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こてつ物語10  作者: 貫雪
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 ハルオと香はこてつ組の前で車から降りると、土間に礼を言った。


「気にしないで。ついでだったんだから。ハルオにお礼も、言えたしね」そう、土間は笑う。


「それに、香。本当にありがとう。ハルオをよろしくね」


 香がどう返事をしたらいいのか悩んでいるうちに、土間は智に言って車を走らせてしまった。

 二人で走り去る車の後姿を見送ると、


「なんか、あんたの事、頼まれちゃったみたい」香はくすぐったそうな顔をする。


「た、頼りになるよ。か、香は。お、おかげで土間さんとうまく話せたし。お、俺の方こそ、こ、これからも、よ、よろしく頼む」


 ハルオに深々と頭をさげられて、香も意味もなく頭を下げ返してしまった。

 二人揃って頭をあげると、そのまま目があってしまう。思わず二人で吹き出した。


「さて、礼似さんにしっかり謝んなくちゃ」香が天を仰いで言う。


「な、なんか、ご、ご機嫌斜め、み、みたいな事、ど、土間さんも言ってたな」


「一発貰うくらいは、覚悟かな。でも、時間が経ったら謝りにくくなっちゃうし」


「お、怒るのは、そ、それだけ心配してくれてた、しょ、証拠だ。お、俺、か、香を止められなかったし」


「ハルオのせいじゃないって言っても、あたしが言ったんじゃ、駄目だろうしな」

 二人揃って軽くため息をついた。


「しかたがない。一発貰いに行くか」

 そう言って二人は、礼似のいる組長室に向かう。


 一発と口で言うのは簡単だが、何せ礼似は馬鹿力。本気で殴られればかなりキツイ。手加減してくれる程度に落ち着いていてほしいのだが。


「一樹さん、まだ組長室にいるかな?」思い出したように香が聞く。


「い、いるんじゃないか? お、大谷さんと、い、一緒じゃなかったし」


「じゃあ、余計に機嫌が悪いかな。礼似さん、一樹さんが苦手みたいだし」


「あ、あの二人、む、昔からの、し、知りあいなんだって?」


「知り合いって言うか、若い時はそれ相応の仲だったみたいよ。一樹さん、昔の礼似さんの事色々知ってるようだから、それで礼似さん、一樹さんが苦手なんじゃないかなあ?」


「じゃ、じゃあ、に、苦手って言っても、べ、別に嫌いなわけじゃ、な、ないんだ」


「そうね。案外そのうちにくっつき直すかもね。昔からよく言うじゃない? 焼け木杭に火が着くって」


「な、なら、か、一樹さんがいた方が、れ、礼似さんも落ち着いているかも」

 ハルオは希望的な意見を言った。何も好きこのんで殴られたいわけではない。


「オトコが近くにいるからって、おとなしくなる礼似さんだと思う?」


「お、思わない」


 香の一言で希望の火はすぐに消えた。


「一樹さんが、うまく取りなしてくれればなあ」


「で、でも、か、かえって、れ、礼似さんを、お、怒らせそうな、き、気がする」


「礼似さんにムチが効くのは一樹さんだけって感じよねー」


「お、俺たちじゃ、ム、ムチが届く前に、お、襲われそうだ」

 二人の会話で、礼似はまるで猛獣扱いになっている。さしずめ一樹は猛獣使いだ。





次話で最終回です。

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