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こてつ物語10  作者: 貫雪
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「おい、このフロアにも仕掛けがあるのか?」良平が慌てて聞いた。こんな閉じ込められたところでそんな仕掛けが爆発したら、ひどい事になる。


「待って、ここは子供用品売り場……」御子が懸命に探る。このフロアの様子と同じイメージが仕掛けた場所にないか丹念に探って行く。


「ありそうだわ。おもちゃ売り場みたいなところの大きな柱の下、紙袋が置いてある。これに触っちゃだめだわ」


 おもちゃ売り場と言ったって、こんな不慣れな場所では、何処に売り場があって、柱があるのか分からない。


「店員に協力してもらおう」


 良平は、さっき皆に呼び掛けていた男性店員の姿を見つけると、この爆発は事故ではなく、何者かが仕掛けた爆弾らしいと告げる。そして、他にも仕掛けがあると。店員は青くなった。


「そんな。こんなに子供も多いのに。不用意に触られたらおしまいだ」

 店員は他の従業員達を呼び集め、フロアにいる人たちに呼び掛けるように伝えた。


「不審物には触らないでください! 危険物が爆発する恐れがあります! 不審物に触らないで!」

 そんな声があちこちに響くと、皆、ざわざわと騒ぎ始めた。


「爆発って、どういう事だ!」


「これって、事故じゃなかったの?」


 口々にそんな言葉がのぼる。中には従業員に詰め寄るものもいる。彼らだって何も知らないと言うのに。フロアは騒然となった。その時、

「ありました! 不審物らしき紙袋が! あの、柱の陰です!」そう、従業員の一人が叫んだ。


 皆の声がピタリとやむ。息を飲んで柱の方を見ると、確かにそこには不自然な紙袋があった。


「皆さん、下がって」そう言うと、誰もが紙袋から大きく離れた。良平は手近な商品看板を手に取り、それを盾にして、陳列棚の支えにされていた長い棒を抜き取り、そっと、紙袋を倒した。


 バン!と、軽い破裂音がしたと同時に、大量の釘と鋲が勢いよく飛び出した。良平が盾にした看板にも突き刺さっている。直接手にしていたら、すべてが身体に突き刺さっていたはずだ。誰もが黙り込んで散らばった釘を見つめていた。


 すると、さっきの男性店員が駆け寄ってくる。

「お、お客様! 足に!」良平のズボンのふくらはぎのあたりに、釘が数本、刺さっていたのだ。


「ああ、大丈夫です。ご心配なく。これは義足なんです」そう言って釘を抜き取り、にっこり笑う。


「そうでしたか。良かった、他のところに刺さらなくて。運が良かった」ホッとした声で言ってくれる。


 本当はとっさに義足で身をかばったのだが、それを言うとややこしい話になりかねないので、良平は「ありがとうございます。ご心配おかけしました」とだけ言っておいた。


 しかし、他の人たちはそれどころではないらしく、他に不審物は無いか、子供は無事かとざわざわと騒ぎ始める。そのうち誰かが、大声を上げた。


「おい! テレビを見ろ。救助がこられなくなってる!」


 声は喫茶コーナーから上がっていた。そこにはテレビがあり、このデパートの崩れた姿が映るその上に、字幕のテロップが流れていた。そこには、


 犯人による犯行声明があった模様。救助の撤退を要求し、受け入れなければさらなる犯行を示唆。


 そう書かれた文字が、速報として流されていた。


「冗談じゃない。救助がこないなんて。子供もいるってのに」


「まだ爆発があるって言うの?」




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