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修学旅行5日目(10月第1週)

ただおしゃべりしてるだけの回になってしまいました。

えーっ、て方は後書きだけ読んでいただければ、まとめておきます……。

修学旅行最終日。午前中に軽く観光をしてから、すぐに空港へ移動した。北海道随一の空港の中で、飛行機の時間までは自由時間だ。お土産を買うもよし、のんびりお茶をするもよし、施設内を見学するもよし。

わたしは同じ班のよりちゃんとお土産屋さんを見ていたんだけど、割とすぐ飽きてしまって、早々に休憩することにした。


お土産屋さんの2つ隣が農場のショップ兼カフェになっていた。同じお店でお土産を見ていたらしい篠崎くんと鴇村くんも合流して、なんとなく4人でお店に入る。それぞれにアイスや飲み物を注文してテーブルについた。

ちなみに、篠崎くんとよりちゃんがバニラアイス、わたしはチョコアイス、鴇村くんはホットコーヒーのみである。


「あー、おいしい。ヒロ、あとでチョコも味見させてね」

「うん。よりちゃんのバニラも一口ちょうだいね」

「ていうか、鴇村だけなんでコーヒーなんだよ」

「別にいいだろう。暑くもないのに、アイスクリームなんて僕はいらない」


笑顔で顔を見合わせるわたしとよりちゃんをよそに、篠崎くんはホットコーヒーだけ持った鴇村くんに、ぶーたれていた。もしかして、篠崎くんも別の味を食べてみたかったんだろうか。鴇村くんがアイス買ってたら、篠崎くんのバニラと交換できたもんね。


「篠崎くんも、ちょっとチョコ食べる?」

「えっ、いいの?」

「いいよー」


口にとろける濃厚なチョコレートに、わたしは気分よくうなずいた。すると、篠崎くんに苦笑を返された。


「羽鳥さんて、以外とおおざっぱっていうか、気にしない人だよね」

「え、なにが?」


訳がわからず首をかしげたら、わたしのチョコアイスをスプーンで掬いながら、よりちゃんが笑う。


「一般的な女子高生は、男友達に食べかけのアイスをあげようか、なんて簡単には言わないってことよ」

「えっ、おかしい?」


むっちゃんとはペットボトルの飲み回しも、食べかけを交換するのも普通なんだよね。でも、それじゃダメなのか。普通の男友達なんていたことないから、よくわからないな。


「いや、悪くはないと思うよ。けど、ヒロって第一印象と中身にギャップあるよね」


あははと笑うよりちゃんに、なんと返していいかわからなくて、黙ってアイスを口にいれた。


「俺も最初は鳩谷から聞いてた話と、普段の感じが違いすぎてビビってたんだけど、最近やっと印象が一致してきたよ」


そういえば、篠崎くんてむっちゃんとは友達なんだった。接点なんてなさそうなのに。そして、むっちゃんは一体どれほどわたしのことを吹聴して回っていたんだ。


「……篠崎くんて、むっちゃんとはどこで仲良くなったの?」

「んー、お互い昼休みによく校庭とかで遊んでてさ。それで何となく一緒に遊ぶように?」


……何となくで友達になったゃうとか、すごい対人スキルだわ。わたしだったら絶対無理。


「鳩谷くんといえば、初日の膝枕はさすがにビックリしたよねー」

「よりちゃんっ! あ、あれは、不可抗力だったんだってば!」


修学旅行初日、熱を出したむっちゃんにロビーで膝を貸すはめになったことは、翌日には学年中に知れ渡っていた。むっちゃんの具合が悪かったからしかたなかった、と主張しているけど、やっぱり信じる人半分、下世話な想像する人半分て感じだ。


「けど、普通同い年の男子に膝貸すとか、抵抗あるんじゃねーの?」

「……だって、家族みたいなもので、ああいうのも、当たり前だったから」

「あたしだったら、お兄ちゃんとか弟に膝とか貸さないなあ。ヒロと鳩谷くんって、本当に仲いいよね」


そんなもんなのか。でも、よりちゃんみたいな反応が普通なら、なんだかんだ言われるのもやむを得ないのかもしれない。本当は同じ部屋で着替えとかも抵抗ないんだけど、それは黙ってたほうがよさそうね。うん、今度からもっと気を付けよう。


