そのに
「きゃっ 声が大き過ぎます 御主人様」
耳を塞ぎながら不平をもらす ガチャガチャの景品
「………………」
声にならないとは この事だ
俺は今猛烈に驚いてる
そんな俺をキュイキュイ音を立てながら 小首を傾げるガチャガチャの景品
「何か不都合が生じましたか? 御主人様」
良く出来たガチャガチャの景品だな……
なんだか こんな事が頭に浮かんでくる
「……………」
声も出せずに ただ見つめてしまう
「そんなに見ると 恥ずかしいです 御主人様」
サイズこそ 小人サイズなのだが カプセル以外身に付けていない
ガチャガチャの景品 見つめているからわかるが
かなりスタイルがいいのだ
「恥ずかしいです 御主人様」
豊満バストを手で隠しながら 同じ事を言う
少し怒ってるようだ
俺は台所に往き 水道の蛇口から直接水を飲み
また炬燵に戻る そこで初めて ちゃんとした会話を試みる
「君は誰なんだ?」
今度はキュイキュイと音を立てながら 器用に正座をして返答する
「私はカプセルトイの景品です 名前は御主人様が付けて下さい」
三指を付いて まるで嫁入りの挨拶だ
「今のガチャガチャいやカプセルトイは君みたいなのが景品なの?」
「私みたいなのがとは どう理解すればいいのかわかりませんが
私は所謂当たりって存在になります」
「外れの場合だと どんなのが出るの?」
少し興味が沸いたので問い詰めてみる
「外れの場合ですと 私のように動く景品じゃなく 動かない景品になります」
事務的に答えてくれた
「えーと 動くのは何か仕掛けがあるのかな 」
「いえ 私は生きてるんです」
こめかみに指を持っていきながら 状況を判断する
「………」
駄目だ頭脳からはエラー音をたてるだけで 理解が出来ない
ただ状況を看過する事にした 気分的には少しマシになるだろう
「わかった 君はカプセルトイで生きている 便宜上名前は必要だから
名前をつけてあげる」
「有り難う御座います」
本当に嬉しそうに返事をする
「名前は ピノでいいかな?」
「ピノ! 素敵な名前を有り難う御座います」
凄く喜んでくれた ピノキオから取ったなんて 言えないな
「所でピノは服は持ってないの?」
「服は…」
何か 周りを探すピノ
「カプセルの殻が服になるんです」
俺は慌ててゴミ箱から カプセルの殻を回収 ピノに渡す
ピノはカプセルを受け取り
「すいません 御主人様 少しの間だけ向こうを見てて貰えませんか?」
俺は御要望通りに後ろを向き 暫し待つ
背後にフラッシュをたいたような光が差す
「もう こちらを向かれてもよろしいですよ」
その返事を聞いて向きをなおす
「………」
バニーガール姿だ さっきしてたように手で胸を隠してる
「そんな服しか ないのかな?」
赤い顔をしながらピノが答える
「これは 御主人様が無意識に私に着せたいと思った衣装なんです」
「カプセルの殻は御主人様の意志を反映して私の服になるんです」
「………」
さっきの豊満なバストを見て それが印象に残っちゃったからな
でも俺の妄想を再現するなんて 『なに それ こわい 』羞恥プレイじゃないか
制服なんかでもマニアになるし 普通の服なんて想像できないよ
「俺の意志じゃなく ピノ意志を反映できないの?」駄目元で聞いてみる
人差し指を口にもっていきながら ピノが答える
「システム的には可能かもしれません」
「んじゃ それでお願い」
再度後ろを向き フラッシュを待つ
またフラッシュが興ると 振り返ってみた
「………」
花嫁姿だった さっきよりも顔を赤くしたピノが居た