終末へ 3
僕はウドラ山脈の道を走った。
国境に行けば、国境警備兵がいて、その兵舎がある。
そこには馬があり、それに乗れば、
彼女……エルザを救える。
僕にしか彼女は救えない。と思った。
彼女にしか僕は救えない。とも思った。
エルザは僕の血の連鎖から救ってくれるような気がした。
この呪われた身を、心を、業を、運命を許してくれる気がした。
目が霞む。血を流しすぎた。
僕は頭をぶんぶんと横に振った。
死ぬな。死んだらダメだ。まだ、死ぬな。
国境に近づいた。
もうすぐ兵舎が見えるはず。
そこで気付く。囲まれている。
どうしてこんなに接近を許してしまったのか……。
僕はいつの間にか何十名かの魔族に囲まれていた。
それを指揮するのはもちろん……。
「グエイン……」
「借りを返しに来たぞ。人間」
今はダメだ。急がなくてはならない。
身体的にも戦える状況じゃない。
逃げるんだ。
しかし、姿を消す事ができなかった。
僕の魔力は既に枯渇してしまっていた。
「……グエイン、見逃してはくれないか?」
「冗談を言うな。貴様はここで、死ぬ」
そうだ。
これは今まで復讐を重ねて来た僕の罪だ。
好き勝手生きて殺してきた僕の業だ。
これが運命ならば甘んじて死のう。
それだけの事はしてきたのだから……。
だが、今じゃない。
僕は最後の魔法水薬を飲んだ。
しかし魔力を感じない。
まるで砂の上に水をかけたように、
魔力が流れていく。
ダメなのだ。
既に僕の体は魔力の器にすらなり得なかった。
これでは僕はただの人間だ。
いや、負傷している分、人並み以下だ。
僕はここで死ぬ。
また、助けられないのか。
僕はあの時のまま何もできずに朽ちていくのか。
殺してばかりで、何1つ救えやしない。
何千の人間を殺し、何千の魔族を殺した僕は、
たった1人の女でさえ救えやしないのか……。
ゆっくりと魔族が僕に近づく。
それは警戒じゃなかった。
慎重なのだ。狙い済ましているのだ。
確実に、間違いなく、僕を殺すため。
体に力が入らない。
目の前が段々と暗くなっていく。
何も見えず真暗な闇が広がる。
もう僕の体には魔力も血も残っていない。
ごめんよ。エルザ――。
君を助けられなかった。助けてあげたかった。
こんな僕でも君は許してくれるかい?
見間違いじゃない。
底の無い奈落、永遠に続く血の螺旋、呪われた運命の中で、
エルザは笑った。
「……もろもろの血肉ことごとく滅び、人もまた塵にかえるべし――!」
転移魔法。
それは肉体を魔力で分解し、他の場所で生成する
蘇生魔法にも似た魔法であり、
最上級の闇の魔法だ。
僕の体から光が放たれる。
「うぅぅぐぅぅあぁぁ!!!」
しかしそれは、魔力のない今の僕にとって自殺行為だった。




