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 転職勇者   作者: まずは深呼吸
第七章:危険な職場
256/346

始まり

 山登りと班分けを夕方までにつつがなく終わらせてしまい、一日の残りはそれぞれの班員どうしとの親交の深め合いに使うよう指示を出し、俺は覗きなどの不埒な真似をする学生を取り締まるため、夜の見回りを始めた。


 取り敢えず表向きは、そういうことにしておいた。


 「あー、寒っ。」

 実際は雪化粧した森林の奥を、慣れない雪道に四苦八苦しながら歩いている俺は、誰にともなくそう愚痴って身体を軽く揺すった。

 向かっている先は、2年前にヴリトラ教徒の集団をルナと共に始末した洞窟。

 理由は簡単、念のためにとそこを爺さんに探らせたところ、またもやヴリトラ教徒が集まっていると分かったのである。

 彼らの狙いが、今はファーレン城でせっせと勉学に励んでいるクラレスではないことは明らか。

 では一体何が目的なのか?

 その情報を――盗み聞くなり拷問するなりして――得るため、俺は今ケイに叩き込まれた隠密技を駆使しながら移動しているのである。

 積もった雪に足跡を残さないよう、なるべく雪から突き出た木の根や岩を伝って移動していき、ようやく件の洞窟の、一見ただの地面にしか見えない入り口に辿り着いた。

 柔らかく雪が積もっている中、そこだけ土が露出していることから、それが最近使用されたのだということが分かる。

 さて、あとはヴリトラ教徒がここを出入りするまで待って、隙をついて中に侵入するだけだ。

 「なるべく早くしてくれよっと。」

 待ちぼうけで凍え死ぬのは勘弁願いたい。

 木の陰に身を屈めて息を潜め、そのまま微動だにせず待機すること数十分、夜空からチラチラと雪が降り始めた。

 肩や腕が次第に白に染まっていき、ロングコートにはその皺を強調するように幾本もの白線が描かれていく。

 夜が更けていくものの、月明かりを雪が反射しているおかげで森の中は割と明るい。

 ……しっかし来ないなぁ。

 『あ。』

 待ちくたびれていると、爺さんが唐突に声を漏らした。

 ……どうした?

 『お主が何もせぬから暇での、少ぉし見る場所を変えてみたんじゃがな?』

 退屈な奴で悪かったな。良いから早く本題に入れ。

 『キャンプ地がヴリトラ教徒に襲われておるわい。』

 「は!?おい嘘だ……くっ!?」

 驚きを思わず声に出してしまった俺は、直後感じ取った殺気に反応し、前へ大きく飛び込んだ。

 一瞬遅れて、俺のいた場所の雪が盛大に吹き上がる。

 なんだ!?

 攻撃の来た方向を素早く見るも、重そうな雪を抱えた木々が無作為に立ち並んでいるのみ。

 すると森の奥、木々の作る影のせいで真っ暗闇に見えるそこで、小さな光が2つ現れた。

 見る間に大きくなるそれらは……火の玉か!

 目を凝らし、その正体を見極めるなり焦って目の前に障壁を作成。

 直後、障壁を支える手を強い力が叩き付けられ、同時に俺の真横の積雪が吹き飛んだ。

 着弾点をチラリと見れば、俺の体がすっぽり入る範囲の雪がほとんど消え去り、黒い地肌が顕になっている。

 ……姿が見えない距離でこの威力の魔法が撃てるのかよ。

 内心驚嘆している間にも、再び障壁に魔法が叩き付けられ、俺の腕を痺れさせられる。

 何にせよ、このままじゃあ狙い撃ちだ。

 「チッ。」

 舌打ちしてヒビの入った障壁を消し、ロングコートに隠れた腰の鞘から聖なる双剣を抜き、白い地を走り出す。

 しかし飛来する炎や雷の魔法を6つほど切り払った途端、闇の奥で無数の星が瞬いた。

 「チクショウめ!」

 そんな大量に撃てるのかよ!

 悪態をついて予定を変更。踏み出した足で地を横に蹴って近場の木の影に転がり込む。

 が、そのまま通り過ぎるかに思われた無数の火球は、全て俺を追って方向を変えてきた。

 魔法の一つ足りとも木にぶつからせない、あまりの魔法の精度に舌を巻きつつ、俺は体勢を整えないまま攻撃魔法へ手を突き出し、黒い壁を着弾直前に何とか間に合わせる。

 そして襲ってきた衝撃は、俺の体を壁ごと突き飛ばした。

 雪をまき上げて一回転、即座に両足で地を掴む。

 爺さん、敵はどこだ?

