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Strange Hit Man ! !  作者: 赤神裕
第1章:変な殺し屋
3/15

第三話:殺し屋の集い~後編~

 二話に続きまして後編です。これは、ウルフがバーで暴れたあとのストーリーです。流石に二話だけ長くなって三話からは短いなんていうのも「バランスがどうなの?」って思ったので、前後編に分けた事をお許しください。それでは、ウルフが暴れた後どうなったのか?

 続きをごゆっくり楽しんでください。

 男、ウルフはひたすら塔を目指して歩き続ける。そとはやけに冷え込むらしくコートの襟をたててポケットに手を突っ込み、口からは白い息が出ている。ウルフは震えた。くしゃみを一つ二つし、また震える。塔と真逆の方向から温かい日差しが彼を照らし始める。こうして長い夜が終わり朝が始まったのだった。町の教会の鐘が鳴り朝だということを町の皆に伝える。ウルフは走りだした。するとコートを脱ぎだし、それを腰に巻いた。上は黒い生地に肩から袖口までと脇の下から横っ腹まで緑のラインが入ったバイクスーツ。下は今まではいていた通り、黒単色のコーデュロイの長ズボンにロングブーツ。見るからに不格好ではあるが、彼はこのスタイルを気に入っているらしい。というのも、いつもこの姿でいるからだ。しばらく走っていると家の中から誰かが出てくる。若い女性だった。


「うぉ、ヤベぇ」


 ウルフは方向転換し家の陰に隠れた。彼がそうしたのは、理由がある。ここらでは赤い髪のウルフカットは彼しかいない。殺し屋の噂も広まっている。町人に姿を見せることはすなわち自殺行為を意味するのである。名高い変な殺し屋、故に首に賞金を賭けられているのだから無理もない。陰に隠れながら女性がどこかへ行くのを見守る。しかし、女性はこちらへ向かって歩いてきた。後ろは木の板でできた壁が邪魔してこれ以上進むことはできない。ここに隠れたのが失敗だった。しかし、ウルフはいたって冷静だった。


「前後がダメなら上にってな」


 ウルフは高く跳躍し板の壁に飛び移るとそのまま屋根に上った。見つかるわけにもいかないのでホフク状態でその場をやり過ごす。道に人がいない事を確認すると、そのまま裏道へと飛び降りた。

 ウルフは行きつけのバーまでやってきてその足をとめた。震える。バーの中へとはいっていく。バーの中では前日と比べ人が少ないものの何人か仲間が集まっていた。


「来たか、あのねーちゃんとはうまくいってるのか?」


 カウンターの手前に座っていた巨体の男が話しかけてきた。この男は冷え込んでいるにもかかわらず白のタンクトップというなんともスポーツマン的な感じの男だった。見た目から重量挙げ選手やハンマー投げ選手を連想させるように筋肉がボッコリとでていた。


「筋肉やろうにゃ関係ねーよ、それよりこの中で俺と組む奴はいねぇか?」


 誰一人として手を挙げない。ウルフは顔をしかめる。


「なんだよ、5,000,000$だぜ? 山分けしたら2,500,000$、お得な話じゃねぇか」


 しかし手を挙げる者はいなかった。皆は彼を恐れているのだ。彼が請ける仕事は大抵危険な依頼なのだ。山分けの前に命を落としたりでもしたら、すべて無意味になってしまうことを皆知っていた。だからいくら金を積み上げられようとも彼と一緒に行くものは誰一人としていないのである。ウルフが用紙をヒラヒラさせていると先ほどの巨体の男がその用紙を取った。


「おいおい、冗談はよせよ。5ドルじゃねぇか」

「俺も最初はそう思ったさ。けどな、こいつをとっ捕まえるだけの依頼でわざわざ殺し屋になんて頼らないだろ? それほど危ねぇ依頼だと思うぞ? やっぱ桁を間違えたんだろ」


 ウルフはニヤリと笑う。巨体の男が小さくため息をついた。用紙をウルフの方に返すとハエを追っ払うように手を振って酒を飲み始めた。ウルフは他を見る。すると皆目をそらし誰もウルフと目を合わせようとする者はいなかった。


「なんだよ、シケた面しやがって」

 

 しばらくして、小太りな男が店内に入ってきた。緑色の帽子をかぶり、いかにもロビンフッドのような服装の男だった。ウルフはそれを見ると獲物をとらえたライオンのような顔でそのロビンフッド男の前に歩み出た。


「よぉ、ヨルゲス。しばらく姿を現わさねぇと思っていたらコスプレしてたのかよ」


 ウルフが笑いながら言うと、ヨルゲスと呼ばれた男は顔をくしゃくしゃにして怒った。


「コスプレとは、またずいぶんとバカにされたもんだのう。この服が今の流行なんじゃよ」

「そう怒んなよ、しわが増えるぜ?」


 ヨルゲスは一層顔を強張らせ、くしゃくしゃにした。鼻が少し長く鼻先は下に向いているためその顔は魔女を連想させるものもあった。ウルフがヨルゲスの背中に目をやると弓と矢立てがそこにあった。これはいよいよコスプレとしか言いようがないと思うとウルフは吹き出した。それを見たヨルゲスは顔を真っ赤にして近くのカウンター席に座り、バーテンダーに酒を要求した。


