ある日の屋上前踊り場にチャーリーは現れた
書いてる間も緊張が止まらない……笑
一応ノンフィクションです!
今日のことです!
「うおおーすっげー!」
う、うるさい……。私は思わず耳を塞いだ。
何故かと言うと、私の右隣の席に男子たちが集まってぎゃあぎゃあ騒いでいるからです。イギリス版のこっくりさんみたいなやつをやってるみたいで、鉛筆がくるくる動いてイエスやノーにいって質問に答えてくれるらしい。
うるさいよー、耳がおかしくなっちゃうよー。
「やっほー」
「あ、真紀」
私に声をかけてきたのは、仲良しの田端真紀。私の机の横に座り込んで、下から見上げてくる。
「なにやってんの? あれ」
真紀が指差したのは、相変わらずぎゃあぎゃあ言っている男子たち。うるさいよね。
「なんか、チャーリーなんとかっていう占い的なやつやってるんだよ。こっくりさんの外国版なんだってよ」
「へ~、なんか怖くない?」
そう言う真紀を見て、私はつぶやいた。
「そうかなあ。あんなん、息で動いてるだけなんちゃうん? ぎゃあぎゃあ言ってるし、あんだけ人おったらそれぐらいなるってー」
一人でにゆっくりと回る鉛筆を見ながら二人で話す。するとチャイムが鳴ったので、男子たちは解散して自分の席に戻って行った。
うーん、あれってちゃんと終わらせなくて良いんかな?
こっくりさんとかやったら、紙燃やしたり48枚に千切ったりしなくちゃだめやんね?
折ったり丸めたりしちゃだめだとか騒いでるけど、終わりの儀式とかないんかな?
ま、いっか。私は聞いてるだけやったし、関係ないもんね。家帰ったら調べてみよーっと。
4時間目の授業が終わると、給食当番に当たっている人たちが暑そうな長袖のエプロンを着てそれぞれの持ち場のところへ走って行った。だがしかしっ! 給食当番のエプロンを着ているにもかかわらず、またチャーリーゲームをやっている男子の輪に加わっていった。おいおいおい、仕事しなよ。
「うわーっ! 動いた! 今、動いた!」
「今のは誰か息吹いたやろ。みんなマスクつけよーぜ」
マスクはない。手で押さえて鉛筆の行方を見守る。くるっ。少しだけ回って、イエス。
「うっわ、せんちゃん結婚できへんわ」
誰かがそう言った。そんなことチャーリーに聞くなよ。チャーリーが可哀想だろー。
しかも、さすが男子。チャーリーに下ネタを浴びせ始めた。チャーリー、ドンマイ。
呼び出したやつらがちょっとハズレやったね。
「じゃあ、あの場所でやろ。あそこマジでやばいから」
どこだよ。心の中でつぶやく。あの場所っていうくらいだから、きっと人があんまり来ない……屋上のドアの前の踊り場かなー?
給食をもくもくと食べながら考える。そういえばさっき、瀬乃にチャーリーのこと教えてって言われたし、交換ノートに書こうかな。うーん、でもあの人たちに見られたらいろいろとまずいよね。
よしっ! 屋上(の前の踊り場)で書こう!
私は給食を食べ終わると、ノートとシャーペンとロールケーキ型の消しゴムを持ってダッシュで屋上へ向かった。
ここは南館3階で、北館4階へ繋がる階段を上ると4階のさらに上に階段がある。そこを上ると、屋上に入れるドアがあるんやけど、今は鍵が壊れてるし開かない。ピッキングで開けようと試みた人もいたけど、道具はクリップの針金をのばした物やアメピンぐらいなもので、開けれた人はいなかった。
この間、瀬乃が開けようとしてたけど、結局だめやったし。
それに、せめて景色だけでも眺められたらいいのに、ガラスがただのガラスじゃなくて、曇って見えないがさがさのぼこぼこしたガラスなんだよね。ひどいよ、いじめだよぉ!
