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「由美も、お前も、無事なんだな?」会長が確認するように聞く。
「無事です。良平もいます。今のところ大丈夫です」そう言って由美の方を見ると、
「主人なの?」と、由美が聞いた。頷いて携帯を由美に渡す。
「もしもし? あなた? 私は大丈夫よ。でも、ここに真見ちゃんもいるの。御子さんがこの間生んだ娘さんよ。御子さんの言う事を聞いた方がいいと、私も思うわ。嫌な予感がするのよ。あなたからもおまわりさん達にお願いして。みんな、狙われているんだって」
「分かった。やれるだけやってみよう。大丈夫だ。必ず助けは来る。待っていなさい」
「それから地下の駐車場の車に、こてつがいるはずなの。早く迎えに行ってあげて」
「大丈夫だ。お前も落ち着いて行動してくれ。御子に代われるか?」
由美が御子と電話を変わると、
「警察と消防は何とかしよう。いいか? まだ何が起こるか分からない。これから連絡はメールにしろ。充電をなるべく持たせないといけない。何かあったらメールしてくれ。分かったな」
そう言って会長は通話を切った。暗い中ではあるが、御子は携帯を閉じた。
「良平の携帯は充電、どのくらい残ってる?」御子が聞いてきた。
「半分くらいだな。お前は?」
「私も今ので半分くらいになった。奥様、携帯は?」
「持ってます。今日はそんなに使ってないから、あんまり充電は減っていないと思うわ」
「良かった。それは心強いや」
良平がそういった時、フロアに明かりが戻ってきた。非常灯がついたようだ。
ざわざわと人の話し声が聞こえて来た。近くに結構人がいる。場所が場所だけに子供連れも多いようだ。
周りを見渡すと状況は厳しい事が分かった。
フロアの一方はエスカレーターごと完全に瓦礫で埋まっていた。反対側はシャッターと防火扉が閉じられているのだが、どちらもおかしな形にひしゃげているのが分かる。多少の隙間はできているが、通り抜けるのは無理そうだ。おそらくあの扉を人の手で開けるのは不可能だろう。方角的にはあの向こう側に階段があったはずなのだが。
これは、ここにいる全員が閉じ込められたと見て、間違いなさそうだ。
「怪我人とお子様連れの方は、こちらにいらしてください!乾いた床と、毛布がありますから!」
男性店員らしき、よく通る声が聞こえた。さっそくそこに行ってみると、遊戯用のボールパークに使われていたコーナーからボールが出され、おそらく売りものであったのであろう、プレイマットが敷き詰められていた。女性店員たちが子供たちにバスタオルを渡して、身体を拭いてそこにはいるように勧めている。職業意識だろうか? こんな時でも冷静なものだ。良平がそう店員に言うと、
「こういう時には体力のない子供が、一番大変ですから。守ってやらないと」
そう言って御子の腕の中の真見を見る。
「これは……。まだお小さいですね。そこにあるベビーカーで寝かしてあげた方がいいかな?」
「いえ、私が抱いていればこの子は大丈夫です。私も体力には自信がありますから。ご心配なく」
「分かりました。なら、こちらに腰掛けて下さい。でも、毛布はお渡ししておきましょう。幼児用ですが」
そう言ってベンチを勧め、全員にタオルと毛布を渡してくれる。
「これだけの爆発があったんだ。大怪我をした人もいるんじゃないか? 何か手伝えることは無いか?」
良平は店員にそう聞いたが、
「いえ、幸いそういう怪我をした方はいらっしゃらないようです。さっき電気がついた時に、フロアを従業員で一通り確認したんです。瓦礫の向こうの吹き飛んだ部分はどうなっているか分かりませんが」




