をつけた低い声を使ってそう伝えてやった。

 「こ、こんの……ばかぁーっ!」

 耐え切れなくなって叫び、ネルは真っ赤な顔を手で覆ったまま一目散に逃げていく。

 「あれ?ネルさん、どうかしたんですか?」

 「コテツ先生は化け物信じる?」

 大きな声を出すもんだからアリシアとクラレスも気になったらしい。

 流石にネルの再現をしてみせたらあいつが可哀想だ。

 ……アリシアの真似にしよう。

 「『ば、ば、ば、化け物さん、私、お、おいしくないですよ?』「私、料理を手伝ってきます!」おう、いってらっしゃい。」

 アリシアはネルの二の舞となった。

 「意地悪。」

 むすっとした様子でクラレスが睨んでくる。

 「そう言えばクラレスは気絶したな。ったく、化け物なんていなかったぞ?」

 サンタクロースと同じように、子供の夢は壊しちゃいけない。……たとえそれが悪夢であろうとも。

 「うぐぅ……ファイアボール!」

 「危な!」

 急に放たれた火球を手で払って掻き消すと、フードを被ったお姫様は小さく首を傾げてみせた。

 「その手袋、魔法道具?」

 「ん?ああ、まぁ、そんなところだ。」

 手をヒラヒラさせて答える。

 便利な言い訳だ。これからも使わせて貰おうかね。

 「皆!できたぞ!集まれぇ!」

 聞こえてくるテオの声。

 どうやら料理が完成したらしい。

 「ほらクラレス、行ってこい。」

 「……誤魔化さない。」

 急かしてやるも、クラレスは俺の手を睨んだまま。

 「アリシアとネルも待ってるぞ?」

 「……分かった。」

 しかし俺の言葉に機敏に反応し、彼女はトテテ、と駆けていった。

 うん、しっかりと友情を育めているようで何より。



 昼飯を食べたあと、合宿最後の自由時間。特別な行事は予定されておらず、学生達は今雪だるまを作ったり、雪合戦をしたりして自由に遊んでいる……はずだ。

 だというのに俺は黒龍を片手に森のなかに潜み、辺りを警戒している。

 目的はヴリトラ教徒共の潜伏場所を突き止めること。

 捜索メンバーは俺とルナの二人。その他の教師には――まだ信用できるかどうか分からないので――秘密にしてある。

 索敵能力なら俺よりも熟達しているネル(俺は気配察知による索敵しかできないから隠密を使われると降参である一方、ネルは培った知識を総動員して敵を探し出すことができる。)も連れてこようかと思ったものの、突然学生がいなくなると他の教師に怪しまれてしまうのでやめておいた。

 探したアテは、昨日と一昨日であのヴリトラ教徒が逃げようとした方向の交差点。そこの近くにおそらくアジトがあると俺は考えている。

 「ルナ、なにか見つかったか?」

 「いえ、何も……あっ!左前方に誰かいます。」

 「了解。」

 速度を落とし、ルナの指差した方向へ忍び寄っていくと、黒装束が木々の間を歩いているのが見えた。

 あっさり見つかって良かった。俺の推論は間違っていなかったのも喜ばしい。……ほとんど運ながら、それも実力の内とも言うから良いか。

 歩く黒ずくめからは、やはり気配は感じられない。

 この前のファーレン城侵入のとき誰も隠密スキルを持っている様子はなかったから、敵さんもその反省をしたのだろう。

 ルナがいなければ見つけられなかったな。

 そう思って振り向けば、どこか誇らしげなルナの顔。

 どういう対応をすればいいか迷い、そう悩むことすらも照れ臭くなってきた。

 ……取り敢えず彼女の頭を撫でてやる。

 「ふふふ。」

 「よくやった。後は俺に任せて、お前は先に戻って「私も行きます。」……分かった。」

 ルナは俺が言い切る前に魔刀を鞘ごと腰から外していつでも抜けるように手に持ち、臨戦態勢に入る。

 その間にもヴリトラ教徒はさらに森の奥へと進む。

 彼の十メートル程後ろを、木に隠れたり、開けたところでは――匍匐前進などという技術は俺にはないので――回り込んだりして尾行を続け、数十分後、黒装束は森のなかの開けた場所で立ち止まった。

