しまった!ダメダメなやつを勇者としてスカウトしてもうた LV03 未来の嫁と元嫁
ワシの名前はパウワウ。
今回は普段より多めに自己紹介しとくか。
今年で地球時間換算で今年で5963歳、バツイチだ。
現政権を握る気まぐれで見てるだけのカミサマの使いで今地球に来てる。
ワシ、普段の姿は幼児体型、素っ裸に白い羽はやかしている。
あんたらがよくそこら辺でよく見る天使みたいなカッコだ。
ただ、今地球滞在中は、現地の法にひっからぬよう、全裸ではない。
今活動中は、日本人ハーフ、超絶優等生美少年中学二年生バージョンだ。
当然、服着てるし言葉遣いももっとまともだ。
カミサマのパシリとしての仕事をしてるがな、いわゆるあんたらが知っている天使とも違う。
一部の宗教的な縛りや役目はない。
もっとしっくりくる表現としては「トリックスター《Trickster》」かな。
意味がわからん奴は、ググってみてくれ。
まあ、カミサマの使いということで職種は使徒と言っているわ。
使徒とは厳密には少しニュアンスが違う気がしなくもないがな。
あの天使らより、自由でもっとユーモアも持ち合わせているぞ。
手段は選ばんし、破壊は好きだが守りたいもんもある。
ワシ自身、行き過ぎた行動に反省もする。
面倒でほっとくこともあるがな。
なんてったってワシ、かなり寛容でな、多少のことでは怒らん。
いや、ごくたまーに短気なとこもあるかもしれんが。
まあ、このへんがトリックスターたる所以かな。
かつて若い頃は、破壊神とまで呼ばれたこともあってな、想像を絶するぐらいの破壊力をもつ魔力を持ち合わせているわな。
その強さは現カミサマの次に強いと思うぞ。
実際、星を消失するのは簡単だしな。
それに一応ではあるが、次期カミサマ候補の一柱でもある。
継承順位はしらんが。
まぁ、ワシにもそれなりに自制はあるし、現カミサマになってからはできるだけカミサマの言うことには忠実にしているしな。
逆らうと、どえらい目に合わされるからな。
カミサマの見えんところではその限りではないのは、秘密な。
一応言っとくがどんな魔法も使えるがな。
破壊に関するものが最も得意とするが、その他の魔法は超苦手だわ。
治癒とか耐性とか時間操作とか他のカテゴリーの魔法はすごく時間がかかるし、範囲も効果も恐ろしくショボイのでしたくない。
例えば、蘇生。
ワシの場合、詠唱に3ヶ月かかる。
前にワシの友人がコロッっと逝ってしまった時、蘇生魔法で生き返らせたことがあるがな、アレはまずかった。
3ヶ月かかるということはな、肉体が腐ってまうがな。
あいつ、今頃どっかでワシに復讐するためだけにゾンビになってさまよってると噂になっとるが、逆恨み野郎のことはもう知らん。
例えば、時間の巻き戻し。
手間と効果で言えば、一年ほど寝ずに詠唱続けて一秒巻き戻せる。
やってらんねえ。
やっぱ、どっかーん、とか、ずばーん、とかのすっきり感最高の破壊が好きだな。
地球ぐらいなら、一秒もいらん。
爆破、蒸発、ブラックホール、メテオ、いずれも簡単過ぎる。
試したことはないがな。
そんなことしたら、どえらい説教くらうし、ワシは悪魔じゃねえし。
それに、今の地球のこと大好きだからな。
今回の自己紹介はここまでにしとくか。
で、ワシの横でアホ面かまして寝とるのが、宮地翔太14歳だ。
カミサマの指示でこいつを愛情込めて勇者として育ててるところだ。
昨夜な、宮地翔太の初のデビュー戦、熊狩りをやった。
勇者としの第一歩を初めたところだ。
まあ、色々と反省点はあるけど、まあ、充分妥協できる内容だわな。
詳細は、前章をさらっと参照してみてくれ。
さすがにみやのヤツは自分の部屋に帰っても、けしからんMMORPG「もんもんは~ん」にも手を付けず寝てしまいおった。
