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 転職勇者   作者: まずは深呼吸
第五章:賃金の出るはずの無い職業
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小休止

 鑑定!



 name:如意棒

 info:かつて天が地に落ちないよう、空を支えていた棒。しかしある罪を犯した巨人が罰として空を支える事となったため、その存在意義を失い、後に桃源郷とされる場所の池の底に捨てられた。その後、それを拾い上げた者と共に数多の怪異を討ち果たし、神威を纏うようになった。



 カンナカムイがよく両肩に担いでいた、赤に金の装飾の施された棒こそが、人魚撃退の報酬となる神器だった。

 ……棒術の使い手で俺の知り合いは……どんな武器も扱えるらしいバーナベルぐらいか?

 にしても、元々神威を纏ってた、じゃなくて、神威を纏うようになる、ね……そんな事が有り得るのか?

 『目の前のそれが何よりの証拠じゃろう?』

 なら俺もいつか神威を……『アホな事を言うておらんでさっさと現実を見よ。そして次に向かわんか。』……現実、ね。

 目の前には硬質な翼を横に大きく伸ばし、その流線型の巨大な体躯を限界まで地に付け、伏した雷龍。

 俺が今いる場所はルナ曰く観光名所でもある、雷龍の発着場、流星の野。

 こいつにまた乗るのか……乗せてもらえるだけありがたいと思うべきなのかもしれんが……はぁ。

 最高飛行速度を誇る古龍を見上げ、俺は暗澹たる心持ちでその背に乗る。

 「キシャァァァァァァァァァァァ!」

 そして世界がその境界線を失った。


 「お疲れのようですな。カンナカムイの飛行はかなりこたえたようで。」

 バン!と肺が潰れるような錯覚を覚えつつ龍の塔に着き、殺虫剤をかけられた虫のようにカンナカムイから剥がれ落ちると、派手な色の服を完璧に着こなした壮年の男が微小を浮かべてそう言った。

 「ぜぇぜぇ、たしか……ケツァル……」

 「そう、ケツァルコアトル、それが私の名前となりますな。立てますかな?」

 何とか声を捻り出すと、ケツァルコアトルは一礼し、自己紹介。彼が差し出してくれた手を握り、俺は立ち上がる。

 「どう、も。」

 「いえいえ、これから君達にしてもらう事を考えるとこれくらい何でもありませんからな。」

 良い人だなぁと思った瞬間、こいつも俺に厄介事を押し付ける一人だという事を思い知らされた。

 「ラダンに攻め込んできた人魚を撤退させましたが、それよりも?」

 「西での活躍は聞いております。ですがええ、そうです。何せ敵は何があろうと撤退しませんのでな。」

 「それはどういう……。」

 「ああ、ここにいては疲れも取れますまい、早く中へお入りください。出発は明日、昼頃でいかがかな?」

 聞き返そうとするのを遮られ、ケツァルコアトルはそう言って階下へと歩いていった。

 最後の質問にまだ答えてもいないのに……もう決定事項なのかね?まぁ別に文句がある訳ではないが。ていうか文句なんて言えないし。



 神威を纏った槍による連撃。その全てを弾き、流し、相手の動きのリズムに体を同調させていく。

 そして波長がピタリと合った瞬間、体を左に捻り、紙一重でロンギヌスによる突きをかわす。そして右足を蹴り出しつつ陰龍を放し、槍の刃の付け根を左手で掴み取る。

 「あ。」

 「オォッ!」

 そのまま引っ張り、右手だけでロンギヌスを扱っているリヴァイアサンに肉薄。その首目掛け、左肩付近に構えていた黒龍で水平に切り払う。

 しかしその途中で斬る目標を変更。俺は氷の刃を纏い、腹部に迫ってきていた左腕に黒龍を食い込ませる。

 「あら、バレていて?」

 「そう何度も同じ手に引っ掛かるかってんだ!」

 一度目は咄嗟に黒銀で受け止めたが、そのせいでペースを崩され、しばらく防戦一方にならざるを得なくなってしまった。

 槍から手を放し、ワイヤーを縮めて陰龍を手に握り直す。蒼白い斬撃がリヴァイアサンの体に斜めの線を描き、やっとの事でこの戦いは終わりを迎えた。

 ケツァルコアトルの言葉に従い、疲れを取るために階下に降りてきたというのに、待っていたリヴァイアサンが俺を見るなり「少し付き合ってくださる?」と言って襲い掛かってきたのである。