「疑問なんだが、性別はもちろん、タイプも真逆に見えるのに、なぜ羽鳥さんは鳩谷くんと一緒にいられるんだ?」

「確かに気になるよなー。中学くらいから、鳩谷の保護者だったんだろ? あいつ悪いやつじゃないけど、なんかふわふわしてて頼りないじゃん。よく愛想つかさなかったよな」


ふいに鴇村くんが口にした疑問に、篠崎くんも、同調した。しかし、鴇村くんがこういう話を振ってくるとは、珍しいこともあるものだ。

それにしても、ひどい言われようだな、むっちゃん。まあ、間違ってないけど、昔はそうでもなかったのにな。うちの学校には、中学から一緒の人はいても、小学校まで同じって人はいないから、以前を知らないのも無理はないか。


「うーん、実はむっちゃんて、小学校まではすごかったんだよ?」

「すごかったって?」

「運動も勉強もなんでも人よりできたし、しっかりしてて、人当たりもよくて人気者だったの」

「「えーっ?!」」


よりちゃんと篠崎くんは、そろって驚きの声をあげ、鴇村くんは首をかしげた。そうだよね、想像できないよね。人当たりのよさと人気はあまり変わらないけど、今のむっちゃんて、顔は悪くないのに、ちょっとおバカさんで陽気な男子だもんね。


「本当なんだよ。わたし、小さい頃は、むっちゃんのあとをずっとついて歩いてたもん」

「そうなの?」

「うん。わたしは早生まれだったから、他の子に比べていろいろ遅かったんだけど、助けてくれたのも全部むっちゃんなの」

「へー、意外」


3人は、わたしの話を面白そうに聞いてくれた。そういえば、誰かにこんな話をするのは初めてかもしれない。


「まあ、わたしもずっとそんなのは悔しくて勉強だけは頑張ったし、中学からは前ほど一緒じゃなくなったんだけど」


でも本当に小学校までは、体も大きくて、なんでも自分でこなせるむっちゃんは、できるお子さんだった。だから、みんなのリーダー的存在だったのだ。そんなむっちゃんが味方をしてくれたから、いじめられることなく、わたしは幼少期を過ごせたと言っても過言ではない。


「じゃあ、なんで今はあんなにダメなのさ? テスト前とか、羽鳥さんにノートや過去問もらったり、山はってもらってんだろ?」

「……むっちゃん、頑張るの苦手だから」

「要するに、努力をしなかったから周りに追い越されて、そのあげく、今は羽鳥さんに頼ってるってわけか」

「なんかアリとキリギリスの話みたいよね」


うん、わたしもちょっとそう思ってた。しかし、せっかく言葉を濁したのに、みんな辛辣だなあ。思わず、乾いた笑いが漏れる。


「あはは。まあ、わたしに限らずすぐ周りが助けてくれて、ずるいとは思うけど、それがむっちゃんだから」

「確かに、今さら自立した優等生になられても気持ち悪いか」

「うわ、想像したらぞっとした」


うん、むっちゃんネタにしてごめん。でも、会話が盛り上がったから許して。でも、よりちゃんと篠崎くんが笑っている横で、鴇村くんはなんだか難しい顔をしている。どうしたんだろう。


「鴇村くん、どうかした?」

「もしかして、その場にいない人をネタにして笑うのが、不快だった?!」


わたしとよりちゃんが慌てて声をかけると、鴇村くんはゆるゆると首をふった。


「いや、羽鳥さんの寛容さを見習わないとと思って」

「えっ?」

「今、そんな話だった?」


よりちゃんに聞かれて、否定の意味を込めて首を振った。どっちかっていうと、わたしとむっちゃんの関係は、慣れと習慣と惰性によるものですよ、って話だったような。なにか鴇村くんの琴線に触れるような内容だったろうか。待てよ、そういえば、この話を振ってきたのって鴇村くんだった。


「鴇村くん、タイプの違う人との関係にでも悩んでる?」

「タイプが違うというか、前と変わってしまったというか……」


言いよどむ鴇村くんに、わたしはピンときた。少し前、ある人について、そんな風に言っていたのを思い出したからだ。


「それって、羽田さん?」

「ああ。……そうか、羽鳥さんには話したことあったか」


やっぱりなあ、と思ってうなずく。鴇村くんは、羽田さんのことがずっと気になっていたのだろう。だから、同じ昔馴染みだけど、鴇村くんたちと違って、関係があまり変わらないわたしとむっちゃんのことを聞きたかったのかもしれない。