私は息を切らしながら屋上のドアの前にある一段だけの階段に座り、交換ノートに書き始めた。
それにしても、チャーリーゲームなんて誰が調べたんだろう? 確かに面白いけど、鉛筆が回るのは風のせいじゃね? って思う私からしたら胡散臭いの一言で終わるわけで。誰かが取り憑かれたりでもしたら面白いけど……って、悪趣味だな、私。
なんとか書き終えてゆっくりしていると、男子たちの騒ぎ声が聞こえてきた。階段の近くだからか、やけに声が響いている。ここは階段を上りきったところの少し右で、立ったらちょうど肩くらいの高さの壁があるからしゃがんだら隠れられる。その壁から顔をのぞかせると、4階に上がってくる男子たちがいた。やばいやばい、あれは完全にうちのクラスの人たちですよ!
特に大谷晴樹! あの人は声にくせがあるからよくわかる。ちょっと低めで、声だけ聞けばイケボだと言っても良い。顔も別に悪くはなく、初対面の時は思いっきりかっこいいと思ってしまったけど、今はそうでもない。よく見たら、そこまでかっこよくもなかった。
――――ってゆーか! そろそろやばくない!? 声が近い。やばい、これは完全にもう上ってきちゃってるわー!
やばいやばい、やばいやばい! どうしよう、こっからはもう逃げらんないし、もうなんか心臓が飛び出そうなほどドキドキしてる。緊張の方で。
さらに声が大きくなってゆく。お前ら、ここは響くんだからもうちょっと小さめの声でしゃべろう? おかげで気持ち悪くなってきたよ!!
男子たちが何を言っているのかはよくわからないけど、近づいてきてるのはわかる。
ここで待っているべき? それとも今すぐ飛び出てダッシュで逃げるべき?
ここで待ってたらおそらく「なんでおんの!? 怖!」と叫ばれるだろう。でもここで飛び出たとしてもなんか言われそうだけど、もう、行っちゃおう!
私は手に持っていたノートを閉じてシャーペンと消しゴムをしっかり手にし、飛び出た。
「うわっ」
「なんでおるん!?」
「チャーリーやチャーリー」
見慣れた顔の主が6人。好き勝手言ってもらって構わない! けど私は逃げるよ、どこまでも!
またしてもぎゃあぎゃあ言っている男子たちの隙間をすり抜けて、私は走り、なんとか教室に辿り着いた。つ、疲れた……。運動なんて縁もない私はすぐに息を切らす。
「あ、美紗。どこ行っとったん?」
真紀にそう言われた。
「ちょっと、チャーリー書いてた……ら、チャーリー組が来たから逃げてきた」
だって怖かったんやから! なにか言われる前に逃げれてよかった。あの時待っていたらどうなってたんやろ。まあいいや、過ぎたことは気にしないのか私だもんね。
すると担任の先生が現れて「北野どこやー」と喚いていた。どうやら北野は給食当番をほっぽり出してチャーリーをやりに屋上に行ったらしい。うん、さっき見たな。
「先生あの、屋上の前にいると思います」
私がそう言って先生+私+クラスの前に来ていた愛良+真紀の4人で屋上へ向かった。4階まで来ると、ちょうど降りてきた男子たちと鉢合わせし、慌てて回れ右しようとすると「お前さっき何しとったん」と、坂井の声が聞こえてきたので、私は答えるかというように無視して3階に降りていった。
なにか言われないかとびくびくしていたけれど、その日私は一度も坂井たちに声をかけられていない。
帰ってチャーリーゲームを調べてみると、やっぱり外国版のこっくりさんやったみたいで、こんな現象が起こる理由は未だに分かっていないらしい。だから、風じゃないのか……?
ごめんよチャーリー。信じてないわけじゃないんやけど、あいつらが胡散臭いんですよ。許せ、チャーリー。
そして安心して今、この文章を打っているというわけなのです。明日も何も言われないことを願います。
美紗の性格が『卒業』と若干、というかかなり変わってます。
それは私が卒業した時と今とで性格が違ってきたことを表しているので、ご了承ください。