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こてつ物語10  作者: 貫雪
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お断り  今回のお話には、建物爆破シーンや、倒壊シーンが含まれます。今は相応しくないと御不快に感じる方もいらっしゃるかも知れませんので、そういうシーンを望まない方は申しわけありませんが、ご遠慮していただきたいと思います。2011年8月19日現在、まだ、強い地震が起こっていますからね。


主な登場人物

由美   こてつという名の柴犬を飼う、ちょっと(?)天然な奥さん。本人は普通の主婦だが、実は夫が街を牛耳る「こてつ組」会系の会長で大親分。ただし、どんな事があろうとも由美は夫の正体に気づく事がないらしい。会長の命で、こっそりと土間、礼似、御子の三人の女に守られている。


こてつ  由美と会長の飼い犬。柴犬だが、その風貌は焼き物の狸によくたとえられる。やることなす事人間臭く、由美が溺愛しており、人の子と変わらない扱いをするせいで、人臭さに一層拍車がかかっている。ホントに自分を犬だと思ってないかも。


会長   「華風組」「真柴組」「こてつ組」の三つの組を仕切る、「こてつ組」会の会長。泣く子も黙る大親分だが、由美とこてつを溺愛している。由美やこてつの身に何かある事と、由美に正体を知られる事を何よりも恐れている。


通称ドレミ三婆(笑)

土間   ドレミのド。昔、剣術の師匠と妻を次々殺され、生き方を変えるために性転換した元男性。妻との間に「ハルオ」と言う息子がいるが、身の安全のために真柴組に預けてしまった。我が手でハルオを育ててやれなかった事を悔いている。現在、華風組の女(?)組長。


礼似   ドレミのレ。殺し屋の父と、礼似と瓜二つな詐欺師の母を、元恋人の一樹に殺されている。若い頃は暴走族の女リーダー。詐欺も得意だが、一樹と美人局まがいの事をしていた事もある。香という妹分を唯一の家族と思って暮らしている。最近、こてつ組の組長に就任した。


御子   ドレミのミ。神社で拾われて育った後、真柴組に引き取られた真柴組長の養女。人の心を見通せる、千里眼をもっている。同じ組の次期組長、良平と結婚し、最近娘の真見が生まれたが、真見も千里眼をもっている。


ハルオ  真柴組の若い組員で、なにを言うにも何故かどもってしまう癖がある。お人好しで最近まで刃物を持てなかったが、父親譲りの才能はある。香の恋人。


香     礼似の妹分で、礼似同様父親は殺し屋だった。母は腕利きのスリ。その血を継いでスリの腕と、素早い動きを見抜く目を持っている。刀研ぎの修行中。


良平   真柴組の次期組長で、御子の夫。抜群のドスさばきをもっているが、片足が義足。だが、特殊な義足を使いこなすため、喧嘩の腕っ節は強い。


一樹   礼似の元パートナーで、恋人だった。礼似の両親に自分の両親を殺されているが、一樹もその仇を討っている。礼似に命懸けで足を洗わされ堅気になったが、会長に呼び戻された。



 夕暮れ時の真柴組で、香はサトイモの皮をむきながらハルオに訊ねた。

「煮物の具、足りなくない?」


 ハルオは炒め物用の野菜を刻む手を止め、下ごしらえの済んだ野菜を確認した。


「す、少し、こ、こんにゃくでも、た、足そう」

 そういいながら冷蔵庫からこんにゃくを引っ張り出して来る。


「そっち、もう終わる?私そろそろ行かないと」香は壁にかけられた時計の時間を気にしていた。


「あ、も、もういい。あ、後はやるから」


「そう?じゃ、私行くね」

 そういいながら香は手早くエプロンを外すと、バックを片手に御子のいる部屋に声をかける。


「じゃ、私出勤しますんで。あとはハルオとお願いしまーす」

 そういいながら玄関へと向かう。


「はーい。ありがとうね。香」

 御子は奥の部屋から生まれたばかりの娘を抱いたまま、香に礼を言った。


「いいえー。また明日」


 御子の出産から一カ月。香は午後になると真柴組に夕食の下ごしらえを手伝いに来るのが習慣になってしまっていた。

 出産直後の御子を気づかっての事もあるのだが、こうでもしないとなかなかハルオと会う機会も取れなくなっていたのだ。

 香は夕方から深夜にかけて、あの料亭で今も仲居をしている。ハルオも昼間はたこ焼き屋の仕事、その合間を見ては真柴組の雑用や家事をこなしている。


 もともと便利に使われていたハルオだが、この所、御子は娘の面倒にかかりきりになってしまい、組の実務と、子育てだけで精いっぱい。家事や雑用は一層ハルオに頼るようになっていた。

 けして多いとは言えない真柴組の組員だが、少ないとも言い難い。住み込みの若い者も多いので、雑用は山とある。人の良いハルオは御子の負担にならないようにと独楽鼠のようにせっせと働く。


 ハルオがようやく息を付ける頃には香は仲居の仕事の真っ最中。

 おまけにたこ焼き屋は土日や休日の方が忙しい。香も週末の夜は大忙しだが、日曜休みも多かった。

 つまり、二人は結構すれ違いの多いカップルになったわけだ。


 そこで香は午後になると料亭に出勤する前、真柴に夕食の下ごしらえの手伝いをしに来るようになった。

 それに合わせてハルオもたこ焼き屋の仕事から、一旦組に戻ってきて、香と共に台所に立っている。そして支度を終えてから、また店に戻って行くのだ。

 全くの私用なので(今までだってほとんど私用だったが)事務所を通らず、自宅用の玄関の方へ向かうと、御子も娘を抱えて部屋を出て来た。


「ほら、真見。お姉ちゃんに行ってらっしゃいしましょうねー」御子がまだ、首も座らぬ娘の手をもって香に向かって手を振らせる仕草をする。


 香も靴を履きながら振り返り、御子と赤ん坊に向かってひらひらと手を振り返しながら出ていった。




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