 『待っておれ、今探しておる。』

 近場にはいない訳か。

 『うむ。わしの見ておった範囲の外から魔法が飛んで来たわい。』

 そうかい。ったく、面倒な。

 取り敢えず、撃たれた魔法の軌跡を追おう。

 しかしそんな考えを嘲笑うように、俺の左右から氷の槍が迫ってきた。

 「フッ!」

 息を鋭く吐くと共に聖なる双剣で2つの魔法を斬って消し、敵は2人かと思った瞬間、今度は赤々と燃える炎の球が周りの木の枝を潜り抜け、四方八方から現れた。

 大人数なのか?

 「……勘弁してくれ。」

 それぞれの進行方向に小さめの障壁を作ってそれらを防ぎ、俺は最初の火の玉の軌跡を辿って再び走り出す。

 同じ場所に留まれば、こちらが殺られるのは時間の問題。あと加えて言うならば、視認できない程の遠距離戦は俺の得意分野じゃない。

 にしても、こいつは今まで相手にして来た盗賊紛いのヴリトラ教徒共とは訳が違うぞ。今回の相手は――個人であれチームであれ――実力確かな魔法使いだ。

 厄介だ。

 そして火の玉、氷の槍、分厚い岩に雷の矢と、節操なく襲ってくるあらゆる方向からの魔法を飛んで避け、転がって躱し、双剣で弾き、斬り伏せながらひた走ること十数分、俺の方向感覚は完全に機能しなくなっていた。

 敵の位置どころか、ここからどうすればキャンプ場に戻れるのかすら分からない。

 周りを見渡してもあるのは雪の地面と木、木、木。目印なんてありゃしない。その上、今いる場所を憶えようと思っても、飛んでくる魔法に集中を掻き乱される。

 『フォッフォッ、わしの出番じゃの?』

 癪に障る口上は無視。

 分かったか爺さん!?何人だ!

 『一人じゃ。そして相手はお主もよく知っておる者じゃよ。』

 ……勿体ぶってる場合じゃないぞ。

 『勿体ぶらずとも相手が一人の時点でお主も薄々勘付いたじゃろう?』

 そう、か……。位置は?

 『お主の向かっておるのとは全くの逆方向じゃ。わざわざ大回りで放たれた魔法にまんまと釣られたの。』

 了解。

 鉄塊を発動。

 右足で自身に急ブレーキをかけ、体の向きを180度回転。スケルトンを身に纏いながら左足で地を踏み直す。

 そして背後から飛んでくる――実際は俺の前方から、木々の裏を回り込むように放たれているらしい――炎の槍を後ろ手に無色魔法で吹き飛ばし、俺は爺さんの案内に従って駆け出した。

 ああ、俺の教師証からじゃあニーナやラヴァルに連絡できないことが腹立たしい。

 早く伝えないといけないってのに。ヴリトラ教徒に一年生達が襲われたこと、何より、裏切り者がようやく分かったことを!

 「どうしてだファレリル!どうして裏切った!」

 静かな夜だ。俺の声はあの人一倍厳しい妖精に確実に届く。

 その証拠に、姑息にも今まで一度も魔法の飛ばされて来なかった方向、俺の走る先、爺さんによるとファレリルがいるらしい位置で、色鮮やかな光がまたたき、小さな星空をそこに見せた。

 予想通りの返答の苛烈さに、“正直、言わなきゃ良かった。”と頭の片隅でボヤきながら眼を強化。

 「龍眼!」

 金色を帯びた俺の眼は、自ら生み出す幾つもの強い光源に照らされた裏切り者の姿を、歯を食いしばってこちらを睨みつけるファレリルの表情を、ようやく捉えることに成功した。

 ……ったく、2年前にラヴァルにしたような勘違いであって欲しかったよ。

 足を止めずに双剣を操り、魔法の雨の中を駆け抜ける。外れた物、弾かれた物が背後から追ってくるものの、俺の走りよりは遅い。

 斬られた魔法が各々弾け、7色の小さな閃光が俺の視界をほぼ埋め尽くす。しかし俺の目はそれに惑わされることなく、ファレリルの羽の降雪に紛れてしまいそうなぐらい微かな輝きを逃さない。

 「もう一度聞くぞ!どうしてニーナを裏切った!?」

 さらに接近し、半ば怒鳴りながら問う。

 「黙りなさい!」

 そしてファレリルの苛立った声が響いた途端、俺の周囲に無数の蒼炎が現れた。

 遠隔操作で古代魔法まで操れるのかあいつは!?