「おい、スピリタスをくれんか。こいつにそのまんま飲ませてやるのう」


 バーテンダーは驚き、困った顔をしていた。そしてバーテンダーはため息をつきヨルゲスに告げる。


「冗談はよしてくれよ、ヨルゲスさん。いくらなんでもそのままってのは、この店潰れちゃうよ」


 ヨルゲスは未だ赤い顔をしている。それを見ていたウルフは流石に苦笑いし、店を出て行こうとする。しかし、巨体の男に止められ店内へ戻される。ウルフは暴れたが巨体の男の力が強すぎて足が地面につかない状態にまでなる。それでも彼は男の腕の中で暴れ何とか振りほどこうとする。が、そのままヨルゲスの隣の席へと座らせられてしまった。周りはすでに観客で固められており、逃げ場はない。ヨルゲスがそんなウルフを見て笑った。そしてバーテンダーにまた同じことを要求する。バーテンダーはしぶしぶ店の中に入っていきスピリタスを持ってきた。その横には水が用意されていたが、ヨルゲスは瓶のふたを開けるとそれをLサイズのコップの中になみなみまで注いだ。そしてストローをさし、ウルフのほうへそれを突き出す。


「さぁ、この苦しみに耐えられるか勝負じゃあ!! 負けた方は罰ゲームを受けることになるぞい?」


 これでも十分罰ゲームだとウルフは思った。コップをふるえる手で支え、ストローを口にくわえる。そしてヨルゲスもまたストローをくわえる。こちらにもなみなみとスピリタスが注がれていた。皆が一斉に静かになり、異様な空気が二人を包みゴングが鳴る。その途端、今度は皆が一斉に盛り上がる。ヨルゲスとウルフはコップに入ったスピリタスをグイグイ飲んでいく。消毒液のような刺激臭、口の中に広がる焼けるような刺すような痛み。そしてその液体は食道までをも焼いていく。ウルフは流石につらそうな顔をしていた。一方ヨルゲスの方はグイグイと飲んでいく。それを見たウルフはスピードアップし、グイグイ飲んでいく。その時ほのかな甘みを感じる。するとウルフはストローを放り投げ、なんとコップをそのまま手で持ちがぶ飲みし始めた。それを見たヨルゲスは吃驚した表情を浮かべ飲むのをいったん止める。しばらくして我に返り同じ行動をするが、わずかの差ながらウルフが先に飲み干した。


「げっふぅ……。俺の、か、勝ちだぜ?」


 ウルフは椅子から落ちて床に倒れこんだ。と思うと、すぐにトイレの中へ駆け込んだ。ヨルゲスは目を白黒させて座っていたが、やがて立ち上がるとふらつきながら外へと出て行った。しばらくしてウルフが疲れきったようなつらい顔をして戻ってくる。そして机の上に置いてあったコップの水を飲み干した。


「ふぃ~、こりゃあ二日酔いしそうだな。ヨルゲスはどうした?」


 水を飲み干したウルフは平然とした顔に戻っていた。皆はそれを見て唖然とする。ウルフは首をかしげた。するとヨルゲスはふらふらしながら店内へと入ってきた。


「おぉ、ヨルゲス。どこ行ってたんだよ、おもらしでもしたか?」

「ふ、ふざけるじゃ、ないわい。罰ゲームはお、おあずけじゃい」


 あまりろれつが回っていない。しかし、酒に強いのか意識はしっかりしていたため、泥酔状態というほどまでいっていないようだ。ヨルゲスはまた元の席へと戻り書類と写真を出した。そこには包帯の男が写っていた。


「この依頼はもう俺が受けているんでね、残念だがこれはもう無効だ」


 ウルフが平然とした態度で言うとヨルゲスはガックリと頭を落としいびきをかいて眠りに落ちた。結局のところウルフはこの依頼を一人で受けなければならないハメになってしまったのだった。

 殺し屋の集い~後編~いかがでしたか?

今回も戦いは無しのコメディ系なストーリーでしたが、次回からはいよいよ!!

本題の依頼の方に入っていきたいと思います。いやぁ、ヨルゲスさんは原作(下書き)版にはいなかった人物です。『原作に出ていないココだけのオリジナルキャラ!!』みたいな(笑)

なんでしょう、ほんと「ヨルゲスさん、ありがとうございます」という感じです。やはり、オリジナルキャラは味が出ますね。原作(下書き)とはまた違った世界が楽しめると言うか、まぁ自画自賛してるわけじゃないんですけどね(苦笑)


 説明をちょっと。

ヨルゲスさんが頼んだスピリタスですが、ポーランドを原産地とするウォッカの事なんですね~。アルコール度数は世界最強と言われる96度!! これはびっくりです。最初は刺激臭と刺すような焼けるような痛みがありますが、それをこえるとほのかな甘みが広がります。一般的には水で割って飲むものなのですが、この二人は何をやらかしているんだかそのままいっちゃいましたね(笑)

 原料は穀物とジャガイモです。よく学校の保健室などにある消毒液、エタノールありますよね。あれみたいなもんです。果実をつけこんで果実酒を作ったり、傷口の消毒に使ったりするのが普通です。絶対にこの二人のようにそのまま飲むなんてことはしないでください。危険ですから。あと火も近づけたりしてはいけませんよ、燃えます。


 次回の予告を少々。

一人で依頼をこなすことになってしまったウルフ。それを待ちうける謎の集団。こいつら何者!?

 次回、Strange Hit Man 炎の乱舞 乞うご期待!!

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