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 転職勇者   作者: まずは深呼吸
第五章:賃金の出るはずの無い職業
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暴風龍クエスト⑦

 「ウォォォッ!」

 タイソンが雄叫びを上げる。

 バァンッ!と盛大な破裂音が鳴り響き、トロルの頭が消し飛んだ。

 「ルナ、大丈夫か?」

 「は、はははい、だだだ大丈夫です。」

 全く大丈夫そうではない声でそう答えるのは、俺のロングコートを両手で握り込み、タイソンから隠れるような立ち位置で体を震わせているルナ。しかし、少し前までと比べれば雷恐怖症が少しは克服されてきていると見て、肯定的に捉えるべきなのかもしれない。

 力一杯ハグする事でまさか本当に改善するとは。夢にも思わなかったな。

 さてと、感慨に耽るのはこれぐらいにして……爺さん、戦況はどんな感じだ?

 『順調じゃよ。これと言った穴もできておらんし、できそうな気配もないわい。』

 おお、それは何より。

 このペースで行けば、どれぐらいで第二段階――別の出入り口への誘導――に移れる?大体でいい。

 『明朝、くらいかの?』

 ……軍の体力はそれまで持つかね?

 「このっ、逃げるんじゃないわい!……ぐぉっ!?」

 雷に怯えたのか、一目散に逃げていったトロルに追撃を仕掛けようしたタイソンをワイヤーを用い、尻餅をつかせて引き止める。

 「何をする!?」

 「これが作戦行動だってことを忘れたのか?目的はトロル達を撤退させる事だぞ?だから逃げる奴は追うな。逃げれば助かると思わせられればさらに逃げていくかもしれないだろう?」

 逆に、逃げても背中を攻撃されて死ぬだけだと思わせてしまったら、向こうも死物狂いになってしまう可能性がある。

 「フン!分かっておるわいそんな事!……鳴動せよぉッ!」

 鼻を鳴らし、タイソンは手近なトロルに襲いかかった。

 ルナが俺の背中に頭突きした。


 水平に振られる錆び付いた巨大な剣を、それを両龍で下に抑えつけながら飛び上がる事で、回避。

 空振りした大剣を持ち直し、俺に突き出そうとするトロルの額にクロスボウを照準し、手早く仕留めた。

 「ふぅ、この弦だと射程は20、いや15mかそこらね?」

 自分に呟き、クロスボウの性能を確認する。少し短い気もするが、俺の言う射程は、十分な精度と貫通力を保てる距離の事だ。別に15m先の地面にポトリと落ちる訳ではない。

 クロスボウはここに一応の完成を見たとして良いかね?敵がさらに離れている場合は弓矢を作れば良い。

 さて、今や日は沈み、問題の夜である。戦闘という体をこれでもかと酷使する行為を24時間ぶっ続けでやっているせいか、眠そうな者がチラリホラリ。

 加えて敵の下っ端達はあらかた片付けられたか、もしくは逃げ出したかしたらしく、俺が今相手した奴のように、巨体を活かした素殴りや棍棒ではなく、しっかりとした武器を扱うトロルもしばしば見かけるようになった。

 「クゥゥ、ォォオオッ!ラァッ!」

 タイソンが剣をミョルニルの柄で受け止め、弾き上げて、そのまま相手の顎を打ち抜く。

 その側で爆音を警戒してか、耳を両手でペタリと抑え、縮こまっていたルナは拍子抜けしたように立ち上がり、俺と目が合うと身振り手振りで何でもないと誤魔化そうとする。思わず苦笑しながら、俺はルナの背後にいた、斧を振りかぶったトロルの首にナイフを投げて深々と突き刺し、一瞬後、ミョルニルからの稲妻が走り轟音と共にそいつを消し炭にした。

