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深淵の魔術師  作者: 鎖
10/14

終末へ 2

「――! 弓兵!」


大臣は叫んで僕の方へ剣を振り下ろした。

スケルトンやゴーレムでなく僕自身を狙ったのだ。

だが、そんなもの当りはしない。

僕はスッとゴーレムの影の中に姿を消した。


「げふっ……!」


闇の中での吐血。

僕はそこまで強力な魔法を使ってはいない。

冗談ではなく限界なのだ。


それでもいい。

どうせ呪われた身だ。


僕はゴーレムの体から身を乗り出した。


(!)


その瞬間、待ち構えていた弓兵の矢が

無数に降り注ぐ。

とっさに風符を発動させて、全身に風を纏った。

その風は矢の軌道を逸らし、目標から外れさせた。

致命傷は避けたものの、何本かは腕や足に刺さり

着ているローブが血で滲んだ。


「当るっ! 当るぞ! 放て、放てぇ!」


調子に乗った大臣の指揮で弓兵が矢をつがえる。


「……灰は灰に、塵は塵に――!」


僕は弓兵より早く、黒い槍を何本も放ち

その胴体を貫く。綺麗に並んだ陣形は

その槍に何人も巻き込んだ。


だが、数が多すぎる。


僕の体は限界だ。

既に手が震え始めている。

腕や足に刺さった矢による外傷が

それは加速させている。


迷っている暇は無かった。

そして考える暇も無かった。

これしかなかった。


時間魔法。


「……草は枯れ、花はしぼむ。だが神のことばは永遠に――!」


空気が歪み時間が止まる。


「ぐっ……!」


しかし、僕の体は激しく軋んだ。

内臓が締め付けられるような感覚。

体に激痛が走り、がくがくと膝が笑う。


「……あぁぁぁ!」


渾身の力を振り絞り、大臣に向けて黒い槍を放つ。

その瞬間、魔法の効果が切れ、

大臣は目の前を飛ぶ黒い槍に驚く。


「ひっ……!」


それが彼の最後の言葉だった。


黒い槍は彼の頭を貫通した。

彼は穴の開いた顔面から血を撒き散らし、

人形のように落馬して死んだ。

残された兵士達は蜘蛛の子を散らすように霧散していった。


僕は地面に膝を付いた。

矢傷の血が止まらない。


でも行かなければならない。


大臣は公開処刑と言っていた。

助けなければならない。

今度こそ……。


僕はハッとした。


助ける?


誰を?

そんな必要はない。

今は療養すべき時だ。

身を隠し、体を休め、魔力を高めるときだ。


大臣を殺しておきながら、王都に行くと言うのか?


「バカげている」


口に出したが体が立ち上がる。

膝は揺れ、手足は震え、全身が血で滲みながらも

僕は王都へ向かっている。


やめろ……!

心が叫ぶけれど、ゆっくりと足が前へ進んだ。


もう間に合わない!

国境まで行けば、馬がある。


死んでしまうぞ!

構うものか。とっくの昔に終わった人生だ。


何のために!?

……何のため?


ピタリ、と僕の足が止まった。


そう!なんのため!?彼女を救ってどうなる!?

意味があるのか!?価値があるのか!?


彼女は、彼女が、彼女だけは……。



僕を許してくれる。そんな気がしたんだ。



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