ワシも少し疲れたな、横になるか。
◆
「ぴんぽんぱんっ、おーい、しょーたくーん、朝だよ、あはっ、可愛い寝顔、ちゅっ」
ぬ? なんだ、めざまし時計か。
なにが「可愛い寝顔」だよ「ちゅっ」とはなんだ、ちっ、けしからん。
AM7:00か、うむ、どんより曇ってるけどな、まあいい朝だな、まさに学校日和だ。
「しょーたくーん、しょーたくーん、おはよー、あ・さ・だ・よー」
萌系ってやつか? こんな、ヌルイ声じゃ、勇者様は起きねえんだよ。
なに、ワシがちょっとこの目覚ましを改造すれば、すぐに目が覚めるわ。
ここを、こうして、ここ繋げて、切って貼って、うし、これでどうだ。
うむ、目覚まし時計をパウ様仕様に魔改造したったわ。
「おい、みや、起きんかい」
「……ちっぱいは」
みやのやつ、寝ぼけんてんな。
「オイ、朝だ、さくっと起きんかい」
「けもみみは、ちっぱいに限る……」
ふん、ほざけ。
「てめえ、耳の穴かっぽじってよく聞け」
ここで音量マックスだ。
「勇者の道、規約653条、学校へ行く気のないヤツの処遇規定。第1項 寝坊、二度寝、三度寝、または意地でも置きない奴は、鋼鉄製イボ付きバットを用いてモーニングケツバットで爽やか且つ華麗に目を覚まさせること」
「はい、起きた、目が覚めたっ。おはよう、パウさん」
おう、めっちゃ寝起きいいな。
スパンっと立ち上がるたぁ、こいつかなり血圧高いとちゃうんか。
うむ、アイドル声優のヌルイCVより、ワシの神々しい声のほうが目覚めがいいわな。
「パウさん、目覚まし時計の改造、心臓にイクナイ」
ふむ、お前の鼓動、しっかり聞こえるぞ。
睡魔は完全に去ったようだ。
「もう少し、ゆっくり寝てても良かったがな。そしたら、ワシの真心込めた全力で起こしたるけんな」
「いや、いい朝だなー、うん、勉強日和だ」
外は曇ってるけどな。
「安心せえ、ワシも一緒に学校行ってやるがな」
「ちょっ、まずくね? おっさん言葉の中学生なんて、ありえないよ」
ふん、あまいな。
「そんなん、心配せんええわ。まあ、お前の母親が朝飯作って待ってるけえ、喰ってから学校行こうや」
「ええっ、友達が勝手に泊まってるなんて知られたら怒られるぉ」
「こまけーこたぁ気にすんな。ワシもちょうど腹減ったし、まあ、一緒に喰おうや」
「でも」
「うるさい、えい、メシ、メシっ、行くぞ」
◆
「母さん、おはよ」
「おはようございます、おばさま」
「おはよう、翔太、パウちゃん。ご飯出来てるわよ」
「ちょっ、母さん、この状況おかしくない? ノータイムかつ自然に《パウちゃん》って? 誰か知ってるの? それにパウさん、言葉遣いが違いすぎる」
「あら、この子何言ってるの? 従兄弟のパウちゃんでしょ。翔太とちがって優秀な従兄弟じゃない」
「母さん、そんなまやかしと比較されたら、僕、道外れちゃうぉ」
「……パウさん、どゆこと?」
「あのなあ、大人の取引で根回ししたから問題ないわ」
「なに取引したの?」
「登校拒否引きこもりド腐れニートを学校に行かせる事と、道に外れそうな外道を鉄拳制裁するということかな」
「で、母さんにこの状況を魔法なしで納得させたん?」
「たりめーだ、そんな面倒な魔法はあらへんわ。この優等生でイケメン中坊設定のワシが一緒に生活してだな、みやと一緒に中学校に同行するからと言うとお前の母さん、めっちゃ泣いて喜んどったで」
「おい、優等生イケメン設定て、僕より目立つのはダメじゃないのかよ」
「勘違いするなよ、目立たなあかんのは中坊のお前でなく、勇者のとしてのお前だ」
「あなた達、なにこそこそ話しているの? 冷めないうちにおあがり」
「頂きます」
「頂きます」
「ふう、この味噌汁うめえ、涙出てくるわ。ワシな、元嫁の恐怖の味噌汁でヒデエ目に合ってな、味噌汁に対してトラウマになりかけたんだわ」
