115 出発
新たなパーティー結成の決断式のような物とSランク昇格祝い、そして俺の二つ名決定記念ということで満腹亭で一頻り騒いだ後、俺は自分の部屋に戻るやすぐさまベッドに寝転がった。
ルナとユイが懲りずにまた大量の酒類を頼むのを阻止し、“いい子は寝る時間だ。”ってことで二人をさっさと部屋に放り込んだからこそ、こんなだらしない姿でいられる。
今なら牛になったって本望だ。
『お主は普段からだらしないじゃろ。』
……反論できないから辛い。
さて爺さん、いよいよこの旅の本番だ。方針を決めるぞ。
『はぁ、二ヶ月も使ってしまいおって……。まぁいい、過ぎたことは過ぎたことじゃしな。』
ああ、そうだな。助かる。
で、神の武器は一番近いところでどこにある?
『それじゃと、ティファニアとなるが……。』
そんなの、どうせどっかの騎士の装備品だろ?まだ手付かずの奴で頼む。
『聖武具を盗むのに躊躇なぞ無いくせにのう。』
勇者以外誰も使えないんだ。カイト達の持っていない聖武具は俺の中じゃあ持ち主のいないのも同然だ。
『言うておくが、手に入れたとて、本来の力は発揮できぬぞ。精々が聖剣の元となった魔剣としての力を使えるぐらいじゃ。』
攻撃が通るならそれで良いさ。
『それと、いくら異世界人のお主でも、気を抜けば怨嗟の声に飲み込まれることを忘れぬようにな。』
なんだ、随分と否定的だな?
『じゃってわしの教会から盗むことになるんじゃし……。』
俄然やる気が出てきた。
『罰当たりめ。』
何を今更。神様への敬意なんてこっちはハナから持ってないぞ?特に爺さんにはこれっぽっちもない。
『まぁ、じゃろうな。何にせよ、神の武器と聖武具では込められた神威の量は違う。そういう面でも厳しい戦いになるが、それでも聖武具を狙うのかの?』
厳しい戦いになるのは元々覚悟してたさ。使えるものは使わないとな。
『うむ、それもそうじゃな。それで物の場所じゃが……ふむ、少し離れておるが、ヘール洞窟に一つあるのう。』
洞窟かぁ。
他にはあるか?ていうかいくつある?
『後はギガンテ雪山に一つあるぐらいじゃの。ほとんどはティファニアや有力な貴族の家に集まっておる。』
……なぁ、貴族がそれらを使えばヴリトラは倒せるんじゃないのか?
『お主はファーレンで体感したじゃろう?武器がよくとも、その武器に頼っておっては意味がないわい。教師になったときもほれ、ほとんど何の効果もない武器を使うお主に負けたじゃろ?』
いや、だからって俺が使いこなせるとは限らないと思うぞ?ただでさえ、俺が使いこなせるのは双剣とメリケンサックみたいな奴だけなんだ。
神の武器が具体的にどんな形かは爺さんじゃどうせ分からないんだろ?
『うむ、じゃからこそ数を集めるんじゃよ。お主が使いこなせる物を手に入れられる可能性もある上、なければないで、数があればなんとかなるかもしれんじゃろう?』
下手な鉄砲数打ちゃ当たるの理論か。確かに、たとえ使いこなせていなくても、やたらめったら攻撃すればいつかヴリトラを倒せるかもしれないな。
『今は、その数を増やすのが現実的じゃろうな。数十本は無理かもしれんが、3、4本あるだけでもヴリトラと相対したときの心のもちようは変わる。』
まぁな。
それに、ファーレンには俺以外にも使い手はいる。俺が使いこなせなくたって他の誰かが使えるかもしれない。
しかし、洞窟と雪山、かぁ。面倒臭いな。
『じゃからこそ他の人間に発見されておらんのじゃよ。なんじゃ、だだっ広い平原の岩か何かに突き刺さっているとでも思ったか?』
できればそうであって欲しかったよ。
『得られる物は苦労に見合った物じゃろ?ヴリトラを無事封印できた暁には、集めた物を売っぱらって大金を手に入れてもいいんじゃ。損ではあるまい。』
馬鹿野郎。ヴリトラを倒したらエルフ達に渡す約束だろうが。
まぁ取り合えずスレイン内にある神の武器……面倒臭いな、神器は二つしか手に入れられないってことで良いか?