 驚きながらも全ての火球の位置を見て覚え、俺は双剣を握り直した。

 「大人しくしていて。」

 しかしファレリルがそう、静かな声で言った瞬間、周囲の蒼炎が一気に膨張。

 先程までの魔法のようにこちらへ向かってくるのだろうという俺の予想は外れた訳だ。

 ……もう、避けられない。

 「ファレリルッ!」

 声は、直後に起きた爆発に飲み込まれた。

 まず感じたのは凄まじい熱。

 次いで足が地を離れ、体が爆風で乱暴に振り回される。それでも何とか体を丸めた直後、背中が何かを強く叩いた。

 「ぐぅっ!?」

 予想していなかった衝撃に呻いたところで今度は体が落ちる感覚がし、それも顔が冷たく柔らかい何かに包まれた途端に止まる。

 かと思うと、背中にも顔を包んだのと同じ感触の物が乗っかってきた。

 これは……雪か。

 遅れて理解し、少し顔を上げれば、背中が叩いたらしき物――幹の太い木が真横にある。背中の雪は揺らされた木の枝から落っこちてきた物のよう。

 「イテテ……何とか、間に合ったな。」

 すぐにその木の幹を頼りに立ち上がり、黒い肌を元に戻し、鉄塊を発動。吹き飛んで消えてしまったスケルトンを纏わせる。

 ……双剣をまだしっかりと掴んでいた自分を褒めてやりたい。

 しかし黒銀を使っていたとはいえ、身体の各所の肌は焼け爛れ、鋭い痛みを訴えてくる。古代魔法の威力ってのはやはり段違いだ。

 首から下げていた教師証なんて、変形してしまってもう使い物にならないだろう。

 「あら、まだ立てるの?しぶといわね。」

 聞こえてくるファレリルの声。若干エコーが掛かっているのは気のせいだろうか。

 「ハッ、甘く見過ぎだ。」

 「そう。抵抗するほど苦しむだけよ?」

 まだ熱い教師証を脇に捨て、言い返しながら声の発生源を探そうとするものの、声はまるで全方位から聞こえるようで相手の居場所は大雑把にすら特定できない。

 もう一度頼めるか、爺さん?

 『すまんの、先と違って一つ所に留まってはおらん。教えておる内にあの妖精の場所は変わるわい。ただ、取り敢えず今はお主の向いておる方向におるわい。』

 そうか、まぁそれでも助かるよ。

 感謝を伝え、ファレリルのいるらしい方向へ踏み出す。

 爺さん、通り過ぎたら教えてくれよ。

 『うむ。』

 さて、動き回っているとはいえ、森全体を全力で縦横無尽に移動している訳がない。そんなことしても無駄に疲れてしまうだけなんだから。

 「ファレリル!どこだ!」

 走りながら大声を上げれば、返ってくるのは木の枝の間を縫うように飛来する、幾つもの小さな魔法の雨あられ。

 こちらの位置は完全にバレているらしい。

 無色の魔素を体の周りで荒れ狂わせることでその全てを散らしてしまい、気配察知に意識を傾けるも、さっきのファレリルの声のように何故か微弱な気配があちこちから感じられ、結果は芳しくない。

 「私を探しているのかしら?無駄よ。分かっているでしょう?私達妖精は森の愛し子。森が私を守ってくれる。助けてくれるのよ。」

 分かっているでしょうと言われても、そんな常識初耳だ。

 「お前の方向音痴も森の中じゃ治るんだっけか?」

 ただ、彼女が“木が道を教えてくれる。”とか何とか言っていたような覚えはある。

 「そうよ。でもそれだけじゃない。森は私を敵から隠してくれるわ。ふふ、あなたの聞いているこの声も、木々が枝を揺らして私の声を再現しているだけよ。」

 凄いな、この世界の木。

 小さな笑い声をも真似して、森はファレリルの言葉をさらに紡ぐ。

 「あなたの場所も彼らは快く教えてくれるわ。あなたの呟きすら拾って届けてくれる。だからあなたがどこにいようと、私の魔法はあなたに届くのよ。……もう、分かったでしょう?確かにあなたは強い。けれどこの森ではその半分の力も発揮できないのよ。だから大人しく降参しなさい。……安心して。殺しはしないわ。全てが終わるまで木に縛り付けさせてもらうだけよ。」

 戦い初めたときとは打って変わった、諭すような穏やかな声音。彼女の絶対の自信がその言葉の端々に滲み出ていた。

 「断る。」

 まぁだからと言って従いはしない。

 「そう。それなら手加減はもうしないわ。後悔しても遅いわよ?」

 ファレリルの言葉が途切れ、また魔法の雨が放たれると思った俺は無色の魔素を手元に用意。

 そして、神弓エルフィーンを思わせる淡い桃色の細い光線がすぐ右の木の影から現れた。

 妖精の固有魔法か!

 それに素早く無色の魔法をぶつけるも、威力の減衰する様子は一切なし。

 「くそッ!……ぐぉッ!?」

 焦り、身を捻って避けようとするも間に合わず、脇腹を浅く抉られた俺は呻き声を漏らして雪に倒れた。

 『まぁ、あれは魔素でできてはおらぬからの。言わば森の生命力を少しずつ集めた代物じゃ。無色の魔法では妨げられぬわい。』

 この森、妖精に過保護すぎだろ……。ていうか爺さん、それをもっと先に言え!

