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通常運転ですがなにか?  作者: 名城ゆうき
第零章:プロローグと彼らが家族になるまでのダイジェスト
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そして……

 と、そんなこんなで主張した結果……話が通ってしまったんですよねー。

 ちょっとびっくりダヨネー。

 『おとーちゃん(高見澤應)』もなかなかすごいおヒトやわ、許可下すなんて。


 あれからお兄ちゃんに超絶心配されながら、お姉ちゃんには笑顔で見送られながら、一実にはものすごく過保護にされながら、4兄弟の共同生活が始まった

 あ、もちろんお母さんと『おとーちゃん』も一緒やで?


 で、今どんな状況かって?


 アレやな、あの二人……と言うか、お母さんに対する『おとーちゃん』の一方的なスキンシップが時々……いや、常に、うん、スリリング。あの、なんて言うか、お父さんで慣れてたつもりなんだ。深い愛情というか、想いの向けられ方を傍から見る分について。いや、なにアレ、やっぱ『おとーちゃん』こええわ。獲物を見る目だよ、猛禽類やて、お母さん食われる……いや、ちょっと楽しくはあるけど見てる分には。あの深い水底のような想い……うん! スリリング!


 あとアレです。……お母さん、なんか、変な薬でも飲まれました?って感じで、若返ってマス。や、冗談ちゃうわアレ。誤魔化せへんやろなにがなんでも。だって五十代から二十代に見えかねない若返りってなんなん? や、ほんま姉妹って間違われたことがあって……というか親戚がぎょっとした。アレは……『おとーちゃん』が関係してるんだろね。いやぁ、恋愛するとヒトって若返るらしいでなぁ。時々お母さんがまぶしく見えてしゃーないわ、あっはっは。若いねぇ。……なんて言ってると、お母さんに裏拳を喰らわされる。あんたが心配や……って私は家族が幸せならなんでもええわぁ。


 一実はなんか、前より姉っ子になってきた気がするわ。と言うか、超過保護。……そして前より甘え上手になった。お前、姉を懐柔させようとしてんな。確かにな、前から弟としては可愛いとは思ってたよ? それなりに。いや、結構憎らしいことも多かったけど。殴りたくなるほど。けどあいつ、なんか、前よりしっかりするようになっちゃてさ。甘えるけど、自分に超絶甘かったのが、ちょっと甘いに頑張って昇格したみたいでさ。……なにコレ私はまだダメ姉か。そしてその隣でにこにこしながら立つ、前より小マシで爽やかな我が弟か。……別の意味で殴りたくなった。カッコつけるなヘタレ。


 ん? なに? そうじゃない?

 四兄弟はどうなったかって?

 あーえー……そうっすね。まぁ、彼らにかかわらず私は通常運転っすから。

 気にせんといて!



「おい常葉!」

「ひゃっほい!!」


 と、ここで急に背中から大声をかけられたので、思わず飛び上がって奇声をあげてしまった。振り返ると案の定、そこにいたのは……。


「もーたすくにぃ! 急に大声出さんといて! 超びびったわ!」

「さっきこの汚部屋片付けろっつただろ!! 微塵も片付けてねぇで埋もれてるだけじゃねーか!!」


 このうるさいのが四兄弟の三男、祐兄。

 はっきり言って、あんたはオカンかってほど私の生活態度にいちゃもんつけてくる。

 しかし大丈夫だ、問題ない。私は通常運転だ。


「や、ちょっと片付けたし。この積み上がった洗濯物タワーの残骸が見える? 今その分類、及びたたみ直しにかかっている」

「なんだそのドヤ顔。てめぇが畳んだ洗濯物をすぐ直さねぇからこんなことになってんだろが。洗濯物タワー? そんなもの建造すんな。埃やダニをつけてぇのか。……それに、ここ掃除機あてたのいつだ! くせぇぞ!」

「……うーん。3週間前?」

「少なくても週一はしろきったねぇ! ぜってぇダニの宝庫だ。ゴキブリとも共存してそうだぞコレ。……あぁ! もうめんどくせぇ! 俺が直してやる! 洗ったもん全てよこせ!」