『神器……うむ、いい響きじゃ。実際、パンドラの箱のように武器ではない物もあるからのう。』
ちょっと待て。今なんて言った?
『ん?』
俺達が必死に探索してようやく見つけた物が武器じゃないかもしれないってのか!?
『パンドラの箱もそうじゃったろう?』
ハズレくじもあるんかい!
『神の力によって作られし物をハズレとはなんじゃハズレとは!武器でなくても、いや、武器で無い分その効果は目を見張るものがある……はずじゃ。』
おい最高神。
『わしが他の神の動向を完全に掌握していると思っておるのなら大間違いじゃ!そもそもやろうとも思わんわ!面倒臭い!』
……最悪、それで殴るってのはアリか?
『まぁ、神威は宿っておるから有効じゃろうな。じゃが、バチが当たっても知らんぞ?』
最高神の威光でも使って阻止してくれ。
『んなもんないわい。』
知ってた。
『状況が状況じゃ。努力はしてやらんでもないが。』
それは果たして報われる努力なのかね?
『さての?そもそも努力の価値が分かるのは努力したずっと後じゃし。』
はぁ……。
『ま、そのときはそのときじゃ。腹をくくってしまった方が良かろう。』
そうか、仕方ない。そのときはそうするか。
で、ラダンはどうだ?
『侵入のしかたを考え付きでもしたのか?』
いいや、それは追々考える。何か状況の変化があるかもしれんしな。
『ないじゃろ。』
まずは信じてみないと。
『それならまずわしを信仰するというのはどうじゃ?いつも協力してやっているわけじゃし。』
寝言は寝て言え。
『神は眠らん。』
うるさいな。
ったく、何で爺さんみたいなのの信者が一番多いんだろうな。鰯の頭も信心からってことか?
『やかましいわ!』
へいへい。
で?
『あ?』
ラダンの神器は?
『今の流れで教えるとでも思っておるのか?』
あーあ、爺さん、ついにそこまで落ちたか。自分の感情を優先して信者達がヴリトラに襲われても知らんぷりか。へぇ。
『ハッ、別にお主に拘らんでも良いのじゃぞ?適当な信徒を選べば良い。』
そんなことしたら教会組織内で下克上が起こるぞ?
神の声を聞いたからって言って自分の地位を高めようとするのは目に見えてる。出世欲のない人間なんてそうそういないだろ。
『ぐ、そうとも限らんじゃろ?』
かもな。何にせよ、そんな聖人を探すのに一人一人の人となりを調べて一体何年かかるんだか。
その頃にはヴリトラはもう完全に復活してるんじゃないか?
『だぁー!分かった。教えれば良いんじゃろ?教えれば!』
おう、頼む。
それに俺から爺さんに強制的に念話ができることを忘れるなよ?俺が死ぬまで頭痛が続くぞ?
『未練たらたらのへたれのくせによう言うわ。』
ミヤさんのことはもう断ち切った!いつまでもそれで俺をいじれると思うなよ?
『ほほぅ、ならばあの新しく仲間になったエルフ、シーラだったかの?が、女のエルフだと分かったときにお主は何を考えた?ん?ん?』
やっぱりエルフは綺麗だなぁって……。
『フォッフォッフォ、嘘は見苦しいぞ?お主がわしに強制的に念話をすることができるように、わしも神の権限でお主と勝手に念話を繋げることができるんじゃ。うっかり漏らした心の声は聞かせてもらったからの?』
黙らっしゃい!
