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 転職勇者   作者: まずは深呼吸
第二章:一攫千金な職業
13/346

13 職業:冒険者⑦

 「はぁっ!」

 元気な声と共に燃える火の玉が朝の空気を走り抜ける。

 しかし10m程先に垂直に作られた黒い板目掛けて飛ばされたそれは、板に掠りもせずに通り過ぎてしまった。

 「はは、また外れたな?」

 「うぅ……コテツさん、意地悪して的を動かしたりしてませんか?」

 笑うと、ちょっと涙ぐんだ緑の瞳がこちらを向いた。

 「こら、俺のせいにするんじゃない。ほら前を向いて、集中集中。」

 その柔らかいほっぺを指で突いてアリシアに前を向かせ、その触り心地のいい金髪をポンポンと叩く。

 ここはイベラムから少し離れた草原。

 “無駄な”調査報告の処理のためにギルドが一時的に通常依頼の発注を行えなくなり、ぶっちゃけ暇になってしまったため、今日は朝からアリシアと二人で、魔法の特訓をすることにしたのである。

 やり方は簡単。

 黒魔法で1メートル四方ぐらいの板を10メートル先に作り、そこへアリシアに火球を放ってもらうだけ。

 予定では火球を2秒間隔、5発連続で当たるまでやらせ、それができたら板を少しずつ小さくしていく……つもりだった。

 結論から言おう、アリシアの命中精度は想像以上に酷かったのである。

 どうも2秒間隔では難しいらしく、さっきから火の玉が四方八方に飛んでいっている。魔法の大きさそのものもまちまちだ。

 今の的を倍近く大きくしたとしても、当たるかどうかは怪しいと思う。

 「はぁ、はぁ」

 と、アリシアが肩で息をし始めた。少しふらふらしているのが後ろから見ていて分かる。

 相当疲れてるな。

 「アリシア、次は時間をかけて良いから、出来るだけ正確に狙え。」

 「はぁ、はいぃ。ふぅー、ふっ!」

 上下する肩を軽く叩いて言うと、彼女は自身に気合いを入れ直し、掌を前に突き出して、ゆっくりと魔素を集め始めた。

 彼女の周りに赤い光が浮かび、その赤色はゆっくりと彼女の手の前に螺旋を描くように収束。そこに小さな球を象っていく。

 爺さんによると、この魔素を集めて魔法現象を起こすという行程の間に無色の魔法をぶつければ、魔法を一方的に霧散、ないし乱すことができるらしい。

 ただし魔法が完成した後だと、それに使用された量と同じかそれ以上の魔素を用いなければ魔法を打ち消したり軌道をそらしたりすることはできないそう。

 そして忘れてはいけないのは、無色魔法において、用いた魔素の過剰分は単なる無駄に終わること。

 つまり、敵の魔法を打ち消した際、大抵の場合、無色魔法の使い手の方がより消耗するのである。そしてだからこそ、無色魔法専門の魔法使いなんていないのだ。

 『あー言い忘れておった。氷や土の塊ならともかく、炎や水などならばその中心から無色魔素を放出させることでも魔法を崩壊させられるぞ?』

 そうかい。ま、中心から無色魔素を放出するなんて、イメージが上手く湧かないけどな。

 そもそも魔法はその場に留まってるんじゃなくて、こっちに飛んでくるんだぞ?至難の業だろ、それ。

 『腕を突っ込め。あの体に魔素を通す技術ならば不可能ではなかろう?』

 アホか!もし魔素が足りなかったら直撃じゃねぇか!

 『お主の魔力ならそんなことはそうそう無いじゃろ。』

 手を魔法に突っ込まなきゃいけなくなる状況自体、そうそうあって欲しくないわ!

 ……無駄話はやめて、アリシアの訓練に意識を戻そう。

 『無駄じゃと!?』

 無駄だ!