 どうやら目的地に付いたらしい。

 しかしアジトらしきところは余程上手く隠してあるのか、木の裏から覗き見る分には場所が全く分からない。

 と、観察対象は赤く光る石を取り出しながら跪き、地面にそれを押し付けた。

 途端、そいつの立っているところを含むその開けた場所全体が僅かに陥没。そして綺麗に真二つに割れたかと思うと、電力の足りない自動ドアのように、その割れ目がゆっくりと広がり始めた。

 おお!サンダーバード!

 しかし、超科学的浪漫機体がそこから出現するようなことはなく、黒装束は割れ目の中に飛び込んだ。

 ……うん、航空機系の物は飛行船しか見たことのない世界で期待した俺がバカだった。

 ルナと共に少し待ち、黒装束の気配が十分離れたところで、閉まりはじめたアジトへの入り口に二人して滑り込んだ。


 中は一本道の洞窟だった。壁にはカンテラが等間隔に掛けられていて、ぼんやりとしたオレンジ色を発している。

 黒装束は迷う事なくその道を進み、俺達も引き続き忍び足でそれを追う。

 足元に板を作って移動することで洞窟内の小石を踏む心配をしなくていいようにしたいのはやまやま。しかし、向こうがユイの持つ魔力視と類似のスキルを持っている可能性もあるので断念した。

 「ご主人様、もう案内はここまでで良いのでは?」

 ルナが耳元に囁いてくる。

 「まだ他に隠し通路があるかもしれないだろ?」

 「……そうですね。分かりました。」

 首を振って答えると、彼女は頷いて俺のすぐ後ろに下がる。

 黒装束が突き当たりの曲がり角で見えなくなった。急がず焦らず、その角までそろりそろりと歩み寄り、曲がった先を覗き込む。

 そこには大きな広間が広がっていた。白色の、半ばで欠けた岩の柱が砕けた石畳の道の両端に散乱していて、抱え込み切れないぐらいの太さの石柱の側面には幾つもの溝が丁寧に等間隔で彫られていて、パルテノン神殿の柱を思わせる。

 ここはヴリトラ教の神殿とかだろうか?

 さらにその道の奥には黒装束が数十人。どうやらここが奴らのアジトで間違いないらしい。

 いやはやしかし、まさかこんなに潜んでいるとは。正直こんなに多いと正面から事を構えたくは無い。

 だがしかし、下山中にこの人数で襲われたら堪らない。不意打ちできる今が好機だろう。

 「……ルナ、俺から行く。注意が俺に全て移ったら加勢に入ってくれ。」

 「ええ、分かったわ。」

 方針の確認に背後へ声を掛ければ、ルナは早くも戦闘モードに入った模様。心強い。

 黒龍を握り、まず先程までの尾行対象に向かって駆け出す。

 しかし、数歩も行かないうちにそいつはこちらを振り向いて、持っていたタクトを短く一振りした。

 「つけられていたか。だが残念だったな、アイシクル!」

 生成され、勢い良く放たれた何本ものつららに対して、俺は目の前に盾を生み出し全てを防ぐ。

 くそっ、昨日も攻撃する寸前に気付かれたよな?俺の知らないスキルか何かか?

 『危機感地というスキルじゃな。気配察知よりも効果範囲は短いが性能はいいものじゃ。』

 その解説は昨日して欲しかったなぁ……。

 『あるだけマシじゃろ!』

 へいへい。

 盾を消し、踏み出す。

 標的はいきなり現れては消える盾に驚いたのか、まだ次の動きに移れていない。

 再びタクトを振る前にそいつ喉元にナイフを投げて突き立てて、そのままの勢いを保って奥の黒装束達に向けて走る。

 「チッあのドアホが。お前ら、協力しろ!ブレイズトルネード!」

 一人が気付き、猛る炎の竜巻が飛んできた。

 「俺に命令するな。トルネード!」

 別方向から風の竜巻が炎の竜巻と混ざりあい、その勢いを増す。

 それでも俺は、走るスピードを落とさない。

 「黒銀ッ!」

 跳躍し、皮膚を黒く染め上げ、炎の中に突っ込む。

 そう、俺はついに黒銀を発動中でも魔装2ぐらいなら並列発動できるようになったのだ。

 日頃の鍛練の成果がこうして目に見えた形に現れるのはやはり気持ちがいい。次の目標は魔装1との並列行使ってところかね?