 文句を垂れる間にも次の光線が現れ、俺は寝転がったまま慌てて黒い障壁を展開。

 何とか曲がりくねるレーザービームを受け止めたと思いきや、それに安堵する間もなく、さらに数を増やした桃色の蛇があらゆる方向から襲い掛かってきた。

 「これが、手加減なしって訳か。」

 脇腹を抑え、黒い包帯で止血しながら、龍眼を発動しっぱなしの眼で周囲を一舐めすることで状況を把握。

 「……フッ!」

 そして鋭く息を吐きだしながら全ての蛇の目の前に黒い壁を生み出し、俺はそれらのさらなる進行を阻んだ。

 魔力に多少の無理をさせているのは承知の上だ。

 「あら、流石ね。魔色適正が黒と無色以外であれば、あなたはきっと強力な魔法使いになれたわ。」

 「そりゃどうも。……それより、ニーナを裏切ったことを、お前は後悔してないのか?」

 問いながら立ち上がる。

 「……黙って。」

 苛立たしげな返答と共に、さらに数を増やした光線が周りの木々を掻い潜って現れ、俺はある事に気付いて即座に駆け出した。

 ……返答から光線が俺の前に現れるまでのタイムラグが短い。

 近いぞ。

 目の前から迫る光線を龍泉と太阿で弾きながら蛇の囲いを脱出。背後から蒼い光線が追ってくるのを尻目に、黄金に光らせた目を周りに走らせる。

 「やっぱり後悔してるのか?」

 挑発はファレリルの居場所にあたりが付いたと見抜かれないため。

 ここでさらに逃げられると面倒だ。

 「してないわよっ。」

 返事に、今度は小規模な魔法の大群が四方八方から襲い掛かってきた。その量は今までと一線を画して多く、種類も形状もそれだけ豊富。

 ……やはりかなり近付いている。

 足を止めないままその色とりどりの輝き全てを切り払い、夜の森にまた視線を走らせると、探していた桃色の光がようやく見つけられた。

 「くはは、嘘をつくな!」

 木の細枝に立つ彼女と目が合うついでに笑ってやる。

 走る向きを片足一本で無理矢理修正、足のギアを引き上げ、止む気配のない、魔法による十字どころじゃない放火を強行突破。

 火傷した肌、貫かれた脇腹が悲鳴を上げている。しかし、耐えられない程じゃない。

 「嘘じゃない!」

 と、苦々しげな表情をした妖精が叫び、俺の周りにまたもや蒼炎の塊がどこからともなく出現する。

 ……古代魔法の遠隔操作はこの距離でなけりゃ使えない、と。いや、この距離からなら使える訳だ。

 さらに近付いたときにどんな魔法が飛び出ることやら。覚悟しないとな。

 考えている内にも蒼炎が膨張を始める。

 ただ、これ自体はもう問題じゃない。

 「今度こそ!」

 「そいつはもう2度目だぞファレリル!手札が切れたか!?」

 こっちにはまだ取っておきが一枚あるぞ!

 内心で大声を上げ、俺は龍泉をファレリルに向けて思いっきり投擲した。

 純白の中華刀は回転しながら宙を真っ直ぐ突き進み、寸分の類いなくファレリルの元に……

 「ふん、何をするかと思えば。」

 届く前に現れた薄桃色の障壁に阻まれ、あっさり跳ね上げられてしまう。

 ……そういやエルフィーンが使わせてくれる妖精の固有魔法にそんなのもあったな。

 ま、それでも結果オーライだ。

 「……吹き飛びなさい!」

 よく通る一声が響き、俺の周囲を漂う蒼い爆弾が一際強く輝いた。

 「応じよ、太阿!」

 盛大な爆発音が再び轟き、蒼い閃光が天高く伸びる。しかしそれは周囲にはほとんど広がらなかった。

 おかげで森の木はほぼ無傷のまま。細い枝先が燃えてなくなるのみ。思えば今まで俺に飛んできた大量の魔法も雪を舞いあげはしていたものの、俺以外の生き物を傷付けてはいない。