 ストン、とその場に膝から崩れ落ちるルナ。

 すぐそこに見えた雷のせいで、ほぼ間違いなく腰が抜けてしまったのだと思う。

 「立てるか?」

 笑いを押し殺して駆け寄り、手を差し出す。

 「はい、ありがとうご……「ミョォルニィル!」キャウッ!?」

 俺の手を握ろうとしたルナは、素晴らしい反射速度でダンゴムシになった。

 「はぁ……、ほら乗れ。」

 ルナに背中を向け、身を屈める。

 「だ、大丈夫で「砦に帰るか?」お言葉に甘えます……。」

 力のない声が呟かれ、高めの体温が背から伝わってきた。綺麗な手が俺の体の前に出て組まれ、ルナの息遣いが耳をくすぐる。

 「よっこいしょ、じゃあルナ、攻撃は頼む。防御と回避は俺に任せておけ。」

 立ち上がってそう言うと、

 「え!?私ですか?」

 ルナが素っ頓狂な声を上げた。

 「おいおい、まさか働かない気でいたのか?」

 サボり屋め。

 『フォッフォッ、お主が言うか。』

 爺さんも似たような物だろ……。

 『何を!?』

 「……よし、頑張るわ。」

 「おう、頑張れ。」

 爺さんのどうせできもしなかったろう反論を待たず、俺は随分と先の方に突き進んでいらっしゃるタイソンの後を追った。



 「死ねぇ……ドワーフゥ。ぐぁ!?」

 「ルナ!」

 「フレイムアロー!」

 緩慢な、しかし巨体にしては随分と素早い動きでタイソンに槍を突き出すトロルの手を俺が槍ごと蹴飛ばし、直後、その体中にルナの火矢が突き刺さり、トロルを燃え上がらせる。

 「はぁはぁ、助かった、わい。」

 一日中飛ばし続けたのが祟り、タイソンはとうとう疲れを見せ始めていた。……まぁ当たり前だな。というよりも一日中戦い続けられたって言う時点でおかしい。

 とまぁ既に十分な働きを見せたタイソンなのだが、爺さんによると第二段階に進めるのは日が天頂付近に到達する頃、昼である。(体力馬鹿の獣人とは言えどやはり人、どうやら昨日のペースをそのまま保つのは難しかったようだ。)そして今は太陽の“た”の字が遠くに微かに見える、日の出前。

 つまり、あと少なくとも5〜6時間はこのまま善戦を続けて貰わなければならないのである。

 だがしかし、トロル達を押し返すとはつまり狭い渓谷から追い出す事であるため、当然ながら道幅が広くなっていき、戦線は広く、薄くなる。結果として一人一人が相手にしなければならないトロルの数は増え、しかも各個体が強くなってきている。

 「なぁルナ。」

 「なに?」

 「ドラゴンロアで全部焼き払えたりはしないか?」

 「敵が逃げたり魔法で対抗してきたりしなければ、全力で、半分に届くか届かないかくらい、かしら?」

 ……相変わらず魔法ってのは恐ろしい。たった一人で強力な範囲攻撃ができる。

 敵は敢えて逃がし、追う真似はしないよう、タイソンに言った覚えがあるが、一発くらいならたぶん大丈夫だろう。それにこの厚い敵の層を少しでも薄める必要は何にせよあるんだから。

 「十分だ。よし、それなら今から敵陣に深く切り込むから、味方を巻き込まないように一発頼む。タイソン、しばらく一人で耐えられるか?」

 「ふぅぅ、わしはまだ戦えるわい。」

 ミョルニルを肩に担ぎ、タイソンは息を吐いてそう言った。

 疲労は隠せていないが、疲労困憊と言った様子でもない。まだ戦えるという事に嘘偽りや虚勢は無さそうだ。

 「……すぐに戻る。」

 爺さん、タイソンが危なそうだったら教えてくれよ?