 さて、彼女の魔法発動体は訓練中は使わせていない。

 理由は簡単、それに頼って一人前、ではなく、それによってさらに強くなるようになって欲しいから。

 だがしかし、ここまで酷いとなると、まずは成功体験をさせる為に使わせるべきだったかもしれないとも思い始めた。

 「ぅ……。」

 と、アリシアの手元の魔素の流れが乱れ始めた。その手元に集まる速さも出鱈目になる。

 「はぁっ!」

 そうして発射された火球は、案の定、明後日の方向に飛んで行った。

 ……この子の魔法の問題点が分かったかもしれない。

 「なあ、アリシア。」

 「……すみません。」

 こちらを振り向かないまま、アリシアがしょぼんとして肩を落とす。ちっちゃなため息まで微かに聞こえた。

 失敗続きが余程堪えたらしい。

 「いや、いいんだ。それよりアリシア、お前は魔素を一回体の周りに集めて、それから手元に向かわせるんだな?」

 その金髪頭を撫でてやりながら彼女の前に回り込み、屈み込んで緑の目を覗き込みつつそう聞くと、アリシアはコクリと小さく頷いた。

 「はい、神官様に、そう集めるようにすれば、より楽に魔法を行使できると。」

 なぁるほど。それが原因か。

 俺が剣を作るときは直接手元に魔素を集めるのに対し、アリシアは魔素を体の周りにわざわざ一度集めてから、手へ移動させて魔法を発現させている。

 その2段階の操作が魔法の失敗を誘発しているのだと思う。

 工程を2段階に分けることで集める魔素の量を正確に調整でき、魔素を扱う魔力に関して言えば、確かに多少の楽ができるだろう。

 しかし、それは少なくとも実戦向きではない。

 魔素の量が正確になり過ぎるのだ。

 手元に集める最中、ほんの少し手元が狂って魔素を逃がしてしまったとき、それを余剰の魔素で補う事ができず、魔法の質が粗くなる。

 加え、2段階に分けると魔法の発動までに時間がかかり過ぎる。

 「アリシア、手のひらの上に出来るだけ速く火球を出現させて、維持してみてくれないか?」

 「はい。」

 アリシアの頭から手を離してそう言うと、泣きそうだった彼女は口を引き結んだまま小さく頷き、さっきまでと同じように火球を作り上げた。

 かかった時間は約5秒。

 「今度は俺が黒い球を作るのを見ておけ。ああ、火球は維持したままでいい。」

 言いつつ手の上に魔素を集め、黒い球を形作る。ここまで2秒。

 「アリシアより圧倒的に速いだろう?なんでか分かるか?魔力の違いは別として、だ。」

 「威力を抑えたんですか?」

 「いや、違う。」

 首を横に振り、球をアリシアの火球に飛ばして当てる。

 火球はかき消された。

 「な?俺の魔法の威力はアリシアの火球と同じかそれ以上だ。」

 もし威力が低ければ、火球はゆらぐか少し弱まるだけに留まっていた筈だ。

 「……そうですね。」

 そしてアリシアの顔に浮かんだ不満気な顔に、俺は思わず苦笑してしまった。

 「はは、もう一度集めてみようか。同時にだ。」

 「(コクリ)」

 「いくぞ、せーの。」

 晴れない顔のまま頷いた彼女と、もう一度魔法の球を作り始め、そして、当然俺の方が速くでき上がる。

 「分かったか?」

 俺の手元を熱心に見詰めていたアリシアに聞くと、緑の目が輝いた。

 「分かりました!魔素を手元に一気に集めてしまうってことですね?」

 そりゃよかった。

 あとは本人に手取り足取り教える以外の教え方を思い付かなかった。

 「その通り。あと、魔素は多めに集めて良いからな?手元で量を微調整するんだ。」

