第十四話:ギフナスの罠~前編~
ギフナスの研究が始まり、ウルフを襲います。
それではごゆっくりお楽しみください。
牢屋の中で鎖につながれたまま、うなだれている男がいた。ウルフである。ギフナスが彼の牢屋の前に立つとグラサン男がうなずき、牢屋のカギを開け、一礼をした。それを見たギフナスは口の端を微妙に持ち上げ、その中へと入っていく。グラサン男は牢屋の扉に手をかけたままギフナスの様子をうかがっていた。ギフナスはウルフの胸に右手を当てる。するとギフナスの腕は鉄のように硬く、真黒になった。触手のようだが機械にも見えるその腕は、ウルフの胸から背中までを包み込み、軽く脈動していた。よく見ると先ほどの鎖は全てとけて液体状になり、床に広がっていた。ギフナスはウルフを持ち上げる。するとウルフは悲鳴をあげて目を覚ました。包み込まれている背中や胸からは煙が出ており、彼が動くたびに血が滴り落ちた。
「苦痛か? しかしこうでもしなければお前は逃げるだろう」
「ぐあ、ああああああッ!!」
「話せまい、肉体を液化しているのだからな。しかし安心しろ、効果はあまり持たぬ。すぐに戻れるさ。完全に液化しなければの話だがな」
ウルフは未だに悲鳴をあげ、暴れるだけだった。それを見ていたグラサン男は口に手を当てて顔をしかめていた。ギフナスが出てくる。グラサン男は一礼すると、牢屋のカギを閉めた。そして歩き出したギフナスの後について行く。
二人と一人がやってきたのは実験室である。ウルフは実験台へと乱暴に放り出され、腹を押さえてうずくまった。しかしグラサン男が彼の両手足を実験台の鎖につなげ、身動きができない。ギフナスは腕を元に戻し、コンピュータの前に座ると凄まじいスピードでキーボードを打ち始めた。実験器具がギフナスの思うように動き、器具同士がぶつかるのではないかと言うほどスピーディにかつ正確にデータを回収していく。巨大モニターにはウルフの身体の画像が出ており、隅から隅まで細かい計算式が打ちこまれていく。上半身のデータ回収が終了した時、ギフナスは手を止めた。そして巨大モニターのある一点を凝視する。それは彼、ウルフの胸のあたり。心臓部分だった。ギフナスは慌ててウルフの元へと駆け寄る。ウルフはもう暴れていなかった。
ギフナスは目を見開き、左手をウルフの胸に当てゆっくりとその手を体内へ沈めていく。巨大モニターにギフナスの左手が映し出され、その手は心臓をつかんだ。そしてゆっくりと引き抜く。心臓が体外に出るとグラサン男はまたしても口に手を当てた。ギフナスは顔をしかめてそれを揉むようにゆっくりと手を動かした。しかし、心臓の動きはだんだんと弱くなっていく。ギフナスは今度は強めにそれをつかむと一気にウルフの体内へと戻した。その反動でウルフの身体が1センチほど宙に浮く。すかさずそこに一枚の黒いシートを滑り込ませた。ギフナスはため息をつくと上着を脱ぎ捨て半袖Tシャツ姿になった。そして洗面台へ向かうと、血で汚れた手を洗った。
先ほどのコンピュータの前に座りなおすと両手を組み暫し考え込む。ハッと気づいたようにキーボードをまた打ち始めると巨大モニターに三角形の図形が現れウルフの身体を一突きした。すると実験器具の針を大きくしたようなものが動き出し、その横の四角い枠に網を張っただけのような実験器具がウルフを持ち上げる。先ほどの針がウルフの横腹を突き刺した。反対側までその針が貫通すると今度は下に動き出す。血が滴り落ちて黒いシートに血だまりを作る。完全に針がウルフの横腹から背中までを切断しきると、更に血が下へと落ちていく。
「ふむ」
ギフナスが巨大モニターとウルフとを交互に見る。しばらくすると巨大モニターに“warning!!”と表示され、ロボットの声が鳴り響く。
「警戒態勢ニ入リマス。戦闘兵ハ直チニ、第四実験室ヘ向カッテクダサイ」
グラサン男が慌てて外へ飛び出すと入れ替えに武装した兵士が集まってきた。ギフナスはそれを見るとチッと舌打ちした。
「ギフナス博士。緊急事態です。早く部屋へお戻りください」
「いいのだ。貴様らは外で待機していろ!!」
「しかし……」
「ええい、うるさい!! とっととここから出ていくのだ」
ギフナスが怒鳴ると同時にウルフが実験台から飛び降りた。そしてギフナスの背後を取る。
「随分手荒な事してくれたな、ギフナス。医療費は高くつくぜ?」
ギフナスが振り返るとその顔に一撃パンチを入れる。ギフナスは吹っ飛び武装兵士たちに突っ込んだ。ギフナスはよろけながら立ち上がると武装兵士の銃を奪って乱射した。ウルフは素早いステップスキルでその弾をかわす。そして実験器具の針を壊すと、それをギフナスに向けて飛ばした。針はギフナスの腹深くまで刺さり、その身体を貫き通した。そして壁に刺さったまま動かなくなった。武装兵たちは銃を投げ捨て降伏の体勢をとる。
ウルフは一番先頭にいた武装兵のアサルトライフル(M16A4)を奪い背中にかけ、実験室を後にした。
いかがでしたか?
久々の投稿なので話の展開が早いような気がしています。
ちょっと説明を……。
<武装兵士が持っていたアサルトライフル(M16A4)について>
M16A2は弾薬を防弾物への貫通力を増すためにスチール弾芯を採用した強化弾を使えるようにした改良型のアサルトライフル。これにスコープなどを取りつけられるようにし、扱いやすくしたものがM16A4である。
<Strange Hit Man プチ>
ウルフ「最近身体がだるいな」
ペティ「疲れてるの? 肩揉んであげましょうか?」
ウルフ「お、おう。やけに優しいな」
ペティ「これくらいなんともないわよ」
ウルフ「痛ててててッ!!」
ペティ「はい、終了。依頼料90$ね」
ウルフ「おいおい、冗談だろ。肩を痛くしておいて金もとんのかよ」
ペティ「気にくわないかしら? それなら肩をはずしてあげても良いわよ?」
ウルフ「いや……。遠慮しとくよ」
次回の予告を少々。
実験室を後にしたウルフだったが、どこから出ればいいのか分からず迷子に……。
次回、Strange Hit Man ギフナスの罠~後編~ 乞うご期待!!