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 転職勇者   作者: まずは深呼吸
第六章:ハイリスクハイリターンな職業
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兄妹弟子戦

 「さて、次は私の番ね。」

 剣を納めたあとも他愛もない話を師匠と続けていると、近くまで歩いてきていたユイが刀に手を掛けたまま、そう言ってにこりと笑みを投げ掛けてきた。

 「なぁユイ、明日にしないか?怪我もあるし。」

 流石に連続はキツい。

 「キュアー!」

 返答は唐突な回復魔法でなされた。

 「これで良いでしょう?さぁやりましょう?貴方に土の味を教えてあげるわ。」

 「師匠、愛弟子を助けてやってください。」

 隣に懇願。

 師匠なら今の戦闘で俺が精神的にもどれだけ消耗しているのか分かってくれているはずだ。真剣勝負は疲れる。

 「ハッ、自分の師匠に花を持たせてくれない不孝者にやる助けなんて、アタシにはないよ。あ、ユイは頑張りな。ぶっ倒しちまえ。」

 SOSは鼻で笑い飛ばされた。かと思うとユイの方を向いて彼女を励まし、その肩をポンポンと叩いて師匠は先生達の待つ方へと離れていく。

 俺は虚ろな目をユイヘ向ける。

 「……降参「無し。」延期「無し。」替え玉「無し。」身代わり「同じ事でしょう。」……中断「無し、って始まってもいないじゃない。」雨天中止「今日は晴れよ?あと、元より雨天決行のつもりだから気にしなくてもいいわ。」……どうしても?」

 「どうしてもよ!もういい加減諦めなさい!」

 ついにユイがキレた。

 「はぁ……。」

 やる前から心が重い。加えて、傷は治ってもやっぱり疲れているから体も重い。

 「もう、それなら魔法はありで良いわ。だからやりましょう、ね?」

 俺の手を取り、それを駄々っ子のように振るユイ。

 なんでこんなに戦いたがるんだ……。

 「……お前、ルナに似てきたな。」

 「ありがとう。」

 褒めてない。

 「はぁぁぁ……分かった、やれば良いんだろ?やれば。」

 盛大なため息をついて投げやりに言い、歩いてユイから距離を離す。

 師匠の時と同様、説得はやはり難しかった、か。

 『説得なぞ、初めから望み薄どころか無理な話じゃったと思うがの。』

 微かな希望を頼みに最大限の努力をする。美しいじゃないか。

 『お主の場合は見苦しいだけじゃよ。悪足掻きと言うんじゃ。』

 ……まぁ、そうだな。

 取り敢えず黒龍を作り、刃をユイに向ける。

 「……挑発と受け取っていいのかしら?」

 挑発?何が……あー、そういえばフレメアでも片手でやろうとしてユイを怒らせたっけか。

 「挑発?何がだ?」

 言いつつ、空いた左手をグーパーしてストレッチ。息を吐いて体から力を抜く。

 さぁ怒れ。それで動きが雑になれば御の字だ。

 「ふふふふふ、そう、分かったわ……」

 不気味な含み笑いをしながら、ユイは刀を鞘から一瞬で抜き放ち、構える。

 ひょっとして、本気で怒るときに返って冷静になるタイプかね?となると俺の挑発は望んでいるのとは完全に逆効果になるぞ?

 「……オーバーパワー。」

 ユイの体が蒼い闘気を纏う。

 爆発音。

 「のわッ!」

 身をひねる。

 直後、ユイの突きが俺の首のあった辺りを貫いていた。

 彼女のいた場所の土が抉れているのを目の端で捉え、思わず苦笑い。

 「おいおい、ハナからそいつを使ってくるか!?」

 初めの合図も無しと来た。

 牽制に黒龍を振れば、ユイは退いて素早く中段の構えを取る。

 「当たり前でしょう。誰かさんと違って私は敵を侮る事はしないもの。」

 「普段は聖剣の力を使わないカイトやアイの事か?」

 すっとぼける。

 それに、死ぬ危険性が無いのなら色々と試してみたい。まーもちろん気を抜きはしないが。

 だから陰龍はまだ作らない。

 はてさて、黒龍一本ではたしてどこまでやれるかね?