「羽田さんて、誰?」

「1年生の女の子。鴇村くんとは、小学校が一緒で、前は仲良かったんだって」


篠崎くんの疑問に、言葉を探す鴇村くんに変わって、わたしが簡潔に答える。きっと、文化祭のことを話すか迷ったんだろうけど、今は言わない方がいい。目配せして見せると、鴇村くんは黙ってうなずいた。


「へー、じゃあ、鴇村くんは一旦疎遠になっちゃったその子と、また仲良くなりたいってこと?」

「仲良く、というか、昔と同じように気安く話せたらという感じか。けど、なんだか前とは雰囲気が変わってしまったし、どうにもな」


苦い顔をする鴇村くんに、わたしたち3人はそろって顔を見合わせた。「それって、もしかして」「いやいや、鴇村に限って……」「でもやっぱり、そうなんじゃない?」と、視線だけで会話する。

だって、言っちゃ悪いけど、鴇村くん自ら恋愛系らしき話題を振ってくるなんて衝撃的すぎるんだもの。しかも、どうやら無意識だし。いや、でも今までそういうことに無関心だった鴇村くんだからこそ、素直に話しちゃうってセンも捨てきれない。

どっちにしても、これは絶対に茶化したらいけない、って空気になっていて、わたしたちは思わず沈黙した。これって、相談されているのだろうか? なんか答えてあげるべきだよね。わたしは、あんまり友達とこういう話をしたことないから、どうしていいかわからないんだけど。


「じゃあ、昔はどんな関係だったの?」


はじめに口を開いたのはよりちゃんだった。勇者か! しかし、相談に乗るにしても、情報が少なすぎるもんね。その情報は大事だと思います。


「学童が同じで、よく一緒に宿題をしていた。といっても、舞子は勉強が苦手で、もっぱら僕が教えていたんだが」


なるほど、幼少期の2人はそれなりに良好な関係だったのね。また前みたいに、って鴇村くんが言うからには、きっと勉強を教えてた意外にも、なにかいい思い出があったんだろう。

けど、小学校を卒業して会わないでいるうちに、羽田さんはギャルになり、鴇村くんは絵に描いたような優等生になり、溝ができてしまったわけだ。文化祭の件で、鴇村くんはまた羽田さんにお説教をしたらしいから、たぶんまだお互いの関係は微妙なまま。困ったものだ。


「うーん、その子は今どんな感じなの? 鴇村くんとは、関わりたくない感じ?」

「どうだろうな。僕が友達といるのは気にくわないらしいけど……」

「あーっ! それってあのギャルっぽい子? 俺に『あんたみたいなチャラいのが修成の友達とか、認めないっ!』って言った子!」


えー、篠崎くんにそんなこと言っちゃったの、羽田さん。隣のよりちゃんも微妙な表情をしている。ていうか、篠崎くんは別にチャラくないと思うんだけどな。それとも、鴇村くんと篠崎くんはキャラが違いすぎるからか。


「悪かったな、篠崎。前は、あんな感じじゃなかったんだ」

「別に俺はいいけどさ。てか、あの子は鴇村のこと、美化しすぎてんじゃないの? 」

「一度、ゆっくり話す機会があれば、誤解も解けそうなのにね」


きっと、羽田さんにとって、鴇村くんは憧れの人だったんだろう。だから、久しぶりに見た鴇村くんが有名人になっていて、余計に遠い人に見えたんだろう。でも、話してみたら、鴇村くんだって羽田さんとまた前みたいに話したいって思ってるのがわかると思うんだけどな。


「じゃあ、また一緒に勉強してみたら? またすぐ中間テストがあるし」


ふむ、と納得したように頷いて、よりちゃんはあっさりそう言った。


「いきなりすぎないか?」

「そんなこと言ってたら、ちゃんと話す機会なんて来ないよ。まずはお土産でも口実にして会って、次の約束取り付けるしかなくない?」


確かに唐突だと思いつつ、他にいい手が思い付かないわたしたちは、とりあえず鴇村くんになんでもいいから1回ちゃんと話して見ることをおすすめした。どう見てもお互いに、また普通に話せるようになりたいって思ってるのが見えてるんだもの、きっとうまくいくんじゃないかな。


ってあれ? なんだか鴇村くんと羽田さんの間を取り持つようなことしちゃってるけど、これ、大丈夫だよね。なんかこの後、まずいことになったり、しないよね?



今回のまとめ

・六実の転生チートは小学校まででした。

・鴇村くんと羽田さんが仲直りするかも。

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