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こてつ物語10  作者: 貫雪
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 大きな音とわずかな振動。それは屋上の出入り口に集まっていた、ハルオ達のところにも伝わった。階下でなにか、爆発があったらしい。

 音の大きさに驚きこそしたが、下の階のガラスが吹き飛んだのは分かったが、建物の大きな損傷は起こった様子がなかった。どうやら本命の爆発とは違うようだ。


 しかし、爆発がどこで起こったのか、ハルオ達には分からない。もしかしたら御子達のいるフロアか、智達のいるフロア、ひょっとしたらさらに下の、救助隊に向けられたものかもしれない。

 ハルオは早速良平の携帯に電話をかけたが、通話が繋がらない。智の番号も同様だった。

 下のみんなは大丈夫だろうか? 不安はある。そこにいた全員が顔を見合わせた。


「私、下に行って、御子さん達の様子を見てこようか?」香はそう聞いたが、


「い、いや。もう、た、単独行動は、さ、避けよう。い、今の爆発が、ほ、本命じゃないって事は、こ、ここに本命が隠されてる、か、可能性が高まったって、こ、事だ。し、下の無事を確認するより、ば、爆弾探しが先決だ」


 心配な気持ちはある。だが、本命が爆発しては、全員の命に関わる。下の人間の無事は、今は祈るしかなかった。

 ハルオ達は早速手分けをして、爆弾を探し始めた。今までの物を考えると、時限式や、離れた場所から起爆させるような、複雑さをもった爆発物は考えにくい。火薬の量は違えど、振動や、ちょっとしたタイマースイッチで起爆する、単純な作りの物に違いないだろう。


 と、言う事は、見つけてさえしまえば、所詮は火薬。起爆部分を外すなり、濡らしてしまうなり、消火剤で包み込んでしまうなりすれば、大爆発は避けられる。それぞれが備え付けられていた消火ボンベを手に、探し回った。

 人目につく場所ではないだろうと言う事で、図面に載っている、機械室やボイラー室、屋上イベント用品を保管するのであろう、倉庫の中などを探す事にする。


 相応に隠してあるはずなので、こまごまとした場所の扉の一つ一つや、蓋や覆いをいちいち開いて探すので、時間ばかりがかかってしまう。犯人を捕まえてありかを問いただしたとしても、おそらく素直に白状しないだろう。そんな事をしている間に、間違って爆発でもしては、意味がない。

 事は一刻を争うのに、隅々までくまなく探す必要がある。誰もがいら立ちをこらえながら探し続ける。ハルオも気を落ち着けようと図面の確認のために屋上の出入り口に戻ってきた。すると、


「ワン、ワンワン、ワン!」

 聞き覚えのある、甲高い犬の鳴き声が響き渡った。


「こ、こてつ? ど、どうしたんだ?」


 一瞬、御子達の身に何かあったのかとひやりとする。しかし、その首輪に手紙がくくりつけられている事に気がついた。急いで外し、中を開く。

 こてつの声に驚いて、香達も集って来た。共に手紙を見ると、


『爆弾は屋上遊具、小熊型電動カートの座席シートの下。犯人は自爆の覚悟が出来てる。何をするか分からないから、犯人の身を安全に確保して』


 と、見慣れた御子の字で書かれていた。


「小熊型の、電動カート……。私が捜したところの外に出ているカートに、熊の形の物は無かったわ」


 香は外に出ている遊具を一つ一つチェックしていた。


「たしか図面には、機械室の反対の部屋に、屋上遊具の保管室が書かれていたな」

 こてつ組の若い男が図面を見直す。


「き、きっと、そ、そこだ! お、表にある、し、振動の加わる遊具には、か、隠さないだろうから」

 ハルオ達は一目散に保管室へと向かった。




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