『お主はストーカー予備軍と言われても仕方ないのかもしれんのう。』
呼ばれた記憶なんざ一度もないわ!
さっさとラダンにある神器の数を教えろ!
『ん?場所は良いのか?』
ま、どうせ覚えられないからな。ラダンに入ってからは爺さんに改めて案内を頼むさ。
『うむ、そのときはそうしてやろう。ラダンにある所有者のいない神器は二つ。ちなみにヘカルトには三つじゃ。』
つまり多くて7つの神器が集められるってことか。
『順調に行けば、じゃがな。』
7つで足りるか?
『物によるの。神相手に全く使えない神器もあるからのう。ヴリトラに対してと考えるのならわしの作ったカラドボルグもその一つじゃな。ヴリトラは魔龍、魔法のかなり達者な古龍じゃ。火の玉なんぞ飛ばしても意味はあるまい。』
さすがは爺さんの作った武器だな。肝心なところでポンコツだ。子は親に似るとはこのことか。
『元から神を倒そうとして作ってなどないわ!わしほどになると皆に恐れられて攻撃されることもないんじゃよ!』
そりゃまぁ、この世界を支えてる奴をわざわざ攻撃しようとするアホなんざいないだろ。
……なぁ爺さん、またこの下らない問答を始めるのか?
『始めたのはお主じゃろうが!』
眠気が襲ってくるまで、俺はそうして爺さんと当たり障りのない問答を続けた。
「てなわけで、ヘール洞窟が次の目的地だ。」
満腹亭の一階、食事処にて、新設パーティー〝ブレイブ〟の一同の前に立ち、俺はこれからの動きを伝えた。
他の宿からわざわざ朝御飯を食べるために満腹亭まできている(それだけ満腹亭の飯が美味いのだろう。)シーラとフェリルは微妙な顔を浮かべた。
「ヘール洞窟……ずいぶんと遠いのね。」
「そんな、せっかくイベラムで友達が新しく十人できたのに……。あ、いや、うん、もちろん行くよ。」
フェリルはシーラに睨まれ、ヘール洞窟行きに乗り気になってくれた。
……そう信じよう。
「シーラはそれで良いか?」
「ええ、元から貴方達の手伝いをするって約束だったでしょ?」
「助かる。ユイとルナは?」
「必要なことなのでしょう?文句はないわ。」
「ご主人様のおっしゃるとおりに。」
「よし、じゃあ肝心な移動手段は……「あ、私達の馬車を使って。」……ん?持ってるのか。」
俺の黒魔法で飛んでは休みを繰り返せば良いと言おうとしたところでシーラがそう言ったくれた。
「うん、馬車は便利だよ。倒した大きな魔物を持って帰れば儲かるからね。」
そう言って、フェリルは左の中指と親指でお金を示す仕草をした。
……まぁお金が大事なのには同意する。
「御者は?」
「私達はエルフよ?人間みたいに野蛮な器具をつけることなんかしない。馬達にお願いを聞いて貰うの。」
そりゃまた便利な。
「ヘール洞窟に行くの?」
元気な声で聞いてきたのは俺達の朝御飯を載せたお盆を片手に持ったローズだった。
「ああ、しばらくはイベラムを離れることになるな。」
「そっか、またお客さんが二人も減っちゃうかぁ。うちとしては大きな穴だなぁ。」
しみじみと言うローズに俺は苦笑いを浮かべるしかない。
「そんなことはない。」
しかし、フェリルは違ったようだった。
「ここは良い宿屋だよ。部屋は過ごしやすいし御飯も美味しい。そして何より、君のような美しい女性を見ることができるんだから。」
……ここまで来ると凄いな。ここの部屋なんて見てもいないくせに。
「嬉しいけど、もう好きな人がいるから、ごめんなさい。」
不快感なんぞ全くないかのようにペコリと頭を下げるローズ。こういう対応は慣れているらしい。
「残念。でも気が変わったらいつでも……「なぁフェリル。」ん?どうしたんだい?」
「コテツさん、しっ。」
「え?」