 「はい!」

 良い返事だ。

 「よし、じゃあ俺は昼御飯食べておくからな。」

 「え?お昼ご飯ですか?」

 懐から弁当を取り出すと、アリシアが怪訝な顔になる。

 「満腹亭を出るとき、アルバートにもらったんだよ。」

 「わぁ!なら一緒に食べましょう!」

 にこにこ笑いでアリシアが言う。

 「できたらな。」

 言った瞬間、しゅん、と彼女の顔が曇る。

 「……できるだけ待ってやるから。」

 「はい!」

 そして罪悪感に負けた俺がそう言うと、アリシアはまた嬉しそうに顔を輝かせた。

 ……表情筋大活躍だな。

 それから試行錯誤、四苦八苦、七転八倒を繰り返し、アリシアは頑張った。

 始めは集めた魔素が少なすぎて火の粉しか出せなかったものの、しばらくしてコツを掴んだのか直径十センチほどの火球が作れるようになってからは、アリシアは火の玉のサイズを段々と大きくさせていった。


 日が真上に上った。

 暇を持ち余し、俺は黒魔法製の弓矢でアリシアがやるはずだった訓練を自分でやっている。

 最初の命中率こそ酷かったものの、爺さんがわざわざ最寄りの弓使いの冒険者を上から見たり、その知識と照らし合わせたりしながら俺にアドバイスをしてくれ、我ながらなかなかの腕前になったと思う。

 これはもう、感謝するしかないな。

 『うむうむ。』

 念話能力を貰うことを選んだ俺を。

 『なっ!?』

 ん?どうしたんだ、俺を殺した爺さん?何か言いたいことでもあるのか?

 『くっ、じゃが少しは感謝してくれてもいいんではないかの?のう?』

 へいへい、ありがとさん

 そんなわけで俺に才能があったのか、今では五センチ四方の板に百発百中である。

 『スキルのおかげに決まっておろうが!』

 知ってるよ!前も言ったけどな、少しは夢を見させろや!

 ……さて、さらに弓の練習したいものの、流石に腹が減ってきた。

 ふとアリシアの方に目を向ければ!彼女は的当てをようやく開始するところ。

 「アリシア、もう食って良いか?」

 草地の上に置いた弁当の前に座り込んで聞くと、アリシアはこちらに目を向けないまま首を横に振ってみせた。

 「いえ、すぐに終わらせるので待ってください。」

 「はいよ。」

 両手を地につけて体重を預け、魔法の発動が見違える程早くなったアリシアの訓練模様を眺めていると、ふと気になったことがあった。

 ……アリシアの奴、的を意識し過ぎてるな。

 手元にだけ目を向けるのは視野が狭まるし、良くはない。ただ、魔法の最後のチェックぐらいはやっておいた方がいい。

 手元に無色の球をこっそり作る。

 これはこれからも結構使いそうだし、無色弾とでも名付けるか。

 そして、アリシアが魔法を撃ち始めた。

 1、2、3発全てが命中。

 ここで無色弾を発射し、アリシアの手元に集まる魔素をかすめさせる。

 魔素を散らされ、魔法が揺らぎに揺らいでいるのに、アリシアは的に集中していてそれに気付かいない。

 そして、案の定4発目の火の玉は、明後日の方向に飛んでった。

 「最後だからって力むんじゃないぞー。」

 「はい!」

 それが8回ぐらい続いた。もちろん妨害するタイミングは逐一変えた。

 「アリシア、食って良いか?」

 「いえ!今度こそは!」

 あーあ、そんなに的に集中したら物凄く妨害しやすいぞ?

 はい、外れました。

 「うぅ、なんで……?」

 あ、まずい。泣きそうだ。流石にやり過ぎてしまったかね?