「今日麸の味噌汁ってしょうもない加齢臭吹きまくりギャグだろ? 知ってる」
「ちゃうわ。そんな加齢臭ごときが最高級フレグランスかと思うくらいやべえ味噌汁だわ。ああ思い出しただけでもサブイボが出てきた」
「どんだけヤバイ味噌汁なんだよ?」
「そうだな、まず、超クセェ。ンコを超越したかなり厳しい催涙性フレーバーな。色は灰色ベースにところどころ原色の液体や固形物が見える。暗目で見ると青白くぼやっと発光していたな。味は、舌に刺すような酸味と苦味が強烈。食感もな、ぬめってしている中にやや弾力のある異物めいたつぶつぶがウニウニ蠢いていてな、口にすると喉が拒絶反応して一ミリたりとも食道を通らないんだわ」
「それって使徒の世界の料理なの?」
「ちゃう、味噌汁って言ったろ。元嫁な、味噌汁を残すと泣きよるんで拒絶しているワシの喉をどうにか騙してようやく胃に通したんだわ。そしたらそこから一ヶ月、イヤーな汗が吹き出て嘔吐と下痢が止まらず、不整脈と血圧の乱高下で生死の間をさまよい続けた生き地獄だったな」
「奥さんはパウさんと同じ使徒の仲間なの?」
「まあな。元嫁な、ヤツの得意な能力は、回復系でな。疲労や怪我の回復から、復元、蘇生が得意なんだわ。しかしその嫁の魔力がぱねぇ。この世で最強最悪の回復力でな、あまりに強すぎて回復を受けた者は例外なく地獄を見る。つか、嫁の回復魔法は勘弁してくれ、このまま安らかに死なせてくれというものも多数いた。いいか、臨死体験出来る回復なんてありえんぞ、普通。三途の川、天国、極楽、地獄にお花畑、そこでやっとまったり出来ると思いきや、バカ嫁の魔力で死者の魂を強引に拉致って肉体に引き戻すからたまらん」
「ずずっ、おばさま、おかわりお願いします」
「パウちゃん、どうぞ」
「前に、ワシのポン友、まあ、こいつも使徒なんだが。深い事情でゾンビになった時な、あまりにうざいから、ワシの手であの世に葬った事がある」
「パウさん、あんたのほうがヒドくね?」
「で、嫁に頼んで蘇生をしてもらったんだが、タイミングが悪かった。ヤツは地獄の鬼どもと取っ組み合いの喧嘩の最中だった。バカ嫁の蘇生の魔力でヤツの魂をかっさらった時、つかみ合い中だった3匹の鬼も一緒に地獄から拉致ってしまってな、大騒ぎになってもうた。あん時はワシとポン友、バカ嫁は、カミサマからどえらいお説教くらってな、ひでえ目にあったな」
「常識的に考えてな、生命力や細胞活性化とかで自力治癒力を高めるのはいいがな。だが、バカ嫁の魔力の場合は常識の斜め上をはるかにいっとる」
「話を戻すがな。嫁はあわてて、泡吹いて白目剥いて悶絶しているワシに治癒系の回復魔法をかけると瞬間的には治るんだけどな、体内に入ったクソ汁の病原体も激しく活性化して、ますます悪化しやがる。しまいには嘔吐と下痢が出尽くしてワシの魂が飛び出てきよった」
「奴は更に慌てて、ワシの魂をわし掴みにしてぐいぐい押し戻しながら蘇生の魔法でリセットしやがる。ワシ自身が蘇生しても病原体は死ぬわけじゃないからな。苦しみが継続するわけだ」
「アホのクソ嫁は、一日に何度も治癒魔法と蘇生魔法を繰り返し、それを一ヶ月間毎日ワシを地獄の責め苦で、虚弱体質のワシの身体を弄びよったわ。あいつの回復魔法は余裕で殺傷力あるわ。お陰でワシ、多少の責め苦では屈しないドM属性スキルを会得したけどな」
「で、ワシ、蘇生直後の具合の良い僅かな時間でアホ嫁にな、体の中の病原体だけを何とかしろって文句言うたら、ヤツは泣きながらワシを抱きかかえて、病院へ連れて行きよった。普通に注射と点滴のおかげでやっと地獄のループから逃れられたのだわ」
ずずっ、かーぁ、うめえ。
「ようやく自力回復した時、ワシな、嫁にあの味噌汁どうやって作ったんだ? と聞いたらな、最初にいりこ出汁入れ、具の麸とわかめ入れ、味噌を溶かし入れたと言ってたな」