 「このッ!」

 地の上を滑るような動きに乗せて、上段から放たれる縦真っ直ぐの太刀。

 黒龍をそれに合わせて軌道をずらせば、半身になっている俺の鼻先を掠め、体の前に斬撃が振り下ろされた。

 そこから俺が攻勢に移る前に草薙の刃が翻り、

 「はぁっ!」

 俺の胴へと伸びる。

 「っと、ぉぉおお!?」

 黒龍を立ててギリギリ防いだものの、流石は神の与え給うたスキル、俺はそのまま宙に大きく吹き飛ばされる。

 何度だって言ってやる、俺もあんなスキルが欲しかった!

 「現界、魔槍ルーン!」

 と、そこでやけにはっきりとユイの声が聞こえた。

 そりゃ不味いッ!

 地面へ向けてワイヤー飛ばし、着地なんぞ度外視で思い切り引っ張る。すぐ脇をもの凄い速度で貫いていった赤い槍に、背中から冷や汗がブワッと噴き出た。

 肩から緑の地に激突。

 転がって立ち上がったとき、ユイはもうすぐそこまで距離を詰めていた。

 中段から、最小限の動きでの振り下ろし。

 片膝を付いたままそれに黒龍をあてがい、斬撃を再び、俺の左側へ受け流す。そして同時に、右脇下から不意打ち狙いで、ナイフを左手首のスナップで投擲。

 「くっ!?」

 顔を狙ったそれはユイの退却により空を突き抜けた。

 「……ま、まぁ、ルーンを投げたんだ、お互い様だろ?っと!?」

 立ち上がりながら、言い訳がましい言葉を言い終える前に巨大な炎球が飛ばされ、俺はそれを黒龍の一振りで消し飛ばす。

 「ええ、元より出し惜しみなんてするつもりはないわ。」

 さらなる怒り買ったと思いきや、返ってきたのは望む所、という意気込み。そんなユイの方を見れば、彼女の周りには既に石の杭が宙に複数作成されている。

 ……やっぱり怒ってはいるらしい。

 「左の剣は何が何でも使わせるわ。覚悟しなさい!」

 ユイが地を蹴る。

 同時に杭の一斉掃射。ご丁寧にもそれら全ては直撃コース。……ああ、アリシアに見習わせたい。

 障壁を作成。後ろに跳ぶ。

 作った黒い壁に杭が半分程食い込んで止まった一瞬後、黒い板は真っ二つに斬られ、走ってくるのは勿論ユイ。

 「ていっ!」

 間合いに入れられる直前、目隠し用の黒い塊を飛ばす。

 「私の目を忘れたのかしら?」

 が、まるでそれを予見していたかのように、刀を脇構えにしたユイは走行速度そのままに、あっさりと目隠しを避けてしまう。

 ……魔視、だったか?

 考える間にも距離を詰められ、水平に寝かせられた刀が更にユイの背後へ引かれる。

 そこから吹き出る蒼白い光。

 しかし、何らかのスキルによる強力な横薙ぎが繰り出される直前、俺はワイヤーを遠隔操作し、その柄と地面とを繋ぎ止めた。

 「え!?」

 引っ掛かり、ユイの動きに一瞬の空白が生まれる。

 魔視スキルと言えども、彼女の視界外で魔法を使う分にはバレにくいらしい。

 「隙ありだ。」

 できた隙を逃さず、刺突。

 「く、ァアッ!」

 しかし気合いの一声と共に、ユイの刀はすんでのところで黒い切っ先と彼女の首筋との間に割り込んだ。見れば地に深めに刺していたはずのワイヤーが、馬鹿力で無理矢理引っ張り出されてしまっている。