 ここらへんでアドバイス、というよりヒントをやるか。

 「アリシア、手元にもう少し集中したらどうだ。」

 「ぐすっ、分かりました。やってみまず。」

 罪悪感が半端ない。

 1、2、3、4発全てが命中した。もちろん妨害していないからだ。

 するとアリシアが調子づいてきて、また手元の確認がおろそかにしてしまう。

 5発目は外れた。理由は、まあ分かるだろう。

 あ、アリシアが崩れ落ちた。

 「なぁ、食って良いか?そろそろ冷めるし。」

 「ぐずっ、あと一回、ヂャンズを下ざい。」

 「いいぞ、手元をおろそかにするなよ。」

 「はいぃ。ありがとうございます。」

 いやぁ、ありがとうもなにも俺が悪いんだからな。いくらでも譲歩してやるさ。

 アリシアが魔素を集め、1、2、3発全て命中した。

 ここで無色弾を放つ。

 そして今回、彼女は言いつけ通り、しっかり手元にも気を配っていた。

 無色弾が魔法をかすめる。

 火の玉が大いに揺らぐ。

 「あ!」

 慌てて魔法を調整し、球形に維持するアリシア。

 あ、こっち見た。わぁ、めっちゃ睨んできてる……。

 俺は弁当を黒魔法で覆い、ゆっくり、自然に、そーっと立ち上がってアリシアに背を向ける。

 この後の展開はだいたい予想が付いている。

 ……よーい……

 「コテツさんの、バカぁぁぁ!」

 ドン!

 走り出した俺の背後からは無数の火球。何発も連射してきているというのに、最初とは考えられない程の精度に内心かなり驚いた。

 かなりの命中精度になったな。うん、教えたことが身に付いたようで何より。

 罪悪感もあり、黒手袋で魔法をはたきおとしたり迎撃したりはせず、俺はただひたすらに逃げ続けた。


 「ほ、ほら、アリシア。うまいぞ。」

 「ふん。」

 草地に正座し、アルバート特製のお弁当を差し出すも、隣に座るアリシアは俺に目を合わせようともしない。

 何でだろう?

 『はぁ……。』

 まぁ、うん。俺が全面的に悪かった。

 「なぁ、悪かったって。ほら、食べ物に罪はないんだ。」

 そう言ってもう一度弁当を差し出す。

 アリシアはぷいと顔を背けた。

 泣きたい。

 『自業自得じゃろうが。』

 足が痺れてきた。

 と、ぐぅーと誰かの腹が鳴った。

 俺じゃない。

 俺を頑なに見ないアリシアの耳の裏が真っ赤だ。

 「すまん、俺の腹が減ってるんだ。一緒に食べよう、な?」

 まぁさすがにこれ以上の追い討ちは酷いので俺のせいにしておいた。

 「しょうがありませんね、食べ物に罪はありませんからね。」

 するとアリシアはそう言って、ようやく弁当を受け取ってくれた。



 イベラムに戻り、俺は満腹亭に向かっていた。

 アリシアをおぶって。

 どうしたら許してくれるか聞いたら、彼女はこれを所望したのだ。

 彼女は特段重いわけでもなく、イベラムに着くまでは大した罰ゲームじゃあないと思っていた。

 しかし、彼女はイベラムに入ってからも……

 「なあ、いい加減、許してくれないか?」

 「ダメです。コテツさんはそれだけの罪を犯したんです。」

 ……終始この調子なのである。正直周りの目が恥ずかしい。

 「あれはお前のためを思ってだな。」

 「そうなんですか?」

 「ああ、狙いが狂ったら魔法が外れるだけでも、手元が狂うと暴発の危険性もあるからな。」

 「へぇ、そうなんですか。」

 すまん、知らない。

 想像力を働かせて大袈裟に言っただけだ。

 「だから許してくれないか?」

 「ダメです。人の努力を弄んだんですからこれは当然の罰なんです。」

 くっ、こうなったら……

 「はぁ……、分かった。満腹亭までだよな?」

 「はい、それで許してあげましょう。」

 「よーし。」

 「……え?」

 全力疾走。

 俺達は風となった。


 満腹亭到着!

