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こてつ物語10  作者: 貫雪
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 ハルオ、香、智が地下の駐車場に着くと、三人とも由美の車を呆然と眺めてしまっていた。

 それもそのはずで、車の窓ガラスは粉々に砕け散っていて、そこにいるはずのこてつの姿は消えてしまっていたのだから。


「と、とりあえず、こ、この辺を、さ、探してみよう」


 三人は手分けして駐車場の中を捜したが、こてつの姿は無い。もう、この辺にはいないようだ。

 途方に暮れている所にハルオの携帯が鳴った。


「ハルオ? 今、御子からメールがあったの。こてつ、車を抜け出して奥様のところに駆け寄ったらしいわ。今、一緒にいるって」


「ど、どおりで……。い、今まで、ちゅ、駐車場の中を、さ、捜し回ってたんです。と、とにかく、ぶ、無事でよかった」


「まあ、さすがはあの、こてつってところね。とりあえず香は引き返していいわ。あんたと智には頼みがあるの」


「な、なんです?」


「まだ建物の中に小さな爆弾もどきの仕掛けと、本命の爆弾があるの。御子が犯人の心を探って、場所を探してる。あんた達にその仕掛けと爆弾を探して欲しいのよ。仕掛けと言っても人に致命傷を負わせる力はあるらしいし、警察や救助隊が派手な動きは出来ない。でも、御子達がいるフロア以外にも人が取り残されているかもしれないでしょ?うっかり触りでもしたら大変なの。爆発物や本命の爆弾を取り除いてさえしまえば、安全に救助もできるしね」


「な、成程。そ、その、爆発物を、な、何とかすれば、い、いいんですね?」


「そう、最初の爆発で、中の仕掛けもどうなってるか分からないから、十分気を付けるのよ。ホントは私も行きたいくらいなんだから」


「気、気をつけます。じゃ、じゃあ、香さんは帰って……」

 そういいかけたハルオから、香は携帯をひったくった。


「礼似さん。私、戻りません。ハルオ達と一緒に爆発物を探します。いいですね?」


「ダメよ、いいわけないじゃない。あんたは帰ってきなさい。香! 香?」


 すでに通話は切れている。香はどうあっても戻るつもりがないらしい。


「冗談じゃないわ。私、行って来る」そう言って歩きかける礼似を土間が押しとどめる。


「わがままもいい加減にしなさい。あんた、組長の立場をなんだと思ってんの?」



「なによ! こんな、お飾りの組長なんて!」


 礼似はそう叫んだとたん、突然身体が吹っ飛ばされた。思い切り尻もちをついてしまう。頬に痛みが走り、会長が目の前で仁王立ちしていた。ようやく会長に殴られたのだと気がつく。


「お前は組長だ」そう、一言だけ告げて会長は自分の車に乗り、去ってしまった。


 礼似はポカンとして、その場に尻をついたままでいたが、

「おい、俺達も戻るぞ」


 そう、一樹に言われて引っ張られていく。無理やり車に連れて来られ、後部座席に押し込められた。


「ちょっと! 誰がここから離れるって言った?」

 そう言って降りようとしても、右には大谷が座り、左には土間がいる。礼似は座席の真ん中でふくれっ面をするしかない。


「何で戻んなきゃいけないのよ」


「こんなマスコミがウヨウヨいる所にいつまでもいられるか。ここにいたって無駄だ。あの三人に任せるしかないだろう。へたすりゃ俺達は邪魔になるだけだ」


 そう言って一樹は車を組へと走らせた。



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