 「んふ、私負けてしまいましたわ。流石は黒槍のお人、素敵。」

 そのリヴァイアサンはロンギヌスをぽい、と脇に捨て、俺の腕に絡みつく。つい今しがた体を斬られたというのに、もう無傷に戻っている。

 ……神威等の知識無しでヴリトラと戦っていたらと思うと恐ろしいったらない。

 ちなみに俺が死ぬ危険性も別にない。円状に押し退けられたように見える長机の一つ一つには例の致命傷を受けた相手を無傷で外に放り出す魔法陣の一部が刻み込まれているらしいのだ。

 だからって本当にそうかどうか試す気概は俺にはない。

 「はぁはぁ、余裕そう、だな。」

 「私が疲れる前に決着が付いただけ。あなたは龍人リヴァイアサンに勝った、遠慮せず誇りなさいな。」

 リヴァイアサンに支えられ、長机の一つに座る。

 「ふぅぅ、それでどうして、急に?」

 「あのバハムートが全力を出して負けた事実を思うとつい滾ってきて……許してくださいな。」

 理不尽だ、こっちはバハムートに勝ったなんてこれっぽっちも思っちゃいないのになぁ……。

 俺のあのときの最後の拳は確かにバハムートの胸元を軽く抉ったが、致命傷足りえてなかったのは俺自身が一番役分かっている。なのにあそこで力尽きてしまったのだ。どこが俺の勝利なのやら。

 はぁ……にしてもこの調子だと今度はカンナカムイが遊び半分で襲い掛かってくるんじゃ……ほぼ確実に来るだろうな。撃退方法を考えておこう。

 しかし面白い発見もあった。

 ガチンコ勝負をするバハムートと違い、リヴァイアサンは精緻な動きで嫌な所ばかり狙ってくる戦い方だったのだ。古龍と言っても十人十色という事だ、カンナカムイはスピードに物を言わせる戦い方なのかもしれないし、ネルの戦い方の参考になるかね?

 ……こうやってプラス思考を保持しないとやっていられない。

 「はぁ……。」

 「……お疲れ様です、どうぞ。それでいつまでリヴァイアサン様と抱き合っているつもりですか?」

 ため息をつくと、ルナがコップ一杯の水と小言を携えてきた。

 「ルナ、よく見ろ、俺は一方的に抱かれてるんだよ。あと、ありがとな。」

 コップを受け取り、呷れば、心地よい冷水が体全体に染み渡る。

 ああ、運動後の水分補給ってのは気持ちが良い。

 「そう邪険になさらず。これでも私はあなたを伴侶とすることも考えていてよ?」

 「丁重にお断りする。」

 「あら残念。」

 リヴァイアサンが胸に俺の腕を埋めるように距離を縮めてくるが、こっちも慣れたもんだ。大して動揺はしない。

 だがルナは違ったらしい。

 俺がコップにもう一度口を付け、中身がもう無い事に若干の寂しさを覚えていると、その腕を掴んでリヴァイアサンと同じようにだが、リヴァイアサンとは俺を挟んで反対側に座った。

 「ルナ?」

 「……。」

 声を掛けるも、ルナはぎゅうっと俺の腕を全身で絞るのみ。当分放してくれそうにない。

 「はぁ。」

 「このような状況、男冥利に尽きるのではなくて?んふ、贅沢なこと。もっと楽しみなさいな。」

 一番楽しんでいるのはこのリヴァイアサンだと断言できる。

 「ああ、両手に花で幸せだなぁ、コンチクショウ!」

 投げ槍に言って、俺は諦めて体から力を抜く。

 それから結局ルナの気が済むまで、俺は水をもう一杯飲むこともままならなかった。



 [え、大丈夫なの?]