「うっわ、マジ祐にぃデリカシーなぁい。年頃の女の下着に触ろうとしてるぅー」 

「世界中の女に失礼だ。お前、女を名乗るな」

「あ、じゃあ私の性別『私』で」

「ふざけんな干物汚女」

「わーい、私の定冠詞が立派になったぁ」

「……」

「祐にい? 急に黙ってどしたん?」

「お前、わざと俺を怒らせてんのか」

「別に?」

「なら!」

「あ! そうや!祐にぃありがとね」

「あぁ?」

「バーゲンで安くでコレ、見つけてくれて。結構気に入ってんねんよ。色んなテイストの服に使いやすいし」

「……」

「さすが祐にぃは審美眼がいいね!」

「……お前、今度は機嫌取りか」

「いや、そのつもりはなかったんだけど、忘れないうちに言っとこって思って」

「……当たり前だろ。俺が見立てたんだ。……やっぱり似合うな。悪くない」


 ………………。

 ちょっと、その不意打ちスマイルないわー。

……それにオッドアイなんよね、祐にぃ。気付かれにくいみたいやけど。ウワー、その綺麗で素敵な瞳から目を離せないぜよー。


バンッ


「常葉」

「っんおう?」


 扉が開く音とともに体に何かがタックルしてきた。

 これも最近日常茶飯事、見なくてもわかる。


「どしたん凌?」


 振り返ると極上のとろけるような笑み。

 そう、四男坊のしのぐだ。


「縁側が温かくて、気持ちいいよ」

「うん、私もすごいいい天気だなぁって思いながら服畳んでたとこ」

「一緒に、寝ない?」


 猫のようにすり寄りながらこちらを見る凌。いかに自分をよく見せるかわかってらっしゃるその上目使いちょっときめぇけど、凌だとなんだか許せる気がするのはなぜだろうな。……懐柔されたのだろうか、私よ。というか最初っから波長が合いそうだったし、なんだかまったりするんだよなぁ。同じ眠るの大好きっ子だし、めんどくさがりだし。……抱きつくのも抱きつかれるのも嫌いじゃないし。

 しかし。


「あー……」


 斜め横からの視線がコワイデス。

 めっちゃ視線がモノ申しております。

 うん、わかってる。片づけが先だよね。わかっておりますよ祐兄様。

 でも凌の抱きつきから離れがたいんだよなぁ。……や、まぁ色々とずれているのは自覚しておりますが。


「常葉」


 はいはい。わかってますって。


「……ごめんね、凌。ものすっごく魅力的なお誘いなんだけど」


 渋々凌の腕を解きながら……でもちょっと名残惜しくて、手を放すのがゆっくりになってしまったけど、放した。


「片づけした後……」

「……この野郎邪魔しやがって。片づけなんていつでもできるしなんなら俺も一緒にやってやるのにどうせ一緒にいたいがために片づけ終わるまで常葉の部屋を出ねぇつもりなんだろ。魂胆見え見えだってーの祐兄」


 ……。

 何やら長―い呟きが聞こえたような気がするけど気のせいだな。

 そして元々目つきが鋭い(もとい、目つき悪い)祐兄の顔が更にヤクザ顔負けになったのも私の妄想だろう。


「……祐兄」

「あ゛ぁ゛?」


 こえええから超こええからちゃんとするからマジでもうヤダこのヒト、いや、この鬼。

 とりあえず。


「掃除機、今どこにあるっけ?」


 ちらっと祐兄を見て(やっぱ怖いので)目をそらしながら言うと、幾分か和らいだ表情と声が返ってきた。


「……目の前だ」


 ん?

 見ると祐兄の足元に掃除機があった。というか最初からここに来た時に持ってきてたような気もする。……そっか。持ってきてくれたんだ。怖いけど優しいんだなぁ、祐にぃは。

 思わずにやける。


「祐にぃ、ありがと」

「……にやけてねぇでとっとと始めろ」

「…………………………………………………………………………」


 お、おうぅ。今度は後ろから不機嫌オーラが。

 ……うん、や、これは私が物ぐさだからとか、ちょっと数時間かけないと綺麗にできないくらいの汚部屋だからとかじゃなくて、本当に本当は自分で全部やるべきなんだけどさ。


「凌、早めにカタつけてマッタリしたいし、ちょっと……手伝い………協力、お願いして……いい、かな?」


 その言葉に部屋の空気に花が咲いたようだった。


「もちろん協力するよ。俺も早く、常葉とマッタリしたいから」


 へーへーへー。ごっつあんです。

 もうヤダなにこの殺人光線乱れ撃ち的なスマイルは。これだからイケメン血統は血を吐きそうだ。

 真顔でぷるぷるしているうちにご機嫌の凌がベッドの掛布団と枕をつかむと部屋を出て行った。干してくれるそうだ、あざーす。

 とりあえず私は下着やら服やらを畳み終えた分を引き出しにしまおう。

 ……なんだか祐兄にため息をつかれたが気にしない。




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