ローズがもう結婚していること伝えようとすると、そのローズ本人がこっちを見て口に人差し指を当てて俺を止め、その仕草のまま目の動きだけでフェリルの後ろを示した。
「あ。」
思わず声が漏れる。
そこではシーラが般若の形相でフェリルを睨んでおり、その隣ではおそらくフェリルに拳骨でも食らわせようとしていたのであろうゲイルが身を引いて佇んでいた。
ゲイルは自分の出番が無いことを察したらしい。
俺と目が合い、お互いに苦笑い。
そして俺達は、自分の置かれている危機的状況に全くもって気づいていない、言ってしまえば狩人失格な、しかし、可哀想なエルフの行く末を見守った。
「ヘール洞窟の近くで、ギルドの支部がある街ってあるか?」
ギルド受付にて、俺はセシルにそう切り出した。俺以外の四人はヘール洞窟周辺や行き掛かりでの依頼がないか探してもらっている。
「ヘール洞窟に行く?」
「ああ、そこで目的を果たしたらギガンテ雪山にも行こうと思ってる。」
「トレジャーハンターだった?」
「それは宝探しが目的の冒険者ってことか?」
「そう、冒険者ギルドの中ではSランク冒険者をその目的ごとに分類している。ひたすら魔物を殺す冒険者はハンター。そして隠された宝を探す冒険者をトレジャーハンター。」
「まんまだな。」
全く持って名前に捻りが感じられない。
「一々捻りをいれる必要はない。」
そりゃそうだ。
「じゃあ何か別の目的のために純粋に力を付けようと思って冒険者をやってる奴はどうなんだ?」
「それは冒険者ギルドには関係ない。魔物を狩って強くなろうとするならハンター。強い武器を探しているのならトレジャーハンター。」
「わざわざそんなことを言うってことは何かしらのサポートでもしてくれるのか?」
「しない。」
しないのかよ……。
「それで、ヘール洞窟に近いギルドは……」
「無い。言うならここ、イベラムが一番近い。」
「……マジか。」
「ん。」
机の下から巻物を取り出し、広げられる。
「これは?」
「スレインの地図。」
「ほぅ。」
考えてみるとスレインの地図を見るのって始めてだ。案内は全部爺さんに任せていたからなぁ。
さて、地図だ。
大陸を三分して統治している三つの大国の内の一つであるスレインというのは、東西をラダンとヘカルトに挟まれた台形に近い国だった。
この地図はどうもスレイン全体を表した地図らしく、外国は西にラダン、東にヘカルトがあることしか分からない。
「ここが首都のティファニアでここがイベラム。」
「ほうほう。」
ティファニア南の海岸とスレイン王国の中心の丁度間ぐらいに位置しており、そこから少し北西に行ったところにここ、イベラムがある、とセシルは指で指し示しながら教えてくれた。
「ちなみにここがヌリ村。」
スレインの南東の海岸付近を指し示すセシル。
「へぇ、ファーレンはここらへんか?」
言いながら、地図の南端のさらに外側の机を軽く叩く。
「ファーレンはそこまで遠くない。だいたい……ここぐらい。」
セシルは俺の言葉を否定し、地図の南端からホンの少し南の位置をトントンと叩いた。
「なんか泳いでいけそうだな。」
「やっぱり馬鹿。なんでネルはこんな奴……。」
「冗談だって。」
勿論、大陸を三分している国の一つを一枚の紙に収めていることからかなりの縮尺を用いられていることは分かっている。
「はぁ……ヘール洞窟はここで、ここがギガンテ雪山。」
呆れたようにため息を吐きながら、セシルはそう言ってさらに地図の2点を指し示してくれた。
ヘール洞窟はスレインのど真中からちょっと上。ギガンテ雪山は北端の左よりにあるらしい。
「そして、スレインの北半分のほとんどは山岳地帯。つまり、魔物の住処。」
