第一話:とある街の殺し屋
二回目の投稿です。肩慣らしもできたので早々と今回は長編にうつります。楽しく読んでもらえたら光栄です。その他感想・アドバも受け付けていますのでよろしくお願いいたします。それでは、ごゆっくりお楽しみください。
プロローグ
「とある町に変な奴が出没するという噂がある。殺し屋でありながら戦うことを拒絶し、容姿は普通の人間なのにその堂々かつどこか間の抜けた感じからは誰もが震え上がるような異様な空気が漂うような奴だと聞く。こいつは面白い研究データが取れそうだ」
そう言ったのは一人の博士だった。この博士は何事にも興味があり、自分で調べつくさなければ気が済まないと言う人であった。
博士の言葉を聞きつけて研究所に謎の男が現れた。
「面白い、この仕事俺が引き受けよう」
謎の男はそれだけ言うと“変な奴”を探しに、夜の闇の中へと姿を消したのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
夜道、一人の男が歩いている。黒のロングコートの袖口にたくさんのシルバーピンズをつけて、赤い髪をなびかせて、寒いのかコートのポケットに手を入れながら歩いている。周りには他人の様子はない。朝から昼にかけては商人やら買い物に来た老若男女であふれかえり、夜だって会社帰りの人たちが行きかうにぎやかな大通りなのだが、その様子は今の状況からしてみればあり得るはずもなかった。その大通りの道はやけに荒れており、家の何軒かは窓ガラスが割れていて、見るも無残な状態だったのだ。今日だって夕方の刻にはまだ老若男女の姿があった。そんな『普段にぎやかな大通りがなぜこんなにも静かなのか』、というと、この“歩いている男”が原因の一つである。
その男はこの町の中心地に位置する十字路、その手前角のとあるバーに入って行った。並んだテーブルには何人かが腰をかけポーカーやらブラックジャックをして遊んでいた。一方、カウンターの方には小柄な男が奥から三番目に一人とこちらは大柄な男が手前の席に座っていた。男は入るなり真っ先にカウンターの一番奥へと腰かけ、バーテンダーに話しかけた。しかし、バーテンダーはその男に見向きもせず、ただただ仏頂面をしている。
「ご注文は?」
バーテンダーが問う。
「なんだよ、ここのバーテン変わっちまったのか?」
「ご注文は?」
さっきと全く同じ口調でバーテンダーが問う。
「なぁ、ここのバーテンはオウムなのか? さっきと言ってることも声の調子も一緒だぜ」
男は苦笑いしながら皮肉っぽく言い、頭を軽く掻いた。
「まぁ、いいや。Ginを頼むわ、シュタインヘーガー砂糖多めで」
そう言うと、周りの者どもが一斉にこの男を見た。そして笑いが巻き起こる。何事かとこの男は振り返り目を丸くしていた。その一方でバーテンダーは肩をすくめ両手を横に開いた。アメリカ人などが『分かりません』と言うかわりにとるジェスチャーだ。
入口付近に座っていた大柄な男が話しかける。
「やっぱジンと言ったら王道のDry Ginだろ。酒そのままの風味を楽しめよ。それと普通より糖質の多いシュタインヘーガーに砂糖多めはふざけてる」
「悪いな、苦い酒には弱いんだ」
男は手をヒラヒラさせて、これ以上話しかけるなというジェスチャーをとった。カウンターの方へと向き直り、おもむろに写真と一枚の紙を取りだしてから写真の方をバーテンダーに見せてヒラヒラさせる。それが鬱陶しかったのか、バーテンダーは睨みつけるように写真の方を見る。途端、バーテンダーの顔色と表情が変わる。何かに脅えるような、早く逃げたしたいとでもいうような渋い顔になっていた。それを見るなり男はニヤリと笑う。
「実はこの男を探しているんだが、何か知ってそうな顔だな。図星か?」
「し、知らん。そんな男は、み、見たことがない」
バーテンダーがそう言うと男は口をとがらせて息を吸い込んだ。そして大きなため息をつく。
「知ってると思ったんだがなぁ。言えねぇってか?」
「知らんと言っているだろう。さぁ、帰ってくれ」
「口が裂けても言えねぇってことか。なら、その口裂いてでも言わせてやるよ」
男は急に立ち上がり腰に付けていた銃をサックから引き抜いた。次に銃口をバーテンダーの方へと向ける。バーテンダーは気が狂ったのか、叫びながら酒瓶をこの男に投げまくっていた。周りの者どもはこの男を取り押さえようと各々武器を手にして襲いかかる、が―――。
取り抑えたと思った拍子にその身体は宙を舞い壁や窓に叩きつけられる。一瞬にしてバーにいた者どもは気絶していた。残ったのはこの男とバーテンダーのみであった。
「さ、終わりにしようぜ? 流石に飽きた」
「く、来るな。とっとと出て行ってくれ、これ以上私の店を荒らさないでくれ」
バーテンダーは完全にビビっており、酒樽にしがみついていた。よく見なくとも震え上がっていることが分かる。
「言えば終わるんだが」
そう男が言うとバーテンダーは震える指で外を指さした。男は指さす方向を見る。するとそこには塔が建っていた。だが、それははるか遠くの方なので小さく見える。バーテンダーは震えながら酒瓶を手に持ちゆっくりと忍び足で男の方へと近づく。
「負けず嫌いな奴だな、お前は」
そう言ってから男は裏拳をバーテンダーの顔面にお見舞いした。一枚の写真が床に落ちる。そこには包帯のようなもので顔を隠した男が写っていた。
「俺はあまり戦いを好まないんでな。命まではとらねぇ、だが、俺が殺し屋だと言う事はしっかり頭の片隅にでも置いときな」
そう言うと男はスタスタと歩き出した。
はるか遠くに建っている塔を目指して……。
第一話いかがでしたか?
まだまだ未熟なんで、言葉の使い回しなどおかしな点があったりするかもしれません。まぁ、それは小説として最も重要な問題なんですけどね。
さて、それは置いといて。今回は少し変わった感じのものを書こうと思いこういったストーリーが出来上がったわけですが、『こんなものか』と思って読了してしまった方はちょっと待って。面白いのはまだまだこれからなんです。なので本棚にしまおうとしてるその手をいったん止めて長い目で見てください。この小説はまさに『楽しく・strangeに』がモットーなのですから!!
説明をちょっと。
ここに出てきたお酒はオオムギ・ライムギ・ジャガイモなどを原料とした蒸留酒です。中でもシュタインヘーガーはジュニバーベリー(ねずの実)の上に流して香りづけをするジンとは別に、生のジュニバーベリーを発行して作られるドイツ産のジンです。ドライ・ジンというのはイギリス・ロンドンが出産地の現在主流しているジンの事。シュタインヘーガーはドライ・ジンよりも風味が控えめでだいぶ飲みやすいお酒となっていますが、お酒に弱い人にはあまり違いが分からないようです。
次回予告を少々。
第一話では明かされなかった男の名がついに明かされる。
次回、Strange Hit Man 殺し屋の集い。 乞うご期待!!