 俺の体は火の竜巻を難なく突破。体は火照るも火傷はない。

 そのまま黒装束の集団に飛び入り、すれ違いざまに首や腹を切り裂きながらそこをただ真っ直ぐに駆け抜ける。

 「ぐ、……ヴリトラ様、万歳!」

 「同志達よ、先に行かせてもらうぞ!」

 「お前なんかヴリトラ様が片付けてくださる!」

 腹を切られた奴等の遺す言葉には呪詛よりも歓喜の感情の方が明らかに色濃い。

 首を切られた連中も含め、例外なく、揃って笑顔を浮かべて死んでいく。

 どうもこいつらは死を恐れていないらしい。いやむしろ死を喜んでいるかのようだ。

 我先にと俺へ群がってくる狂信者達は彼ら自身の死体でもって俺を足止めしようとし、これがなかなかに厄介。

 黒龍1本じゃ流石にキツい。

 左手に陰龍を作り、蒼白い燐光を纏う。スキルの補助で増強されたスピードとパワーをもって双剣を閃かせ、死体の山を築いき上げていく。

 それでも、死体を落とす場所も気にしておかないといけないから少々辛い。

 「喰らえ!フレイムアロー!」

 と、後方から待ちに待った火の手が上がった。

 ルナだ。


 「あんたら強いなぁ。ヒヒ、ほら、さっさと殺せ。」

 「黙れ。」

 「ぐはっ!ヒヒヒヒヒ。」

 ルナに止めを刺され、最後の一人も例に漏れず、笑いながら死んでいった。

 「ふぅ、やっと終わったな。」

 「ご主人様、大丈夫ですか?疲れていませんか?」

 息を吐いて言うと、ルナが側に寄ってきて自分の額と俺の額に手を置き、熱を確認しはじめる。

 そんなに顔色が悪いのだろうか?