 ユイがまた目眩を起こした事を伝えると、ネルが驚いたようにそう聞いた。

 「ああ、今は休んでる。」

 [そう……。ところでさ、最近悩みがあるんだ、聞いてくれないかな?]

 「お、ついに恋人候補が……」

 [違う!]

 日課となっているネルとの会話は、いつも通り、からかいの言葉から始まった。

 [あのねコテツ、ボクの悩みは……誰かさんが!こん、なに心配してるのに!全っ然!言うことを聞いてくれないって事!]

 「ウワー、ナンテヤツダ。」

 ネルの力の篭った言葉におどけて返す。

 [こんの……誰のことかは分かってるよね?]

 拳を握り、細身な体をふるふる震わせているネルの姿が容易に想像できる。

 「……まぁほら、こうして生きてる訳だし、一応身の程は弁えてるって事で……[ふーん?]……ならない、か?」

 [ならないよもぉ!昨日は人魚100人と一人で戦ったんだっけ?]

 「いやいやいやいや、数十人だ。そんなに多くな……[多い!]……はい。」

 弁明するが、それでも怒られた。

 [ルナは?あの子はそのとき一緒にいなかったの?]

 「俺のサポートに回ってもらってた。」

 実際は脇で見ていただけだが。

 [……そう、じゃあ別にたった一人で立ち向かった訳じゃないんだね。]

 ネルの声が和らぎ、俺も内心ホッとする。

 「まぁ数的劣勢であるには変わりなかったけどな。」

 「アハハ、それでも一人だけよりは良いよ。ボクの忠告が全くの無駄になってなくて良かった。それで、今日は何しでかしたの?」

 しでかした、て……。

 「俺が失敗することが前提かい。」

 [まぁ経験上、ね。]

 「ふっ、だが今日は何も無かったぞ。リヴァイアサンと手合わせして勝ったぐらいか。」

 [古龍に、勝ったの?]

 「人型を取ってもらった上で、だからな?龍人って奴さ。本来の姿のときとは比べ物にならないぐらい弱い。古龍に勝ったと言ったって、まだまだだ。」

 敵の動きを全て目で追い、把握しながら戦う俺に対し、敵の微かな死角をピンポイントで突き、致命の一撃を狙うリヴァイアサンの槍術は相性が悪かったというのもあるだろう。俺の戦った感触としては戦いにくくはあったが、それだけだ。

 [そう……。]

 ネルの声色が暗い。

 「どうかしたか?」

 「え?あ、いや、その、コテツはさ、どんどん先に行くなぁって思ってさ。ボクなんてこの前、アイに完敗したし。」

 アイと戦ったのか?いや待て、えーと、この時期だから……

 「あ!学園大会の予選か!」

 [……うん。]

 「はは、まぁアイ相手じゃあ仕方ないさ。」

 勇者の一段階上の職に就いてるし、カイトの記憶を任意に消せる技術者だし。

 特に後半が恐ろしいったらない。

 [……仕方なくなんか、ないよ。]

 ネルはそう、自分に言い聞かせるように言う。

 しかしそれでも相手はあのアイだからなぁ、と思ってしまう。

 「お前も知ってるだろ?アイはスレイン王国の切り札の一人、勇者だ。そう落ち込む必要はないんじゃないか?それに俺は覚えてるぞ、お前が勇者の一人であるユイと善戦してたのを。だからそうくよくよするなよ。」

 [くよくよなんて!]

 「はいはい、すまんな。」

 語気を強めたネルに軽く詫びる。

 [……あのさ、ボクの目標が何か分かる?]

