一休さんの衣
昔々、あるところに、小さな国がありました。
ある時、その国の首相が、国際会議に出席することになりました。
その時、首相は、ある議員から言われた指摘を思い出しました。
それは、
「外交交渉で安物の服で対応していたらナメられます。
最高の生地を使って、最高の職人さんが作った服で交渉してもらいたい。」
というものでした。
一理あると思った首相は、「安物に見えない服」「なめられない服」を探しましたが、適当な服がありません。
「外交交渉でマウントが取れる服、無理をしてでも買わなくてはいかん。」
と思った首相は、急いで高級なスーツを取り寄せて着ると、初めて安心し、
「これで各国の首脳たちにマウントが取れる」
と意気揚々と会議に望みました。
すると各国の首脳たちが、首相に言いました。
「あなたはさっきまで普通のスーツを着ていたのに、わざわざブランドのスーツに着替えて来られた。
あなたはおそらく、一休さんの真似をして我々を試そうとしておられるのでしょうが、その必要はありません。
あなたが安物のスーツを着ているか高級なスーツを着ているかに関係なく、あなたの言葉には真摯に耳を傾けるつもりです。
安物の服だからナメてかかる、ということはありませんから、安心してください。
我々は皆、あなたという人間の中身を見ているのであって、あなたの服装は気にしていませんからね。」
そう言われた首相は、高級な服を着ればマウントが取れると思い込んでいた自分が恥ずかしくなり、言いました。
「やっぱりこのスーツは、私には似合わないようです。
私という人間の中身が、この高級なスーツと釣り合っていませんね。」