 『うむ、まぁ良いじゃろ。』

 助かる。

 「……スマッシュ……」

 と、近くまで来ていたトロルが棍棒を両手で振り下ろしてきた。

 蒼白い光。スキルか……面倒な。

 「ブレイズ……」

 「待て!ドラゴンロアのために力は温存しておいてくれ。ここからしばらくは俺に任せろ。どうしようもなくなったらそのときに頼むから。」

 魔法を放とうとしたルナを声で制し、俺は思いっきり後退。目の前で砂嵐が巻き上がった。

 その発生源である棍棒の上を駆け上がりながら、ルナの体を支える腕を両腕から右腕一本に切り替える。

 俺を振り落とそうと、トロルが棍棒を引き上げたと同時に、より強く棍棒を蹴って跳躍。左手で投げたナイフは少し逸れ、トロルの目を貫いた。

 「うがァァァッ!?」

 「く、外れたかぁ。鍛錬し直さないとな。」

 あまりの激痛に棍棒を取り落とし、目を両手で抑えるトロルに向けて左手から二本目のナイフを投擲、今度こそ首に命中させ、血を吹き出させた。

 「はぁ……にしてもクロスボウを作る必要はあまりないな。」

 着地し、ため息を吐きながら自分に呟く。

 俺自身のナイフ投げより優れている部分は、射程と、予め矢――クロスボウのはボルトと言うんだったか?――を装填して置いた場合の抜き打ちの速さぐらい。連射性に関しては案外ナイフの方が早いかもしれん。

 そして何より、ナイフよりも長い射程を持つクロスボウは嵩張る。

 「ま、楽しかったから良いか。」

 色々と変に熟考しそうになる前にそう結論付け、俺はトロルを殺した事でできた空白へ身を投じた。


 「……あいつを殺れ!……王に近づけさせるな!」

 途中からトロルと一々相手するのを辞め、俺は愚鈍な図体の股下を潜ったり、敵の武器や足を駆け登って跳び箱のように頭を飛び越えたりと、とにかくトロルの群れの奥へ奥へと突っ込んだ。

 そして少し前から先程のような指令がトロル達の間を幾度となく駆けめぐっている。

 おかげで、元々ルナにできるだけ大量のトロルを焼き払ってもらう腹積もりだったのだが、今の俺の狙いはその王とやらをドラゴンロアに巻き込みつつ、大量のトロルを焼き払ってもらう事へと切り替わっている。

 さて、ここで一つ問題があり、その問題とはどうやって王を見分けるのか皆目見当が付かない事である。

 ネルに聞いたら怒られそうだし、爺さんは元々宛にしていない。

 『何か言うたか!?』

 お、見分けられるのか!?

 『できたとしても教えんわい!』

 おいおい爺さん、強がるんじゃない、どうせできないんだろ?

 『……お、王だなんだと言うてもの、種族は変わらんのじゃ!王は人、ゴブリンキングはゴブリン、トロルの王もトロルなんじゃよ!』

 ……煽れば教えてくれるんじゃないか、と少しは期待してた自分が恥ずかしい。

 「仕方がない、か。」

 トロルの頭頂部に――別に電波が良く飛ぶ訳では無いのだが――立ち、覚悟を決めて耳に手を当てる。

 「ネル……聞こえるか?」

 [コテツ!怪我してない?全部終わった!?]

 「あーいや、今は大詰めって所だな。それでな、えーと、聞きたい事があるんだ。」

 [どうしたの?正体の分からない魔物からはまず逃げるのが鉄則だよ?それは覚えてる?]

 耳にたこができる程言い聞かせられた文句を確認してくるネルに軽く苦笑し、覚えてるからまぁまずは落ち着け、と伝える。

 「……下りろォ……」

 足蹴にしていたトロルがこちらに手を伸ばしながら発した抗議の声に従い、そのトロルの後頭部に長剣を突き立てて別のトロルの上に着地した。

 「よいしょっと、それでネル、早速本題に入るぞ。」

 [うん、いつも僕をからかわずにそうしてくれると嬉しいな。]

 「くはは、またまたぁ、この照れ屋さんめ。」

 [本題は!?]

 「そうだな、ネル、トロルと、トロルキング、かな?の、見分け方を教えてくれないか?」

 トロルの王様の呼称がトロルキングで合っているのか、少し自身無さげに質問を口にする。

 [どうしてそれを知りたいのか聞いて良い?]

