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「潜り込んだ事が、犯人にバレた?」
御子からの連絡を受け、礼似が叫んだ。こてつ組の組長室で、土間、一樹、大谷と共に、テレビの画面を睨みながら、携帯が鳴るのを待ち続けた挙句、犯人はハルオ達と同じ駐車場にいて、ハルオ達を新たな標的にした事を御子から知らされたのだ。
「もうダメ、我慢できない。どうしても私行くわよ。あんた達が止めたって無駄。あの三人に何かあったら、私の責任だわ」
そう言って礼似は部屋を出ようとしたが、一樹が声をかけた。
「行ってどうする?」
「どうするもこうするも、三人を犯人から助けるのよ。決まってるじゃない」
「助ける? どうやって? 相手は爆弾魔だ。 銃やナイフで襲おうってわけじゃない。キレれば建物ごと人を吹っ飛ばすのを、楽しんでいるような奴だ。しかもそれをテレビで眺めてるんだ。お前がマスコミに捕まれば、かえって犯人を刺激しかねない」
「私、そんなヘマしないわよ」
「あれだけのマスコミの目とカメラの数で、か? それにうまく潜り込んだとしたって、犯人がどこにいるのか分からない以上、あっちにすれば標的が増えるだけだろう。それがこてつ組の組長だと知れたら、こんな派手な事をする奴だ。さぞかし虚栄心を刺激されることだろうな」
ここまで言われると、礼似も言葉がなかった。
「今のお前じゃハルオの足手まといだ。それとも、会長に殴られただけじゃ足りないか? 俺や土間さんにも殴られた方が頭が冷えるか?」
礼似は部屋の戸口から引き返した。自分の席に乱暴なしぐさで座る。
「ちょっと席をはずしてもらえないか?」
一樹が土間と大谷に言った。二人とも顔を見合わせたが、黙って部屋を出ていく。
「こんな時に慰めてもらいたくなんかないんだけど」礼似は一樹を睨んだ。
「俺がそんな真似すると思うか? 残念ながら逆だね。大谷は立場上、土間さんは心情的に言えないだろうから俺が言わせてもらうぞ。礼似。お前はドレミの三人の中で、一番胆が据わってない。組長の資質としては致命的だろう」
「悪かったわね。でも、私だってなりたくてなった訳じゃないわ」
「子供みたいな事を言うな。会長はお前が必要だからお前を選んだ。お前がこの組で生きる覚悟があるんなら、必要とされた事はやり抜くしかないだろう。なのに、お前は胆の据わりが足りない」
「そうよ。つまらない意地と度胸しかないのが私よ」
「開き直るな。何がお飾りの組長だ。俺が会長でもぶん殴ってる。お前が何故、無謀だったのか教えてやろうか? 本当の度胸がないからだ。真正面から問題に立ち向かうための、自分の度胸に自信がない。だから常に、度胸試しをせずにはいられなくなる。お前もそこに気付いたはずだ。……香を通して」
「そうね。香は私にいろんな事を教えてくれるわ」
「だったら、ちょっとは胆を据えろ。お前がどんなに胆が足りなかろうが、俺達はお前に命預ける他にないんだ。そこから逃げるな」