 中に入り、アリシアを下ろす。

 「よし、着いたぞ。」

 「はぁ、はぁ。コテツさん、覚えていて下さいよ。ぜっったいに後悔させますから。」

 「ま、頑張れ。」

 俺はアルバートに弁当箱を返しに厨房へ向かった。そこではローズとアルバートが仲良く二人で皿洗いをしていた。

 「うまかったぞ、アルバート。」

 「そうか。」

 「ねぇ、何しに行ったの?」

 「アリシアの魔法の特訓だ。」

 「コテツは何をしたの?明日受付のネルさんと戦うんでしょ?」

 「え、広まってるのか、それ?」

 「うん!みんな噂してるよ。」

 「そうかぁ。あ、そうだ。なぁローズ。」

 「なになに?」

 「賭けってやってるのか?」

 世の中なほとんど全ては賭け事になり得る。きっとやっているだろう。

 「もちろん、当たり前でしょ。ちなみにみんなネルさんが勝つ方に賭けたから、賭けを成立するために私とお父さんはコテツに賭けてあげたよ。」

 別に賭けを成立するために、とか言わなくてもよくないか?

 「あはは、そりゃ頑張らないとな。」

 正直、負けるとは思っていない。

 何せゴブリンキングを倒すのにSランク相当の実力が必要らしいし、翻ってネルはAランク。しかもブランク付きだ。

 それでも一応、衆人環境ならネルを立てないといけないだろうしな。

 どうしよう。

 「アリシア、聞いたな。」

 「え?」

 「俺の勝利に全財産賭けるぞ!」

 ま、取り敢えずファーレン行きの足掛かりにさせてもらおう。

 「じゃあ明日までの宿代を出しておいてくれ。」

 アルバートがあまりにもあんまりなことを言ってきた。

 「少しは信用してくれよ。」

 「満腹亭として、ただで泊める訳にはいかないからな。」

 まぁ、仕方ないか。

 「アリシア、頼んだ。」

 「はい、分かりました。」

 「うわー、女の子に払わせるんだ。」

 半眼でローズが言う。

 「いや、金は全部アリシアに持たせてるんだよ。神の領域っていう便利なスキルを持ってるからな。」

 「あ、コテツさん、便利なんて言ったらアザゼル様に失礼ですよ。」

 『そうじゃそうじゃ!』

 黙ってろ爺さん。

 「はは、はいはい、悪かったよ。」

 金髪頭を撫でて謝る。

 「へぇ、アリシアって信頼されてるんだね。」

 「うふふ。」

 そしてローズが少し驚いたふうに言うと、アリシアは嬉しそうに笑った。

 「ま、冒険者になった今じゃ金が無くなったとしてもすぐに稼げるしな。」

 「……そうですか。」

 しかし俺の言葉で一転、アリシアの声が少し沈んだ。

 どうしたんだ?

 「えっと、アリシアだってこのまましっかり魔法を練習すれば稼げるようになるさ。」

 「そうですね。」

 あ、しまった。今のアリシアには特訓の事を思い出させちゃいけない。

 さっさと話題を変えよう。

 「とりあえず夕飯を頼むよ。そうだな、縁起の良いもので頼む。」

 「縁起か、良いだろう、任せろ。」

 「わぁ!楽しみです!あ、それと、お金を賭けるにはどうすれば良いんですか?」

 お、アリシアの声がいつもの底抜けな明るさに戻ったな。やはり食べることが嫌いな人間はそうは多くないらしい。

 「私に渡してくれれば問題ないよ。」

 「じゃあはい、どうぞ。」

 ドサッと音を立てて布袋がカウンター台の上に置かれる。

 「うわ、すごい量。本当に全部賭けちゃうの?たぶん勝っても賭け金が足りないよ?」

 「別に本当に全財産を賭けられなくたって、貰えるだけ貰えたらいいさ。」

 「そう?良かった。じゃあこれだけ受け取っておくね。」

 ローズはそう言って、袋から金貨を数枚取り出し、厨房に戻っていった。

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