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深淵の魔術師  作者: 鎖
11/14

終末へ 3


僕はウドラ山脈の道を走った。

国境に行けば、国境警備兵がいて、その兵舎がある。

そこには馬があり、それに乗れば、

彼女……エルザを救える。


僕にしか彼女は救えない。と思った。

彼女にしか僕は救えない。とも思った。


エルザは僕の血の連鎖から救ってくれるような気がした。

この呪われた身を、心を、業を、運命を許してくれる気がした。


目が霞む。血を流しすぎた。

僕は頭をぶんぶんと横に振った。

死ぬな。死んだらダメだ。まだ、死ぬな。


国境に近づいた。

もうすぐ兵舎が見えるはず。


そこで気付く。囲まれている。

どうしてこんなに接近を許してしまったのか……。

僕はいつの間にか何十名かの魔族に囲まれていた。

それを指揮するのはもちろん……。


「グエイン……」

「借りを返しに来たぞ。人間」


今はダメだ。急がなくてはならない。

身体的にも戦える状況じゃない。

逃げるんだ。


しかし、姿を消す事ができなかった。

僕の魔力は既に枯渇してしまっていた。


「……グエイン、見逃してはくれないか?」

「冗談を言うな。貴様はここで、死ぬ」


そうだ。

これは今まで復讐を重ねて来た僕の罪だ。

好き勝手生きて殺してきた僕の業だ。


これが運命ならば甘んじて死のう。

それだけの事はしてきたのだから……。


だが、今じゃない。


僕は最後の魔法水薬を飲んだ。

しかし魔力を感じない。

まるで砂の上に水をかけたように、

魔力が流れていく。


ダメなのだ。

既に僕の体は魔力の器にすらなり得なかった。

これでは僕はただの人間だ。

いや、負傷している分、人並み以下だ。

僕はここで死ぬ。


また、助けられないのか。

僕はあの時のまま何もできずに朽ちていくのか。


殺してばかりで、何1つ救えやしない。

何千の人間を殺し、何千の魔族を殺した僕は、

たった1人の女でさえ救えやしないのか……。


ゆっくりと魔族が僕に近づく。

それは警戒じゃなかった。

慎重なのだ。狙い済ましているのだ。

確実に、間違いなく、僕を殺すため。


体に力が入らない。

目の前が段々と暗くなっていく。

何も見えず真暗な闇が広がる。

もう僕の体には魔力も血も残っていない。



ごめんよ。エルザ――。

君を助けられなかった。助けてあげたかった。


こんな僕でも君は許してくれるかい?



見間違いじゃない。


底の無い奈落、永遠に続く血の螺旋、呪われた運命の中で、


エルザは笑った。



「……もろもろの血肉ことごとく滅び、人もまた塵にかえるべし――!」


転移魔法。


それは肉体を魔力で分解し、他の場所で生成する

蘇生魔法にも似た魔法であり、

最上級の闇の魔法だ。


僕の体から光が放たれる。


「うぅぅぐぅぅあぁぁ!!!」


しかしそれは、魔力のない今の僕にとって自殺行為だった。



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