「それ、たぶん普通じゃね?」
「続きがあってな、ワシの健康を願ってひと手間かけたんだと」
「いい奥さんじゃね?」
「ここからだ。ナベのフタが地獄のフタに変わるのはな。ヤツは歪んだ愛情を足したんだわ。血液サラサラになるってんで新鮮なイワシとサバ、納豆とラッキョを入れ、ワシの好物のスジコとカマンベールチーズとヨーグルト、新陳代謝をあげるためにカレールウと唐辛子と黒酢をぶっこんだ、だと。そして得意の活性化タイプの回復魔法を何十回もそのクソ汁にかけたんだと」
「その魔法はヤバイってことだよね」
「ああ、まともな回復魔法の使い方じゃねえわな」
「鍋の中の発酵菌と腐敗菌と雑菌がその魔法で超活性してな、異種交配と突然変異しまくって新しい進化を遂げた《何か》が生まれてたと思うわ。隔離施設で慎重に処分しなくてはならない《何か》がな」
「うへ」
「仕上げとして味をまろやかに馴染ませるために、2週間ほど熟成という名の腐敗放置しやがった」
「ま、それがもとでアホ嫁を叩きだしてやったがな」
あのクソ汁、ワシら使徒でも2杯もありゃ充分死ねるわな。
◆
「ごちそうさま」
「ごちそうさま」
「おばさま、例のもの出来ていますか」
「パウちゃん、出来ているわよ」
「ありがとうございます」
「ねね、パウさん、なに頼んだの?」
「ああ、都市伝説の、なんだ、あれだ。ほらワシ、初登校だからな、ワシの運命を占ってみようかと」
「はい、トースト」
「ありがとうございます」
「おい、みや、早く着替えて学校へ行くぞ」
「お、おう」
「てっ、それ、普通にトーストじゃね? 味付いてないようにみえるけど」
「そうだな、トーストだ。ワシ、これでも地球の文化を研究しとってな、例の都市伝説を検証しようと思うとる」
「んー、味ついてないのはなんで? ジャムとかつけたほうが食べやすいと思うけど」
「お前バカだなあ、食べるのが目的でないわ。奇跡の出会いが目的だわな」
くそっ、みやのやつバカにしおった目で見てやがる。
「まあええ、見てろよ、みや。これがかつて最強破壊神とまで言われた使徒パウ・ワウ様の強烈な運命のさまをな」
学生服とカバン、OK、そして口にトーストをセット、OK。
みや、今だ、玄関をあけろ。
「行ってきまーす」
「いっふぇふぃふぁーす」
全速力ダッシュだ。
うぉおおおおおおおおおお。
あの角だ。
あの角を全速で曲がれば……。
どーん。
「きゃーっ」
「いったーい」
ストライクだ、へへどうだ、ワシの運命の強さを。
しかも、おにゃのこ2人ヒットしたぞ。
「す、すみませーん、パウさんも全力で謝って」
「すまんな」
「あっ、パウ様」
へ、お前は……。
「リカか? おまえ、リカ・バード……さん」
「ちょっと翔太、この人なに? か弱い女の子二人にぶつかっておいてドヤ顔とは」
「藤村さん、とっ、とりあえず、ごめん。えーと、この人は従兄弟の宮地パウさんだよ、一応ハーフなんで名前も変で」
名前が変だと? あとで説教してやる。
「しかし、なんでリカここにいるんだ?」
ともかく、モーニングトーストダッシュの結果はとてつもなく最悪な運命の再会だったな。
結論から言う。
諸君、朝、トースト咥えて走るのはよせ。
みや、ちょっとこっちこっち、こっちにこい。
「ねね、パウさん、あの綺麗な女の人、知ってるの?」
「みや、ありゃ、元嫁のリカ・バードだ」
「ええっ、すごく綺麗でかわいいんだけど」
「みや、見かけにダマされるんじゃねえ、ヤツはワシより15歳年上のババアだ。もう一人の子の方はみやの知り合いか?」
「あの子は、幼なじみの藤村すみれっていう子だよ。てか、パウさん、6000年近く生きてての15歳って、ほとんど差がないんじゃね?」