 そのまま――今のユイの不自然な体勢ならばあるいはと思い――俺は黒龍を押して力比べを持ち掛ける。

 「フレア!」

 しかし、突如として火の粉が吹き荒れた。

 「うぁっち!?」

 堪らず、大きく後退。

 「ウォール!」

 立て続けの魔法で地面が揺れ、割れ、俺の左右を阻むように広く長くそして厚い、石の壁がせり上がった。

 「!?」

 「ブレイズランス!」

 巻き上がった火の粉を突き抜け、二本の炎槍が俺に迫る。

 障壁を作成、3歩後退。無色の魔素を集めた左拳を引き、黒龍と共に構える。

 直後、盛大な爆発が目の前で。

 空気が揺れ、障壁が木っ端微塵と消えた。

 さらなる火の粉が舞い上がり、俺の目と鼻の先までの空間を鮮烈なオレンジと赤が満たして、瞬く。

 その眩しさを堪えながらも、猛スピードで近付いてくる気配の方を睨みつける。

 「ファイアァブレェェドッ!」

 火の粉の嵐の中、八相の構えで直線距離を疾走し、燃える刀で襲い掛かってきていた。

 左手を彼女の刀に向け、無色の魔素をありったけ飛ばす。しかしそれでも消えるどころか衰えもしない炎の勢いには流石に舌を巻いてしまう。

 「魔力の無駄遣いだろ……。」

 「あなた相手なら当然でしょう!ヤァァッ!」

 「あーそうかいッ!龍眼!」

 奥義を使いながら右腕を振り、黒龍を脇にうち捨てる。代わりに黒く染めた体の上にスケルトンを纏わせた。

 そして、真剣白刃取り。

 「嘘っ!?」

 「ぐぅ……!?ったく、叫びたいのはこっちだチクショウめ。」

 両手で挟んだ刀を横に捻って相手から奪おうにも、オーバーパワーによる効果か、燃える刀はビクともしない。

 てこの原理を腕力でねじ伏せられている。さ

 「くっ……。」

 「あら?ふふ、そういうこと……怪力ッ!」

 「このやろッ!」

 悪態をつくが、一段と増したユイの力に、片膝を地面に付かされる。

 ここから力技では押し返せない。こうなったら……

 「……それは!?」

 魔法の行使がバレるのは計算の内。

 「くはは、悪く思うなよ。」

 俺は右人差し指と中指の間に、魔法でナイフを作り上げた。

 「さぁて、お前の刀と俺のナイフ、どっちが先に届くかな!?」

 ちなみに俺の予想じゃ刀が先だ。良くて相打ちが精々だろう。が、俺は敢えて不敵に笑ってみせる。

 「無駄よ、私の刀が先に、ええ、先に届くわ!」

 ユイが叫ぶ。

 しかしそんな言葉とは裏腹に、彼女からは自信よりも焦りが感じられる。

 「どうだかね?行くぞ、3、2……」

 わざわざカウントダウンまでしてやって、さらなる焦りを煽っていく。

 「……1!」

 最後のカウントは殊更大きく。

 「ッ!」

 そしてフッ、と刀の圧力が弱まった

 ここ!