続いてスレインの北半分を囲むように指で大きな円をなぞり、セシルは淡々とそう教えてくれた。
「じゃあ魔物だらけだと?」
「そう、山は危険。だからそこで働こうとする人は少ない。そんなところにギルド支部は置けない。」
「たしかにそれじゃあ、誰もそこの職員をやりたがらないわな。」
「だからここがヘール洞窟に一番近いギルド。もっと近い街はあってもギルド支部はない。」
「ラダンとヘカルトも魔物に南に追いやられているのか?」
「たぶん。でもスレインが一番追いやられてる。エルフの故郷があった森も占拠された。」
「……そうだったな。ちなみに場所は?」
聞けば、ヘール洞窟から北西に少し行った所、ラダンとの国境付近で大きめの楕円がなぞって示される。
「ここら一帯がそう。そして同時にその手前が今、人間やエルフの暮らしている地域の端。」
「へぇ。じゃあヘール洞窟はともかく、ギガンテ雪山に行くまでは魔物の巣窟を通るってことか。街はとか一つもないのか?」
「場所は正確には一つしか分からない。でもハンターの集まっている場所は確実にある。」
「つまりギガンテ雪山に行くにはそこを転々と移動していけば良いのか?」
「そういうこと。」
「了解。一応、ここから直接ギガンテ雪山に向かうとして時間はどれくらい掛かるんだ?」
「単純に計算して馬車で一月掛からないぐらい。ただ、寝たり休憩したりするだろうから、一月掛かっても不思議はない。」
よし、なら時間的にファーレンの新学期までにはなんとかなるか。ヘール洞窟で手間取ったとしても、1年も掛かりはしないだろう。
『そうじゃな。実際、魔物に出くわさなければセシルの予想と同じ時間で着けるしの。その上で、わしの案内があれば魔物との遭遇は最小限にできる筈じゃ。……それと、ヘール洞窟はそこまで大きくはないぞ?隅々まで探索しようと思えばかなりの時間を取られるが、わしがおる。一日と掛かるまい。感謝せよ。』
へいへい、助かるよ。
「そういや、ヘール洞窟ってどれだけ深いんだ?」
爺さんの言葉が気になって目の前の受付嬢へ尋ねると、彼女は呆れたようにため息を付いた。
「分かってたら教えてる。どんなに嫌な奴でも伝えるべき情報は隠したりしない。」
「そりゃありがたい。」
嫌な奴で悪かったな。
「そもそもヘール洞窟のことが詳しく分かってたら宝なんてもうないはず。むしろどうしてヘール洞窟に向かうのかを知りたい。」
「……世界を救うため?」
「…………ヘール洞窟の中の情報はない。ただ、過去にあったアンデッドの出現場所は大体この近く。もちろん関係ない可能性はある。でも……。」
「おう、記憶には留めておく。」
俺の渾身の、多少は真実の混ざったボケをものの見事に流しやがったことも。
「ん。それで良い。」
「それじゃあ、ありがとうなセシル。助かっ……いや、今まで助かった。ありがとう。また会えたらなんか奢ってやる。」
「一つだけ、助言をする。良く聞く。」
「おう。」
カウンターを離れようとしたところで呼び止められ、再びセシルへ目を向ける。
「癪だけど、貴方が死んだらネルが悲しむから……死なないで。」
するとセシルはいきなりネルと接するときの口調で、その上真剣な表情まで浮かべてそう言った。
それに面食らいはしたものの、実際言われたことは嬉しきのでついつい苦笑してしまう。
「……はは、それはアドバイスとは言わないだろ。」
「じゃあ命令。」
しかし残念ながら彼女の仏頂面はすぐに帰ってきた。
「はいはい、ありがとな。そんじゃ、また会おう。」
「ん。気を付ける。」
そして数日後、俺達――Sランクパーティー“ブレイブ”は、諸々の準備を整えてイベラムを出発した。
心残りとしては、門番のスティーブに会えずじまいだったことかね?