「すみれのほうがかわいいじゃねえか。ああいうのが将来いい女になるってもんだ。お前の嫁にしろ」
「えー、えへへ。何かと言いがかりつけてくるんで嫌だよ。うるさいんで喧嘩してね、負けてから学校に行くのやめた」
「おまえ、つくづくダメ野郎だな、女に負けるくらいなら○んこなんかいらん、切っちまえ」
「だって、負けたのは口喧嘩、暴力はイクナイ。でも、カッコ悪くて学校行きたくなくなったんだよ」
「ねー翔太、男二人でコソコソ話してないできちんと謝んなさい」
「えー僕、謝ったよ」
「で、そっちのイケメン君は?」
「ごめんなさい、このとおりです」
屈辱のジャンピング土下座だ、チキショウ、心までは屈しねえぞ。
「ふーん、土下座してる割には反省の色のない顔だね、ま、いいわ、紹介するわね。この子はあたしの従姉妹の藤村リカさんよ。帰国子女でね、事情があって今日からあたしと登校することになったの。イジメたり告白したりしたらタダじゃ置かないから」
「ど、どこかでよくあるイトコ設定だね、パウくん」
「あ、ああそうだな」
「リカさんはね、わけあって遠い国で別れてしまった大事な人がいるのよ。一途に再会を願って日本にきたの。その人のために全てを捧げているので、翔太、あんた手を出したら承知しないから」
「ふ、藤村さん、そんな大それたこと、するわけないよ。つか、リカさんって僕らよりずっと年上のおねえさまじゃね?」
「み、みやっ、それは今触れるじゃねえ」
やべえ、リカのやつ、さっきからずっとまばたきなしでワシを見つめてるじゃねえか。
「ああ、パウ様。ようやく……」
あばばばばばば、聞こえない聞こえない。
あぶねえ、地獄の日々が蘇るわ、早く退散しなければ。
「藤村さん、翔太くん、早く学校へ行かないと遅刻しそうですよ」
とりあえず、この場を離脱しなければ。
「みや、走るぞ」
「は、あい」
◆
ふむ、ここがみやとすみれの教室か。
ちっ、リカのやつも同じクラスだなんてどういう神経してんだ?ババアのくせに。
同級生ってありえねえわ。
先生、転校生紹介、はよ。
「今日から二人、藤村リカさんと宮地パウくんがクラスの仲間になりました。自己紹介してください、宮地パウくんから」
「宮地パウです。宮地翔太くんとはいとこ同士で一緒に住んでいます。至らないところもあるかと思いますがよろしくお願いします」
ふむ、ワシ、イケメン過ぎてクラス中の女子の視線が痛いわ。
「藤村リカです。すみれさんとは従姉妹です。パウ様とは……」
「うおっほんっ、げほげほ、ヴヴん、んん、失礼」
リカのやつ、イラン事言うんじゃねえ。
「みなさん、わからないことがありましたら助けてくださいね」
リカのやつ、美少女に化けおって。
クラスの野郎どもが沸き立ってるじゃねえか。
「それでは、パウくんは宮地翔太君の隣の席、リカさんは藤村すみれさんの隣の席に座りなさい」
「はい」
「はい」
へへ、みや、これでどこまでもお前を監視できるわな、頼むぜ相棒。
「えー、今日転校してきた二人は翔太君、すみれさんのイトコですが二人ともハーフ、帰国子女です。日本の細かな習慣には慣れていない部分もあると思いますがそこは、みんなでフォローしてやって下さい」
「それと、事前の学力チェックのテストは五教科全てにおいて二人とも満点でした。とても優秀な生徒が入ってくれて先生は嬉しいです。クラス平均点を大きく上げてくれます。とくに翔太くん、足引っ張らないように頑張りましょう」
「なんでー、ちっ」
「あはははは」
ふん、みやのやつ言われてんな。
まあ、学校では道化を演じたほうがいい。
勇者になった時のギャップが激しくて、かっこよさが際立つってもんだ。
しかし、リカのやつ、超優良優等生設定できやがったな、ワシの真似すんじゃねえ、ちっ。