 森の協力を得る代わりにある程度の自然保護の制約か何かがあるのかもしれん。

 ……まぁファレリルの類まれな魔法操作の前にはあってないような物のようだけれども。

 「はぁはぁ……お願い、教えて。コテツは、今度はどこに……え!?」

 木に触れ、息を切らしながらもそう優しく問い掛けたファレリルは、その直後バッと勢い良く上を見上げ、両手に双剣を握った俺と目があった。

 彼女の淡い色の瞳に驚愕が映る。

 「これで木を介さなくとも話せるな?」

 「話すことはないわ!」

 小さな指が自由落下する俺を指差し、俺が素早く龍泉を左へ投げた瞬間、そこから劈き音を轟かせて激しい紫電が発された。

 「応じよ、太阿!」

 再び唱えれば、俺の体は一瞬消え、横に1m程ずれて現れ、駆ける太い紫電の側面に沿って落下を継続。

 「転移!?」

 「ハッ、惜しいな!」

 そして遅い。

 自ら撃ち出している強い光に目が眩んでいたのか、魔法を躱されたことにファレリルが気付いたのは、俺が彼女の真横を通り過ぎる直前。

 それでもファレリルの言葉がほぼ的を射ていたのは流石ファーレンの教師と言ったところか。

 そして彼女の指が俺を差し直す前、割と大きい部類に入る俺の右手が彼女の小さな体を、彼女を守る薄い光の膜ごと覆ってしまう。

 「さぁ、話そうか。」

 そのまま右腕を振り抜き、真っ白な地面目にファレリルをはたき落とした俺は、ワイヤーを用いて龍泉を右手に収め、ファレリルを護る障壁を打ち壊すべく太阿の柄を思い切り振り下ろした。

 ガンッ!と鈍い音が鳴り、半透明の障壁に長いヒビが入る。

 無色の魔素を集めることで通常魔法の使用を不可能にしつつ、薄桃色の壁をそれに、少し食い込んだ太阿でそのまま押し続け、ファレリルの逃亡を封じる。

 注意すべきは固有魔法のみ。まぁそれも障壁一枚で防げるのでそこまでの脅威ではない。

 さぁ聞きたいことは山程あるぞ。ヴリトラの計画や他に内通者がいるかどうか、もしいるならそれが誰なのか。

 しかし何よりも知りたいのはこれだ。

 「どうしてニーナを裏切った?お前があいつを大切にしていることは俺にも分かってるぞ。なぁ、何か弱みでも握られてるのか?」

 ファレリルはできれば仲間にしたい。彼女がニーナに害意を持っているとは思い難い。必ず味方に引き込む手段が何かあるはずだ。

 あと、殺したら俺がニーナに責められてしまうような予感がする。確信と言い換えてもいい。

 「……のためよ。」

 問う俺から顔を逸らし、ファレリルは何やらボソリと呟く。

 「何だって?」

 「ニーナのためよ!」

 そして俺が聞き直すと、ファレリルはこちらを睨み返し、そう叫んだ。

 同時に俺の鳩尾を強い衝撃が襲い、体が否応なく浮く。

 「がはっ!?」

 予想外のダメージに息が乱れ、握力が緩み、ファレリルが太阿の下から逃げただけで俺は太阿そのものも取り落としてしまう。

 チラと腹部に目を向ければ、岩の柱が腹を突き上げていた。

 すぐにその側面を左手で押し、俺は鳩尾を抑えたまま積雪に落ちる。

 「どう……やって?」

 俺とファレリルの周りを満たしていた無色魔素のせいで碌な魔法は使えないはずだろ!?

 「コホッコホッ、私は、必死なだけよ。」

 声のした方へ目を上げれば、口から血を流しながら咳き込む妖精が俺に手の平を向けていた。

 何が起こってるんだ!?

 ただ、ここら一帯の無色魔法による魔法妨害を今もやっているのは無駄ではないのか、苦しそうな顔の彼女に魔法を放つ余裕はまだ見えない。

 とにかく今のうちに、立たなければ。

 「はぁはぁ、呼べ……龍泉。」

 気合いで何とか片膝立ちになるなりそう唱え、俺は右手に握った龍泉のすぐ横に太阿を現し、その柄を左手で掴み取った。

 太阿を――持ち主がいれば持ち主ごと――龍泉の側に転移するという、一方通行の転移能力。これが俺の扱う聖なる双剣の能力だ。

 そう、悲しいことにハイドン兄弟の使う槍の劣化版である。まだファレリルの予想した転移陣の方が使い勝手が良い。

 「こほっ、それで私の攻撃を躱したのね。ふぅ……2度目は、ないわ。」

 息を切らしつつ、ファレリルが言う。

 するとまだ完全に立ち上がりきれていない俺を、蒼い炎が取り囲んだ。

 ……馬鹿の一つ覚えが。

 そう罵ってやりたいのは山々ながらら、生憎とそんな暇はない。この魔法への対応はもちろん、どうやって魔法を使っているのかの解明もしなければならない。

 「芸が無いのは謝るわ。こほっ、でもこれが私の扱える最も破壊力のある魔法なのよ。さぁ、風で剣はもう外に投げられないわ。……もう、避けるは、無理よ?潔く降参して「黒銀!魔装!」……馬鹿!」

