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Strange Hit Man ! !  作者: 赤神裕
第1章:変な殺し屋
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第八話:亡者との再会

地面から出てきた男、ウルフは彼の事を知っているようだが……。

それではごゆっくりお楽しみください。

 地面から出てきたのは人だった。左目から口まで傷の入った男で、目は閉じている。ゆっくりと地面から地上へと出てきて足まで出てくるとそいつはそのまま宙に浮いた。ウルフはそいつの顔を見て構えを解くが、その顔には吃驚した表情と冷や汗がにじみ出ていた。ユーマはウルフの顔に気づき、少し後退あとずさりして高い位置に身構える。男は浮遊した足をゆっくりと地表につき目を見開いた。とは言っても、開いたのは右目のみで左目は閉じたままだった。ギロリとウルフを睨みつけ強張った彼の表情を見ると男は微笑した。ウルフは重い口を開く。


「お前、ギジルか」


 とぎれとぎれに言葉を発すると、ギジルと呼ばれた男は口を開け意味のない張り裂けそうな大声を発した。同時に空気が重くなる。ウルフはそれに耐えながら辛うじて立っている状態だ。後ろを振り向くとユーマは空気の重みに耐えられなかったのか、地面に伏せて苦しい顔をし、聞こえないくらいにか細い声をもらしていた。そんな二人の様子を見るとギジルはフッと小さな息を吐き、後ろへ下がった。空気が一気に元に戻る。踏ん張っていたウルフはよろけた。ギジルはニヤリと笑い口を開く。


「しばらく見ないうちにでかくなったな」


 ギジルは感心したようにウルフを褒めた。ウルフは未だ表情をゆがめている。


「本当にギジルなのか?」


 ウルフは腰の銃に手を添えながら問う。チラリとその手に目を向けたギジルだったが、構わず笑みをウルフへ見せる。後ろからごそごそ音がした。ユーマが立ちあがったようだ。ギジルはそちらに目を向け、またウルフの方へと視線を戻した。ウルフが口を開く。


「何でこんなとこにいるんだ」

「何でと来たか。『アーシェ』と言えば分かるか?」


 ウルフはその言葉にピクリと反応する。ギジルはそんな彼の反応を見逃さなかった。またニヤリと笑うとそのままギジルは目を閉じた。ウルフはハッとし硬直状態に陥る。ギジルのイメージがウルフの方へ、ウルフの頭の中へと流れてきた。



 五年前。ギジルはウルフの唯一のパートナーだった。どんなに危険な依頼を受けても必ず成功して戻ってくる史上最強コンビとまで言われた二人だった。ギジルはウルフの影響もあってか、殺しまではしなかった。命拾いしたターゲットたちはこのコンビを恨み、また同じ依頼が舞い込んでくるといったように堂々巡りだった。


 とある80万ドルもの大金を積み上げられた依頼を受けたその翌日。このコンビの常識を覆す事件が起こる。この依頼の現場は港にある倉庫だった。ターゲットの男は以前この二人に殺されなかった生き残りで、当然ながら二人に恨みを持っていた。この男は町で人殺しを行い、二人へ復讐するため、わざと自分で依頼を出したのだ。その依頼が当然のことながらこのコンビにまわってくる。何も知らない二人は港の倉庫へ出向いた。倉庫の扉を開け中に入るが、人がいる気配はなく静まりかえっていた。二人はターゲットが現れるまで待つことにした。ウルフは外を警戒し、ギジルは中を警戒した。刻々と時刻は過ぎてゆきついにその時が来た。ターゲットが港に姿を現したのだ。どうやらまだこちらの様子には気づいていない。そう思ったウルフはこのことをギジルに報告しようと振り返る。その時、悲劇が起った。倉庫がいきなり爆破し吹っ飛んだのだ。爆風でウルフも吹っ飛ばされコンテナに体中をたたきつけられ、気絶しそうになる。何とかそれをこらえて、うすらぼんやりとしている視界にターゲットを捉えそいつを追おうとする。だが、その男は海へ落ちた。後で知ったことなのだが、この男は自ら海へ飛び込み溺死でいししたのだという。爆破で吹き飛んだ倉庫には、たくさんの空の弾倉とギジルが持っていたショットガンが転がっていた。ウルフはギジルの死を認めることができなかった。だが彼が帰ってくることはなかった。