 グイッとユイの刀を左に傾けながら立ち上がり、さらに捻り込む。刀を奪うのは諦めて、そのまま彼女を投げ転がした。

 「やっぱり嘘だったのね!」

 ころがる勢いで立ち上がるユイ。

 「ドラァァッ!」

 そんな文句には耳を貸さず、黒い拳を構えたまま、彼女へと一瞬で接近。

 「くっ……そんな!?」

 ユイは下が……ろうとするが、しかし自ら作った石壁に阻まれる。

 そして、魔法とスキルとで強化された拳を、俺は力一杯叩き付けた。

 硬い手応え。

 魔法の土壁がほぼ円形に壊れ、粉々になって吹き飛び、遅れて殴られた壁が崩壊音を響かせながら地面に倒れ、砕け、瓦礫と化す。

 「ふぅぅ。」

 拳を振り切った体勢のまま、息を吐き出し、辺りを見回す。

 そしてユイの姿が無いのを確認し、俺は息を吐いて緊張を解いた。

 最後の鉄拳で無事に勝利を掴み取れたらしい。

 「ッツツ……はぁ、さてと、ユイはこいつをちゃんとへそを曲げずにこいつを治してくれるかね?」

 燃えるような激痛への悲鳴を噛み殺し、手頃な大きさの瓦礫に腰を落ち着ける。

 激痛の元は俺の左腰から右肩に掛けてパックリ開いた刀傷。俺が最後の一撃を打ち込んだとき、ユイは相打ち狙いで草薙の剣を振りぬいたのだ。

 黒銀を使っていなければその狙い通りに、いや、拳を届かせる事ができる前に俺は転移させられ、ユイの勝利に終わっていたかもしれない。

 ……まぁこのおびただしい量の出血と鋭い痛みが瞬時に治る分、そうなっていた方が良かったと思わないでもない。

 加えて案外その方が、ユイも俺に勝つ、相打ちができて満足してくれ、みんな幸せになってたかもしれんな……。

 ま、何にせよ

 「はぁぁ、疲れた。」

 これに尽きる。

 ………………………ん?

 あれ?

 ユイ……遅くね?

 「お、おーい、ユゥーイ!ちょぉっと早く来て白魔法を掛けてくれないかぁ!?」

 身動きが取れない分、声を思い切り張り上げてこの場にいる唯一の白魔法使いを呼ぶ。

 そのせいでドバッと血が溢れ、俺はいよいよ焦りを覚える。

 出血死という未来が歩み寄ってきた事が肌で感じ取れた。

 圧迫して止血できるのではないかと試しに手で抑えてみるも傷が大き過ぎ、当然ながら出血の止まる様子はない。焼け石に水。

 と、フェリルの声が返ってきた。

 「あ、リーダー、ユイちゃんならさっさとリジイさん達の家に戻ったよ。あの様子だとしばらくは落ち込んだままだろうね。何か伝言かい?」

 おいぃぃぃ!

 ハッ!いかんいかん、冷静になれコテツ。これ以上血流を良くするんじゃない。

 「そうだ!ニ、ニーナは?フェリル!ニーナはそこにいるか!?いなくても呼んできてくれ!」

 命を賭して叫ぶ。

 血が溢れ、俺の周りに血溜まりができ始めた。

 頼む、早く来てくれ!

 確かに魔法陣で命の保証はされているだろう、だがしかし、やはり出血多量でゆっくりと死に近付いていくのをジッと待つのは精神衛生上非常によろしくない。

 「はいはい、呼んだ?」

 後ろから軽く、待ちに待った奴の声が掛けられた。しかし今の俺は振り向きたくとも振り向けない。

 「ニーナ、回復魔術を俺に使ってくれないか?このままだとたぶん死ぬ。」

 「うーん、でもその血だまりにはあまり近付きたくないなぁ?「ラヴァルとファレリルにはサボりを言い付けないでおくから。ちゃんと別の仕事に取り組んでいたってフォローも任せろ。」よし、交渉成立だね。」

 脅迫と言っても語弊は無い気がするけどな。

 俺の前に周ってしゃがみ、「うひゃぁ……。」と刀傷を見て顔を引き攣らせたニーナは、ポケットからメモ帳とキャップ付きのペンを取り出し、サラサラサラリと何か描いた後、それを俺の胸に押し付ける。

 すると、それまで冷えていくばかりだった体が心地よい温かさに包まれ、激痛がスゥッと引き始めた。

 結構心地良いまである。

 「ふぅ……。」

 安堵の吐息。

 「良いでしょ、これ。」

 「ん?」

 目を上げると、ニーナは手元でくるくるペン回しをして見せていた。普通なら中身が溢れ、飛び散りそうな物だが、キャップのおかげでそんな事はない。

 「買ったのか……それ。」

 たしかそのキャップって五十万円したよな?