 ファレリルの説得を遮って叫び、双剣を鞘に収め、体を黒く染め上げた俺は、さらに全身鎧を作り上げて両の拳を地面に叩き付けた。

 取り敢えず魔法への防御はこれでいこう。完全に防ぎ切れる自信はない、それでもこっちだって必死なんだ。

 強い意志で睨んでやれば、ファレリルは苛立ったように歯を食いしばり、赤色を吐き、

 「トゥリムフラマ!」

 そう、大声で叫んだ。

 途端、炎の塊が全て一気に肥大化。巨大な円柱となって天を突く。

 あまりの火勢に鎧が削れ、皮膚が焼ける。しかし両手から地面深くに杭を打ち込んだ俺は、前々回と違って爆風に煽られたり吹き飛ばされたりはしない。

 そして蒼炎の柱が消えるまで片膝立ちの姿勢を保ち、しばらくして熱が止んだのを確認して、俺はゆっくりとその場に立ち上がった。

 一瞬で半壊した鎧の隙間を冷たい風が撫ぜるたびに鋭い痛みが走り、その場にうずくまってしまいたくなるのを、今は我慢。目はファレリルのそれを捉えたまま。

 「そん、な……ゴホッゴホッ、2度も、うッ……直撃したのよ?」

 そのファレリルは、さらに酷く咳き込み、そのたびに口から血が溢れる。彼女の漂う高度も上下に揺れ動いている。

 ……さっきから何なんだ?魔法の使い過ぎか何かか?

 『まぁそんなとこじゃの。お主から逃れるために体内の魔素を使って無理矢理魔法を使い、回復せぬうちにあのような大魔法を行使したのじゃ。体に流入した制御できておらぬ魔素のせいであの妖精の体内はボロボロじゃろうよ。』

 そういうことか!

 「やめろファレリル!それ以上無理をするんじゃない!」

 叫ぶ。

 「うる……さい!私はニーナに、ゼェゼェ、森を、見せるのよ!」

 しかし俺から何とか離れようと、ゆらゆらと力ない様子で飛びながら、ファレリルは拳大の氷片を放ってきた。

 が、それは俺が腕で払うだけで粉々に砕けてしまう。最初の魔法のような、俺の体を突き飛ばすような威力は微塵もない。

 「森を、見せる?」

 弱りきった彼女を追って歩きながらファレリルの言葉を繰り返す。

 どういう意味だ?

 「ええ、そうよ。ケホッ、あなたはたしかニーナから聞いているわよね?あの子が、物心のつかない内に故郷から逃げ延びたこと。」

 「ああ。」

 聞くつもりは全くなかったけどな。あれは殆ど事故だった。

 俺から少し離れた高めの木の枝にとうとう座り込み、ファレリルは木の幹にその体を預けて続ける。

 「はぁ、はぁ……ゴホッゴホッ、私は、あの子の生まれたあの美しい森に、そして何より、両親の元にニーナを帰してあげないといけないのよ。それが、ニーナを託された私の、ケホッ、最後の、仕事。それを成すためなら……ヴリトラにだって味方するわ!」

 桃色の光線が二条。

 真っ直ぐ飛来するそれぞれを、双剣で防ぎ、弾く。

 「向こうに味方すれば、引き換えに森の魔物をヴリトラがやっつけてくれるってか?」

 「その、通りよ。だから、私は、負けない。ニーナは必ず、故郷に帰す。」

 大して重くもない体重を木の幹に完全に預けたまま、ファレリルが手の平を俺に向けた。

 「それをニーナが望んでいるとでも思ってるのか?」

 「ふふ、そんなこと?……望んでいる、はずがないでしょう。あの子は何も、本当に、何も知らないもの。こほっ、生まれた場所も、部族も、実の親の顔も!……ハァッ!」

 ファレリルが叫びに近い声を発し、彼女の周りに薄桃色の光球が数十個現れた。

 「うぅっ……!」

 同時に彼女は自身の体を片手で抱き締めるようにして蹲る。しかしその目は俺を強く睨んだまま。

 「お前、死ぬつもりか!」

 「 ケホッケホッ、さぁ、どうでも良いわ、そんなこと。あなたが強いのが悪いのよ。……これであなたを、殺せなくても、負傷させてしばらく動きを止めさえすれば、私達は作戦を終えられる。……ふふ、でもニーナのこの先を、うっ……見届けて、あげられないことは、避けたいわね。」