 「結婚相手探し。」

 そんな事を言ってる訳ではないことは分かってるが、反射的に言葉が出た。

 [帰ってきたら説教。]

 「お土産は奮発しておく。」

 [はぁ……、ボクの目標はね、コテツ、君だよ。]

 「俺はお前に殺されるのか?」

 そんなに不評を買ってるとは思わかなかった。お土産は熟考しなければならないようだ。

 [違う!]

 違うらしい。……まぁ流石にそんな事はないと分かってはいたが。目標って言ってたしな、標的じゃない。

 「はは、でもまたどうして?」

 [それは……えと、追いついたら、言う、よ……。]

 最後は消え入るような声でネルは呟いた。まぁそれでも全部聞こえたが。

 しかし、それなら俺の持っている成長率50倍のスキルの事は教えた方が良いんじゃないだろうか?これのおかげで俺は今の力を手にしているのはほぼ確実だ。

 『ほぼ?』

 うんまぁそうだな、確実にこのスキルがあったからこそだ。

 [コ、コテツ!明日は!?あ、明日は、どういう予定なのかな?]

 俺が黙っていたのをどう捉えたのか、ネルは少し焦って聞いてくる。

 「明日はえー、ケツァルコアトルと一緒にラダンの東側の問題を解決しにいくつもりだ。」

 「東の問題……何をするかとかは?」

 「はぐらかされて、まだ何も聞かされてない。ただ、また戦闘になるのは確実だろうな。ケツァルコアトルは敵が撤退しない、とか何とか言ってたし。……それよりネル、学園た[あ!]え?」

 学園大会の事をもう少し聞こうとし掛けたとき、ネルが声を上げた。

 [……ねぇコテツ、ラダンの東、スレインとの国境には何があるか知ってる?]

 「確か、木の柵が申し訳程度に並べてあったぞ。」

 [……随分と北から密入国したんだね?]

 「おう、ギガンテ雪山を登る必要があったから……な。」

 苦い記憶を思い出した。

 アルバート……。

 [嫌な事聞いちゃったかな?]

 「い、いや、何でもない。もう済んだ事だ。」

 常日頃心配をかけてるからな、これ以上気を使わせようとは思わん。

 [……えっと、それで国境の話なんだけど、北はコテツの言ったように申し訳程度の柵を使ってて、南はたしか……今は川を国境に使ってるんじゃない?]

 「そんな曖昧な認識で良いのか?」

 思わず口を挟む。

 国境って大切なものだよな?

 [だって数年毎に変わるからね。しかもどっちかが一方的に勝ったり負けたりしてる訳じゃないからさ、三年前と境が変わってても、六年前とはほぼ同じ位置ってこともあるんだ。]

 「だから一々覚えてられない、と。」

 [まぁ……うん。えへへ。]

 そう言って、ネルは少し恥ずかしそうに笑った。

 「自分の国なのに随分冷めてるんだな?」

 ふと気になったので言ってみた。

 [そんな事ないよ。スレインが勝てば嬉しいし、負けたら残念だって思うし。]

 それでも聞く限りだとネルはスレインの戦争事情を他人事みたいに感じているように思える。

 「それでも愛国心が強いって訳じゃあないだろ?自分とは違う種族を毛嫌いしてる様子もないし。」

 [まぁ、冒険者ギルドにいれば自然とそうなるんじゃないかな。まぁ少なくとも他種族に親しい人を殺されてない人達は。]

 「へぇ?」

 続きを促す。

 [戦争は冒険者が好んで挑む高報酬依頼って位置付けになるからね。それにエルフの職員さんも割と多いから、種族が違うなんてそこまで気にしてられないし。]

 「お前はルナもあっさり受け入れてたしな。」

 [ボクはむしろね、エルフでもなくて、力を示した訳でもないボクやアリシアをルナが受け入れた事の方が凄いと思ってるんだ。]

 「そうなのか?」

 [人間ってさ、獣人より身体能力が低くて、ほとんどの魔族とかエルフより魔力が弱いでしょ?]