 ギジルは右目を開ける。ウルフはゆっくりと目を開けた。いつの間にかユーマがウルフの隣に立っていた。ウルフは悲しい表情をギジルに向ける。そして口を開いた。


「あんたは、あん時死んだはずだ」

「あぁ、俺はあの時死に近づいた。この身体がすべて吹き飛んだような、粉々になった気分だった」


 ギジルは強張った表情をしている。だがそれも一瞬だけだった。ウルフはギジルの目を直視する。


「だがな『アーシェ』を救うため、俺は生き返った。そう、彼女はまだどこかにいる」


 またイメージがウルフの頭に流れ込んでくる。





 これはギジルが死ぬ一週間と一日前の話になる。ウルフには妹がいた。名はアーシェ。ギジルが初めてウルフの家を訪れた時、このアーシェに一目ぼれしてしまった。ギジルは当時30歳、一方アーシェは18歳だった。ウルフはというと20歳だった。このときからギジルとウルフは殺し屋をやっていた。ギジルはとしで言えば上だが、殺し屋という仕事から見ればウルフの方が先輩だった。アーシェは兄であるウルフが殺し屋をやっている事を知っていた。ギジルもまたその仲間だろうとアーシェは分かっていたが、怯えるわけでもなくごく普通。ギジルはだんだんとウルフの家へ来る事が多くなり、そのたびにアーシェは自慢の料理をふるまうのだった。


 ある日、アーシェは食材を買うため町に出たきり戻らないという事件が起きた。ギジルは真っ先にその噂を聞きつけてウルフとともに夜の街を探しまわった。だが彼女は見つけられないまま、夜が明けてしまった。ギジルは一生懸命探した。だが、結局昼過ぎになってもアーシェは見つからなかった。それでもギジルはあきらめなかった。隣町まで探しに行き一週間ほど帰ってはこなかった。ウルフは心配で仕方なく舞い込んでくる依頼もすべて断り、一人町の外れまで探しに行った。

 

 一週間後――――。

ギジルがアーシェを抱きかかえて戻ってきた。ウルフはギジルの元へ駆けつけアーシェを抱く。その時彼女はすでに冷たくなっていた。ギジルが言うには、隣町とこのまちの間にある洞窟の中で一人ひっそりと息を引き取ったそうだ。ウルフは泣いた。たった一人の妹を亡くしてしまったのだから無理もない。ギジルは泣くのをこらえうつむいていた。その後、ギジルは一人で洞窟へと足を運ぶことが何度かあった。いきつけのバーにいなかったのはそれが理由だった。ギジルは妙な事を言うようになる。


「アーシェはまだどこかで生きてるはずだ。死んでなんかいない」


 そう言う根拠が分からなかったのだが、ギジルのイメージからは未だにそのアーシェの魂がこの世をさまよっていると伝わってきた。急に真っ暗になる。





 気がつくとウルフは元の場所に立っていた。


「ギジル……。気持ちはわかるが、彼女は死んだ。救うことなどできない」

「できるはずだ。彼女の身体はまだ動く」


 ギジルの言っている事が分からなかった。ウルフは頭を振る。ギジルはウルフをまっすぐ見て睨んだ。


「俺は彼女を冷凍保存しておいた。俺の能力でな。それに彼女の魂を戻せば必ず彼女は甦る」


 『能力』その言葉にウルフは反応する。この男には能力などなかった。見せていなかったわけでもあるまい。真っ先に思い浮かんだのは死後のギジル。そう、今現在目の前にいるギジルだ。おそらく彼は今その能力とやらを持っていると仮定すると、ギジルの死んだあとすぐに彼は甦りアーシェの死体を腐敗から避けるため冷凍保存したということが考えられる。


「俺はあの爆破の後、すぐに病院へ搬送された。そこで出会ったのがギフナスだ」

「ギフナス、だと!?」


 ウルフが驚く。


「あぁ、そうだ。ギフナスは俺にこの能力をくれた。早速俺はこの能力で彼女の冷凍保存に成功し、あの日、墓に埋葬した。墓を掘り返せばアーシェははあの時のまま残っているということだ」

「ミイラってことか」


 ギジルはにやけた。そしてギジルはウルフから遠ざかる。そしてウルフを再度睨みつける。


「お前はアーシェが死んだと言うのに、依頼ばかりこなしていた。お前だけは許せん、行くぞぉ!!」


 ギジルはウルフに向かって突進し始めた。

ここで終了です。

前に続きややこしくなっていますがついて来れてますか?


<解説>

 ギジルは五年前、ウルフの家を訪れアーシェに一目ぼれをしてしまう。

ある日、アーシェは買い物へ出かけるがその後行方不明になってしまった。

二人は一日中探し、一週間後ギジルの手によって発見されたが、その時にはもう冷たくなっていた。そしてその翌日、彼女の葬式を行うために金がいるので80万ドルの依頼に手を出す。しかしそこでギジルが爆破に巻き込まれ死亡したことになる。だが彼はギフナスの手によって能力を備え付けられ生き返り、アーシェの身体を冷凍し腐敗を防ぐ。そしてそのまま姿をくらました。ウルフはこの時、依頼を受けてはこなしを続けていた。その姿を偶然目撃したギジルは怒り、ウルフに戦いを挑みに来た。


こんな感じです。ややこくてほんとに申し訳ない。


次回の予告を少々。

 妹が死んだにもかかわらず依頼をこなし続けていたウルフに怒りを覚えたギジルは五年もの年月を経て、彼に戦いを挑む。


次回、Strange Hit Man 愛すべき人のために……。 乞うご期待!!

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