 「心配ない、胸くそ悪いだけだ。どうにも俺はこいつらと合わなくてな。」

 「私もとても薄気味悪いと思います。」

 ルナは俺の頭から手を離し、周りの笑顔の死体群を見回して眉をひそめる。

 「……さっさと帰ろう。」

 「そうですね。」

 長居は無用。二人し手元来た道を戻っていく。

 しかし歩き始めて数秒後、突然ルナが俺の右腕をガシッ力強く掴んできた。

 「痛っ!」 

 全く予想していなかった痛みに思わず声が出てしまう。

 「す、すみません!」

 大いに慌て、パッと手を離すルナ。何故か俺からの距離まで離してしまった。

 「あーいや、驚いただけだよ。ほら、手。」

 苦笑いしながら彼女へ手を差し出す。やっぱりこの不気味な光景は怖いもんな。

 「でも……。」

 ルナがおずおずと俺の手へと手を伸ばし、手を握る直前で一瞬躊躇う。

 「良いから。」

 「え?あ!?」

 ならばと今度はこちらから彼女の手をこちらから掴み取り、再び歩き出す。

 ルナの顔が赤くなっている。取り乱して慌てたのも合わさって恥ずかしかったのだろう。頭の耳もバタバタと大慌てしているし。

 可愛いもんだ。


 すぅぅ、はぁぁぁ。

 やはり地下よりも地上の方が気分的に気持ちがいい。

 手で額の汗をぬぐ……おうとしたら何かに引っ掛かり、そういえばルナと手を繋いだままだった事を思い出した。

 そっと手を放してやる。

 「あ……。」

 「ん?どうした。」

 「い、いえ、何でもありません。」

 その割りには耳がぺたんって伏せてしまっているぞ?まあ本人が言うならいいか。

 「そういえば、ヴリトラ教の教えってどんなものなのか知ってるか?」

 俺は爺さんからの情報で、力のある奴が集まっているとしか聞いてない。

 「……すみません、私はなにも。」

 「ま、そりゃそうだよな。」

 「最後の一人は生かしておけば良かったですね。申し訳ありません。」

 「いいや、捕まえたってどうせ殺せ殺せって喚くだけだったろうさ。謝る必要なんてない。」

 「いえ、でも。」

 「ルナは良くやった。俺一人じゃアジトを発見できなかっただろうよ。本当に助かった。ありがとな。」

 感謝の意を込めて頭を撫でてやると、伏せられていた耳が立ち、左右に揺れ始めた。

 「私はご主人様の奴隷ですから。」

 そしてルナは笑顔でそう言った。

 反応に困って笑い、キャンプ場への道をゆっくり歩き始めたところで、突如、胸元のメダルからファレリルのホログラムが現れた。

 ……それもどアップで。加えて怒り顔で。

 心臓に悪いったらない。

 「あなた今どこにいるの!もう集合時間を過ぎたわよ!」

 「え?あ、あー、散歩していただけだ。すぐに向かう。」

 怒りの声の対し、隣にルナがいるのもあり、俺はなるべく落ち着いた言動を心がける。

 「しっかりしなさい!教師は学生に模範を示さないといけないの!」

 「すみません!すぐに向かいます!」

 ……無理でした。

 思わず敬語で話してしまう。妖精さんが怖いよぉ。ていうかファレリルもニーナと同じことができるのか。

 ファレリルってあれで理事長補佐みたいだし、役職の階級の違いか?

 「2分以内よ。急ぎなさい。」

 それだけ言い残してファレリルのホログラムが消える。

 「ふふふ、ご主人様、急ぎましょうか。」

 「ごめんな、疲れてるだろうに。」

 「いえ、大丈夫です。行きましょう。」

 「ああ。」

 俺達は駆け出した。

 2分か、物凄く厳しいな。



 「ご主人様、私が持ちますから。」

 「だから無理だって。」

 下山の時間になり、俺は来たときと同様、風呂道具(?)を背負っていて、ルナも来たときと同様、自分でそれを持とうとしている。

 ちなみにファレリルの制限時間にはギリギリ間に合った。

 「コテツさん、辛かったら言ってくださいね?」

 「うん、支えることぐらいならボクにもできるから、無理してこけて大怪我なんかしないでよ?」

 「頑張る。」

 すぐ後ろを歩いているアリシアと、ネル、クラレスの三人がそう意気込む。

 「大丈夫だって。こんなもん楽勝だ。」

 そんな彼らへの感謝の気持ちで少し笑顔になりながら、安心させるため、その場で跳ねて片足で着地して見せる。

 「ほらな?」

 「「「「……化け物。」」」」

 おい。

 「誰が化け物だ、誰が。そんなこと言ってると昨日の黒鎧が出てくるぞ。」

 「ひっ!」

 「あ、こら!もー、クラレスが怖がっちゃったじゃん。」

 言って、ネルがクラレスを抱きしめた。

 「ああ、すまんクラレス。でも大丈夫だ。あれはもう当分出てこないよ。」

 「本当?」

 「ああ、友達がいる奴は絶対襲わないんだよ。クラレスに友達はできただろ?」

 少し祈るような気持ちで聞く。

 クラレスはアリシアとネルを振り返り、首をかしげる。

 「友達?」

 端的で真っ直ぐな、ある意味彼女らしいとも思える問い。

 「あはは、勿論。」「勿論です!」

 「友達!」

 それに対する二人の返答に満面の笑みでこちらへ向き直り、クラレスは俺の問いにそう、嬉しそうに答えた。

 「はは、良かったな。」

 学園生活、楽しんでくれよ?

 こうして三日間の合宿は、表向き何の問題も起こらず、無事に終了した。

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