 ファレリルが自嘲気味に嗤い、同時にその周りで浮かんでいた光球が一斉に動き出す。

 軌道は違えど、もちろんその飛ぶ先は俺。

 「死んだらヴリトラの一部になれるって思ってるんなら大間違いだぞ!?あれは真っ赤な嘘だ!」

 横の木の影へ駆け出しながら叫ぶ。

 全ての光球がやはり障害物を全て避けながら俺を追う。しかしファレリル自身がボロボロなせいか、彼女が万全のとき程速くはない。

 「そう、だからなに?言ったでしょう、私の目的は、ニーナを……」

 「ああ、森に返すんだったな!俺もヴリトラを倒したらそうするつもりだ!」

 黒い足場を空中に作り上げ、聖なる双剣を鞘に戻しながらファレリルの元へ駆け上る。

 「あなた、飛んで!?」

 「フェリルとシーラが協力してくれてるのもな、その約束があるからだ!」

 背後から迫る光球を尻目に、引いた蒼白い光を纏った右拳を左足を蹴り出すと同時に振り抜く。

 しかしファレリルのいた木の枝を深くえぐるに終わった。

 彼女に寸前で木の枝から身を投げられたのだ。

 すぐにその姿を目で追えば、俺を真下の空中に静止し、両手の平を俺に向けていた。

 「聞こえの良い嘘はもう、聞き飽きたわ。さっさと、倒れなさい!」

 放たれる眩い紫電。

 「本当の事だ!」

 対し、俺はここぞとばかりに大量の無色の魔素を彼女の魔法に叩き付けた。

 電撃は周囲に散り、しかしその真ん中にいるファレリルの目はそれでも闘志を失わない。

 むしろその血だらけの口の端を上げてみせた。

 「……そう言えば私も、嘘を付いたわ。遅いと、思わなかった?」

 「遅い?何が……ッ!?」

 直後、迫っていた光球が急加速。

 爆発。

 強烈な音と光が感覚を狂わせ、体を襲った衝撃は俺を地面へと吹き飛ばした。

 ……速度をわざと遅く調整してやがったのかあいつは!

 肩が白い地面を強かに打ち、爆風が俺を背から木に叩き付ける。

 「か、はっ!?」

 呼吸が乱れる。薄い雪のクッションなんて何の役にも立ちはしない。

 もうもうと雪や土が舞い上がって視界がひどく悪い中、桃色の妖精の羽が微かに見えた。

 ……今追撃されるのは不味い!

 右手にナイフを作成。牽制のためだけに投げ付ける。

 「ッ!そんな、まだ!?」

 すると桃色の光は遠ざかり、俺はその間に鎧の完全に剥がれた右腕を動かし、腰の鞘から龍泉を抜き、背後の木のなるべく高い位置に突き刺した。そしてそれを手掛かりに、ゆっくりと立ち上がる。

 「……舐めるな。俺は、しぶといぞ。」

 「くっ!」

 返答の代わりの光線は、太阿を抜きざまに弾いてしまい、俺は後ろ手に龍泉を木の幹から引き抜いた。

 もう飛ぶ力も残っていないのか、ファレリルは逃げることなく背を木に預け、燐光の明滅する指先を俺へ向けていた。

 「動か、ないで。」

 手足は震え、指の照準は大きくブレている。しかし充血したその目は次の攻撃を決して外さないことを伝えていた。

 「ファレリル、お前のニーナや故郷への思いは分かった。どういう理由でヴリトラに協力したこともな。……こっちに来い。俺と俺の仲間があの古龍の代わりに協力してやる。一緒にヴリトラを倒して、そして時期が整ったらお前の故郷を開放しよう、な?」

 「ふ……ふふ、時期が、整ったら?あなた達人間が何年それと同じ言い訳を繰り返してきたのか、コテツ、あなたは知ってるかしら?」

 体を震わせ、痛みからか、ファレリルが泣きそうな目で問いかけてくる。

 「……いや。」

 他所の世界から来たもんで。

 首を振ると、彼女は小さく嘆息した。

 「そうでしょうね。答えは……こほっ、私達が森からスレインに逃げてからの、241年間、ずっとよ。」

 「そう、か。」

 長いとは知っていたものの、改めて聞くとやはり小さな驚きがある。

 「ええ、そう。とても長いでしょう?……あなた達寿命の短い種族にとって、エルフの森での騒動は、大昔のことに、なってしまっている。もう、単なる歴史の一部という認識かしら? 」

 「そんなことは……。」

 「ならティタ森林を開放しようって言う人間はいる?……ふふ、いないのよ。スレインはラダンやへカルトとの戦争に執心していて、生き残ったエルフだけが森のために戦っている。」

 「……。」

 この世界に来てたったの2年ではあるものの、思い返すと、彼女の言葉に反論できなかった。

 ファレリルの息切れが少し収まり、その指先の光が強まる。

 「逃げ延びた私達を助けてくれてすぐは人間も森を取り返そうとしてくれていたわ。でも人間の世代はすぐに変わって、エルフの森にエルフがいないことは当たり前のことになってしまった。」

