第十三話:真の始まり~後編~
ウルフは森を抜けて街へ入ります。
それでは、ごゆっくりお楽しみください。
森を抜けた先にある街の教会の鐘が鳴った。街の人々は慌てて家へ閉じこもる。ウルフはそんな様子を見て首をかしげた。
「なぁ、こんなさびれた所だったか?」
ウルフの問いにユーマが横に首を振った。そして身構える。ウルフは周囲を見渡し、スタスタと歩きだした。ユーマは焦ったようにウルフを呼びとめる。
「むやみに動かないで。狙われてるよ」
ウルフはわけも分からずその場に止まった。するとサックから銃を取り出して構えて見せた。いつでも応戦できるようにしたのだろう。だがウルフは全く見当違いの方向を向いていた。ウルフの背後にそいつは現れウルフの首元にスタンガンを突きつけながら動きを封じた。ウルフはもがこうとするが、後ろの奴の力が強く、振り返ることすらできなかった。ユーマはその場で震えていた。ウルフはそんな彼女を見て後ろの奴が誰なのか考える。しかし当てはまるような奴は思い浮かばない。後ろの奴は口を開いた。
「ギフナス博士がお呼びだ。来てもらおうか」
ウルフは苦しい顔をしながらも、口元だけは笑っていた。
「そりゃあ良かった。こっちから出向く手間も省けるってもんだ」
ウルフが軽口をたたいたことが気にくわなかったのか、後ろの奴はスタンガンを当ててウルフを気絶させた。そしてそのまま連れて行こうとする。ユーマが後を追いかけようとすると足元に勢いよく銃弾が叩きつけられた。方向からすると教会から撃ってきたらしい。そうこうしているうちに、ウルフは連れ去られてしまった。ユーマはそこに力なく座った。
ウルフは暗い檻の中に入れられていた。持っていた銃は取られており、上着はすべてはぎとられていた。コツンコツンと足音が近づいてきて、目の前で止まる。暗いため良く分からない。目の前に立った者はライターで灯りをともす。そこにいたのは三人の男だった。一番目の前に迫っていたのはメガネをかけたボサボサ頭で白衣を着た男だった。その右側には黒いマントを羽織った男がおり、左側には黒いスーツを着たグラサン男がいた。
「初めまして、ミスター・ウルフ」
白衣を着た男がウルフに話しかける。ウルフは小さくため息をつき口を開く。
「ギフナスだな」
「いかにも、私がギフナスだ」
ウルフはギフナスに殴りかかろうとした。すると黒いマントの男が柵越しにパンチを喰らわす。顔面にヒットしたそのパンチは凄まじき威力で、ウルフの身体を吹っ飛ばした。ウルフはよろよろと立ち上がり、柵に近づく。
「こらこら、大切な材料なんだから暴力は振るわないでもらいたい」
「すまない、ギフナス」
ギフナスと黒マントの男が会話をしていた。ウルフは柵を掴み話しかける。
「ギジルに何をした」
「ギジル? ほほぅ、知り合いだったのか。私は彼に力を与えただけだ、それ以外は何もしちゃおらんよ」
「力……」
ウルフはつぶやく。ギフナスは微笑し、白いあごひげを撫でた。そしてどこかへ行こうとする。ウルフは手を伸ばし、ギフナスの白衣をつかんだ。ギフナスが振り返る。グラサン男がウルフの手を掴み、思いっきり引きこんだ。当然ウルフは柵に顔面を強打する。グラサン男がパッと手を離すとウルフは柵の向こうで倒れ、痛みをこらえていた。ギフナスは歩みを止め、わざとらしくウルフに聞えるように話し始めた。
「君のおかげで、いい研究データが取れそうだ。感謝するよ、ガイア」
ウルフは身を起こす。“ガイア”確かにそう聞こえた。ウルフはまた柵越しに手を伸ばすが、もう何もとらえることはできなかった。そしてそのまま床へ倒れ、動けなくなった。
「新しい街……か。悪くはない」
そうつぶやいたのはギフナスだった。この街はかつて緑が生い茂り、森に囲まれた自然豊かな街だった。しかし数年前、ギフナスが街の教会の中にラボをつくりこの街の自由を奪ってしまった。そのため、人々はこの街から出て行こうとした。だがギフナスの部下たちはいつも番をしており、この街から出ることは許されないのである。そう、人々は一歩もこの街から出ることができず、扱使われて死んでいく運命にあるのだった。この街のほとんどはギフナスの手によって改造された、いわゆるギフナスの街なのだ。
ギフナスの部屋に誰かが入ってきた。黒マントの男だ。
「引き受けた依頼はこなした。約束のものを貰おうか」
「ふむ、君はよくやってくれたよガイア。だが、この依頼書は正直感心しないね」
依頼書には依頼内容がびっしりとウルフの顔写真が貼ってあった。その依頼内容には、『ウルフを殺せ』と書いてある。ギフナスはこれについて怒っているのだ。
「しかし、作戦は成功した。俺のおかげだと思え」
「いいや、もしウルフが死んだとしたらどうするつもりだったのか。それを考えぬものに報酬なぞやれん」
ガイアはギフナスに襲いかかった。ギフナスは咄嗟にそれを避ける。そしてギフナスは壁に飾ってあった長剣をガイアにつきたてた。その長剣はガイアの身体、心臓を貫いた。ガイアは悲鳴をあげ、その場に倒れた。ギフナスは彼を見て狂ったように笑う。
「私はやれとは一言も言っていない。勝手に依頼を受けたのは君の方だろう? 無様だな。あははは」
ギフナスは噎せる。すると扉があき、先ほどのグラサン男が姿を現した。
「準備が整いました、ギフナス博士」
「うむ」
ギフナスとグラサン男は部屋を出て行った。
いかがでしたか? 今回は少しだけ短いですね。
ついに姿を現したギフナスとガイア。ですが、ガイアは心臓を貫かれその場に倒れてしまいます。ガイアはどうなってしまうのか!?
ストーリーはまだまだ続きます。
次回の予告を少々。
ついにギフナスの研究が始まり、ウルフを襲います。
次回、Strange Hit Man ギフナスの罠~前編~
お楽しみに!!