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こてつ物語10  作者: 貫雪
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「外の様子はどう?他に取り残されている人はいなかった?」御子は香に聞いた。


「いないみたいです。少なくとも私達は会いませんでした。爆発物を探していたから、結構見て回ったと思うんですけど」


「爆発の後、速やかに避難出来たんだろう。ここの従業員なら、落ち着いて誘導できただろうから」

 良平は今までの従業員たちの様子から判断した。御子もうなずく。


「あとは私達だけってことね。でも、まず爆弾を何とかしないと。他の仕掛けの火薬は少量に抑えて、本命にありったけの火薬を使ったみたいだから、かなり危険な代物だと思う。もし、爆発すれば、最初の爆発より、大きいかも」


「そ、そうだな。も、問題は、ほ、本命が屋上か、し、下の階か」


「考えても仕方がない。探るのは御子に任せて、早く爆弾か犯人を見つけ出してくれ。会長に応援も頼んだ。場所が二か所に絞られたんだ。少しは見つけやすいだろう」


 良平にそう言われて、三人は早速手分けして爆弾を探す。今までの爆発物の隠し方から、ありそうな場所を見当つけて探す事にした。


 三人はこれまで爆発物のあった所と似たような所を念入りに探し回った。ベンチの横、商品棚の下、柱の陰、化粧室の洗面台の上。そんな所を中心に探すが、今までと同じ爆発物はあっても、肝心の爆弾は見つからない。結局三人とも元の防火扉の隙間へと戻ってきた。


「意外と見つからないわ。探し方が悪いのかしら?」香は首をひねったが、


「考え方が間違っているのかもしれない。今までの爆発物は、誰かが見つけて傷つけられる事を前提にしかけてあったんだろう? だが、本命はそうじゃないはずだ。爆破されるまで誰にも見つからずにおかなけりゃならないはずだ。もっと目につきにくい所に隠されているんじゃないだろうか?」

 良平が考えながら言う。確かにそうだ。今までとは犯人の目的が違う。


「は、犯人をつ、捕まえれば、は、話は早いのに」ハルオも忌々しげに言う。


「犯人だって、爆弾のそばにはいないだろうしね。どこか逃げやすいところでなりを潜めているのかも」

 御子もそう言いながら犯人の居場所を探ろうとしていた。


「あんた達、随分前向きな発想するんだな」御子の言葉を聞いて、智が言った。


「ど、どういう事だ?」ハルオが聞き返す。


「こんな事件を起こすような奴だ。自分の人生に未来なんか見ちゃいないだろうよ。そんな奴なら今更逃げようなんて発想、ないんじゃないか? 目的さえ遂げれば捕まってもかまわないんだろうし、ひょっとしたら自殺志望者かもしれない。派手に世の中を騒がせて、道連れを狙ってんじゃないか?」


 智の言葉に全員が驚く。しかし考えてみればそっちの発想の方が、ずっと犯人の考えに近そうだ。


「じゃあ、何処にでも隠れている可能性があるわね。見つけるのは大変だわ」

 香ががっかりとした声を上げた。


「逆に、爆弾の近くにいるんじゃないのか? へたすりゃ、持って歩いているかもしれない。最後には確実に目的が達成できる事を望んでいるかもしれない。俺が死ぬならそのくらいは考える」


 智の言葉に皆、一時黙り込む。智の目が極端に暗くなったからだ。御子は犯人の心を読む事が出来ても、その異様な心情は理解しかねる。しかし、智は心が読めずとも、犯人の発想は理解できるらしい。世の中への恨みは、智も爆弾魔と同じように持っているようだ。

 御子は考え深げな表情を見せた。


「たしかに……。そう考えれば分かりやすいわ。肝心の爆弾の部分だけ心が読みにくくなるのは、犯人が死を望んでいるからかもしれない。望んでいるのに、恐れてる」





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