 魔法の使い過ぎによる魔力酔いの影響か、ファレリルは饒舌に続ける。

 早く攻撃しろと言う頭の声を、まだこちらに寝返らせられるかもしれないという希望が抑えた。

 「……でも、私のような妖精やエルフにとって、あれは、あの惨劇は、まだ記憶に鮮明に刻まれているの。忘れられないのよ!……だから、スレインを信じて今もあの国のために働いているエルフは何人もいるわ。……人間と私たちとの時間の感覚が違うことを良いことに、“時期が来たら”とあなた達は私たちを10年待たせる。そして10年後にまた同じことを言って、“それぐらいなら“と私たちも大人しく待ってしまう!生き残りだけでは森を取り返すことができないから、妥協を繰り返してしまうのよ!」

 血が飛ぶのも構わず、ファレリルが心の内を吐き出した。

 「……10年は私達にとっては短いけれど、あなた達にとっては随分と長いのかもしれない。でも私達の200年を超える思いはあなた達にはただと色褪せた過去、10年の努力にすら値しない!……もう、ヴリトラに頼るしかないのよ!」

 「……ニーナやラヴァルは今までずっと、そのヴリトラに対抗しようとしてきたんだぞ?」

 「ええ、恨まれるでしょうね。理解なんて期待してないわ。あの二人には故郷を奪われた記憶がないもの。」

 「でもニーナは、お前を、母親みたいに……。」

 「黙りなさい!そうやって説得しようとしても無駄よ。覚悟ならもう決めているもの。」

 ……情に訴えても駄目なのか。

 「……ファレリル、約束する。いや、神に誓ってやる。俺はヴリトラを倒したら、必ずエルフの森を取り返す。」

 『聞き届けた。』

 ああ、しっかり覚えてろ。

 心の内で爺さんに頷き、睨むファレリルの目を見返す。

 「……ふふ、その目、本気なのね。」

 すると彼女の表情がほんの少し和らいだ。

 「そうだ、だから……。」

 一歩踏み出す。

 対するファレリルは拳を握って俺に向けていた指をゆっくりと引っ込めた。

 「でもごめんなさい、私は賭け事はしないのよ!」

 しかし俺が2歩目を踏み出した瞬間、彼女は飛び上がって両腕を大きく開き、幾つもの蒼炎を周囲に現した。

 何が起こるかは身を持って知っている。ただ、今回ファレリルは自身をも爆発範囲に入れていた。

 本人に動く気配はなく、その口からは真新しい血が流れている。

 「お前、まさかッ!?」

 道連れに!?

 「この大魔法、今の私にはこうでもしないと行使できないわ。ゴホッ……ここまでしてもあなたを殺せるとは思わないけれど、しばらく眠らせることならできるでしょう?」

 「どうして!?」

 双剣を握り直し、膝を曲げ、そこに力を溜めながら叫ぶ。

 もう、ファレリルを捕まえるなんて悠長な事は言ってられない。

 「ごめんなさい。でもヴリトラにあなたが必ず勝てるとは限らない。むしろ勝てない可能性の方が大きいでしょう?」

 「俺だけじゃない、ラヴァルやニーナに、他の教師だって一緒に戦って……」

 「それでもよ。はぁぁ!……トゥリム、フラマッ!」

 蒼い光に周囲が一際強く輝き始める。

 ここまでか……チクショウ!

 「ファレリルッ!」

 叫び、地を蹴る。

 背後の雪を爆発させ、一瞬で距離を詰め終えた俺が全力で突き出した龍泉は、彼女を守る桃色の防壁を容易く突き破り、彼女の腹部を貫いて、そのすぐ後ろの木に縫い付けた。

 周囲で膨張した蒼色が静かに弾け、その細かな光の粒子が辺りを軽やかに舞い、照らす。

 「……俺は、俺達は、ヴリトラに勝つぞ。」

 龍泉の柄を掴む手に力を込め、それをなかなか引き抜けないまま呟くと、自身の血で濡れた純白の刃を震える小さな手が掴んだ。

 そして出せる全ての力を振り絞って上げられたファレリルの顔に、浮かんだのは安らかな笑み。

 「ふふ、もしもそれが……できた、なら……ニーナは、きっと……帰れる、わね……。」

 その言葉を最後に、彼女の手が落ち、頭が垂れる。蒼い光は完全に消え、ズシリと剣にかかる重みが増した気がした。

 笑った?

 そうか、こいつ、ヴリトラが勝っても負けても、あいつか俺のどちらがやるにせよ、森は必ず取り戻されるからって……。

 ふざけるな。

 「なにを、笑ってる。お前……これでニーナは、あいつは親を3人も亡くしたんだぞ!?」

 2人でさえ辛いってのに!

 声を荒げ、怒鳴り付けると、その拍子に双剣が抜けて小さな体が薄く積もった雪に落ちた。

 返事はない。

 「くそっ!」

 ……早く、キャンプ場に向かわないと。

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