 「……駄目。」

 素直な心の声が漏れ出てしまった。

 [一人?]

 「ルナがいる。」

 いるって言うよりは俺に背負われているのだが。ん?タイソンが近くにいないのに、このまま背負う必要はあるのか?

 まぁドラゴンロアを放てば疲れ切ってしまうだろうし、このままでいいか。

 [ルナだけ?]

 「ひ、一人じゃない、だろ?」

 [どうせ周りはトロル一色なんでしょ?]

 「いや、トロルキングが何処かにいるらしい。」

 [うん、トロル一色なんだね。はぁ、何か考えがあるの?]

 「ああ、えーと……」

 トロルの頭から頭へ次々と飛び移り、伸びてくる手から逃げ回りながら、ネルに事の概要を伝える。

 [分かった、トロルキングはね――ていうか魔物の王様全般に言える事だけど――他より体が大きくて、肥え太っているのがそうだと思うよ。あとは身の回りに強い護衛を付けてるから、統率の取れた集団がいたら怪しいと見て良いと思うよ。ただ、他のトロルを率いるだけあって、太ってても力はむしろ強いから気を付けて。]

 「了解、ありがとな。」

 [うん、またね。あと、たまにはアリシアにも連絡してあげること。あ、でもだからってボクに連絡しなくなるのはやめてね?]

 「はは、はいよ。」

 心配掛けてるなぁ……。ヴリトラ関係の事もさっさと終わらせて安心させないとな。……それからは何をしようか……いや、来年の事を話すと鬼が笑うらしいし、これ以上はやめておこう。

 さて、まずは目下の案件、他よりも図体のでかく、おテブなトロルを見つける事だ。統率の取れた集団がいればバッチリだ。

 足場にしてた頭を蹴り飛ばし、周りをザッと目でスキャンしながら次の頭に着地する。

 「お……王を、守れぇッ!」

 「……盾を、構えろぉッ!……何としても、我らが王をお守りするのだ……!」

 ん?

 トロルが互いに出している指示からして、かなり近くにいるはずだと思えば、前方の少し先に丸太をほぼそのまま使われた、イカダのような、分厚く巨大な盾が複数、こちらに向けられていた。