 「ま、そうだな。」

 実際、異世界人として身体能力に補正があっても、素の状態では獣人には叶わない。

 [だからね、他の種族に人間は劣ってる存在って見られるんだ。だからこそ人間は他種族を毛嫌いしてるんだと思うよ。]

 「それはお前の持論って奴か?」

 [そんな高尚な物じゃないよ。ただ、エルフと話してると分かっちゃうんだよね、そういうのが。向こうも無意識なんだろうけどさ。……ボクが卑屈になり過ぎなだけかな?アハハ……。]

 ああ、だからネルはギルドマスターのレゴラスが苦手なのか。

 「人間は特に下に見られてる、ね。」

 ルナの実家での初日、奴隷はもう必要ないからと売り飛ばされそうになったとき、エルフ達が真っ先にその処分を免除されたことはまだ覚えている。

 [思い当たる事でもあったの?]

 「実は、かくかくしかじか……。」

 [まぁ人間の奴隷なんてそんなもんだよ。力仕事も魔法の行使も、他種族と比べると中途半端にしかできないからね。まさかユイやコテツみたいなのがいるとは思わないだろうし。]

 「なんだそりゃ、勇者のユイはともかく、まるで俺が人間じゃないみたいに。」

 [コテツの化け物先生って異名は伊達じゃないと思うよ?]

 「よし、お土産は無しだな。」

 誰が化け物だこら。

 [アハハ、まぁ帰ってきてくれさえすればボクは満足なんだけどさ。]

 「…………やっぱり奮発するか。」

 咄嗟の反応に困りそう言うと、ネルが笑いを漏らす。

 [ククク、そう照れなくても良いのに。素直に喜んで良いんだよ?]

 「念話切るぞ!」

 [待って待って、まだ肝心な事を話してないから。]

 [え、お前の結婚……]

 「もういい加減そこから離れてよ!はぁ……南と北の国境はそんな感じで、ボクが言いたかったのはその間、ちょうど山と平野の境目を隠すように“ティタ樹海”俗称“エルフの森”が広がってるって事。」

 エルフの森、ね。フェリル達が魔物に追い出されたっていう故郷で間違いないのだろうか?

 待てよその前に。

 「森が国境になってるのか?」

 なんてあやふやな。

 [国境というよりは、スレインともラダンとも違う、全く別のエルフの国だね。綺麗で自然豊かで素晴らしい場所……仕事仲間によく自慢されたよ。]

 「魔物とエルフの美的感覚が一緒だった、と。」

 [アハハ、昔に戻ってそう言い返してみたいね。でもそんな事言ったら今の君の仲間のエルフは絶対怒り狂うからね?]

 「忠告どうも。」

 [この忠告は聞いてよ?]

 「はは、信用ないなぁおい。」

 [心配しなくても、無事に帰ってきたら信用してあげるから。]

 「なら安心だ。」

 [で、知っての通りティタ樹海は魔物の巣窟になってるでしょ?]

 「そうだな。」

 目の前にいる訳ではないが、つい相槌を打つ。

 [だからそこに入るのはとても危険な事なんだ。ハンターの人達だって余程の理由がない限り態々その中に入らない。]

 ハンターというのは確か魔物狩りを専門とするSランク冒険者の、ギルド内での通称だったはずだ。

 そいつらすら入らないのなら……

 「そうなるとどんな魔物がいるか全く分からなくなるな。」

 [うん、まぁそれもだけど、一番の問題は魔物の数の間引きが難しくなる事なんだ。]

 「……ああそうか、そして森が魔物を抱えきれなくなって、そいつらが溢れ出る、と。」

 生態ピラミッドの原理みたいなので数は一定に保たれそうなものだが、事実としてそうはなっていないらしい。

 生態ピラミッドごと膨張したのだろうか?

 [そ。そしてたぶんコテツ達の仕事は溢れ出す魔物の大群を一掃することじゃないかな?]

 「なぁネル……」

 [ん?]

 「知らぬが仏って言葉があってだな……」

 要は知りたくなかった。

 [えっと、うん、頑張って。]

 「はぁ……。」

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