 「あ、知ってるんだ?試しに使ってみたら凄く便利でね、これ無しじゃもうやってられないよ。」

 「そ、そうか。」

 でもそんな物に五十万円も使うか、普通?

 「……あ、そういえば知ってる?最近、回復魔法と魔術で新しく分かったことがあるんだ。」

 俺の呆れた目に気付いたのか、ニーナはサッとペンを直し、別の話題を口にした。

 「へぇ?ツェネリかカダ辺りが何か発見したのか?」

 「いーや、君のよく知ってる女の子だよ。」

 「……アリシアか?」

 何人か候補はいたが、大穴狙いで俺はあの愛らしいまぬ……天然娘の名を口にした。

 「正解。」

 「おお!凄いじゃないか!で、何が分かったんだ?」

 我ながら食い気味に聞くと、どうどうと肩を押され、俺はいつの間にか上げていた腰を下ろさせられた。

 「えっとね、どんな傷でも、まずは解毒の魔法か魔術を使ってから回復魔法を使うと後遺症が出たり傷跡が残ったりしにくいんだって。生活の知恵みたいなものだけど、これのおかげできっと何百人もの冒険者が教会通いをしなくて済むようになるよ。たぶん新たな常識として冒険者の間でも根付くんじゃないかな、そのうち。」

 「へ、へー。」

 何だろうな、嬉しさがちょっと半減した。

 ショボいとかそういう話ではなく、ただアリシアが自力で発見したとはなかなか言い辛い内容だったからである。

 「それでここからが本当に凄いところなんだけど……」

 おっと続きがあった。

 「あの子はね、魔術のレベルを一、いや二段階上に引き上げたんだ。」

 まぁた抽象的な。しかし何か大きな事なのだろう、ニーナが結構興奮しているのが傍から見ても分かる。

 「詳しく。」

 「聞きたい?」

 「聞きたい聞きたい。」

 腰が浮きかけ、再びニーナに肩を押し戻される。

 「まず魔法陣って円っていうのはね、基盤の中に魔素誘導線とか事象の発動因子とかになる「あーなんか模様を書くんだな!」……え、あ、うん、まぁそうだね。」

 専門用語かどうかは知らんが、何にせよ魔法陣に関しては全く無教養な俺に配慮して欲しい。

 「で、アリシアは何をしたんだ?簡単に頼む。」

 「簡単に、かぁ……まぁ大雑把に言うと魔法陣の効果範囲を自由に操れるようになったんだ。あと、大きな魔法陣と同じ効果を小さい物で再現できるようになったね。」

 概要は掴めた気がするが、何が良いのかよく分からない。

 「……つまり魔法陣を使うときに面倒臭くなくなったって事か?」

 「そう!その通り!」

 ニーナの目がキラッキラしているが、何が凄いのかあまり理解できてない俺にはむしろ不都合だ。ここは俺の意見を否定してさらなる説明をして欲しかった。

 「えーと、例えば何がある?」

 「例えば?そうだね……あ!そうだ、この今使ってる魔法陣がそうだよ!」

 「え?」

 胸元に押し付けられた、俺の血が染み込んでいる紙に視線を向ける。

 ……分からぬ。

 「ほら、私は魔法陣をかざす位置を変えてないのに、君の体中の傷が癒えてるでしょ?」

 理解まで数秒。

 「……ほぉ、なるほどな。お前が俺とラヴァルを治したときは地面に大きめの物を作って俺達を囲ってたっけか?これがつまりその、効果範囲を広げたって事か。」

 「正解。……あと、あの時の事は謝るから蒸し返さないでくださいお願いします。」

 急に畏まってバツが悪そうにするへっぽこエルフの様子に「ちゃんと反省はしてるんだなぁ。」と染み染み思いつつ、許して欲しくばアリシアをさらに褒めよ、と俺は彼女に命令した。

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