 ……あそこか。探すまでもなかったな。

 「ルナ。」

 「いつでも。」

 以心伝心、素晴らしい。

 「俺の向いている方向だ。思いっきり撃ってくれ。」

 「ええ、落とさないでね。」

 「あいよ。」

 返すと、ルナは左腕を俺の首に巻き付け、右掌をイカダの群に向ける。

 「至高の炎龍、バハムートよ!力の枷は疾うに無し!龍の威を我に貸せ!生死問わず灰と化せ!……」

 掴まれないよう、俺がトロルの頭を、ルナの手の平が常にトロルキングのいるだろう方向を向くように気を付けながら飛び回る間、ルナは朗々と詠唱する。

 「……ドラゴンロア!」

 ルナの放つ文字通りの大火力により、緑一色だった地は、真紅に上書きされた。

 辺りが前よりも静かになったのは、一変した光景にトロル達が押し黙っているから。そして猛々しい炎がその中の悲鳴をも薪として燃えているからではないかと思えてくる。

 「ハーッハッハッハ!そうだ!良いぞルナベイン!」

 いつの間にか俺の乗っている奴の隣のトロルの肩にバハムートが立っており、心底愉しそうに、ルナへ声援を送っていた。

 ちなみにトロル達は炎に気を完全に取られてしまったらしく、さっきから俺を捉えようとするのを止めている。

 「ハァァッ!」

 信仰する神の声援に応えてか、ルナの放つ炎が勢いを増す。

 「そうだ!俺の全てを吐き出させろ!」

 「はい!オォォ!」

 「良いぞ良いぞ!さぁもっとだ!気張れ!俺の力だ、こんな物じゃないのは分かっているだろ!?さぁさぁもっとだ!さぁさぁさぁさぁ……」「「……焼き尽くせッ!」」

 「ルナ!?それまでだ!もういい!」

 嫌な予感がし、思わずルナに向かって大声を上げる。

 「え!?あ……ごめんなさい、つい。」

 大火を一際巨大な物にした後、ルナは我に返ったように炎を放つのを止めた。

 今のは異口同音なんて物じゃない。何というか、まるでバハムートに……。

 「ああ……ここまでか。……いやいや、十分、十分だ!ハッハッハ!今年に入ってたったの数ヶ月、その間に全力に近い事を二度もできるとはな!」

 「なぁ、ルナがお前の魂を使っても激痛を伴わないのは、何か上手く細工してるからなのか?」

 ご満悦な様子のバハムートに切り出すと、片眉を上げて少し意外そうな顔を見せてきた。

 「ん?知ってたのか?」

 「申し訳ありません!えっと、コテツはその、世界を支える髭面の、お爺「クソジジイだ。」……あ、はい。クソジジイに聞いたと言っていました!決して秘密を漏らした訳では!」

 俺におぶさったまま、ルナが必死に謝る。

 『わざわざ訂正せずともよいわ!』

 ハッ、何を馬鹿な。

 「ああ、なるほど、あのジジイか。」

 「そうそう。」

 ほら、伝わった。

 『訂正しなくとも伝わったと言うておるのじゃ!』

 「それで、教えてくれないか?ユイが前にヴリトラの魂の欠片を使っていたとき、激痛で苦しんでいた。もし激痛無しで扱えるようになる方法があるのなら……」

 「無い。激痛を伴うってのはつまりヴリトラの野郎が協力を拒否してるって事だからな。……ハッハッハ!だからと言って俺がお前に魂片を渡すことは無い!一度に二人に貸してやってる時点でギリギリだからな!そう上手い話はねぇよ!」

 「……そうか。」

 協力してくれるかどうか、か。やっぱり俺に魔法使いの道は無理なのか……。

 『まだそんな事に拘っておったのか。お主はもう手品師で十分じゃろ。』

 誰が手品師だ!剣士だろ!一応、そのつもりだ……うん。

 「はぁ、取り敢えずルナがお前に乗っ取られる心配はしなくて良いんだな?」

 「え!?」

 本人は乗っ取りに気付いてなかったのか。案外ユイも手遅れになってから乗っ取られたことを認識したのかもしれん。

 「ハッハッハ!あれは俺が少し楽しみ過ぎただけだ!ドラゴンロアに意識して協力してやるなんて事はなかなかない機会からな!つい張り切った!すまないなルナベイン!」

 人魚の重装兵を撃退したときもそうだが、この頃ルナのドラゴンロアの威力が上がっていたのはバハムートの目の前でやっていたかららしい。

 「バ、バハムート様が謝る必要は!」

 ルナは慌ててあたふたし、彼女をおぶっている俺はバランスを取るためぐにぐにとトロルの頭を踏み直す。

 「……お、下りろぉ!……」

 それでか、思い出しようにトロルがこちらに手を伸ばし、俺は素早く作り上げた長剣を頭頂に根本まで刺し入れた。

 「……か、仇……」

 「王を、殺した……」

 「王の……仇!」

 すると、周りのトロル達は口々にそのような事を言って、倒れるトロルの上でバランスを保つ俺とルナを見た。

 「こ……殺せぇッ!」

 「「「「「ォォ……ォォォオオオオオ!」」」」」

 クソ、王を殺れば戦意喪失して逃げると踏んでいたが、実際は逆効果か!忠誠心なんて物、持たないでいてくれよ……バハムートは当然のようにいなくなってるし。

 『王の近くにいるのじゃ。そういう者が集まっているに決まっておるじゃろ。』

 ま、そうだな。……逃げるか。

 「ルナ、落ちないよう、しがみつけ。」

 「私も戦「今は戦わない。まずは逃げるぞ。」……分かったわ。」

 ギュッと背後からの圧力が強くなり、俺は黒龍と陰龍を握る。

 さて爺さん、我らがラダン軍はどっちだ?

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